
監修弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 副所長 弁護士
将来の相続に備えて、生前に遺言書を作成される方も多いと思います。
遺言書を作成した場合には、相続人において、「遺言書の検認」を行う場合があります。
今回は、遺言書の検認手続が必要となるケースや期限、手続の流れについて、ご説明いたします。
遺言書の検認とは
遺言書の検認とは、家庭裁判所において、遺言の種類や遺言書の状態を確認し、遺言書の現状を明確にする手続です。
その目的は、相続人間で紛争が生じないように、遺言書の偽造や変造を防止し、遺言書の現状を保全することにあります。
有効性を判断するものではない
遺言書の検認は、あくまでも将来的に、相続人間で遺言書をめぐる紛争が生じないように遺言書の偽造・変造を防止し、現状を保全するために行うものであって、その遺言書が、有効なものか、無効なものであるかを判断する手続ではありません。
遺言書の検認が必要になるケース
遺言書の種類としては、主に①自筆証書遺言、②秘密証書遺言、③公正証書遺言があります(特別方式の遺言書は除く。)。
この中で、作成された遺言書が①自筆証書遺言または②秘密証書遺言である場合には、検認手続が必要となります。③公正証書遺言の場合には、公証人が遺言書を作成することから、遺言書の偽造・変造の可能性が少ないと考えられ、検認手続は不要とされています。
また、自筆証書遺言については、令和2年7月10日より、「法務局における自筆証書遺言の保管制度」が創設されて法務局で保管できるようになりました。
この制度を利用して法務局で保管された自筆証書遺言は偽造や変造される可能性がないため、検認が不要となります。
検認せずに遺言書を開封してしまったらどうなる?
民法上、封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人等の立会いがなければ開封することができないと定められています(民法1004条3項)。
そして、検認手続を経ずに、遺言書を勝手に開封してしまった場合には、「5万円以下の過料に処する」ことが定められています(民法1005条)。
そのため、遺言書を発見しても、勝手に開封しないよう注意が必要です。ただし、遺言書を開封してしまっても、検認を行うことは可能です。
遺言書の検認に期限はある?
民法上、遺言書の検認に明確な期限の定めはありません。
もっとも、遺言書の保管者または遺言書を発見した相続人は、遅滞なく家庭裁判所に検認を請求しなければならないと定められています(民法1004条1項)。
遺言書の検認手続きの流れ
以下では、遺言書の検認手続の流れについてご説明いたします。
実際に、遺言書を保管している人や遺言書を発見した場合には、以下のような手続を踏む必要があります。
手続きをする人(申立人)
遺言書の検認手続の申立人となる者は、遺言者の保管者または遺言書を発見した相続人です。
必要書類
遺言書の検認手続を行うにあたって、必要となる書類は以下のとおりです。
- 検認手続の申立書
- 戸籍謄本(遺言書の出生時から死亡時まで)
- 相続人全員の戸籍謄本
- 遺言者の子(及びその代襲者)が死亡している場合には、その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までの戸籍謄本
- 相続人が第二順位や第三順位の場合には、遺言者の相続人であることを示す戸籍謄本
- 相続人が不在の場合には、遺言者の父母の出生時から死亡時までの戸籍謄本
申立先
遺言書の検認手続の申立先は、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所となります。
遺言者の最後の住所地を確認するためには、遺言者の住民票あるいは遺言者の戸籍の附票等で住所を確認する必要があります。
検認手続きにかかる費用
遺言者の検認手続の申立てにかかる費用としては、遺言書1通につき、収入印紙800円分が必要となります。
それに加えて、裁判所に納めておく郵便切手も必要となり、その郵便切手については、申立先の家庭裁判所に事前に問い合わせを行い、確認しておく必要があります。
相続に強い弁護士があなたをフルサポートいたします
遺言書の検認が終わった後の流れ
家庭裁判所において、検認期日において、裁判官は、出席した相続人等の立会いの下に封がなされた遺言書を開封します。
そして、裁判所書記官は、当該遺言書を複写して、遺言書検認調書を作成します。
その後、相続人は、遺言の執行(遺言書の内容を適正に実現すること)を行うために、検認済証明書の発行を行い、遺言書の内容に沿って遺言の執行を行うことになります。
遺言書の検認に関するQ&A
遺言書の検認に行けない場合、何かペナルティはありますか?
遺言書の検認手続の申立てがあると、遺言書の検認期日が指定され、家庭裁判所で検認期日において検認手続が実施されます。
申立人が出席すれば、相続人全員が出席しなくても検認の手続は行われます。
なお、相続人が遺言書の検認を拒否しても、遺言検認手続には影響はなく、遺言書の効力にも影響はありません。
検認できない遺言書はありますか?
上述したように、遺言書の検認手続の目的は、遺言書をめぐる紛争が生じないように遺言書の偽造・変造を防止し、現状を保全することにあります。
そして、公正証書遺言は、公証人が作成するものであって、遺言書の偽造・変造の可能性が低いため、検認手続を経る必要はありません。
遺言書の検認を弁護士に頼んだら、費用はどれくらいになりますか?
遺言書の検認手続にかかる弁護士費用は、各弁護士事務所で異なりますが、一般的には10万円~20万円程度となります。
検認せずに開けてしまった遺言書は無効になりますか?
遺言書の検認手続は、遺言書の有効・無効に影響を及ぼすものではありません。
そのため、検認手続を経ずに遺言書を開封してしまったとしても、遺言書の効力に影響はありません。
ただし、上述したように、民法には検認手続を経ずに遺言書を勝手に開封した場合の罰則が定められていますので、遺言書を勝手に開封しないように注意が必要です。
遺言書の検認手続きは専門家にお任せください
今回は、遺言書の検認手続についてご説明いたしました。
検認手続は、公正証書遺言や法務局で保管された自筆証書遺言以外の遺言書において必要な手続です。
他方で、検認手続を行うためには、申立てに必要な書類も多く、一人で検認手続を進めていくには、戸籍の取得や申立書の作成等に、非常に時間と労力を要します。
そのため、遺言書の検認手続を行うにあたっては、弁護士に相談・依頼すべきです。
当法人には、検認手続を含む相続手続について豊富な経験を有する弁護士が在籍しておりますので、お困りの際には是非ご相談ください。
「モラハラ」とは「モラルハラスメント」の略ですが、男性から女性へのイメージが強い方も多くいらっしゃるのではないでしょいうか?
近年、女性から男性へのモラハラも増え、「モラハラ妻」などと呼ばれたりしています。
どんな人であってもモラハラをされていい理由はありません。
モラハラで離婚したいと考えることは普通のことではないでしょうか。
この記事では「モラハラ妻」に着目し、モラハラ妻の特徴やモラハラ妻と離婚する手順などについて解説していきます。
妻によるモラハラの具体例は?
「モラハラ」という言葉は最近よく聞かれる言葉ですが、いったいどのようなことを指すのでしょうか。
「モラハラ」とはモラルハラスメントの略語で、倫理や常識を超えた嫌がらせで、相手を精神的に追い詰める行為全般を指します。そのため、精神的DVに該当することもあります。
身体的に暴力を振るわれているわけではないので、周囲に気づかれにくく、モラハラをしている側もされている側もモラハラの事実に気づかないことがあります。
では、どのような行為が「モラハラ」に該当するのでしょうか。
ここでは、「モラハラ妻」の特徴を挙げていきます。
- なんでも夫のせいする
- 夫のお小遣いなどを極端に制限する
- 自分(妻)が常に正しいと思っている
- 事実と異なることをいう
- もともとの性格が細かく文句が多い
では、ひとつずつ見ていきましょう。
なんでも夫のせいにする
妻の身の回りで起きた悪いことをすべて夫のせいにするのもモラハラ妻の特徴です。
例えば、仕事でうまくいかなかったときも「あなたが○○してくれなかったから仕事でミスをしてしまった」などと文句を言い、責任転嫁しようとします。
夫のお小遣いなどを極端に制限する
妻が家庭のお金を管理し、お互いにお小遣い制を導入していることは、双方が合意していれば何ら問題はありません。
しかし、夫の意思を無視して、夫のお小遣いだけ極端に少なく、妻は自由にお金を使っているケースではモラハラ妻の可能性が高いです。
専業主婦であっても共働きであっても夫婦が婚姻中に築き上げた財産は共有財産です。
どちらか一方が独占する権利はないため、意思を無視したお小遣い制の導入はモラハラ妻といえるでしょう。
自分(妻)が常に正しいと思っている
モラハラ妻は常に自分が正しい、自分が中心と思っている傾向があります。
そのため、「自分がやることはすべて正しく、夫がやることはすべて間違い」という法則がモラハラ妻の中では定着しているのです。
なにか不都合が起きた場合でも、その原因をすべて夫に押し付けてしまうこともあります。
なぜならいつも自分中心の世界にいるので、「正しいのは自分(妻)、悪いのは夫」という価値観が当然だと思っているのでしょう。
事実とは異なることを言う
自分が夫より優位に立つために事実とは異なることを言うこともモラハラ妻の特徴です。
例えば、「夫が自由にお金を使わせてくれない」「家事を全く手伝ってくれない」など事実と異なることを言い、かわいそうな妻を演じ、周囲を味方につけようとします。
元々の性格が細かく文句が多い
モラハラ妻は元々の性格が細かく神経質な面があります。
またモラハラ妻は自分が嫌だったことをいつまでも覚えている特徴があり、親切にしてもらったことは忘れ、新しく文句をつけるときも「あの時もこうだった」と過去を蒸し返す傾向があります。
妻のモラハラが子供に与える影響
子供のことを思い、なかなかモラハラ妻との離婚に踏み切れない方もいらっしゃることでしょう。
しかし、両親間のモラハラ行為の中で育つ子供には様々な悪影響が及んでしまいます。
子供に与える悪影響は以下のとおりです。
- 人間関係を上下関係で認識してしまう
- 人の顔色を伺って物事を判断するようになる
- 子供が人間関係に不安を持つようになる
- 子供の心身に対して見えないダメージを与えてしまう
- 将来子供もモラハラを行う大人に成長してしまう
モラハラ妻と親権の関係
通常、子供の親権は、モラハラ妻であっても母親がとりやすいと言われています。
特に、子供が乳幼児の場合は、主たる監護者が母親となる場合が多く、母親の方が子供との心理的な結びつきが強いことから、父親より母親と暮らした方が望ましいとされ、母親に親権が有利になりやすくなります。
しかし、母親のモラハラの程度がひどい、子供にもモラハラをしていたような場合など、父親と暮らす方が子供にとって利益であると認められるときには、父親が親権者になることもあります。
モラハラを理由に妻と離婚できる?
離婚することに双方が合意すれば、どのような理由でも離婚することができます。
しかし、どちらかが離婚に応じない場合は離婚調停、離婚裁判へと進みます。
離婚裁判では、「法定離婚事由」という離婚するための理由が必要となります。
法定離婚事由は以下のとおりです。
- 配偶者に不貞行為があったとき
- 配偶者から悪意の遺棄があったとき
- 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
- その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
妻のモラハラによって既に婚姻関係が破綻していると客観的に見て判断できる場合は、「婚姻を継続し難い重大な事由」に当てはまり、離婚できる可能性があります。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
モラハラ妻と離婚する方法と手順
証拠集め
離婚の話し合いの前に、より有利に離婚するためにも「証拠集め」が大事です。
証拠を相手に突きつけることで、「そんな事実はない」と反論されるのを防ぐことができます。
モラハラの証拠となるものは以下のとおりです。
- モラハラの内容を記載した日記やメモ
- モラハラの現場を記録した録画や音声
- モラハラ妻から届いたメールやSNS
- 医師の診断書や精神科・心療内科への通院履歴
離婚について話し合い(協議離婚)
モラハラ妻と離婚するためには、まずは妻と話し合います。慰謝料や親権、養育費、財産分与などについても話し合いによって決めなければなりません。
モラハラ妻は基本的に強気ですので、夫は離婚したい理由や証拠をしっかり話さなければなりません。
しかし、モラハラ妻に圧倒され、不利な条件を提示されたり、暴言を吐かれたりするおそれもあります。なるべく2人での話し合いは避け、弁護士など第三者を交えて話し合いをするべきでしょう。
夫婦での話し合いが成立しなければ離婚調停へ
話し合いでまとまらない場合は、離婚調停へと移行します。
離婚調停では、調停委員が間に入り、双方の話を聞くことで、スムーズに話し合いがまとまるようサポートしてくれるため、離婚そのものに加えて慰謝料などの金額も改めて話し合うことができます。
また、離婚調停が不成立になった場合でも、双方の対立点がそれほど多くなく、裁判所が「離婚させるのが相当だ」と判断することがあれば「調停に代わる審判」がなされ、審判離婚が成立する場合もあります。
離婚調停については以下のリンクで詳しく解説しています。ご参考ください。
離婚調停について詳しく見る調停が成立しなければ離婚裁判を申し立てる
離婚裁判とは、調停で夫婦が合意できない場合に家庭裁判所に訴訟を提起することにより、裁判官の判決にて離婚を成立させる手続です。
離婚裁判では、離婚理由が問われるため、法律が定める離婚の原因(法定離婚事由)が夫婦間に存在するかが重要です。
そのため、モラハラが法定離婚事由でもある「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するかがカギとなります。
妻のモラハラの証拠が十分にあり、夫婦関係が破綻していると認められると離婚できる可能性も高まります。
反対に、証拠が十分でないと、モラハラが法定離婚事由に該当していないとされ、裁判所に離婚を認めてもらうことは難しいでしょう。
離婚成立まで時間がかかる場合は別居を検討する
モラハラが日常的で生活に支障が生じているのであれば、一度別居をして精神を休ませることも大事です。
モラハラ妻と顔を合わせない生活を送ることで、状況を冷静に判断するきっかけとなりますし、モラハラ妻も自分の行いを見直すことができるでしょう。
別居中は収入の多い方から少ない方へ「婚姻費用」を支払う必要がありますので、注意しましょう。
また、子供がいる場合はどちらについていくのか考えることも大切です。
妻のモラハラで慰謝料はいくらもらえる?
慰謝料とは、相手の不法行為によって受けた精神的苦痛に対し支払われるものです。
モラハラでも慰謝料を請求することはできますが、そのためには、ある程度強度のモラハラが行われたことが必要です。
例えば、
・一度説教を始めると3、4時間かかる
・わめきだしたら止まらない
・束縛が異常
といったことが週に何回も起こるような場合に慰謝料を請求することができるでしょう。
モラハラでの慰謝料の相場は数十万~100万円ほどですが、双方が納得していればいくらになっても構いません。
モラハラ妻との離婚を検討している方は弁護士にご相談ください
モラハラ妻は常に「自分が正しい」と思っているため、離婚を切り出そうとしてもなかなか応じてもらえないことも考えられます。 また、モラハラは根がまじめで優しい男性が被害に遭いやすい傾向にあります。 しかし、モラハラは精神的DVであり、決して許されるものではありません。 少しでも「これってモラハラかな?」と感じた場合や家に帰るのが億劫になった場合などは弁護士にご相談ください。
自分では気づいていなくても、弁護士に相談することで、妻のモラハラに気づく場合もあります。また、離婚をお考えの際はモラハラ妻と一対一で話してもなかなか離婚がまとまらないでしょう。代理人として弁護士が妻と話すこともできます。 モラハラ妻にお悩みの際は私たち弁護士法人ALGにご相談ください。
配偶者との離婚に際して、婚姻関係を破綻させた責任として、相手方から慰謝料の請求をされることがあります。
これに応じるべきか否かを判断するにあたっては、典型的な発生原因や相場等の知識が不可欠ですので、以下に記載していきます。
離婚慰謝料を請求されたら確認すべきこと
慰謝料が発生する理由
離婚に至ったからと言って、慰謝料が必ず発生するというものではありません。
婚姻関係を破綻に至らしめた原因が主として一方の側に存する場合だけです。
不貞やDVは、その典型です。
モラハラや経済的DV、悪意の遺棄等も対象となりうる場合はありますが、証拠の確保や事実認定の問題があるため、これらの事由だけで請求が認容される可能性は高くありません。
相手の主張は真実か
虚偽のでっちあげや思い込み等、相手の主張する内容が事実と合致するものでないという場合もありうるところです。
「異性とラブホテルに滞在したけど不貞はしてない」という場合のように、事実がそうであったとしても、客観的には争うのが困難と言う場合もありますが、まずは相手の主張する事実が事実と合致するか、これを裏付ける証拠は存在しうるか、というような面からの検討は不可欠でしょう。
請求金額は妥当か
離婚の慰謝料は数十万円程度から数百万円というように、大きな幅があるものです。
婚姻関係の破綻に至った要因や相手方の帰責性の有無等にもよりますし、DVの場合は行為態様、怪我の程度等の具体的事情にも大きく左右されるところです。
不貞行為の場合、特殊な事案では500万円前後とされたものもありますが、一般的には100~300万円程度と言われています。
離婚慰謝料の支払いを拒否できるケース
争うことを前提にした場合、離婚慰謝料の請求は拒否することが可能な事案もあります。
以下はその典型例です。
相手が主張する内容が虚偽である・証拠がない場合
慰謝料請求の主張が虚偽によるものの場合、そもそも完全なでっち上げと言う場合と、事案の細部にズレはあるが本質部分は事実に沿っているという場合とでは異なりますが、的確に反論することで支払いを免れる場合もありうるところです。
不貞やDV等の事実は請求する側が立証することを求められますので、これらの立証に足る証拠が存在するか否か、との点も重要な意味を持ちます。
時効が成立している場合
離婚に伴う慰謝料は、原則として離婚成立の日から3年(※損害及び相手方を知った時から3年又は不法行為のあった日から20年)の経過で時効となります。
ただし、DV事案の場合、生命又は身体に対する損害部分については、3年ではなく5年です。
時効が成立している場合は、これを援用することで請求を免れることが可能です。
婚姻関係がすでに破綻していた場合
離婚慰謝料は、一方的に婚姻関係を破綻させられたことに対するものです。
別の原因でとうに破綻していたことが証拠上も明らかという事案のように、離婚慰謝料の請求が否定される場合はありうるところです。
離婚慰謝料が減額できるケース
相手にも過失がある
破綻に至っていたとまでは言えないものの、相手方に著しい落ち度が存することが証拠上も明らかというように、一定程度減額の余地につながりうる場合はありうるところです。
相場以上の慰謝料を請求された
離婚慰謝料の請求事案では、「類似の裁判例の傾向等に照らしても、相手方の請求は高額すぎる」ということもあります。
考慮されうる要素は多数ありますので、単純に「○○円以上だから高すぎる」というように明確な基準を示すことはできませんが、高いと思ったら専門家に相談するほうが良いでしょう。
有責性が低い
慰謝料の金額は事案によって幅のあるものです。
DV事案の場合でも“怪我の程度は軽微で回数も少ない”という事案と、“骨折や入院を伴うような怪我を負わせた”事案とでは、そもそもの金額が変わってきます。
離婚慰謝料が増額されるケースもある?
行為態様の悪質性や、その後の対応等、慰謝料の算定に悪影響な事情というものも存在します。
典型的には、不貞発覚後も交際関係を継続するというようなものです。
すでにやってしまったことを覆すことはできなくても、その後に適切な行動をとることで、不利な事情を積み重ねないようにするのも大事です。
離婚慰謝料を決める流れ
離婚慰謝料は、当事者間の話し合いや弁護士を通じた交渉、離婚調停等、話し合いのレベルで請求うしてくる場面と、離婚裁判等の訴訟で請求される場面の二通りがあります。
このうち、強制力を持つのは後者です。前者の過程を経た上で、決裂後に訴訟移行し、その中で認定・判断されるという流れが典型的です。
離婚慰謝料が支払えない場合の対処法
支払いたくてもお金がなくて払えない、という場合でも、債務名義(※判決や調停調書、公正証書等)
に支払うべき旨が記載されている場合は、差押え等を覚悟しなければなりません。
判決は一括払いのみですので、分割払い等にするために和解等で決着させるという判断はありうるところでしょう。
離婚慰謝料の減額に関するQ&A
公正証書を作った後でも慰謝料を減額できますか?
公正証書を作成した時点で、もはや争う余地はほぼありません。
公証人の介在の下、自ら作成したものですので、詐欺や強迫等の取消事由を主張するにも、よほどの証拠等が存在しないと困難と言わざるを得ません。
減額等を希望するならば、作成前に専門家に相談しましょう。
内容証明郵便で慰謝料請求された場合、減額交渉はどのように進めたらいいですか?
上記のとおり、考慮すべき点や判断要素が多数存するものですので、こうすればうまく行くというような一般化は困難です。
内容証明郵便は、文書の送り方の一つであり、これ自体が強制力を持つものではありませんが、自身で交渉するなら、事前に専門家に相談した上で、事案の見極めを行うべきです。
離婚慰謝料を請求されたら、弁護士に相談してみましょう
離婚慰謝料は、事案に応じた見極めや対応が求められる問題ですので自己判断は危険です。 不用意な発言等により、相手に証拠を与えてしまうなど、事態を悪化させるおそれもあります。
公正証書等を作成してから後悔しても、時すでに遅しとなる場合も、少なくとも事前に弁護士に相談しておくほうが安全ですし、内容によっては依頼を検討されたほうが良いと思います。
DVが原因で離婚を検討されている場合、配偶者に慰謝料請求できる可能性があります。
「できるだけ相手と関わりたくない」、「一刻も早く離婚をしたい」と思うかもしれませんが、離婚後の経済的な不安を少しでも払拭するためにはしっかり請求するべきです。
また、離婚後に心身が安定してから慰謝料を請求することもできます。
そこで、本記事では、
- DVが原因の離婚で慰謝料を請求できるかどうか
- DVの慰謝料の相場
- DVによる離婚で慰謝料請求する流れ
など、DVによる離婚慰謝料に関して、詳しく解説していきます。
DVで離婚する場合の慰謝料相場はいくら?
DVの慰謝料の相場は、数十万~300万程度とされています。
慰謝料の相場に幅があるのは、DVの頻度や回数、期間、婚姻年数、子供の有無など個別の事情によって金額が異なるからです。
もっとも、裁判所の手続を利用することなく、当事者間での話し合いで合意すれば、相場より高額な慰謝料を獲得できるケースもあります。
慰謝料が高額になる要素
DVが原因の離婚慰謝料は、次の要素によって高額になりえます。
①DVの回数
DVの回数が多ければ多いほど、被った精神的苦痛は大きいとして慰謝料は高額になりえます。
②DVの期間
DVの期間が長ければ長いほど、被った精神的苦痛は大きいと評価され慰謝料は高額になりえます。
③DVによる怪我や障害の程度
DVによる怪我や障害の程度がひどいほど損害が大きいとして慰謝料は高額になりえます。
④DVを受けて精神疾患を発症した
DVを受けてうつ病やPTSDなどを患ってしまった場合には損害が大きいと評価され慰謝料が高額となりえます。
⑤婚姻期間の長さ
婚姻期間が長いほど、離婚による精神的苦痛は大きいと評価され慰謝料は高額になりえます。
⑥未成熟子の人数
夫婦に監護養育が必要な子供が多ければ多いほど、離婚による精神的苦痛は大きいと評価され慰謝料は高額になりえます。
慰謝料を請求するにはDVの証拠が必要
DVが原因で離婚する際に慰謝料請求する場合、相手からDVを受けた事実を裏付ける客観的な証拠が必要です。
証拠がなければ、相手から「DVなんていない」と否定され、慰謝料の支払いに応じてもらえません。具体的に、次のようなものが有効な証拠となります。
- ケガを負った部位の写真
- ケガを負って治療した際の医師の診断書、受信記録
- DV中の動画、音声
- 室内の様子を映した写真、動画
- 警察や公的支援機関などへの相談記録
- 第三者の証言
- DVを受けていることを詳細に記載している日記・メモなど
DVによる離婚で慰謝料を請求する流れ
DVを原因とする離婚で慰謝料請求するには、一般的に次の流れで行います。
①話し合いで請求する
②離婚調停を申し立てる
③最終的には離婚裁判を提起する
次項でそれぞれ詳しく解説していきます。
①話し合いで請求する
まずは、当事者間での話し合いで離婚と慰謝料の請求をします。
ただし、相手がDV加害者の場合は、自分が行ってきた言動がDVであるとの自覚がない人も多く、離婚を切り出すと逆上して暴力を振るわれる危険があるため、話し合いが困難を極めることが多いです。
無理に自分たちだけで話し合おうとせずに、まずは実家や賃貸住宅などに別居をして、身の安全を確保してから、電話やメール、LINEなどで話し合いを行います。
子供がいるのであれば、子供にも危害が及ぶおそれがあるので、子供を連れて別居するようにします。
できれば当事者間の話し合いは回避して、弁護士に代わりに話し合ってもらうことをお勧めします。
②離婚調停を申し立てる
恐怖を感じて相手と話し合いができない、話し合いを試みたものの折り合いがつかなかった場合などは、家庭裁判所に離婚調停を申し立てて、離婚調停の中で慰謝料についても話し合います。
離婚調停は、調停委員を介して話し合いをしますので、DV加害者である相手と直接対面して話し合うことはありません。
こちらの言い分は調停委員を介して相手に伝えられ、相手の意見も調停委員を介してこちらへ伝えられます。
離婚調停においては、調停委員にDVを受けていた事実を認識してもらうことが大切です。
調停委員は事実確認をして相手に非があることがわかれば、調停委員から慰謝料を支払うように説得してくれる場合もあります。
また、はじめにDV事案であると伝えると、相手にはこちらの部屋がどこにあるか分からないように配慮してもらえ、裁判所内で偶然顔を合わせたり、待合室に押し掛けられたりすることが無いようにしてくれます。
③離婚裁判で請求する
離婚調停での離婚や慰謝料について合意できなければ、調停不成立となりますので、最終的に離婚裁判を提起します。
離婚裁判では、DVを受けていた事実と損害について証拠を用いて主張・立証していきます。
相手が離婚や慰謝料の支払いを拒否していても、裁判官がDVの事実を認めれば、判決によって離婚と慰謝料支払いが命じられます。
離婚裁判でも重要になるのがDVの事実を裏付ける客観的な証拠です。
証拠によって、DVが行われていたことが明らかであると判断されれば、離婚が認められるうえに慰謝料も獲得しやすくなります。
なお、既に離婚していても、裁判でDVを原因とする離婚慰謝料請求をすることは可能です。
離婚後に慰謝料請求する場合は時効に注意
「身の危険を感じたので一刻も早く離婚したくて、慰謝料は請求せずに離婚届を提出してしまった」という方も多いかと思います。
離婚後であっても慰謝料の請求はできますが、いつまでも請求できるわけではなく、時効が設けられています。
DVを原因とする離婚慰謝料の時効は、離婚したときから3年になります。
もし、DVを受けていたのが3年以上前というケースでも、DVが原因で離婚した場合は離婚後3年以内であれば請求できます。
時効が迫っているのであれば、時効までに内容証明郵便を郵送する方法で請求すると、時効の完成が6ヶ月間猶予されます。
また時効までに訴訟提起をすれば、時効をリセットすることができて、時効期間を延ばすことができます。
相手がDVの慰謝料を支払わない場合の対処法
一度取り決めた慰謝料が支払われないという事態が起きるケースもあります。
では、慰謝料を支払われない場合はどのような対処をしたらいいのでしょうか?
次項で詳しく解説していきます。
履行勧告・履行命令
調停や審判、裁判など裁判所の手続でDV慰謝料の支払いが決定したにもかかわらず、支払わない場合は、裁判所から「履行勧告」、「履行命令」を行ってもらえます。
「履行勧告」は、家庭裁判所が慰謝料の未払いの有無を調査した上で、取り決めた通りに支払うように電話や書面で促してくれる制度です。
法的な強制力はありませんが、相手にプレッシャーを与えられます。
「履行命令」は、家庭裁判所が一定の期限までに慰謝料を支払うように命じてくれる制度です。
正当な理由なく命令に従わなければ、10万円以下の過料に処せられる可能性があります。
履行勧告に比べて制裁があるため、ある程度の効果が見込まれますが、制裁といっても10万円以下なので強い強制力があるわけではありません。
強制執行
当事者間の話し合いで取り決めて強制執行認諾文言付公正証書を作成した場合や、裁判所の手続で取り決めて調停調書、信販調書、和解調書、判決書などを保有している場合は、強制執行の手続が行えます。
強制執行とは、相手の給与や預貯金などの財産を裁判所を通して強制的に差し押さえる手続のことです。
裁判所に強制執行を申し立てることで、相手の財産から慰謝料の未払い分を回収できます。
ただし、相手の財産や住所などを把握しておく必要があります。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
DVを行う配偶者への慰謝料請求は弁護士への依頼がおすすめ
DVを原因とする慰謝料を請求する場合は、弁護士に依頼して進めることをお勧めします。 弁護士に依頼すれば、次のようなメリットがあると考えられます。
●代わりに交渉や裁判所の手続を任せられる
DVを受けている方は恐怖心から直接相手と話し合うのは困難なケースが多いです。
弁護士であれば、代わりに相手と話し合いますので、相手と直接やりとりせずに離婚問題を進められます。
また調停や裁判などの裁判所手続も一任できますので手間も軽減できます。
●より多くの慰謝料を獲得できる可能性が高まる
弁護士であれば、過去の裁判例や法律の専門的知識、今までの経験やノウハウを活かして、より多くの慰謝料を獲得できるように尽力してくれます。
●有効な証拠についてアドバイスがもらえる
DVを理由に慰謝料請求するには、DVを受けた事実を証明できる証拠が非常に重要です。
弁護士であれば、個別の事情に合わせてどのような証拠が必要なのかアドバイスしてくれます。
弁護士法人ALGの解決事例
【事案概要】
相手方が不貞行為(浮気・不倫)と依頼者へのDVを行っていた事案です。
【弁護士方針・弁護士対応】
交渉で受任し、相手方は不貞行為の事実を認めていたものの、①離婚自体を拒否している、②弁護士介入後も依頼者本人へ連絡を取ろうとしている、③慰謝料の減額を要求してくる、といった問題点がありました。
そこで、弁護士は、相手方が有責配偶者であること、復縁はあり得ないこと、慰謝料の支払いがなければ調停や裁判を行うほかないことを書面や電話で主張しました。
【結果】
粘り強く交渉した結果、離婚への合意と慰謝料150万円の一括払いを獲得しました。
裁判まで移行すれば、慰謝料の金額を増額できた可能性もありましたが、依頼者が離婚できない状態の長期化を嫌い、早期の解決を切望されたため150万円で合意しました。
DVの慰謝料に関するQ&A
一度の暴力でも慰謝料請求できますか?
一度の暴力でも不法行為になりますので、慰謝料請求は可能です。
ただし、一回だけ平手打ちされた、一回だけ頭を引っ張られたなどでは、多くの場合、DVの証拠が残りづらく、被った精神的苦痛も少ないと判断される可能性が高いため、慰謝料額が低額になる、もしくは慰謝料の支払いが認められないのが実情です。
そのため、一度のDVで慰謝料請求するには、証拠を確保して、どのような経緯でDVが行われ、一度のDVでどの程度の怪我を負って、どんなに精神的苦痛を受けたかなどを主張・立証する必要があります。
夫が物に当たることを理由に慰謝料を請求できますか?
直接的な暴力でなくても、物に当たる、暴言を吐くといった行為は精神的に虐待する言動として不法行為に当たるので、慰謝料請求は可能です。
ただし、慰謝料請求するには、これらの行為により精神的苦痛を受けたことを証明しなければなりません。
また、被害の程度によっては、慰謝料額が低額になる可能性がありますので、慰謝料請求できるかどうかを含めて法律の専門家である弁護士に相談して進めてみてはいかがでしょうか。
DVの慰謝料請求は弁護士にご相談下さい
DVによる慰謝料請求をお考えの方は、ぜひ弁護士にご相談ください。
ご自身でDV加害者に直接慰謝料請求をするのは、危害が及ぶ可能性があり、リスクが高いです。
弁護士であれば、証拠集めから別居のサポート、相手との交渉、裁判所の手続などその都度、適切な状況判断をしてトータルサポートいたします。
DVで悩んでいる方は、一人で全てを抱え込みがちになります。
一人で抱え込んでいる間にどんどん状況は悪化するおそれもありますし、証拠を確保しそびれる恐れもあります。
離婚問題やDV問題に精通したん弁護士に相談すれば、解決の糸口が早朝に見つかり、早期に新しい人生を踏み出せるでしょう。
一人で抱え込まずに、まずはお気軽に弁護士法人ALGにお問い合わせください。
ありもしないDVを主張されたとして、それが事実と認定されてしまう可能性は否定できません。
通り魔に襲われる可能性の絶対的な排除が困難なように、不法な行為に対する完璧な予防策をとるのは難しいと思いますが、万一そのような事態になったときの心構えだけでもお示し出来たらと思います。
DVをでっち上げられた場合でも離婚は成立してしまうのか?
配偶者に対する暴力・DVは、法定の離婚原因(※婚姻を継続しがたい重大な事由)の典型であり、不貞と同様、その事実が立証された場合には、一方的な離婚や慰謝料請求が認容される可能性が極めて高いものです。
神の視点で判断されるわけではありませんので、相手方の主張や提出した証拠の内容等によっては、事実としてはでっち上げだったとしても、不利な内容の判決等はありうるところです。
そのような可能性を減らすためには、日ごろ疑わしい行動は避ける、話し合いの際には自身でも録音等の記録を残す等の予防的な防衛策をとる他ありません。
また、実際に主張された場合には、怒りにまかせず、冷静かつ的確に反論することを心掛けなければなりません。
DVをでっち上げられたときの対処法
DVの主張がされる典型的な場面として、裁判所に保護命令の申立てがされた場合と、弁護士を通じた交渉や調停、訴訟等で主張される場合が想定されます。
後者も適宜反論等は必要ですが、前者のほうが速やかな対応を求められます。
保護命令の内容は、接近禁止や自宅から一定期間の退去を命じるというものですが、だからといって、これを放置してしまうと、ありもしないDVを前提とした決定が下されてしまいますし、その決定は、後の離婚訴訟等でも不利な判断につながりかねません。
審尋までに相手の主張や証拠を吟味し、矛盾点の指摘や反証の証拠の準備をした上で、同期日でも冷静に反駁する等の対応を必ず取りましょう。
なお、虚偽申告を行うような相手方の場合、離婚届を偽造する、勝手に提出するということも懸念されます。
相手が主張するDVが虚偽であるとの証明につながるものではありませんが、離婚そのものを勝手にされたくないと思うなら、事前に市役所等に対し、「離婚届不受理申出」の手続しておくべきでしょう。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
DVの冤罪は名誉毀損で訴えることができるのか?
名誉棄損に該当するためには、当該行為が「公然と」行われたことが必要です。
相手方から自分に対してDVを主張された場合や、相手方が代理人弁護士にその旨主張し、同弁護士からそのような連絡文が送付されてきたというだけでは、この要件を充足しません。
他方で、インターネットやSNS等で虚偽のDVを拡散されたという場合は該当する可能性があります。
DVをでっち上げられてお困りの場合は弁護士に相談してみましょう
虚偽のDVを主張された場合、冷静に対応することがとても大切です。冷静に対処しなかったことで、覆せたはずの事案がそうでなくなるということもありうるからです。とはいえ、嘘をつかれたことに怒りを覚えるのは自然なことですし、自分がその当事者と言う場合に冷静かつ的確な対応をし続けるというのは、難しいことだと思います。
弁護士に相談することは、相手方の提出した証拠の内容等も踏まえて、自身が置かれている状況を確認するためにも必要でしょうし、対応を依頼することが手助けになることも多いと思いますので、万一の際にはご検討下さい。
相続放棄をすると、遺産を相続することが出来なくなりますが、遺産に家が含まれている場合、その家はどうしたらよいでしょうか。
ここでは、遺産に家があるときに、相続放棄をした場合に着目して、ご説明をしようと思います。
相続放棄をしたら家はどうなる?
次の順位の相続人が相続する
相続放棄をすると、相続人としての地位を失うこととなります。
例えば、被相続人の相続人として、子が2人(A・Bとします。)だけだった場合を想定します。
この場合において、一人(A)が相続放棄をし、もう一人(B)が相続をしたとすると、Bが、単独で家を取得することになります。
では、この場合において、2人とも相続放棄をした場合にはどうなるでしょうか。この場合には次の順位の相続人が相続することになります。
子は第1順位になりますので、上記の例でいうと、第2順位の直系尊属(父母、祖父母)が家を相続することになります。
直系尊属が先に亡くなっている場合や相続放棄をした場合には、第3順位の兄弟姉妹が家を相続することになります。
全員が相続放棄した場合・相続人がいない場合は国のものになる
上記のとおり、次の順位の相続人がいる場合には、相続放棄によって、次の順位の相続人が遺産を相続することになります。
では、第3順位の相続人まで、全員が相続放棄をした場合は、どうなるでしょうか。
この場合、全ての相続人が相続放棄をしてしまっていますので、被相続人の遺産を引き継ぐ者がいません。
このようなときは、相続財産清算人の選任を求めることが出来ますので、最終的には、相続財産清算人によって、遺産を国庫に帰属させることになります。
空き家になる場合、相続財産清算人の選任が必要
多くの場合、被相続人が亡くなったことで、住んでいた家は空き家になるでしょう。
空き家を放置すると、朽ちて倒壊する可能性があるなど、いくつかの問題を生じさせます。
相続放棄をすると、家の解体も出来なくなりますので、この問題に対処することが出来ません。
そこで、空き家がある場合には、相続財産清算人の選任申立てをしておいた方がいいでしょう。
予納金の問題があるものの、相続財産清算人がいれば、必要に応じて、家の売却や解体などの対応をしてくれるためです。
空き家がある場合には、相続財産清算人の活用を考えた方が良いでしょう。
相続放棄をしても家に住みたい場合の対処法
被相続人にマイナスの遺産が多々あるため、相続放棄をしたいものの、被相続人の家には住みたいという場合もあるでしょう。
相続放棄をすると、家も含めて相続できなくなりますので、原則として、被相続人の家には住めません。
もっとも、以下のような方法が取れれば、家に住むことが出来る可能性があります。
相続放棄後に相続財産清算人から買い戻す
相続財産清算人は、基本的に、遺産を換価して国庫に帰属させることが必要となります。
相続放棄をすると、遺産を相続することは出来ませんので、相続という方法で遺産(家)を取得するということは出来ませんが、遺産を買い取ることは可能です。
そこで、家に住みたいという場合には、相続財産清算人と話をして、相当額で家を購入することで、家を取得できる可能性があります。
限定承認する
限定承認というのは、プラスの遺産の範囲でマイナスの遺産を負担するという相続の方法です。
例えば、プラスの財産が1000万円、マイナスの遺産が1500万円の場合、相続人が限定承認をすると、1000万円の範囲でマイナスの遺産を弁済すればよく、残リの500万円(=1500万円(マイナスの遺産)-1000万円(プラスの遺産))を返済する必要がなくなります。
遺産が現金・預貯金だけであればいいですが、不動産が含まれている場合、マイナスの遺産の返済に充てるために、不動産等を現金化する必要があります。
この場合は、原則として競売を行うこととされていますが、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従い弁済をすることで、その家を取得する事が出来ます。
空き家を相続放棄すべき理由
遺産を相続すると、被相続人の遺産を丸っと取得することになります(ただし、同順位の相続人が要る場合には、相続分に応じて取得します。)。
もし遺産の中に空き家があった場合、相続をすると、その空き家を管理しなければなりません。
しかし、例えば、遠方に空き家がある場合において、その空き家を管理することは困難でしょう。
近くにある場合でも、管理の手間は小さいものではなく、また、いずれは空き家を解体しなければなりません。
被相続人のプラスの遺産が、マイナスの遺産を上回っている場合には、空き家も含めて相続し、その空き家を売却したり、解体したりする方がよいと思われますが、プラスの遺産が少ない場合には、空き家の管理責任を負うだけになりかねませんので、相続放棄を検討すべきでしょう。
相続に強い弁護士があなたをフルサポートいたします
相続放棄する場合の注意点
家の片づけや遺品整理はNG
被相続人の遺産を処分してしまうと相続放棄をすることが出来なくなります。放置していると腐ってしまう食料品など、明らかな無価値物を処分することは問題ありませんが、財産的価値があるものを、売ったり、捨てたり、自分のものにしたりすると、相続放棄をすることが出来なくなります。
家の片付けや遺品整理をする場合には、十分に注意をする必要があります。
他の相続人に相続放棄することを連絡する
法律上の義務というわけではありませんが、相続放棄をしたか否かは、他の相続人に大きな影響を及ぼします。
他の相続人は、血縁者と考えられますが、親族関係を考えても、相続放棄をする場合には、他の相続人に連絡をしておいた方が良いでしょう。
家の相続放棄に関するQ&A
家だけ相続放棄できますか?
相続放棄をすると、初めから相続人とならなかったものとみなされます。
そのため、相続放棄をすると、被相続人の遺産全てを相続することが出来なくなります。
特定の遺産だけを相続放棄するということは出来ませんので、ご質問の家だけを相続放棄をするということは不可能です。
亡くなった父は賃貸に住んでいました。家の鍵を返すよう言われているのですが、返しても大丈夫でしょうか。それとも次順位の父の兄弟に渡すべきでしょうか。
次順位のお父様の兄弟に鍵を渡すべきでしょう。
同順位の相続人がいない場合、相続放棄をすると相続権は、次順位の相続人に移転します。
賃貸物件の賃借権も、被相続人の遺産の一つですので、相続放棄をした者が勝手に賃貸人に鍵を返すことは出来ません。
そのため、相続放棄をした場合には、賃貸物件の賃借権を相続するであろうお父様の兄弟に鍵を引き渡すべきでしょう。
相続放棄した家が倒壊したら誰の責任になりますか?
現行法上、相続放棄をした時点において、占有していた財産に関しては、相続人又は相続財産清算人に対して財産を引き渡すまでの間、自己の財産に対する注意義務と同一の注意義務を負うとされています。
そのため、仮に、相続放棄をしていたとしても、その時点で、家を管理していた場合には、家の倒壊に対して責任追及をされる可能性があります。
したがって、ご質問に関して、相続財産清算人、相続放棄をしていない相続人、相続放棄をしたが家の管理をしている者が責任を負うことになると考えられます。
相続放棄した家の解体費用は誰が払うべきですか?
相続人の全員が相続放棄をした場合、最終的に相続財産清算人が必要な対応を取ることになりますが、例えば、家が朽廃している場合には、家の解体が行われることもあります。
相続財産清算人は、遺産を基にして経費を支払いますが、相続人の全員が相続放棄をしている状況ですから、経費の支払いが見込めない場合も多々あります。
そのため、相続財産清算人の選任を申し立てる際には、予納金が必要となることが多々あります。
解体費用は、予納金から支払われることになると考えられますので、相続財産清算人の選任を申し立てた者の負担になるといえます。
家の相続放棄についてお困りなら、弁護士へご相談ください
ここでは、遺産に家が含まれる場合の相続放棄についてご説明をいたしました。
例えば、両親と同居していて、その両親が亡くなった場合には、相続放棄をしたとしても、放棄時に、家に住んで管理をしていた以上、管理責任が残ることとなります。
このような場合に、相続放棄をすべきか、相続放棄をした後にどうすべきか判断に迷うこともあるでしょう。
相続放棄に関して、お困りのことがありましたら、ぜひ弁護士法人ALG&Associatesにご相談ください。
妊娠して新たな命をお腹に宿すことにより、喜びを感じると同時に、身体的な変化もあることから、精神的に不安定になられる女性もいらっしゃるでしょう。そのようななか、離婚に至ってしまったら、妊娠中の女性にとって、相当な精神的負担となることが予想されます。
妊娠中に離婚することになった場合、果たして慰謝料を請求できるのでしょうか。また、慰謝料を請求するうえで注意すべき点はあるのでしょうか。本記事で詳しく解説していきます。
妊娠中の離婚で慰謝料を請求できるのか?
妊娠中の離婚でも、通常の離婚と同じく、相手に婚姻関係を破綻させた有責性がある場合には、強いられた精神的苦痛に対し、慰謝料を請求できます。この慰謝料は、離婚することによる精神的損害、または相手の有責行為による精神的損害への賠償金です。特に、妊娠中の離婚の場合、離婚後はシングルマザーとして子育てしていくこととなり、経済的に苦しくなるケースもあるため、慰謝料の請求は重要になります。
慰謝料請求が認められるケース
単に、妊娠中に離婚したというだけでは慰謝料は発生しません。慰謝料が発生するケースとして、不貞行為(浮気・不倫)やDV、モラハラなどが挙げられます。
このようなケースにおいて、相手方に慰謝料請求し、請求した金額に相手が応じればその金額をそのまま受け取れるでしょう。
しかし、慰謝料の金額で揉めてしまう場合は裁判所に判断してもらう事になります。どのくらいの慰謝料が認められるかは、個々の事情によります。
離婚の慰謝料については以下のリンクで詳しく解説しています。ご参考ください。
離婚慰謝料 | 請求できるケースや相場など妊娠中に離婚した場合の慰謝料相場はどれぐらい?
慰謝料を請求し、相手が応じるのであれば、請求した金額の慰謝料をもらえます。しかし、争いが生じ、裁判に発展した場合には、裁判所に請求を認めてもらえなければ、慰謝料をもらうことはできません。また、請求が認められたとして、どのくらいの金額の慰謝料が認められるかは、個別の事情により異なります。目安としては、一般的な慰謝料の相場が参考になるでしょう。
中絶に至った場合の慰謝料は?
様々な事情があり、離婚後に中絶に至ってしまったとしても、相手に有責性がある場合には慰謝料を請求できます。さらに、離婚時には妊娠していたことから、慰謝料は高額になる可能性があります。
なお、出産費用と同様、離婚後において、中絶するのにかかった費用を相手に請求することはできません。
妊娠中の離婚で慰謝料以外に請求できるもの
妊娠中に離婚する際、慰謝料以外にも、相手に請求できるお金はいくつかあります。
養育費
離婚後に出産した子供の親権者は、母親になります。なお、元夫が認知すれば請求することができます。
財産分与
妊娠中に離婚する際には、夫婦が婚姻中に協力して築いた財産を分け合う財産分与ができます。
財産分与については、下記で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
離婚時に行う財産分与とは慰謝料以外に出産費用も請求することはできるのか?
婚姻中、夫婦はお互いの収入等に応じて婚姻費用(夫婦と未成熟子が生活するために必要な費用)を分担する義務を負っています。そのため、婚姻中であれば、相手が負担すべき婚姻費用の一部として、出産費用を請求することができます。
しかし、離婚後は婚姻費用の分担義務を負わないため、相手が任意で支払ってくれるケースもありますが、法律上、離婚後に出産した際にかかった出産費用を請求することはできません。
詳しい説明はこちらのページをご覧ください。
婚姻費用とは | 内訳や養育費との違いなどあなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
妊娠中の離婚で子供の親権と戸籍はどうなる?
親権はどちらが持つ?
妊娠中に離婚した場合、原則として産まれてくる子供の親権は母親となります。ただし、離婚後300日以内に産まれた場合には、協議や調停で双方が合意すれば父親を親権者とすることも可能です。
しかし、子供の年齢が小さいうちは「母性優先の原則」によって、母親に親権が認められやすくなるでしょう。
離婚後の親権については以下のリンクでも詳しく解説しています。ご参考ください。
親権とは | 親権を決める流れと獲得のポイント子供の戸籍はどうなる?
妊娠中に離婚すると、子供が離婚してから300日以内に産まれたかどうかで対応が変わります。以下では離婚後300日以内に産まれた場合とそうでない場合に分けて解説していきます。
離婚後300日以内に出産した場合
この場合は、元夫の子供として推定されるとして(嫡出推定)結婚している夫婦同様に「嫡出子」として元夫の戸籍に記載されます。その後母親は、子供を自分の戸籍に移して母親の氏を名乗らせることができます。妊娠中の離婚では基本的にこのケースとなります。
離婚後300日経過後に出産した場合
離婚から300日を経過して産まれた子供は「非嫡出子」として母親の戸籍に入ります。「非嫡出子」とは婚姻関係のない男女の間に産まれた子供のことをいいます。
妊娠中の離婚でお困りなら弁護士に相談してみましょう
妊娠中の離婚でも、相手に有責性がある場合には、精神的苦痛を受けたことに対する賠償金として、慰謝料を請求することが可能です。しかし、慰謝料について裁判で争うことになった場合、裁判所に請求を認めてもらうには、婚姻関係を破綻させるに至った相手の有責行為を立証する必要があります。
妊娠中という身体的にも精神的にもご負担がかかっている状況で、離婚を進めていくこと、そして慰謝料の請求も行っていくことには、通常の離婚よりもさらに労力を要するでしょう。
妊娠中の離婚で慰謝料を請求したい方は、弁護士に依頼することをお勧めします。弁護士が、法律知識に基づき、ご依頼者様に代わって適切な主張・立証を行うことにより、裁判になったとしても、慰謝料を適正な金額で認めてもらえる可能性が高まります。また、必要な手続を弁護士に任せることができる他、ご依頼者様は基本的に裁判所に出廷しなくて済むため、身体的・精神的なご負担の軽減も図れます。
妊娠中であり、離婚後の経済的不安を抱えていらっしゃる方にとって、どのくらいの慰謝料を受け取れるかは、特に重要で気になることかと思います。妊娠中の離婚で慰謝料を請求したいものの、ご不明な点がある場合には、弁護士にお気軽にご相談ください。
亡くなった方が生前に所有していた不動産については、誰かが相続することとなります。その際、その不動産について、権利が移転したことを登記しなければならないとする相続登記の義務化制度が開始しました。
本稿では、同制度の概要や、相続登記を放置した場合のリスクについて、説明していきます。
相続登記の義務化が2024年4月1日から開始
相続登記の義務化が2024年4月1日から開始しました。
対象となるのは、相続された不動産を所有する方全員です。義務化が開始する前に相続していた不動産についても、義務化の対象となります。
義務化された理由
相続登記が義務化された理由としては、現在所有者が不明となった不動産に関する問題が多発していることが挙げられます。相続の際、被相続人の所有であることを認識していなかったこと、遺産分割協議が整わなかったこと、登記に関する時間的・金銭的な負担等を理由に相続登記が行われていないことなどにより「所有者不明不動産」が社会問題となっていますが、その問題を解決するために、相続登記の義務化制度が開始されることになりました。
登記の期限は3年
相続登記の義務化により、相続によって不動産を取得したことを知った日、すなわち、被相続人が死亡し、自身が不動産を相続し、所有者となったことを知った日から3年以内に、相続登記を行わなければなりません。
相続登記の義務化は過去の相続にも適用される
所有者不明土地の問題を解消することが目的である以上、相続登記の義務化は、過去の相続についても適用されます。
過去に相続した分はいつまでに登記手続きすればいいの?
義務化が開始する令和6年4月1日以前の不動産に関しては、義務化が開始した時点から3年後の令和9年3月31日までに相続登記をする必要があります。
権利者になっていることを知らなかったんだけど期限は伸びないの?
相続登記の期限は、相続によって不動産を取得したことを「知ったとき」から3年ですので、令和6年4月1日以前に相続により取得した不動産であっても、相続で取得したことを知った日から3年以内に、相続登記をすれば問題ありません。
相続登記をせず放置するとどうなる?
相続登記を行わずに放置すると、以下のようなトラブルになる可能性があります。
10万円以下の過料の対象になる
今回の義務化によって、正当な理由がないのに、期限内に相続登記を行わなかった人については、10万円以下の過料の対象となります。
過料の対象とならない「正当な理由」は、個別の事案によって判断されることとなりますが、以下のような事情が考えられます。
- 相続人が極めて多数で、戸籍関係書類等の収集や他の相続人の把握等に時間がかかる場合
- 遺言の効力や遺産の範囲について争いがあり、相続不動産の帰属先が不明な場合
- 相続登記義務の対象者が重病等の場合
- 相続登記義務の対象者が配偶者から暴力を受けている等で、避難を余儀なくされている場合
- 相続登記義務の対象者が、登記申請を行うための費用を負担する能力がない場合
権利関係が複雑になる
複数の相続人がいる場合、当該相続人間においては、遺産分割協議を行い、相続登記を行う必要があります。そして、遺産分割協議に際しては、相続人全員が参加し、合意する必要があります。
遺産分割協議が行われないままでいると、相続人である者のうち、誰かが死亡してしまえば、その者についての相続が開始されることとなります。そうすると、次の相続人も協議へ出席する必要があることとなり権利関係が複雑になってしまいます。
不動産を差し押さえられる可能性がある
借金の滞納等を理由に、相続の対象となっている不動産について、差し押さえがなされる可能性もあります。差し押さえがなされた場合、当該不動産には、差し押さえを受ける相続人の持ち分について、債権者による差押登記がなされます。債権者による登記が存在する間は、その後、不動産を単独所有することとなっても、債権者に対し所有権を主張することができません。
不動産の売却ができなくなる
不動産を売却する際には、その不動産の登記も購入者に対して移すこととなるのが一般的です。 登記は、登記名義人でなければ、移転することができないため、相続登記を行っていない場合には、売却に際しての移転登記手続を行うことができず、事実上、当該不動産の売却ができないこととなります。
したがって、まずは、相続登記を行い、自身を登記名義人とした上で、移転登記手続を行わなければなりません。
相続登記しないまま相続人が死亡してしまった場合はどうする?
被相続人名義の不動産について、相続登記をしないまま相続人が死亡してしまった場合、当該相続人の相続人が、対象の不動産を相続することとなります。この際には、被相続人から亡くなった相続人への相続(1次相続)と、亡くなった相続人から、その相続人への相続(2次相続)の2度の相続が発生しています。
そのため、相続登記においては、順番に1次相続の相続登記をしたうえで、2次相続の相続登記を行うのが原則の流れとなります。
もっとも、1次相続の相続人が一人である場合や、単独で相続することとなっていた場合には、被相続人から最終的な相続人への直接の移転登記(中間省略登記)が認められます。
相続に強い弁護士があなたをフルサポートいたします
すぐに登記ができない場合はどうしたら良い?
遺産分割協議が難航して、相続登記を3年以内に行うことができない場合には、以下の方法により過料に処せられるのを一時的に免れることができます。
法定相続分で相続登記を行う
相続分については、法律上の定めがあり、これを法定相続分と言います。相続人は遺産分割協議の前に、単独で、法定相続分に応じた登記を申請することができます。その後、遺産分割協議がまとまり、法定相続分と異なった相続分を相続することとなれば、その更正登記も単独で申請することが可能です。
もっとも、法定相続分を算定する際には、相続人がどれだけいるのかを把握する必要があるので、手続としては大変です。
改正法で新設された「相続人申告登記」を行う
相続人申告登記とは、相続人が単独で、自身が相続人であることを申告して行う登記です。これによって、登記簿上に申告をした者の氏名と住所が記載されます。 相続人はこの登記により登記義務を果たしていないものとは扱われないため、過料に処せられるおそれはなくなります。
手続きが大変そう…専門家に依頼するとどれくらいかかる?
相続登記手続については、弁護士や司法書士といった専門家に依頼することも可能です。その場合の依頼の費用としては、10万~15万円程度が一般的です。
相続登記手続に際しては、法定相続人を明らかにする必要があります。そして、法定相続人を明らかにするためには、被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本等様々な書類を集めていく必要があります。そのような手続きが大変ということであれば、専門家への依頼をご検討ください。
相続登記を放置してしまった場合は弁護士にご相談ください
相続登記の義務化によって、相続登記を放置していれば過料等による制裁が課されるなど、様々な不利益が生じることとなります。また、相続人を明らかにすることも、事案によってはとても大変で、手続自体も複雑になる可能性があります。
専門家である弁護士にご依頼いただければ、書類の収集等の大変な手続から相続人の方に代わって行います。また、相続全般のことから、相続登記に関することまでご不安な点があれば相談可能です。
相続登記を放置してしまった場合には、ぜひ一度、弁護士にご相談ください。
離婚することには争いがなくても、親権に争いがある場合、離婚は成立しません。離婚後の親権をどちらが取得するのか、話し合いで解決できない場合には、最終的には裁判所の判断を仰ぐ必要があります。その際に結論を左右する事情について、本稿で記載していきます。
離婚調停で親権者を判断するポイント
離婚調停は、裁判所を通じた当事者間の話し合いの場です。親権に争いがある場合、最終的には審判等で結論を下すことになりますが、調停の時点でも、調査官の調査が実施され、裁判所が結論を下す場合の見通しなどが示される場合は多いところです。
子供が幼い場合
子供がまだ幼い場合、従前の監護実績の監護状態の二つが極めて重要視される傾向にあります。これまで主に監護をしてきた側が、別居後も単独で監護をしているという事案において、他方の配偶者が親権を取得するのは現実的ではない、というのが現在の裁判実務の確たる傾向です。
その他、監護養育の環境や、監護補助者(祖父母等)の存在、経済状況等は、全く考慮されないわけではありませんが、共働きで監護実績も同程度、まだ同居中で単独監護状態にもない、というような事案なら格別、上記の二点で不利な側が、これを覆すような事情と評価される可能性は皆無に近いところです。
子供がある程度の年齢に達している場合
子供が自身の意見をはっきり言える年齢に達している場合、過去の監護実績等の事情よりも、子供自身の意向が重視される傾向が強まっていきます。中学生以上だとその傾向は顕著ですし、小学校高学年(概ね11~12歳前後)に達している場合も、かなり重視される傾向にあります。
親権者を決める際の離婚調停の流れ
親権争いの場面では、家庭裁判所の調査官による自宅訪問や関係各所への聞き取り、子供との面接等の調査が実施されます。その意見書の内容は、裁判官の判断の基礎となりうるものとして、とても重要な意味を持ちます。
多くの事案では、離婚調停の段階で調査が実施され、意見書が提出されたのち、これを前提とした裁判所の見通し等が示されます。それでも合意に至らない場合は最終的には裁判所に結論を下してもらうということになります。
離婚調停で親権を獲得するためのポイント
調停委員を味方につける
親権争いの場面では、過去の監護実績や現在の監護状況、子供自身の意向など、ある意味どうしようもない部分の比較が主となる事案が多いところです。それでも、調停は調停委員を通じて話し合いをする以上、敵に回すよりも、なるべくなら理解を得られるような行動を心掛けるほうが望ましいと思います。
自分が親権者として適していることを主張する
親権争いでは、適切に主張すべき点を尽くす必要があります。子供への愛情等を語るだけでは、前記の判断基準にはあまり効果的でない主張に終始することになりかねません。事案にもよりますが、例えば共働きの事案なら、自分も育児休業を取得していたことや、家事育児の負担に対する詳細等、従前の監護実績に関連するような主張のほうが的確な場合もあると思います。
調査官調査に協力する
調査官の調査結果は、親権争いにおいて、良くも悪くも極めて重要な意味を持っています。その調査に協力するというのは当然です。自宅訪問は日程調整の上で行われますが、清潔・良好な環境にあることが見て取れるよう、日々心掛けておくほうがあらぬ誤解を生まないと思います。
離婚調停で父親が親権を獲得した解決事例
子の年齢は小学校高学年と低学年、相手方兼業主婦、別居時に2名とも連れ去られていた事案で、初回の調査官調査ではこちらに不利な意見が出されたが、その後の話し合いの上で、調査のやり直しを求める等の活動をした結果、二名ともこちらが親権を獲得する形で解決した。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
親権と離婚調停に関するQ&A
共同親権が導入されたら調停無しで親権を獲得できますか?
現時点では改正法の詳細も不明ですが、あくまで共同親権も選択できる、という制度ですので、一方が共同親権を希望したとして、他方が単独親権を主張している状況で、何らの手続なく親権が獲得できるとは思えません。
離婚調停中に相手方が子供を連れ去った場合、親権への影響はありますか?
調停中の連れ去りに対しては、裁判所も厳しい評価をする傾向にありますので、親権にも影響する可能性があります。
離婚調停中に夫婦のどちらかが死亡してしまった場合、親権は自動的にもう一方が得ることになりますか?
離婚調停中でまだ離婚は成立していないのであれば、一方の配偶者が死亡すれば、他方の配偶者が唯一の親権者となります。離婚前は夫婦双方に親権が帰属していますので、自動的に得る、という表現は正しくありません。
離婚調停で決めた親権者を変更することはできますか?
親権者の変更についても、家庭裁判所の調停・審判の手続があります。そのハードルは低くありませんが、親権者が虐待をしていて児童相談所が一時保護をしている場合等、具体的な事情により認められる場合もあります。
妊娠中に離婚調停を行った場合の親権はどうなりますか?
妊娠中に離婚が成立した場合、親権は母親が原則取得します。離婚後300日以内に出生した子の場合、当事者双方が合意した場合に限り、父親を親権者とすることも可能です。
離婚調停中に出産した場合は、通常の事案と同じく共同親権に属した上で、父母のいずれかを親権者に指定するということになります。とはいえ、乳飲み子を母親から取り上げるという結論に至る可能性は極めて低いものですので、妊娠中の離婚調停では、親権は母親が取得することを前提とした話し合いが行われる可能性が極めて高いでしょう。
離婚調停で親権を獲得したい方は、弁護士に依頼してみませんか?
親権争いの事案は、通常の離婚よりも多くの労力や時間を要し、精神的な負担も大きくなる傾向の強いものです。子供の連れ去り事案では、家庭裁判所に対する各種申立ても迅速に行う必要があります。離婚はまだ検討中という人も含め、自身が置かれている状況を正確に把握しておくことは、今後の人生設計等にも大きく影響するはずです。そのためにも、弁護士への相談や依頼を検討されてみることをオススメ致します。
義務者から養育費の支払い額を請求された場合に、権利者が応じたくないと感じるでしょう。養育費の減額請求をされた場合に、実際に減額されないようにする方法はあるのでしょうか。
養育費の減額請求は拒否できる?
公正証書や調停で定まった養育費の金額は、父母の再協議や減額調停によって減額等の変更をすることができます。
例えば、母が父から養育費の減額を求められ、それに合意すれば減額することができます。
他方で、母は養育費の減額に応じないこともできます。ただ、協議による減額ができないとして、父から養育費の減額調停を申し立てられることが想定されます。この場合は裁判所の判断にゆだねることになります。
養育費の減額が認められる条件
そもそも養育費は、父母それぞれの収入、子供の年齢・人数を考慮して算定されます。そのため、これらの事情に変化が生じた場合、養育費の金額が変動します。例えば、養育費の減額は、以下のケースで考えられます。
- 養育費を払っている側の収入が減った
- 養育費をもらっている側の収入が増えた
- 養育費を払っている側が再婚し、扶養する子供が増えた
- 養育費をもらっている側が再婚し、再婚相手が子供と養子縁組した
養育費の減額請求を拒否したい場合の対処法
離婚時に定めた養育費を減額するよう求められた場合、まずは、相手方の主張が正当かどうか精査する必要があります。
相手方の主張に正当性がなければ、当然拒否していただいて問題ありません。
一方で、相手方の主張に正当性が認められる場合には、協議に応じる必要があります。
仮に協議に応じなかった場合、相手方は裁判所に調停を申し立てる可能性が高く、その手続の中で結局話し合いを行うことになります。
連絡を無視せず話し合う
一方的に養育費の減額を求められる側にとって、話し合いに応じるメリットはないように感じられるかもしれません。しかし、相手方からの連絡を無視し続けると、相手方は裁判所に調停を申し立てることが予想され、結局話し合いを余儀なくされます。また、事案によっては、当事者間で協議した場合よりも不利な判断が裁判所によって下されることもあります。
相手方から協議の申し入れがあった場合には、無視することなく話し合いましょう。
生活が苦しいことを証明する
あくまで話し合いは訴訟手続等とは異なり、必ずしも法的正当性のみが優先されるわけではありません。まずは、現状の生活状況、特に生活が苦しいことは相手に伝えなくてはいけません。
その際には、子供の成長に伴って学費が高くなったことや、当事者の収入の減少等、生活が苦しくなった理由も含めて説明することが肝要です。
調停で調停委員を味方につける
協議が調わず、養育費減額調停が申し立てられた場合、調停期日での言動は慎重であるべきです。調停は、裁判所という場で当事者が話し合う手続であるので、相手方を説得することは協議と同様に必要ですが、説得すべきは相手方だけではありません。
最終的に裁判官にこちらの主張(養育費の減額を認めないこと)の正当性を説得しなければならないので、まずは調停委員をこちらの味方につけることが重要です。
折り合いをつけ減額幅を減らすのも1つの手
養育費減額の主張に一定程度正当性が認められそうな場合には、裁判所の判断を想定して、一部減額を認めると譲歩して、協議又は調停を成立させることも選択肢として考えられます。
裁判所の判断よりも減額幅を減らすことで、経済的ダメージを減少させることは合理的な判断です。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
養育費の減額拒否に関するQ&A
養育費の減額請求を拒否したら、勝手に減額されました。残りを回収できますか?
一度定めた養育費は、当事者間の合意が、調停等の裁判所の判断によってのみ変更することができ、当事者の一方的な判断で減額することはできません。
したがって、勝手に減額された場合は、もともと公正証書や調停調書で定めた養育費と勝手に減額された養育費との差額を回収することができます。相手が任意で支払わない場合には、強制執行も可能です。
再婚を理由に養育費が減らされるのは納得できません。私はシングルで頑張っているのに…。減額拒否できますか?
相手方が再婚することで、扶養すべき者が増えたとなれば、養育費の減額に法的根拠があるといえます。例えば、再婚相手が専業主婦である場合や、再婚相手との間に子供ができた場合などです。
この場合は、減額を拒否しても、調停等で減額が認められる可能性が高いといえます。
再婚の予定があるので養育費を減らしたいといわれましたが相手が本当にいるのか疑問です。拒否できますか?
養育費の減額は、相手方が扶養すべき者が増えれば、その正当性が認められます。もっとも、再婚予定というだけでは、現に相手方が再婚するのかどうか、再婚相手の収入の多寡等は不明であるため、扶養すべき者が増えたかどうかを判断することができません。そのため、養育費減額に理由があるかどうかも不明となります。まずは相手方に事情を説明してもらい、それまで養育費減額を拒否するべき場面といえます。
算定表通りの金額なのに、支払いが苦しいから養育費を減らしたいといわれました。拒否できますか?
養育費の減額は、離婚時等の養育費を決めた時から事情が変わったことを要件とします。支払いが苦しい理由が、収入の減少や扶養家族の増加等であれば、養育費の減額が認められる可能性がありますが、一方で単に遊興費に費消して支払いが苦しいという場合には、養育費を減額すべき理由がありません。支払いが苦しくなったというだけでは、養育費の減額に応じる必要はないでしょう。
養育費の減額請求を拒否できるかは弁護士にご相談ください
養育費の減額が、法的に認められるかどうかによって、請求を受けた側の対応や方針は変えていく必要があります。
事実を法的に評価する必要があるので、養育費に関する専門知識が不可欠です。
相手方から養育費の減額請求を受けた場合は、まずは弁護士にご相談ください。
-
保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:47535)