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離婚問題

離婚届の提出先は?必要なものや土日や夜間の提出方法などを解説

福岡法律事務所 副所長 弁護士 今西 眞

監修弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 副所長 弁護士

離婚は人生における大きな転換点であり、その手続きの中心となるのが「離婚届」の提出です。この記事では、離婚届の提出に関するあらゆる側面を、法的な専門知識と実務的な視点から詳細に解説し、利用者が安心して手続きを進められるよう支援することを目的とします。

離婚届の提出先はどこ?

離婚届の提出先は、本籍地または所在地役場です。離婚の方法が協議離婚、調停離婚、裁判離婚のいずれであっても、提出先の基本的なルールに変更はありません 。

本籍地以外の役場に離婚届を提出する際には、これまでは戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)一通の添付が必要とされていました。しかし、2024年3月1日からは、法務省の制度改正により、戸籍謄本の添付が原則不要となりました。

戸籍法の一部を改正する法律について(令和6年3月1日施行)

離婚届は一人でも提出できる

離婚届の提出は、必ずしも夫婦二人が揃って行う必要はありません。様々な事情に応じて、一方の当事者や、場合によっては第三者による提出も認められています。

代理人による提出も可能

離婚届は、当事者本人だけでなく、家族や友人、あるいは全くの第三者に提出を依頼することも可能です 。この際、一般的な行政手続きで求められるような委任状は不要です 。これは、離婚届の提出が「届出人の意思表示」を伴うものであり、提出行為自体は代理が可能であるという考え方に基づいています。

ただし、代理人が提出した場合でも、役所は本人確認のために後日、届出人本人宛に離婚届が提出された旨の通知を郵送します 。これは、本人の知らない間に離婚届が提出されることを防ぐためのセーフティネットの一つです。

代理人が提出する際の本人確認は、提出する代理人自身の本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)の提示が必要です 。代理提出の最大の注意点は、離婚届に不備があった場合、代理人では訂正ができないことです 。そのため、代理人に離婚届を預ける前に、記載事項や添付書類に不備・不足がないかを当事者自身が徹底的に確認しておく必要があります 。

軽微なミスであれば、あらかじめ離婚届の欄外にある「捨て署名欄」に夫婦2人の署名をしておくと、役所で訂正してもらえる場合がありますが、これはあくまで補助的な措置であり、事前の確認が最も重要です 。

離婚届の提出に必要なもの

離婚届を提出する際には、離婚届本体だけでなく、いくつかの付随する書類や本人確認書類が必要となります。離婚の方法によって必要な書類が異なるため、事前にしっかりと確認しておくことが重要です。

離婚届の入手方法

離婚届の用紙は、全国どこの市区町村の役所窓口(市民課や戸籍課など)でも無料で受け取ることができます 。役所で配布されている用紙は、一般的に白地に緑色の罫線が印刷されていますが、自分で印刷する際には白黒で問題ありません 。

近年では、多くの自治体がウェブサイト上で離婚届の様式をダウンロード可能にしています。ダウンロード版を利用する際には、A3サイズの白色用紙に印刷する必要があるほか、提出先の市区町村役場にダウンロード版の利用が可能かどうかをあらかじめ確認することが推奨されます 。書き損じに備えて、念のため数枚多めに用意しておくことをおすすめします。

離婚届と一緒に提出する書類

離婚の方法に応じて、以下の書類が必要となります。

離婚方法 共通必要書類 特有の添付書類
協議離婚 離婚届1通(証人2名の署名必須)
届出人の本人確認書類
なし
調停離婚 離婚届1通 調停調書の謄本
判決離婚 離婚届1通 判決書の謄本、判決確定証明書
審判離婚 離婚届1通 審判書の謄本、確定証明書
和解離婚 離婚届1通 和解調書の謄本
認諾離婚 離婚届1通 認諾調書の謄本

離婚届の提出方法

離婚届の提出方法は、主に郵送と窓口提出の二通りがあります。それぞれの方法にはメリット・デメリットや注意点が存在します。

郵送で提出

離婚届は、郵送によっても提出が可能です。遠方に住んでいる場合や、直接役所に行く時間がない場合に便利な方法です。

郵送の場合、その場で不備を指摘されることがないため、記載事項の正確性がより一層重要になります。郵送での提出は手軽ですが、書類に不備があった場合に修正に時間がかかったり、受理が遅れたりするリスクがあるため、送付前に何度も確認することが推奨されます。

不備がなければ、受理証明書が発行されることになります。

窓口へ提出

窓口へ直接提出する方法は、職員がその場で離婚届の形式的な不備がないかを確認してくれるという大きなメリットがあります。軽微な記入漏れなどであれば、その場で訂正して受理してもらえる可能性が高まります。

土日祝日や夜間でも提出可能

多くの市区町村役場では、平日の開庁時間外である土日祝日や夜間でも離婚届の提出を受け付けています。
しかし、これらの時間外提出は、あくまで「預かり」という扱いになり、その場で正式な「受理」とはなりません。不備があった場合は、後日役場から連絡があり、来庁して訂正を求められることがあります。

また、休日や夜間に提出した場合、離婚届受理証明書は即日発行されません。受理証明書が必要な場合は、後日、役所の開庁時間内に改めて申請して取得する必要があります。

離婚届が受理されないことはあるのか?

以下のようなケースで、受理されないことがあります。

ケース 具体的な状況 影響と対処法
記載事項の不備や記入漏れ 必要な署名(夫婦、証人)がない、未成年の子の親権者が指定されていない、住所や本籍の記載間違い、必要事項の記入漏れなど 軽微な不備はその場で訂正可能。重大な不備(署名漏れなど)は後日改めて提出が必要。
離婚届不受理申出がされている場合 夫婦の一方(または双方)が、相手による一方的な離婚届の提出を防ぐために、事前に役所に「離婚届不受理申出」を提出している。 申出が取り下げられない限り、離婚届は受理されない。申出は原則無期限で有効。
離婚意思の欠如 離婚届提出時に、夫婦双方に離婚する意思が合致していない(例:一方的に作成・提出された、過去に書かせたもの) 役所は形式審査のみを行うため受理される可能性はあるが、法的には無効。後日、裁判手続き(離婚無効確認調停・訴訟)で無効が争われる可能性がある。

離婚届の提出期限

離婚届の提出期限は、離婚が成立した方法によって大きく異なります。
協議離婚は、夫婦間の合意に基づき、離婚届を役所に提出することによって離婚が成立します。つまり、離婚届の提出行為そのものが、離婚の法的効力が発生する「創設的」な意味合いを持ちます。そのため、協議離婚においては、離婚届の提出に法的な期限は設けられていません。

これに対し、調停離婚、判決離婚、審判離婚、和解離婚、認諾離婚といった裁判上の離婚は、家庭裁判所での手続を経て、調停調書や判決書といった公的な文書によって既に離婚が法的に確定し、効力を生じています。この場合、離婚届の提出は、既に確定した離婚の事実を戸籍に反映させるための「報告的」な手続きに過ぎません。そして、戸籍法上、この「報告的」な手続をする期限が定められています。

  • 調停離婚の場合: 調停が成立した日から10日以内
  • 判決離婚の場合: 判決が確定した日から10日以内

提出期限を過ぎてしまった場合でも、離婚届が受理されないわけではありません。役所は期限を過ぎた届出も受け付けます。しかし、前述の通り、正当な理由なく提出が遅延した場合は、戸籍法上の義務違反として過料の対象となる可能性があります。また、提出義務のない他方当事者が、提出が可能となるという効果も生じます。

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離婚届を提出する前にチェックしておくこと

離婚届の提出は、単なる書類の提出作業に留まらず、その後の人生に大きな影響を与える重要な行為です。提出後に後悔したり、予期せぬトラブルに巻き込まれたりしないよう、事前に以下の点を徹底的にチェックし、準備を整えることが肝要です。

離婚届に不備はないか

離婚届は公的な書類であり、その記載には厳格なルールがあります。記載に誤りがあった場合、修正液や修正テープの使用は認められていません。誤った箇所は二重線で消し、その上に訂正印(離婚届に押印した印鑑と同じもの)を押し、余白に正しい内容を記入する必要があります。

離婚後の氏や戸籍をどうするか

離婚届を提出する前に、離婚後の氏(姓)をどうするか、そして戸籍をどうするかを明確に決めておく必要があります。

特に、婚姻中の氏を使い続けたい場合、離婚後も婚姻中の氏を使い続けたい場合は、離婚届とは別に「離婚の際に称していた氏を称する届」(民法767条2項)を役所に提出する必要があります。

また、未成年の子がいる場合、親権者が決まっていても、子の戸籍や氏(姓)は自動的に親権者と同じになるわけではありません。子を親権者の戸籍に入れ、親権者と同じ氏にするためには、家庭裁判所の許可を得て「子の氏の変更許可申立」を行い、その後、役所に「入籍届」を提出する必要があります。

離婚条件について取り決めているか

特に協議離婚の場合、離婚届を提出する前に、親権、養育費、面会交流、財産分与、年金分割といった離婚条件について、夫婦間で明確かつ具体的に取り決めておくことが極めて重要です。

面会交流、養育費については、離婚届中に取決めの有無を尋ねるチェック欄があります。しかし、取決めていなくても、離婚自体は可能となっています。そのため、離婚届提出時点では、これらについて具体的に取り決めていないケースも散見されます。

しかし、離婚後も紛争が続くことになりかねません。離婚届提出前に、離婚条件を明確に取り決めておくことをお勧めします。

離婚届の提出に関するQ&A

協議離婚で提出した離婚届を取り下げることはできますか?

度役所に受理された離婚届は、原則として取り下げることはできません。
もし、離婚届提出時に離婚意思がなかったなど、その離婚が無効であると主張したい場合は、家庭裁判所に離婚無効調停を申し立てる、離婚無効訴訟を提起する等の裁判手続による必要があります。

離婚届を出したら即日離婚できますか?

離婚届が役所に受理された日が、法的に離婚が成立した日となります。これは、提出した日が休日や夜間であっても、不備がなければその日が受理日となるため、法的には「即日離婚」と言えます。なお、調停離婚の場合は調停成立日、裁判離婚の場合は裁判確定日が離婚日になるのは前述のとおりです。

「次、浮気したら即離婚」と5年前に書かせた記入済みの離婚届が手元にあります。提出に問題ありませんか?

このような状況で離婚届を提出すると、法的に無効となる可能性が非常に高いです。
協議離婚は、離婚届を提出する時点で夫婦双方に「離婚する意思」が合致していることが必要です。5年前に書かれた離婚届は、その時点での意思を示しているに過ぎず、現在の「離婚する意思」が確認できません。もし、相手の現在の離婚意思が確認できないまま、手元にある古い離婚届を一方的に提出した場合、たとえ役所で形式的に受理されたとしても、その離婚は法的に無効となる可能性が高いです。相手が離婚の無効を主張した場合、裁判手続(離婚無効確認調停・訴訟)で争うことになり、裁判所は提出時点での双方の離婚意思の有無を審査します。そして、現在の離婚意思の欠如を理由に無効と判断される可能性が高いです。

離婚届の提出前に一度、弁護士に相談することをおすすめします

離婚は、単に戸籍上の身分関係を解消するだけでなく、親権、養育費、財産分与、慰謝料、年金分割など、多岐にわたる法的・金銭的な問題が絡む、人生における大きな決断です 2。これらの問題は複雑であり、適切な知識や交渉経験がなければ、不利な条件で離婚してしまったり、後々のトラブルに発展したりするリスクが非常に高まります。

このような状況において、弁護士への相談は、単なる「困った時の最終手段」ではなく、離婚プロセス全体を通じて「予防法務」と「精神的サポート」という二重の価値を提供する、極めて有効な手段となります。

離婚届を提出する前に、一度、弁護士に相談されることをお勧めします。

福岡法律事務所 副所長 弁護士 今西 眞
監修:弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 副所長
保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:47535)
福岡県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。