- 依頼者の属性:
- 妻、40代、女性、5歳前後のお子さん1人
- 相手の属性:
- 夫、40代、男性
- 受任内容:
- 損害賠償請求(不貞を原因とする離婚慰謝料請求)
夫から強く親権を主張され、複数回の調停期日を経て、やっと妻を親権者と定めて離婚できたというのに、離婚後、夫から損害賠償請求訴訟を提起された方でした。
離婚調停の中で全て解決しておけば、後日、損害賠償請求を蒸し返されることはありませんが、早く解放されたい一心で、中途半端な解決をされてしまう方は少なくないでしょう。相手がモラハラ夫やDV夫の場合によくあります。本件も、そういった事案の一つでした。
弁護方針・弁護士対応
夫からの訴状を読んでみると、LINEのやり取りなどの証拠がそれなりに上手くまとめられており、放っておけば裁判所が不貞を認定する可能性があると感じる内容でした。相手の主張は事実無根だと仰る方も少なくないですが、勝つための十分な証拠が少ないという事案は多いものです。本件もそういった事案でした。だからといって諦めるわけにはいきません。事実でないならば、どこかに足跡があるはずです。そこで、王道ではありますが、方針を大きく二つに絞り、事実でなければ闘いましょうとご依頼を受けることとしました。方針の一つは、①不貞の事実自体を争うこと、もう一つは、②仮に不貞があったとしても、それが離婚の原因ではないと因果関係を争うというものでした。①に関し、LINE、メールなどのやり取りについて過去を振り返りつつ、相互に照らし合わせを行いました。すると、「???おかしいぞ」という部分に気づくことができました。②に関し、不貞を疑った際の夫の言動を詳細に時系列で検討すると、不貞について不満を持ったのではなく、不貞疑惑の以前から自分の思い通りにならない妻の態度に苛立ちを覚えており、不貞疑惑を理由にして妻に怒りをぶつけているだけだと思われました。 あとは、これをどう説得的に主張と書証でまとめるか、書証で足りない部分をどう尋問で埋めるかです。婚姻生活など、これまでの経緯を伺うと、尋問で感情的になる相手でもなさそうでしたので、相手を尋問で怒らせるなどして、うまくこちらに有利な話を引き出すことは難しそうでした。そこで、夫には色々と自分で話をさせた方がいいかなと思い、夫に語らせる戦略で尋問へ望みました。この戦略が上手くいったのかどうかは分かりませんが、「そこまで考えていたのであれば、どうしてその時に不貞疑惑について話がでてこなかったのですか?」などと一般人が不審に思う供述が幾つか出て、期日は終わりました。
福岡法律事務所・離婚案件担当弁護士の活動及び解決結果
「原告(夫)の請求を棄却する」。
正直、判決はどうなるかわからないと思っていましたが、無事に勝つことができました。理由は、原告は、不貞の事実を立証できていないし、仮に立証できていたとしても離婚の原因かどうか疑わしという内容でした。
本件は、浮気をしたと疑った配偶者から慰謝料を請求されたという、どこにでもある事案ですが、事案自体がシンプルなものであったとしても、裁判で事実を争うとなると、相当な手間がかかりますのでどうしても費用がかかってしまいます。本件のようにこちらに有利な客観的証拠が乏しい事案で、かつ、しっかりと争うとなれば、安い費用でお受けすることも難しいでしょう。紛争が大きくなる前にご相談いただければ費用も安く済んでいたのになぁと思った事案でした。