性格の不一致による離婚について

コラム

福岡法律事務所 所長 弁護士 今西 眞

監修弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 所長 弁護士

離婚を行いたい動機として、性格の不一致は代表的なものです。性格の不一致を理由に離婚を行いたい場合、どのような方法で離婚を行うことが考えられるのか等、以下詳細に説明していきます。

性格の不一致で離婚することはできるのか

離婚は、夫婦で話合い、離婚届を提出することで成立します。その場合に、離婚の原因は関係ありません。性格の不一致が原因で離婚することも可能です。詳しくは、次の項目で説明します。

性格の不一致とは

性格の不一致があること(性格が合わないこと)は、裁判所へ離婚調停等を申立てる動機の中で、一番多いものです(司法統計 家事 平成30年度 「32  婚姻関係事件数《渉外》  申立ての動機別申立人別  全家庭裁判所」参照)。 バスタオルを何日ごとに洗うかといった生活面の考え方の不一致から、子どもを私立に通わせるかといった子育て方針の不一致まで、様々なものが含まれます。

法律が定める離婚原因とは?

民法770条1項に、以下のような離婚事由が定められています。

①配偶者に不貞な行為があったとき。
②配偶者から悪意で遺棄されたとき。
③配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
④配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

性格の不一致を原因として、婚姻関係が回復不能なまでに破綻している場合には、「⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当する可能性があります。

性格の不一致で離婚する場合に必要な要素

夫婦の性格が対照的であっても、双方の努力で円満な夫婦関係の修復ができるのであれば、性格の不一致があったとしても、「婚姻を継続し難い重大な事由がある」とまではいえません。「⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当することを示すには、性格の不一致を原因として、婚姻関係が回復不能なまでに破綻していることを示す必要があります。

夫婦関係が破綻した証拠を集める

婚姻関係が回復不能なまでに破綻していることを示すには、性格の不一致を原因として、別居や喧嘩、無視等の具体的にあった事実を集めることが必要です。
例えば、配偶者から送られてきたLINEやメールを保存しておくことが考えられます。また、毎日かかさずつけている日記なども、証拠の一つになり得ます。

長期間の別居

法律上、●年の別居があれば、婚姻関係が回復不能なまでに破綻していることを認定するといった、具体的な年数が定められているわけではありません。
また、婚姻関係が回復不能なまでに破綻していると推定される別居期間は、婚姻期間や、子の有無等によっても異なりますので、一概に●年と示すことは難しいものです。
ただ、一般的には、少なくとも3年~5年程度の別居期間がある場合には、婚姻関係が回復不能なまでに破綻していると認定される傾向にあります。

性格の不一致での離婚の進め方

話し合いによって離婚を行うことができない場合には、離婚調停を行うこととなります。
離婚調停は、家庭裁判所にて、調停委員会が調整を行いつつ、話合いを行うものです。
調停で、離婚を行うことに合意できない場合には、離婚調停が不成立となります。引き続き、離婚を求める場合には、離婚訴訟を提起することになります。離婚訴訟の場合、法定の離婚原因(民法770条1項)の有無によって、離婚が認められるかどうかの判断が変わります。
性格の不一致のみが原因である場合、性格の不一致によって、婚姻関係が回復不能なまでに破綻していることを示すことができなければ、離婚原因に該当しないと判断される可能性が高く、離婚が認められるハードルは高くなります。

離婚の切り出し方やタイミング

性格の不一致を理由に、離婚したいことを相手に話す場合、どのタイミングで切り出せば、相手が話合いに応じる可能性があるのかは、相手の性格や時期等にも依るところです。
例えば、子どもが独り立ちしたときや、定年退職をしたとき等、人生の節目をタイミングとして話してみるのはいかがでしょうか。

性格の不一致と離婚後の子供の親権について

離婚原因ごとによって、親権者をどちらとすべきといった明確な基準があるわけではありません。
子どもの親権について、夫婦間で、離婚後にどちらが親権者となるのかの話合いがつかない場合には、「監護者としてどちらとすべきなのか」を裁判所に判断してもらうこととなります。
裁判所は、今までの養育状況や家庭環境、子どもの意向等、子どもの利益と子どもの福祉に適うかどうかといった基準で判断を行います。現在の監護状況も重視されますので、別居後に子どもがどちらの親権者と、どのような生活を送っているのかも重要な要素となります。

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性格の不一致での慰謝料請求について

性格の不一致を理由に、慰謝料を請求するハードルは高いです。
慰謝料は、「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者」に対して、責任を追及するものです(民法709条)。
性格の不一致の場合、他人が一緒に生活する以上、常識や習慣、こだわりの違いなど、互いに我慢・譲歩・理解して生活すべき場合であることも少なくないでしょう。損害賠償請求が認められるには「違法に」「他人の権利又は法律上保護される利益」を侵害したといえなければならず、多くの事案で損害賠償請求は否定されてしまいます。

もっとも、性格の不一致があったとしても、互いに話し合うなど関係修復に向けて努力することを怠ることは許されませんので、何ら努力もせずに離婚に固執するなどした場合には慰謝料が認められることもあります。また、性格の不一致で喧嘩が絶えなかったような場合に、気持ちとして相手方が解決金といった名目で金銭を支払うことに合意する可能性がありますので、諦めずに、相手方に気持ちを伝えてみてはいかがでしょうか。

よくある質問

性格の不一致で離婚しても財産分与を受け取ることは可能ですか?

財産分与は、夫婦が婚姻中に協力して取得した財産を、離婚する際に又は離婚後に分けることをいいます。離婚の原因は関係ありませんので、性格の不一致で離婚を行う場合でも、財産分与を求めることができます。

離婚裁判で相手が離婚を拒否し続けた場合、離婚は認められないのでしょうか。

離婚訴訟を行った場合には、最終的に、裁判所が離婚を認めるか認めないかの判断を示します。相手が拒否したとしても、離婚を認める旨の判断が出された場合には、離婚が認められます。
離婚が認められるかどうかは、法定の離婚原因(民法770条1項)があるかどうかで異なります。性格の不一致によって、婚姻関係が回復不能なまでに破綻していることを示すことができなければ、離婚原因に該当しないと判断される可能性が高く、離婚が認められるハードルは高くなります。
ただ、示すことができない場合でも、他に不貞等、法定の離婚原因(民法770条1項)にあたる事由がある場合には、離婚が認められる可能性があります。

性格の不一致で離婚した場合のデメリットはありますか?

性格の不一致のみが離婚を行いたい理由で、かつ、性格の不一致によって、婚姻関係が回復不能なまでに破綻していることが示せないような場合には、話合いで離婚を行えるようにする必要があります。
相手が離婚したくない場合には、話合いが長引く可能性があります。

性格の不一致で離婚したい場合は弁護士にご相談ください

性格の不一致を理由に離婚されたい場合に、具体的に夫婦間でどのような事情があるのか、婚姻関係が回復不能なまでに破綻しているといえそうな状況なのか、他に原因となる理由があるのか等により、どのような手続きで話合いを進めていくのか(調停をすぐに申立てるか等)考える必要があります。
性格の不一致で離婚を考えているものの、どのように進めていけば良いか悩まれている方は、一度、離婚に詳しい弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

あなたが配偶者と別居している場合、あなた自身の収入が低ければ、生活費に困るかもしれません。さらに、あなたが未成熟子を扶養している場合、あなた自身の出費が増えるので、更に困るかもしれません。
このような場合、より収入が多い配偶者に対して、あなた自身と未成熟子の生活のために必要な費用を請求することができます。これを、婚姻費用分担請求といいます。
以下の記事では、別居中の生活費について婚姻費用分担請求を行う方法について、詳しく解説します。

婚姻費用分担請求とは?

婚姻費用分担請求とは、夫婦及び未成熟子が共同生活を営む上で必要な一切の費用(婚姻費用)について、配偶者に対して負担を求めることをいいます。
夫婦間の合意により定めるのが原則ですが、配偶者に分担を求める具体的な金額や、請求方法については、注意すべき点がありますので、以下の記事で詳しく解説します。

働いていても婚姻費用分担請求できる?

民法760条によると、夫婦は、「その資産、収入その他一切の事情を考慮して」婚姻費用を分担することとされます。
ですから、あなたが働いている場合であっても、収入が配偶者より少ないときには、配偶者に対して婚姻費用分担請求を行うことができる可能性が高いです。
ただし、そもそも配偶者の収入自体が非常に少ない場合は例外に当たります。

婚姻費用分担請求を行うメリット

実際上、夫婦関係が円満である間は、婚姻費用分担請求を行うことは考え難いところです。
婚姻費用分担請求が現実味を帯びてくるのは、夫婦が別居し、又は別居しようとするときです。例えば、あなたが配偶者との別居を検討しているけれども、収入が少ないので生活に不安があるという場合に、配偶者に対する婚姻費用分担請求を真剣に検討した方がよいでしょう。

離婚が成立するまでの間は、より収入が多い配偶者に対して婚姻費用分担請求を行うことができますので、別居中の生活費を確保することができます。もし、あなたが未成熟子と同居する場合には、生活費が多くなったり、学費や保険料などの負担が生じたりしますので、婚姻費用分担請求を行う必要性が更に高くなります。

離婚調停と同時に申し立てる場合のメリットは?

もし、あなたと配偶者の間で協議離婚が成立せず、家庭裁判所に離婚調停を申し立てるに至った場合、離婚成立までの生活費をどのように確保するのでしょうか?
離婚調停の成立までには、半年程度の期間を要することは珍しくありませんし、1年以上を要する場合もあります。
このような場合、離婚調停の申立てと同時に、婚姻費用分担請求調停を申し立てるという方法があります。
これによって、より収入が多い配偶者に婚姻費用を分担してもらい、あなた(及び未成熟子)の当面の生活費を確保することができる可能性があります。

こんな場合は婚姻費用分担請求が認められないことも……

もし、あなたが婚姻関係の破綻や別居について、専ら又は主として責任があるという有責配偶者である場合には、配偶者に婚姻費用分担請求を行っても、減額されたり、全く認められなかったりする可能性があります。その理由は、夫婦の扶助義務に違反した有責配偶者が婚姻費用分担請求を行うことは、信義則に反するからです。
ただし、有責配偶者に当たるか否かは、慎重な検討が必要です。

婚姻費用分担請求の方法

あなたが、婚姻費用分担請求を行う場合、まずは配偶者と話し合うことが望ましいでしょう。
お互いの収入状況、資産と負債の内容、生活費の支出状況、今後の未成熟子の教育計画などに基づいて、婚姻費用の具体的な金額を協議すべきです。また、婚姻費用について合意が成立した場合、その合意内容を書面に残しておく方がよいでしょう。 しかし、配偶者との協議が成立しない場合や、そもそも配偶者と話し合うこと自体が難しい場合、家庭裁判所に婚姻費用分担請求調停を申し立てることができます。
もっとも、家庭裁判所への申立てを行う前に、配偶者に対する最後の働きかけとして、話合いに応じてくれなければ婚姻費用分担請求調停を申し立てる旨を伝える、という方法もあります。この場合、例えば内容証明郵便で伝えるという方法もあります。

婚姻費用分担請求調停の流れ

あなたと配偶者との間で合意が成立しなかった場合、あなた自身が、家庭裁判所に婚姻費用分担請求調停を申し立てることができます。
その申立てに必要な書類の準備や、調停手続の進行方法などについては、注意すべき点があります。
以下の記事では、婚姻費用分担請求調停について、順を追って詳しく解説します。

必要書類

まず、申立時には、家庭裁判所に申立書を提出しなければなりません。書式、印紙代、連絡用の郵便切手の額については、裁判所のウェブサイトに掲載されていますし、家庭裁判所に直接問い合わせるのもよいでしょう。
さらに、申立書の添付書類として、夫婦の戸籍謄本(全部事項証明書)、あなた自身の収入関係の資料(例えば、源泉徴収票、給与明細、確定申告書等の写し等)が必要です。
そのほかの資料は、調停手続の過程で、裁判所から指定されたものを提出すればよいでしょう。

申し立て~調停完了までの流れ

①まず、家庭裁判所の窓口で申立書を提出します。
②第1回期日が指定されます。
③第1回期日では、まず、男女2名の調停委員から質問されます。
④一般的には、第1回期日で直ちに調停が成立又は不成立となる場合よりも、第2回期日が指定される場合の方が多いです。
⑤最終的には、あなたと配偶者の間で合意が成立するか否かによって、調停成立又は不成立となります。

調停成立の場合

調停において当事者間に合意が成立し、これを調書に記載したときは、調停が成立したものとされます(家事事件手続法268条1項)。
そして、調停調書は確定判決と同一の効力を有するため、配偶者から調停調書どおりの婚姻費用が支払われない場合には、調停調書に基づいて強制執行を申し立てることができます。
ですから、調停が成立した後、調停調書の記載内容に間違いがないかという点を、必ず確認してください。

調停不成立の場合

あなたと配偶者の間で、婚姻費用について合意が成立しなかった場合、調停は不成立として終了します。
しかし、引き続き審判手続で必要な審理が行われた上、最終的には、裁判所の審判によって結論が示されます。
ですから、裁判所に適正な結論を出してもらうため、あなたと配偶者の資産、収入状況を明らかにすることが望ましいですし、特にあなた自身と未成熟子の生活状況に関する資料は、きちんと裁判所に提出しましょう。

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婚姻費用の調停で質問される内容

調停期日では、男女2名の調停委員から質問を受け、事情を説明することとなります。
最初は、申立書の記載内容について確認されたり、夫婦と未成熟子の生活実態やあなた自身の希望などを聞かれたりします。その後は、配偶者の意向や疑問を踏まえて、資産や収入状況について質問されたり、婚姻費用の額について譲歩できないかと尋ねられたりする場合があります。
事前にメモを用意しておいた方が説明しやすいかもしれませんし、調停期日で言い足りなかったことや修正したいことがある場合には、後で裁判所に書面を提出することもできます。
調停手続は非公開であり、プライバシーが確保されますので、調停委員に対しては、あなた自身の考えを率直に述べることがよいでしょう。

婚姻費用分担請求調停に欠席するとどうなる?

調停は話合いの場であり、裁判所が一方的に結論を出すわけではありませんので、当事者の一方が欠席した場合には、そもそも調停手続が進行しません。
このような場合、裁判所は、直ちに調停不成立と判断するのではなく、まず期日を延期することが通常です。また、一方の当事者だけが裁判所に来ており、他方の当事者が来ていなかった場合には、裁判所は前者から話を聞いた上で、次の期日を設定することが多いです。
そして、あなたが申立人で、相手方である配偶者が欠席を続けた場合には、調停は不成立として終了するものの、引き続き裁判所の審判によって結論を示してもらうことが可能です。この場合には、裁判所に適正な結論を出してもらうため、夫婦の資産・収入状況、あなた自身と未成熟子の生活状況に関する資料を提出しておくことが望ましいでしょう。

今すぐにでも婚姻費用を支払ってほしいときは?

婚姻費用について、配偶者との協議が成立しない場合、家庭裁判所に婚姻費用分担請求調停を申し立てることとなりますが、配偶者と意見が対立してしまい、調停手続に期間を要することは珍しくありません。
しかし、あなた自身に収入がなかったり、収入が非常に低かったりする場合は、本当に生活に困るかもしれません。
このような場合、調停前の仮処分(家事事件手続法266条)という手続と、審判前の保全処分(同法105条)という手続があります。
ただし、生活の困窮の度合いが高く、金銭の支払を受ける必要性が切迫しているなどの場合でなければ、これらの手続を利用することは困難です。
さらに、相手方から任意に支払ってもらえるか、又は相手方の預貯金や勤務先が分かっているなどの事情がなければ、実際に支払を受けることは難しいでしょう。
ですから、今すぐにでも婚姻費用を支払ってほしいときには、これらの手続を利用するよりも、配偶者との交渉を行うことの方が現実的です。

婚姻費用分担請求で弁護士にできること

弁護士は、あなたの代理人として、配偶者と交渉することができます。具体的には、書面を送ったり、電話をかけたり、面会したり、合意書を作成したりすることによって、相手方と交渉します。
また、弁護士は、あなたの手続代理人として、婚姻費用分担請求調停を申し立てたり、調停期日に出席して調停委員からの質問に答えたり、事情を説明したり、資料を提出したりすることができます。
弁護士は、このような方法で、あなたの婚姻費用分担請求をサポートします。

婚姻費用分担請求でお困りなら弁護士にご相談ください

婚姻費用分担請求を行う必要が生じるのは、夫婦関係が破綻し、別居している状況下であることがほとんどです。このような状況下では、配偶者と話し合うことは時間的・精神的な負担が大きいですし、配偶者から話合い自体を拒まれる場合すら珍しくありません。
さらに、家庭裁判所に婚姻費用分担請求調停を申し立てる場合、法的知識が乏しいために、申立て自体に躊躇したり、調停手続の進行に不安を感じたりすることは多いでしょう。
弁護士は、配偶者との交渉から調停期日に至るまで、あなたの婚姻費用分担請求をサポートすることができます。
婚姻費用分担請求についてお困りなら、弁護士にご相談ください。

相続順位とは

相続人には第3順位までの順位があります。先順位の相続人が存在しないときに、はじめて後順位の相続人が相続人となります。

配偶者は原則的に法定相続人(順位無し)

配偶者相続人は、常に相続人となります(民法890条)。配偶者は法律上の配偶者でなければならず、内縁や事実婚は含まれません。ただし、内縁や事実上の配偶者であっても、特別縁故者として相続財産の全部または一部を得られることがあります(民法958条の3)。

第1順位は子供

第一順位の相続人は、被相続人の子若しくは、その代襲相続人である直系卑属です(民法887条1項・2項)実子・養子・嫡出子・非嫡出子であるかは問わず、複数の子がいる場合は同順位となります。

胎児も相続人として認められる

「胎児は権利の主体とならない」という原則の例外の一つが相続の場面です。相続の場合には、胎児を特別に「生まれたものとみなし」て相続権を保障しています(民法886条1項)。ただし、胎児が死体で生まれたとき(死産)にはこの例外は適用されません(同2項)。

養子の相続順位

養子は、縁組の日から、養親の嫡出子の身分を取得します(民法809条。したがって、実子と同様の相続権が生じます。

隠し子や未婚の子がいた場合

非嫡出子(法律上の婚姻関係にない父母の間に生まれた子)であっても、認知されていれば第1順位の法定相続人として、嫡出子と同じ扱いを受けられます。

第2順位は親

第2順位の相続人は被相続人の直系尊属です(民法889条1項1号)。子及び直系卑属がないときにはじめて相続資格を得ます。なお、よくある勘違いですが、第2順位は「親」ではなく「直系尊属」です。親が亡くなっていたとすれば、祖父母が第2順位の相続人となります。

第3順位は兄弟姉妹

第3順位の相続人は、被相続人の兄弟姉妹です(民法889条1項2号)。父母双方を同じくする兄弟姉妹(全血)か、一方しか同じくしない兄弟姉妹(半血)かは問われません。

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相続順位の特殊例 代襲相続とは

相続人となるものが相続開始以前に死亡していたり、一定の事由によって相続権を失った場合、その相続人の直系卑属が、その相続人に代わって、相続分を相続すること(民法887条2項、889条2項)をいいます。

代襲相続が起きるケース

相続開始前の相続人の死亡、相続欠格、相続廃除があると代襲相続が起きることになります(民法887条2項)。相続放棄は含まれません。

代襲相続ができるのは誰か

代襲相続人となるのは、被代襲者の直系卑属です。具体的には被相続人の孫又は、兄弟姉妹の子です。ただし、被相続人の孫が代襲相続人となるにはその孫が被相続人の直系卑属でなければなりませんので、被相続人の子の養子は代襲相続人とはなりません。

再代襲相続は第1順位のみ

被相続人の子に代襲原因が発生すると、被相続人の孫が代襲相続人となります。その孫にも代襲原因が発生すると、被相続人のひ孫(孫の子)が代襲相続人になります。これを「再代襲」と言います。

相続順位が繰り上がるケース

相続人が相続の効果を全面的に拒否する意思表示のことを相続放棄と言います。相続放棄をした相続人はその相続に関しては最初から相続人にならなかってものと扱われます(民法939条)。したがって、先順位の相続人が相続放棄をすれば後順位の相続人が相続をすることになります。

相続順位はトラブルも多いので弁護士にご相談ください

相続の順位は法律で定められておりますので、正しく理解していればトラブルは生じにくいはずです。しかし、そもそも法律が複雑に作られているということもあり、正しく理解している方は極めて少数だと思います。第2順位は「親」と誤った理解をしている実務家も珍しくありません。
相続のトラブルを防ぐためには、相続問題を多く扱い、経験の豊富で正しい知識を持っている弁護士に相談してください。

相続の手続は、被相続人から承継した財産を分ける手続といえます。「どのような財産があり、いくらぐらいの評価なのか」が分からなければ、相続人間でどのように分けたらいいのかわかりません。」また、そもそも相続してよいのか(相続放棄をするべきなのか)の判断も、「どのような財産があり、いくらぐらいの評価なのか」が分からなければ、正確にできません。
このように、相続の際に必須になるのが、「財産目録」です。

財産目録とは

「財産目録」とは、被相続人の遺産を一覧にしたものです。民法上は、『相続財産の目録』と表現されています(民法1011条他)。

財産目録を作成できるのは誰?

遺言執行者は、財産目録(『相続財産の目録』)を作成し、相続人に交付しなければならない義務があります(民法1011条1項)。また、相続人は、限定承認をする場合、財産目録(『相続財産の目録』)を作成し、家庭裁判所に提出しなければなりません(民法924条)。
また、相続人は、遺産分割の際に、財産目録を作成することができます。遺産分割調停を申し立てる際には、遺産目録の添付が必須となっています。
この他、被相続人も、遺言書を作成する際に、財産目録を作成することができます(民法968条2項)。

財産目録を作成するメリット

財産の評価を記載した財産目録は、被相続人となる者の相続対策に有益です。また、当然のことながら、遺産分割手続や、相続税の申告の際にも必要不可欠です。

生前贈与等の相続税対策ができる

生前に、自分の財産目録を作成すると、自分の相続の際、法定相続分では、どの程度の相続税がかかるか、試算できます。また、推定相続人にとって納得がいく公平な遺言を作成するにあたり、財産目録を参考にしながら、推定相続人に対して遺す財産を検討することもできます。

相続税申告の際に便利

財産目録を生前から作成しておくと、相続税の申告書を作成する際にも役立ちます。相続税の申告をするときに、「どんな財産があるかわからない!」というところからスタートすると、相続財産調査から行わなければならず、大変です。生前から財産目録を作成し、こまめにアップデートしておくと、推定相続人が助かります。

遺産分割協議がスムーズになる

財産目録があり、遺産の評価が適切だと、遺産分割協議がスムーズに進みやすくなります。
どの財産を誰が引き継ぐのか、金銭的評価として公平な分配になるかといった、遺産分割に不可欠な事項は、財産目録をベースに進めていくことになります。
逆に、財産目録に重要な財産が抜けていたり、評価が誤っていたりすると、相手方の不信感を招きかねません。財産目録が暫定的なものかそうでないのか、相続人間で認識を共有しておくことが大事です。

相続トラブルが起きるリスクを減らせる

被相続人の立場から見ると、生前から、財産(遺産)を正確に反映した目録を作成しておくと、自分の死後、相続人の手間が省かれます。また、遺産分割の後、知らない財産が出てくるようなリスクを減らせます。
一方、相続人の立場からすると、財産目録は、遺産を確定させる重要な手がかりになりますが、財産目録の内容だけを軽信するのは危険です。財産目録に記載されている預貯金等の取引履歴などを手掛かりに、相続財産調査をきちんとすることが安全です。

相続放棄の検討材料にもなる

遺産の評価つきの財産目録を作成すると、遺産が債務超過かどうか、どの程度債務超過なのかが分かり、相続放棄をすべきかどうかの判断材料となります。

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財産目録の作成方法

財産目録の書き方

財産目録には、決まった書式はありません。もっとも、裁判所で、遺産分割調停用の書式が公開されています。後々、遺産分割調停が見込まれるような場合には、二度手間を避けるため、遺産分割調停用の書式によることが望ましいです。また、相続税の申告・納税が必要となる場合には、相続税の申告書の書式により作成するという方法もあります。

記載する内容

「その記載で財産を特定できるのか」という視点が重要です。裁判所の書式は、財産の特定のために必要最小限の情報を網羅していますので、裁判所の書式を参考にしましょう。

預貯金

裁判所の書式では、金融機関名、支店名、口座の種別、相続開始時の残高、現在残高が記載事項となっています。最低限、この情報を記載しましょう。

不動産

裁判所の書式では、①土地の場合、所在、地番、地目、地積、②建物の場合、所在、家屋番号、種類、構造、床面積が記載事項となっています。最低限、この情報を記載しましょう。

有価証券

裁判所の書式では、株式の場合、銘柄、株数、証券会社・口座番号、単価、評価額(数量×単価)等が記載事項となっています。最低限、この情報を記載しましょう。

自動車等の動産

遺産となる動産の代表例は、自動車です。自動車の場合、登録番号、種別、用途、自家用・事業用の別、車名、型式、車台番号、原動機の形式、使用の本拠の位置、所有者の氏名で特定します。自動車以外の動産(宝石、絵画、家具、家電、楽器等)は、特定のための情報が種類により異なります。写真等で特定することもあります。「その記載で財産を特定できるのか」という視点から、何を記載すればよいか、個別に検討しましょう。

借金やローン等の負債

負債の場合、種別(住宅ローン、保証債務等)、債権者の氏名又は名称、借入日、残高、契約番号等を記載することが一般です。なお、負債は、遺産分割の対象となりません。負債の目録は、相続放棄するかどうかの判断や、各相続人が負担する負債を踏まえての遺産分割の内容の判断等に用います。

財産目録はいつまでに作成すればいい?

財産目録の作成が法律上義務付けられている場合(民法1011条1項、民法924条)以外、財産目録の作成そのものに期限はありません。もっとも、相続税の申告期限があることや、少なくとも遺産分割の前に遺産を確定させることが不可欠であることから、財産目録は、可能な限り早く作成しましょう。

財産目録が信用できない・不安がある場合

財産目録の不備として、①財産目録に記載された財産そのものに関する不備(遺産となるべきものが記載されていない、又は、遺産でないものが記載されている)、②財産の評価に関する不備(財産の評価が正確ではない)というものがあげられます。
①については、被相続人が、対象財産を取得したといえるかどうか、正確に調査をすることが望ましいです。対象財産が、遺産に属するかどうか争いがある場合には、遺産確認の訴えで決着をつけることになります。
②については、不動産等の評価額に争いがある場合、最終的には、遺産分割審判等で、鑑定等により評価することになります。

円滑な相続は財産目録の作成が大切です。弁護士へご相談ください

財産目録の作成一つとっても、考慮しなければならない点が多数あります。財産を遺す側・受け取る側の双方で、弁護士に相談されることをお勧めします。

遺言書は、自分が死亡した後の財産(遺産)の行方について、生前に予めその意思を表示するものです。作成の方式等には法律上の要件もありますが、これを充たす場合、原則としてその意思が優先されることになります。本来ならば相続権のない者に対しても、遺贈によって財産を引き継がせることも可能ですし、予め遺産の分配方法等を細かく定めておくことで、遺産分割を巡る親族間の紛争の未然防止も期待されます。
遺言書は定め方によって、様々な用途や効果が期待されるものですので、正しく用いていただくためにも、本記事を参考にしていただければ幸いです。

遺言書の効力で指定できること

遺言書は、どの遺産を、誰に、どれだけ引き継がせるのか、というように自身が亡くなった後の財産の行方を指定するというのが主な使い方ですが、その他にも、一定期間遺産分割を禁止する旨の定めや、子の認知、未成年後見人の指定、生命保険の受取人の変更、推定相続人の廃除等、様々な意思表示をすることができます。

遺言執行者の指定

遺言執行者とは、遺言内容を実現するための具体的な手続を行う者です。例えば、遺言に基づいて故人の預金を引き出す場合であっても、金融機関は相続人全員の印鑑を求めてくるのが通常ですが、遺言執行者は法律上の義務と権限を与えられていますので、手続をスムーズに進めることができます。遺言書には、予め遺言執行者となるものを指定しておくことができますので、遺言書を作成する場合、その指定の要否についても一考されることをお勧めします。

誰にいくら相続させるか

民法には、相続人の範囲や順序、割合等が規定されていますが(いわゆる法定相続分の規定等)、法定相続分は絶対のものではありません。遺留分として保護される範囲には配慮が必要ですが、遺言で法定相続分とは異なる割合を指定することも可能ですし、遺贈により、法定相続人とは異なる者に遺産を渡すこともできます。

誰に何を相続させるか

遺言書では、各自が相続する内容について、妻は1/2、長男は1/4・・・等と割合的に指定する方法以外にも、A銀行の預金は全て妻に、B不動産は長男に・・・と各遺産について細かく分配方法を指定することも可能です。

前者の割合的な指定の場合、具体的にどの遺産を誰が取得するかについて、遺産分割協議を行う必要がありますが、後者の場合、全ての遺産について取りこぼしなく具体的に指定しておけば、遺産分割の問題は生じません(遺留分を侵害する場合、遺留分侵害額請求の問題はあり得ます。)遺産分割は未分割の遺産について、相続人間で分割方法を協議するものだからです。将来の紛争防止という観点からも、遺言書の活用やその内容等の検討をお勧めします。

遺産分割の禁止

遺産分割は、どの時期まではできないとか、いつまでにやらなければならないというような制約はない、というのが原則ですが、その例外の一つが、「被相続人が遺言で禁じた場合」です。
遺産分割の禁止は、「相続開始の時から五年を超えない期間を定めて」行う必要がありますので(908条)、禁止するとはいっても、永久に、というようなものではありません。

遺産に問題があった時の処理方法

「各共同相続人は、他の共同相続人に対して、売主と同じく、その相続分に応じて担保の責任を負う」ものと規定されています(911条)。遺産分割等の結果、取得した遺産に問題があった場合には(例えば、取得した土地を測量した結果、登記簿の表記とは誤差があり、想定よりもはるかに狭かったというような場合)、他の相続人に対し不足分に相当する金銭の賠償等を求めうるということです。
この担保責任に関する規定については、「被相続人が遺言で別段の意思を表示した場合」が、その例外として規定されているため、遺言で定めておくことにより、特定の相続人には一部又は全部の担保責任を負わせないということもできます(914条)。

生前贈与していた場合の遺産の処理方法

一部の相続人に対し、被相続人が多額の生前贈与をしていた場合等には、遺産分割の際には、その生前贈与分も特別受益として遺産に持ち戻して各自の相続分を計算することができます。これを「特別受益の持ち戻し」といいます。

特別受益を持ち戻すことによって、遺産の総額が大きくなり、各自が取得する金額も増えますが、特別受益を受けた者はすでに特別受益において受領済みの金額が差し引かれますので、ほとんど取り分がないということもあり得ます。

被相続人が生前贈与を行う意図として、一部の相続人に多くを残したいと考えていた場合、これでは目的を達成できません。この点について、被相続人は遺言で、当該相続人について持ち戻し免除の意思表示をしておくことによって、持ち戻しを不要とすることも可能です。この点も、遺留分を侵害する場合は、遺留分侵害額請求の対象となることは注意が必要です。

生命保険の受取人の変更

生命保険の受取人は、遺言によっても変更することができると規定されています(保険法44条1項)。
ただし、「遺言による保険金受取人の変更は、その遺言が効力を生じた後、保険契約者の相続人がその旨を保険者に通知しなければ、これをもって保険者に対抗することができない(同条2項)」と規定されているため、変更前の受取人が遺言の存在を知らず、保険会社に支払を請求して支払われてしまった場合、変更前の受取人に対する不当利得等の問題となってしまいます。確実性を重視するなら、遺言ではなく、生前に変更しておくほうが良いと思います。

また、この規定は平成22年4月1日に施行されたものであるため、それよりも前に締結された保険契約には適用されません。古い保険契約について、遺言で受取人の変更を行うことを希望する場合は、予め保険会社に確認しておくほうが良いでしょう。

非嫡出子の認知

認知は、生前に手続する方法だけではなく、遺言によっても行うことができます。遺言による認知を行う場合、遺言執行者の選任が不可欠ですので、予め遺言で指定しておくほうが良いでしょう。
認知をするということは、第1順位の相続人が一人増えるということです。他の推定相続人にとっては、自身の取り分を減らし、又は失わせるものです。遺言書の破棄や変造、隠匿は、相続欠格事由(891条5号)とされていますし、刑事上の責任も生じうるものですが、そのような内容の遺言書を推定相続人に委ねてしまうと、余計な葛藤を生じさせることにもなりかねません。

遺言で認知をする場合は、確実に認知を行うためにも、公正証書遺言での作成や、遺言執行者に弁護士等を指定した上で、遺言書の保管も併せて依頼する等の工夫をしておくことが望ましいと思います。

相続人の廃除

被相続人に対する虐待や重大な侮辱、その他著しい非行のある“遺留分を有する推定相続人”について、被相続人は家庭裁判所に廃除の申立てをすることができます(892条)。
廃除については、遺言でも意思表示をすることができますが(893条)、この場合も遺言執行者の選任が不可欠ですので、予め遺言で遺言執行者を指定しておくことをお勧めします。
廃除が認められると、当該推定相続人は相続権を失います。単に遺言で遺産分割方法を指定するのでは、遺留分侵害額請求の問題が残ってしまいますが、廃除の場合は、遺留分もありません。

未成年後見人の指定

離婚や死別により、未成年の子の親権者が一人しかいない場合、その者が死亡すると親権を行うものがいなくなります。「親権を行う者がいない場合」に、未成年者の法定代理人として活動するために選任されるのが未成年後見人です。未成年後見人は、家庭裁判所が選任する他、未成年者に対して最後に親権を行う者が、遺言で指定することもできます(839条1項)。

遺言書が複数ある場合、効力を発揮するのはどれ?

遺言書が複数ある場合、新しい日付のものが優先と考えるのが基本ですが、これはそれぞれの記述が矛盾している場合の優先関係を述べているものです。
複数遺言書がある場合でも、相互に矛盾しない記述はそれぞれ有効です。矛盾する記述については日付の新しいものが優先しますので、古い日付の当該記述は無効となります。

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遺言書の効力は絶対か

遺言書は、被相続人の意思を死後に反映するものとして尊重される傾向にありますが、「どのような遺言書も常に絶対の有効性を有する」というようなものではありません。形式要件を充たさない場合や、作成当時の意思能力の問題等、有効性が否定される場合もあります。以下、この点について記述していきます。

遺言書の内容に納得できない場合

遺言書に記載されている内容は、相続人らの全員が合意するのであれば、異なる内容の遺産分割協議を行うことも可能です。自身の取り分を減らしてまで、遺言書と異なる遺産分割協議に応じるというのは想定しがたいところですので、自身が納得しないからといって、遺言書を一方的に無効にすることは困難が大きいでしょう。

勝手に遺言書を開けると効力がなくなるって本当?

自筆の遺言書は、作成後封印をするのが通常です。「封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない(1004条)」ものとされていますので、勝手に開封してはいけません。

開封したからといって、直ちに当該遺言書が無効になるというものではありませんが、この規定に反した場合、5万円以下の過料の制裁も規定されています(1005条)し、変造等の疑いを招くおそれもあるので、封印されている遺言書を発見した場合は、開封せずに家庭裁判所に検認を申し立てましょう。

効力が発生する期間は?

遺言の効力が発生するのは、被相続人が死亡した時点です(985条1項)。有効期間などはありませんので、効力発生後、遺言書が時間の経過だけで無効になるということはありません。

認知症の親が作成した遺言書の効力は?

遺言をするには、遺言の内容を自ら理解し、遺言の結果を弁識するに足る意思能力が必要とされ、これを欠く状態で作成された遺言書は無効と判断される場合があります。

認知症は進行の程度により、意思能力の低下に差異のあるものですので、認知症と診断されていたとの事情だけで有効無効を判断することはできませんが、直近の認知能力に関する検査の結果は特に着目すべきところです。それ以外にも、自筆証書遺言と公正証書遺言の違いや、認知症に罹患する前の言い分や、遺言、筆跡等の比較等、さまざまな事情も総合的に考慮されるところです。

記載されていた相続人が亡くなっている場合でも効力を発揮するの?

遺言において、遺贈や相続させるとされていた者が、被相続人よりも先に死亡した場合、その者に分配するとされていた遺産に関する記述は無効です。当該遺産は、遺言による指定がないものとして遺産分割の対象となります。亡くなった方と関係のない記述は有効のままです。

遺留分を侵害している場合は遺言書が効力を発揮しないことも

遺留分とは、一定範囲の法定相続人につき、最低限保証された遺産等に対する割合的な権利のことを言います。遺言は被相続人の生前の意向を死後に反映させるものとして尊重されますが、最低限の保証である遺留分はそれよりも強い権利です。相続欠格や廃除に該当する場合でもなければ、遺留分を侵害するような遺言に対して、遺留分権利者は遺留分侵害額請求をすることができます。

ただし、この遺留分侵害額請求は、遺留分権利者自身が行使しなければならず、「相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から一年」の経過や、「相続開始の時から十年」の経過によって時効消滅してしまうものであることは注意が必要です。

遺言書の効力についての疑問点は弁護士まで

遺言書には、全ての財産を○○に相続させる、というようなシンプルなものから、多数の遺産について、それぞれの分配を複数人に振り分けるものなど、様々な作成方法があります。将来の紛争防止を目的とする場合には、作成の際に遺留分を予め考慮しておくほうが良いでしょうし、認知や廃除等、専門家の関与が不可欠な類型もあります。自身が希望する内容を実現するには、どのような条項を設けるべきかを判断するのに専門知識は大きな助けになると思いますので、遺言書について迷われているならば、まずは専門家に一度相談してみることをお勧めします。

婚姻中の夫婦はいずれも子の親権者です(共同親権)。一方の親権者の同意なく子を連れだすことは、刑事上・民事上の責任を負う可能性があることは否定できません。しかし、当否は別として、親権を希望する親が一方の親の同意なく子供を連れだして別居を始めることは少なくありません。本稿では、子供を連れて別居する際の一般的な注意点について解説をしていきます。
くれぐれも、事情に関係なく同意なき子連れ別居を推奨する趣旨ではないことはご留意ください。

離婚しないで子供を連れて別居をするときの注意点

事前に相手と協議して子の監護について約束をしたうえで別居を始めることが望ましいことは言うまでもありません。しかし、それができないやむを得ない事情がある場合には、客観的に見て非難をされないような態様で子を連れて別居をする必要があると考えます。少なくとも①子供が安全な場所にいること、②今後の連絡先等を明らかにするなど、「窓口を開けた」状態にしておく必要があると思われます(配偶者暴力や虐待など連絡を取ることにリスクがある場合は別です。)。

別居後の養育環境

子供を連れて別居を始めた後は、違法に連れ戻されないように対策を取る必要が生じます。例えば、保育園に子供を通わせるのであれば、保育園に事情を話し、「自分が迎えに来ます。相手が迎えに来たとしても引き渡す前に自分に連絡をください」と伝えておくことも有効です。

婚姻費用や養育費

夫婦はお互いの生活を保持する義務を負います(民法760条参照)。婚姻費用とは、この義務から生じ、夫婦が生活する上で必要となる全ての生活費(食費・医療費・養育費等)が含まれます。ただし、実務上、実際の請求後に具体的な義務になると考えられていますので、別居後すぐに請求することが肝要です。

児童手当

児童手当は、同居中であれば原則夫婦のうちの所得が高い方に支給されます。別居後に子を養育する親に振込先を変更したい場合には、振込先の変更手続きを行う必要があります。変更に関して市区町村や担当者によって対応に差はあるものの、別居したことを証する住民票や、離婚調停の係属証明書、弁護士を介入させての離婚協議中であることを証する資料等の提出が求められることが多いです。

面会交流

子と一緒に生活をしていない親(非監護親)が、子と直接会う等の交流をすることを面会交流と言います。色々な考え方があるものの、子のための権利と位置付けられており、子の利益を最も優先して考慮されなければならないと考えられています。言い換えれば、親の権利として無条件に認められるわけではなく、非監護親と子の面会交流を行うことが、子の利益に反するような場合には面会交流が制限されることもあります。例えば、子が連れ去られる可能性があるとき、非監護親が子に暴力を振るう恐れがあるとき等がこれに当たると考えられます。

別居と子供の連れ去り

連れ去り別居に明確な定義はありませんが、一般的には共同親権者の一方が、他方の同意なく子を連れ去り、別居を始めることを意味します。子供の監護養育を行っていたなど、置いていくよりも子供を連れていくことが子供にとって負担が小さいという場合が多いですが、事情によっては他方配偶者の親権行使を妨げる違法状態を作出したと判断される場合がありますので注意は必要です。

違法な連れ去り別居と判断されないための注意点

連れ去りの目的と、手段の相当性(妥当性)の検討を要します。例えば、一方配偶者の暴力が他方配偶者および子に繰り返し振るわれ、また、振るわれる恐れがある等、子を保護するという目的のためにやむなく別居を開始するというような場合には、違法と判断されることは基本的にはないと思われます。

一方で、これまで監護をしていなかった親が特に理由もなく、子を連れて別居を始めたような場合等には、穏当な方法での連れ去りだったとしても違法と判断される可能性があります。

別居中に子供を連れ去られた場合

別居中に他方の配偶者に子供を連れ去られてしまった場合、子供の住所地を管轄する家庭裁判所に「監護者指定審判」と「子の引渡し審判」を申し立てます。違法状態を速やかに解消する必要性・緊急性がある場合には、同時に「審判前の保全処分」も申し立てます。
自力で子供を連れ戻そうとすると、違法な連れ去りであると判断され、かえって不利になるおそれもあるので、これらの裁判所を通じた法的手続きを踏んだ方が賢明です。

DV、モラハラ加害者との別居

子が配偶者からモラハラやDVを受けているような場合には、すぐにでも子の安全を確保しなければなりません。暴力行為等が酷い場合には、警察に相談したり、シェルターで保護を受ける等も検討を要します。このような状況の場合、当事者同士での話合いは困難であることが予想されますので、すぐに代理人を介入させた方がよいでしょう。

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別居後の子供とのかかわり方

これまで生活していた環境が変われば、子は多かれ少なかれ不安を覚え、ストレスを感じることは避けられません。同居時以上に子の精神的ケアが必要になります。

よくある質問

家庭内別居する際に子供に対して注意することはありますか?

夫婦間のトラブルが子の生活に与える影響を最小限に抑える努力をするべきです。子に対してはこれまでと変わらずに接する、他方配偶者の悪口を言わない、状況を理解できていない子に「パパとママどっちと暮らしたい」等と選択を委ねて困らせない等の注意が必要です。

別居中から自分の扶養に子供を入れておいたほうがいいですか?

扶養家族とは、主に収入における生活面で助けてもらう必要のある家族のことを指します。子の場合、「生計を一にする」親の扶養に入ることになります。したがって、別居により生計が別になった場合には、子は子と生計を一にする監護親の扶養に入ることになります。

配偶者に黙って子供を連れて別居をした場合は慰謝料請求されますか?

故意または過失によって他人に精神的損害を生じさせた場合には、その精神的損害を賠償しなければなりません(民法710条)。よって、配偶者に黙って子供を連れ出したことで他方の配偶者に精神的損害を与えた場合には慰謝料請求が認められ得ます。ここでも、連れ出しの目的や連れ出しの態様、連れ出し後の事情等の悪質性等が検討されることになると思われます。

子供を連れての別居が違法とならないためにまずは弁護士にご相談ください

親である他方配偶者の同意なく子を連れて別居を開始することは、他方配偶者の親権行使を妨げることになりますので原則違法になると考えられます。ただし、代理人が適切にアドバイスをしたり、介入して話合いの機会を確保することで、後のトラブルを未然に防いだり、連れ去りが悪質だという評価を受けにくくなることが期待できます。子供を連れての別居が違法と評価されるのを防ぐために、まずは弁護士にご相談ください。

熟年離婚という言葉について、明確な定義はありません。おそらく、「婚姻期間が長いこと」及び「中高年齢層に属すること」をいずれも満たす夫婦が離婚する場合を、熟年離婚というものと思われます。
平成・令和期においては、離婚率が昭和期より高いことや、中高年齢層の人口が昭和期より増えていることから、熟年離婚も増えています。それで、熟年離婚という言葉を耳にする機会も増えたと考えられます。
以下の記事では、熟年離婚について詳しく解説します。

熟年離婚の原因

夫婦が離婚する原因は、様々です。代表的な原因は、夫婦間の心理的な問題や、夫婦が生活する上での経済的な事情などが挙げられます。そのほかに、熟年離婚に特有の原因としては、子供が自立したことが離婚のきっかけとなったり、夫婦のいずれか又は家族の介護問題が離婚の引き金となったりすることがあります。

以下において、具体的に説明します。

相手の顔を見ることがストレス
夫婦は、日常生活を送る上で、様々な言い争いをしたり、感情的な行き違いを起こしたりすることが珍しくありません。特に、婚姻期間が長い中高年齢層の夫婦の場合、長年にわたる感情的な行き違いが積み重なり、相手の顔を見ることすらストレスだと感じるようになることもあります。
このような状態に陥ると、離婚という選択肢も、検討した方がよいかもしれません。

裁判上の離婚原因としては、「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」(民法770条1項5号)が定められており、ただ単に相手の顔を見ることがストレスだというだけでは、これに該当しないと思われますが、夫婦の合意による協議離婚であれば、成立させられる可能性があります。
ですから、相手の顔を見ることすらストレスだと感じるほどに至った場合には、離婚という選択肢を真剣に検討することをお勧めします。

価値観の違い、性格の不一致
夫婦の価値観の違いや、性格の不一致は、しばしば見られます。
これも、直ちに「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当するわけではないと考えられますが、婚姻期間が長い中高年齢層の夫婦の場合、もはや埋められないほどの価値観の違いや性格の不一致は、大きな苦痛というほかありません。

このような場合には、離婚という選択肢を真剣に検討することをお勧めします。裁判離婚は困難かもしれませんが、夫婦の合意による協議離婚であれば、成立させられる可能性があります。

夫婦の会話がない
婚姻期間が長い中高年齢層の夫婦の場合、お互いの価値観や性格の違いを埋めることができず、会話すらない状態が続いてしまうことがあります。
言い争いの後に数日くらい会話がないという程度ならばともかく、ずっと会話がない状態が続く場合には、離婚という選択肢を検討した方がよいかもしれません。
ただ単に会話がないというだけでは、「婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当しないと思われますので、裁判離婚は困難と思われますが、夫婦の合意による協議離婚であれば、成立させられる可能性があります。

子供の自立
夫婦間の感情的なすれ違いが続く場合であっても、子供が幼いうちや、就職が決まらないうちは、離婚にまでは踏み出すことができない、というケースは多いと考えられます。
しかし、婚姻期間が長い中高年齢層の夫婦の場合、子供の就職や結婚による自立が実現した後で、夫婦の離婚について真剣に検討する、という選択肢があり得ます。
離婚の原因は様々ですが、気持ちの面で、子供の自立が離婚のきっかけとなったという例は多いようです。
また、子供が自立した後であれば、養育費の分担という問題が生じなくなるため、離婚について検討しやすくなるという事情もあります。

借金、浪費癖
配偶者の借金問題、浪費癖は、離婚原因の代表例の一つです。
これは、若い夫婦にとっても切実なテーマですが、婚姻期間が長い中高年齢層の夫婦の場合、家計に及ぼされる経済的なダメージが多額になるため、更に切実という面があります。
配偶者の借金問題、浪費癖を理由として離婚を検討する場合、まずはその全貌を把握する必要がありますし、法律的に有利な(少なくとも不利ではない)条件で離婚を成立させることが望ましいと考えられます。

介護問題
婚姻期間が長い中高年齢層の夫婦の場合、その一方が介護を必要とする場合があります。また、一方の親が存命である場合、その介護が必要となるケースが多いでしょう。
介護は、肉体的にも、精神的にも、経済的にも、非常に大きな問題です。
もちろん、親族は助け合うことが望ましいといえますが、もし特定の誰かが介護による過剰な負担を抱え込んでいて、離婚によってその負担を解消できる場合には、離婚という選択肢も真剣に検討すべきです。
ただし、介護問題が離婚原因となっている場合、介護に関する法律関係や金銭的な問題を整理しておく必要がありますので、慎重な検討が望ましいといえます。

熟年離婚に必要な準備

婚姻期間が長い中高年齢層の夫婦が離婚をする場合、離婚それ自体に伴う金銭的な問題を解決する必要がありますし、離婚後の生活設計も整えておくことが望ましいでしょう。
このように、熟年離婚については、計画的な準備が必要ですので、以下において具体的に説明します。

就職活動を行う

もし、あなたが熟年離婚を考える場合、離婚後の生活について、金銭面での具体的な準備ができているでしょうか?

離婚をすると、配偶者からお金をもらえなくなったり、勤務先の扶養手当などが支給されなくなったりすることにより、収入が減ることはしばしば見られます。特に、専業主婦(専業主夫)の場合、婚姻費用(生活費)を支払ってもらえなくなるため、これを補うだけの収入を確保しておくことが、非常に重要です。

もし、あなたが特別な資格や技術を持っておらず、親族や知人に雇ってもらうことができる見込みもない場合には、まず就職活動を行うことによって、離婚後の生活を金銭的に維持できるだけの準備を整えておくことをお勧めします。

味方を作る

離婚は、それ自体がエネルギーを奪われやすいものですし、離婚後は生活環境が変わりますので、精神的に動揺しやすくなるかもしれません。
そんな時に、気軽に相談したり、アドバイスを求めたり、愚痴を言ったりすることができる相手がいれば、心強いことでしょう。
離婚について、法律的なアドバイスや代理交渉や調停への同席ができるのは弁護士だけですが、弁護士とは別に、プライベートな「味方」を作っておくことをお勧めします。
それは、子供や親族でも構いませんし、友人・知人でも構いません。

住居を確保する

もし、あなたが熟年離婚を考える場合、離婚後の住居を確保することはできるでしょうか?

現在の自宅が相手方の所有である場合、離婚後に退去を求められることが通常ですし、夫婦で住んでいる賃貸住宅の場合、離婚後はより狭い賃貸住宅に引っ越す方が経済的と考えられます。
このように、離婚をする上で、住居を確保しておくことは重要です。もし、離婚を実行するまでに時間的な余裕がある場合には、まず離婚後の住居をしっかり確保しておくことをお勧めします。

財産分与について調べる

夫婦が離婚をする場合、財産分与について検討する必要があります。
特に、婚姻期間が長い中高年齢層の夫婦の場合、夫婦共有財産が多く形成されている場合が多い一方で、親からの相続で取得した特有財産があることも珍しくありません。
そのため、熟年離婚に伴う財産分与については、財産分与の方法について見解が対立したり、そもそも夫婦それぞれの財産を調査することが困難だったりするなど、様々な法的問題を伴うことがしばしばあります。
ですから、熟年離婚における財産分与については、慎重な検討をお勧めします。

専業主婦(専業主夫)の場合は年金分割制度について調べておく

年金分割とは、婚姻期間中の厚生年金の保険料納付記録を分割する制度のことであり、「合意分割」と「3号分割」があります。

特に、専業主婦(専業主夫)が熟年離婚をする場合、そもそも保険料納付期間が長いと考えられる上、離婚後の生活において年金収入が重要となる場合が多いことから、年金分割が果たす役割は大きいと思われます。

年金分割の請求期限は、離婚をした日の翌日から2年です。
もし、専業主婦(専業主夫)が熟年離婚をする場合、事前に年金分割についても調べておくことをお勧めします。

退職金について把握しておく

熟年離婚は、中高年齢層が行うものであるため、勤務先の定年退職が近かったり、定年退職から間がないうちに行われたりすることが多いです。
そして、退職金は、財産分与の対象となる可能性が高いです。

ですから、自ら退職金をもらう場合も、配偶者が退職金をもらう場合も、退職金の金額についてきちんと把握しておくことが望ましいでしょう。財産分与として金銭を支払う側も、金銭を受け取る側も、前提となる退職金の金額を事前に把握することができれば、スムーズに熟年離婚を成立させられる可能性が高まります。

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熟年離婚の手続き

熟年離婚をする場合、まず夫婦で話合いを行い、協議離婚の成立を目指すことが第一歩です。もし、合意に達することができれば、離婚届の提出によって、協議離婚を成立させることができます。

協議離婚の見込みがない場合、離婚調停を申し立てて、家庭裁判所で話合いを行うこととなります。第三者である調停委員が介在することによって、離婚協議が進む可能性があります。そして、離婚条件について合意に達することができた場合、調停離婚を成立させることができます。

最後に、調停が不成立となった場合の手段としては、離婚訴訟を提起することができます。そして、裁判所が判決で離婚請求を認容すれば、裁判離婚が成立します。

熟年離婚で慰謝料はもらえるのか

熟年離婚に至る原因は様々ですが、慰謝料が発生する場合があります。
その代表例は、身体的な暴力などの虐待行為があった場合や、不貞行為があった場合などです。

ただし、そもそも慰謝料が発生するか否かや、その金額をどのように算定すべきかという点について、夫婦間で見解が対立することが珍しくありませんし、財産分与と慰謝料の関係をどのように整理しておくかという点は、法的な問題となる可能性があります。

このように、慰謝料については慎重な検討が必要ですので、事前に十分な検討が必要ですし、夫婦間で慰謝料について合意ができた場合には、書面を作成しておくことが望ましいでしょう。

退職金は必ず財産分与できるわけではない

熟年離婚の場合、勤務先の定年退職が近かったり、定年退職から間がないうちに行われたりすることが多いです。そのため、熟年離婚に伴う財産分与においては、退職金の取扱いを検討することが必要です。

退職金は、「賃金の後払い」としての性質を有しており、勤務期間の長短に応じて算定されることが一般的です。そのため、退職金全額が財産分与の対象となるとは限らず、婚姻期間に応じた分だけが財産分与の対象となることが一般的ですので、注意が必要です。

以下において、退職金が既に支払われている場合と、まだ支払われていない場合とに分けて、説明します。

退職金が既に支払われている場合

退職金が既に支払われている場合、預貯金口座に振り込まれることが一般的です。そして、退職金については、婚姻期間に応じた分の金額を財産分与の対象とすることが一般的です。ですから、まず預貯金口座の通帳や取引明細によって、退職金の金額を明らかにすることが必要不可欠ですし、退職金の計算方法に関する資料を取り寄せておくことが望ましいでしょう。

ただし、財産分与は、夫婦が別居した時点において存在した夫婦共有財産を対象とすることが一般的です。もし、「退職金が支払われた後、別居を開始するまでの間」に退職金を使ってしまった場合には、その退職金を財産分与の対象とすることはできないと考えられますので、注意する必要があります。

退職金がまだ支払われていない場合

退職金がまだ支払われていない場合、離婚に伴う財産分与において退職金をどのように取り扱うかという問題については、見解が対立することがしばしばあります。

この点について、家庭裁判所の実務における取扱いにも変遷が見られましたが、近年の傾向としては、「将来において退職金が支給されることがほぼ確実といえる場合」に、「基準日(原則として夫婦が別居した日)において退職したと仮定した場合に支給される退職金の額」を財産分与の対象とすることが多いです。

熟年離婚の場合、定年までの期間が短いと考えられますので、上記の要件をいずれも満たすことが多いでしょう。ですから、熟年離婚の場合は、まだ支払われていない退職金についても、財産分与を検討することが望ましいと思われます。

熟年離婚したいと思ったら弁護士にご相談ください

熟年離婚は、婚姻期間が長い中高年齢層の夫婦が行うものです。
長い婚姻期間中に、心理的な対立や葛藤が積み重なることは珍しくありませんし、慰謝料の根拠となるような事情が生じる場合もあります。また、長い婚姻期間中に形成された夫婦共有財産については、離婚に際して財産分与として清算することが望ましいでしょう。

このように、熟年離婚については、法律的に困難な問題が伴うことが多いですので、法的観点からの検討は必要不可欠です。さらに、熟年離婚をしようとする中高年齢層の方々は、離婚後の生活設計を整えておくことが望ましいですので、離婚前に準備しておくことが多くあります。

弁護士は、離婚前の準備事項、検討事項についてアドバイスをすることができますし、離婚協議の代理人となったり、離婚調停に同席したりすることができます。
熟年離婚をお考えの方は、弁護士に相談することをお勧めします。

離婚する際に、夫婦で形成した財産を清算する、「財産分与」というものがあります。財産分与の対象になる財産について、どのような分け方があるのか等、自動車という財産に焦点をあてて、以下説明します。

車を財産分与する方法

車を財産分与する方法として、もっともシンプルな方法は、売却することによって得た利益を折半する方法でしょう。もう一つは、売却ではなく、車をどちらかの所有として残し、金銭的に調整する方法です。売却する場合とどちらかの所有として残す場合についてそれぞれみていきましょう。

売却する場合

車を売却して得た利益を折半する方法です。基本的には、夫婦で形成した財産を清算することから考えると折半することになります。注意しないといけないのは、自動車ローンがついている場合です。自動車ローンがついている場合は、ローン完済まで信販会社や販売店に所有権が留保されていることが一般的です。所有権が留保されている車を買う人はおらず、ローンを一括返済してから売却するか、売却代金でローンを返済することを条件に信販会社や販売店に売却を了承してもらわなければなりません。稀に、強硬に一括返済を求められる場合もありますので、事前に連絡を取って売却に応じてもらえるのか調整をしておくことが必要です。

なお、財産分与は、債務も含めて夫婦で形成した財産を清算することが主な目的ですから、債務がある場合や分与の割合が1/2でない場合などは、折半ではなく一方が多く取得することもあります。

どちらかの所有として残す場合

財産分与は、夫婦が離婚する場合に、婚姻中に形成した財産を清算するためのものとなります。
婚姻中に形成した財産を、一つ一つ2分の1に割っていく必要はありません。
例えば、自動車の評価額の半分を現金で渡したり、評価額の半分に相当する財産(保険契約の名義変更など)を渡すことで、清算を図ることができます。
現金や他の財産で調整を図ることで、片方が自動車を取得し、乗り続けることができます。

車の評価額は何を参考にすればいい?

財産分与の対処財産の評価は、財産分与に関する裁判時(口頭弁論終結時ないしは審判時)、別居時、離婚時など様々な考え方があります。判例・裁判例をみても一律に基準時が決まっているわけではありませんが、基本的に、清算的財産分与については、裁判時を基準にされることが多くなっています。裁判や審判ではなく、調停や協議で解決する場合は、特段時期に拘らずに、別居後に査定を行うなど金額で評価することが多いといえます。

査定の方法としては、中古買取業者に査定を行ってもらうことが争いにならないと思います。ただ、webで一括査定の依頼をすると、直後から1週間程度は業者からの営業電話がかかってきますので、これが面倒だと思う場合は、何処か数社に持ち込んで査定してもらうのが良いでしょう。客観的な指標としてレッドブックという車の流通価格を整理した雑誌を用いることもありますが、実勢価格とズレることも多く、あまり信用性は高くないと思っています。紛争性が低い場合や車の価値がそれ程高くない場合には、インターネットの中古車販売サイト等で車種・年式・走行距離等が近い車両の下取り価格を参考に、話し合って大体で評価することもあります。なお、裁判所へ証拠として提出する場合は、一社だけでなく何社か査定をしてもらいます。

財産分与の対象にならない車もある

財産分与は、婚姻中に形成した財産を清算するものですので、婚姻中に夫婦で形成していない財産(特有財産)は、対象となりません。例えば、親から譲り受けた自動車であったり、婚姻前から所有していた自動車であれば、対象とはならないでしょう。ちなみに、婚姻前から所有していた車だとしても、婚姻後に夫婦の収入や財産からローンを返済した場合は別です。

自動車にローンが残っている場合には、車の評価額からローン残高を差し引いた金額が車の価値ですが、いわゆるオーバーローンの場合は、車としての資産価値はありません。この場合、車を利用したい側が、ローンと一緒に車を取得することが実務的な処理です。

財産分与の対象になるのはどんな車?

財産分与は、婚姻中に形成した財産を清算するものですので、婚姻中に夫婦で形成した財産が対象となります。どのような場合に対象となるのか、具体的に説明します。

共有財産であれば名義は関係ない

婚姻中に夫婦で形成した財産であれば、夫婦のどちらの名義であっても、財産分与の対象となります。つまり、名義は関係ないことになります。

特有財産であっても、車の維持費の出どころ次第では財産分与の対象に

特有財産(例えば、婚姻前から所有していた財産)であっても、婚姻中に、家計から車のローンや維持費などを捻出した場合には、財産分与の対象となる場合があります。家計から捻出している以上、夫婦が婚姻中に形成した財産といえる場合があるためです。また、婚姻中に多額の修理費がかかった場合など、車を維持するための費用を家計から捻出したような場合には、財産分与において考慮されることもあります。

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財産分与で車をもらったら、名義変更は必ずやりましょう

財産分与で相手名義の自動車を取得する場合には、名義変更を必ず行いましょう。名義変更を行わないと、相手が所有者として売却等するリスクもあるためです。また、名義変更せずに相手が自分名義の車を乗って事故を起こした場合には、被害者から損害賠償請求を受ける可能性もあります。

具体的には、以下の手続きが必要となります。

普通自動車を名義変更する場合

販売店や代行業者に名義変更を依頼する方法と、自分で手続きを行う方法があります。

自分で名義変更を行う場合には、必要書類を持参のうえ、管轄の陸運支局または自動車検査登録事務所での手続きが必要となります。

所有者と使用者が同一かどうか等でも、必要となる書類が異なりますので、車検証を用意した状態で、管轄の陸運支局等に問い合わせすることをおすすめいたします。国土交通省のホームページも参考となります(https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_fr6_000007.html)。

軽自動車の場合

軽自動車の場合も、販売店や代行業者に名義変更を依頼する方法と、自分で手続きを行う方法があります。

自分で名義変更を行う場合には、必要書類を持参のうえ、管轄の軽自動車検査協会での手続きが必要となります。普通自動車の場合と同様に、管轄の軽自動車検査協会に問い合わせをすることをおすすめいたします。軽自動車検査協会のホームページが参考となります(https://www.keikenkyo.or.jp/procedures/procedures_000016.html)。

自動車保険の名義変更は?

同居家族の場合や夫婦の場合には、自動車保険の名義変更及び等級の引き継ぎができる場合があります。
どこまで名義変更や引継が可能かは、保険会社や保険内容によるところもありますので、名義変更を考えている方は、離婚される前に、加入されている保険会社に一度問い合わせをすることをおすすめします。

車の財産分与で分からないことがあったらご相談ください

離婚を考えられる場合、離婚後にどのような生活となるのかも合わせて考えることになります。
離婚後の生活について、経済面に不安を覚える方もいらっしゃるでしょう。財産分与の対象としてどのような財産が入り得るのか、どのくらい取得でき得るのか、ある程度の見通しを持つことができれば、具体的に離婚について考えることができるのではないでしょうか。

自動車に焦点を当てて説明を行いましたが、自動車に限らず、財産分与で気になる点や、不安な点がある方は、一度弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

まず申し上げておくべきは、離婚調停に至る経緯は夫婦それぞれです。解決までの道のりも夫婦それぞれです。調停は試験ではありませんので、『こう聞かれたら、こう答えたらいい。』という正解もありません。
本ページでは、これらを前提にご理解いただいたうえで、ご覧いただければと思います。

申立人が離婚調停で聞かれること

調停機関は申立書や回答書に記載されたことしか知らないまま、調停は始まります。これら記載の情報が不足している点や、紛争の核心部分、当事者の希望する条件、調停機関が関心を持った点について詳しい聴き取りがされます。

結婚した経緯

結婚した時期等は申立書に記載するよう求められます。結婚の経緯等が紛争の核心でもない限り詳しい聴き取りがされることは稀でしょう。

離婚を決意した理由

これについても申立書に記載することになりますが、紛争の核心になるので、詳しい聴き取りがされる可能性が高いと思われます。申立書の記載で、なぜ離婚したいと思ったのかが伝わらないような場合には、相当の時間をかけて聴き取りがされると思います。

現在の夫婦関係の状況について

同居中か既に別居に至っているのか、生活費はどうしているのか等も申立書に記載することになりますので、聴き取りがされたとしても事実確認程度だと思われます。申立時と状況が変わっているようであれば、聴かれなくても自分から話すべきです。

子供に関すること

離婚後の親権について争いがある場合、調停機関は子の現在の監護状況や、監護を希望する親が将来どのように子供を育てて行くか等に関心を持つと思われます。
親権に争いがない場合には、離婚後の非監護親の面会交流の有無、面会の方法、養育費の支払について、特に非監護親がどう考えているかが調停機関の関心の中心になります。

夫婦関係が修復できる可能性について

双方が離婚を希望している場合であっても、一応の意思確認程度に夫婦関係修復の意向について尋ねられることがあります。夫婦の一方が離婚を希望しておらず、かつ、もう一方が離婚を翻意する可能性があるような場合には、修復に向けた話し合いがされることもあります。

離婚条件に付いて(養育費、財産分与、慰謝料)

調停は話し合いによる紛争解決手段なので、当事者双方が合意をすれば原則有効な決め事になります。話し合いがまとまらない場合には、最終的には裁判所の判断を仰ぐ必要があります。この時は、請求する側が事実を主張・立証する必要があります。

相手方が聞かれること

まずは離婚に応じる意向の有無が聞かれます。離婚の意思が無いとすれば、婚姻関係を維持したい理由等を一応聞かれるか、翻意の意思がないと見られれば調停は不成立となります。離婚の条件等が争いの中心になる場合には、希望する条件(親権・養育費・財産分与・慰謝料等々)について質問がされます。

1回あたりの所要時間の目安と調停の流れ

1回あたりの調停は2時間程度が目安となります(※福岡家裁は、新型コロナウイルス対策期間中は原則100分間と設定しているようです)。交互に調停室に入って話をするので、当事者同士が対面することは原則ありません。当事者の一方が1度で話をする時間は、平均30分程度を一つの目安と考えておけばいいかと思います。当事者の一方が調停室に入っている間、もう一方は原則待合室で待機することになります。ある程度の時間離席する場合には裁判所の事務官・書記官等の担当職員に事情を告げてからにしましょう。

離婚調停で落ち着いて答えるための事前準備

余裕をもって到着できるよう、裁判所へのアクセスを確認

裁判所までの道のりは事前に調べておきましょう。福岡の裁判所(本庁)は、市営地下鉄七隈線六本松駅①出口から約5分程度のところにあります。駅を出て南側正面を向いた時に見える大きな建物が裁判所です。家庭裁判所はその建物3階です。裁判所3階に到着したらまず、書記官に出席の連絡を伝えてください。エントランスでは荷物検査がありますので、それも所要時間の計算にいれておきましょう。

聞かれる内容を予想し、話す内容をまとめる

事前に自分の考えを書面で提出しておけば、当日幾分か安心できると思います。調停機関にとっても、ポイントが分かりやすくなるといったメリットもあると思います。弊所の弁護士の場合、事情説明に別紙を添付したり、主張書面という形で、申立の段階でこちらの言い分をまとめて提出することが多いと思います。

相手の出方を予想し、対処法を考えておく

細かい事実関係の主張に捉われてしまうのは得策ではありません。相手の主張が真実だろうと虚偽だろうと、一々拘らず、最終的に自分の求める結果を得られるための話合いをしましょう。調停機関の関心も、細かい事情の真偽ではなく、最終的に解決の見込があるかどうかです。最終的な落としどころ(折り合いをつけるライン)を事前に設定しておきましょう。

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調停委員からの質問に答える際の注意点

調停機関に必要以上に畏まる必要はありません。常識的に接してさえいれば不利になることはありませんので、安心してください。また、調停機関は紛争解決のために設けられています。自分の話したいことを一方的に伝えるのではなく、解決に向けた話し合いを心がけましょう。

落ち着いて端的に話しましょう

婚姻解消には多かれ少なかれ情緒的な繋がりを解消するという面がありますので、感情を挟むなとは申しません。しかし、感情の満足を第一に考えていると、建設的な話し合いにならないことが多い印象です。どんなに怒りや悲しみの感情が強くても、あくまで解決に必要な範囲の事実・要望を伝えて、落ち着いて話をするよう心がけましょう。

調停委員との価値観の違いに注意

調停機関も普通の人間が運営しています。自分とは価値観の違う人、意見の合わない人も当然います。調停機関は解決案の提案は出来ても、決定は出来ません。調停機関の顔色を窺う必要はありませんので、意見の合わない人がいても必要以上に気にしないでください。
それでも、誤解の無いように申し上げると、調停機関を味方につけるに越したことはありません。伝え方の工夫等は怠らないようにしましょう。

嘘はつかず誠実に答える

自分に不利なことを敢えて話す必要はありませんが、嘘は厳禁です。話した内容と明らかに矛盾する客観的な証拠が提出された場合には心証が悪くなります。

聞かれてないことを自ら話さない

どうしても伝えたいこと以外は、基本的には調停機関の関心に沿って話しましょう。どうしても伝えたいことも、本当に解決に必要な情報かをもう一度考えましょう。ポイントがわかっていない場合、話が脱線するくらいならまだしも、あえて不要な論点を作り出して反論の隙を与えることにもなりかねませんので注意が必要です。

陳述書は書かない

調停における陳述書とは、調停機関に自身の気持ちや認識を伝えるための書面です。弁護士の介入がない場合にしばしば目にします。しかし、残念ながら私の経験上、当事者作成でポイントを押さえた効果的な陳述書というものは見たことがありません。多くの場合、客観性を欠くエピソードや相手に対する誹謗中傷が記載されているだけで、解決に役に立たないどころか、多くの場合紛争を複雑にしてしまっている印象です。どうしても書きたい場合は、専門家のアドバイスの下で書くことをお勧めします。

譲れないポイントがあるなら決めておく

自分の中で絶対譲れないボトムラインを必ず設定しましょう。ボトムラインを下回った提案に応じて後悔する必要はありません。しかし、そもそもどこにボトムラインを引くかが難しいところです。ラインが高すぎる場合には対立当事者が調停に応じない、逆に低すぎれば自分が損をすることになりますので注意が必要です。

調停で話し合ったことはメモしておく

紛争化している場合や弁護士が介入していない場合、1回で調停が成立することは非常に稀です。調停機関からは次回までに検討すべきことや、準備すべき資料等の指示がされると思われますので、忘れないようにメモを取っておきましょう。

離婚調停2回目以降に聞かれること

成立の見込みがあれば、双方に譲歩が可能か等の確認がされます。できる限りの調整が促されますが、双方の希望が真っ向から対立するような場合や、当事者が調停成立を望まない場合には不成立に終わります。

離婚調停のお悩みは弁護士にご相談ください

弁護士の経験上、「自分で対応していたけど、うまくいかなかった」という依頼者様も少なくありません。その場合の多くは、ポイントを外したり、不用意な主張の所為で、本来は合意できたであろう条件での解決が難しくなっています。経験に勝る知識はありません。後悔しない解決のためにも、多くの事件を経験して研鑽を重ねた弁護士にアドバイスを求めることをお勧めします。

夫婦の離婚後、子供を育てていく上で、食費、衣服費、住居費、学費、医療費等々、お金が必要になる場面は多いでしょう。そんなときに頼りになるのが養育費です。
ですから、離婚の際に、養育費について取り決めておくことは重要ですし、公正証書を作成したり、家庭裁判所の調停を成立させたりする例も多く見られます。
しかし、養育費の支払期間は長期間にわたりますので、取決めが守られず、未払が重なってしまうことも珍しくありません。

以下では、養育費の未払問題について解説します。

調停で決められた養育費が未払になった場合

調停や審判など、家庭裁判所の手続で養育費が取り決められた場合であっても、未払が発生してしまうことは珍しくありません。以下では、その対処法について順に解説します。

対策1.履行勧告

「履行勧告」は、家庭裁判所の調停又は審判で養育費の支払義務が定められたのに、相手方がその義務を履行しないときに、家庭裁判所から相手方に対し、義務の履行を勧告する制度です(家事事件手続法289条)。

履行勧告の申出は、調停調書又は審判書を用意すれば、調停などを行った家庭裁判所に対し口頭で行うことができ、費用もかかりませんので、非常に簡単に行うことができます。そして、相手方が裁判所から勧告を受けることによって翻意し、自発的に養育費を支払ってくれる可能性があります。
ただし、履行勧告には強制力がありませんので、例えば相手方の財産の差押えなどはできません。また、調停又は審判が行われていない場合、そもそも履行勧告の申出ができません。

対策2.履行命令

履行命令は、家庭裁判所の調停又は審判で養育費の支払義務が定められたのに、相手方がその義務を履行しないときに、家庭裁判所から相手方に対し、義務の履行を命ずる制度です(家事事件手続法290条)。

履行勧告とは異なり、相手方が正当な理由なく履行命令に従わないときは、10万円以下の過料に処せられるという制裁がありますので、相手方が翻意してくれる可能性が高まると考えられます。
ただし、履行命令の申立ては、書面で行う必要があり、手数料も発生します。
なお、履行命令も、相手方の財産の差押えなどはできません。また、調停又は審判が行われていない場合、そもそも履行命令の申立てができません。

対策3.強制執行

相手方が養育費を支払わない場合、最終手段は「強制執行」です。
強制執行とは、強制的に権利を実現する制度です。履行勧告、履行命令とは異なり、相手方の財産(主に預貯金,給与などが想定されます。)を差し押さえることによって、養育費を強制的に回収することができます。

また、養育費を取り決めた家庭裁判所の調停又は審判がある場合だけでなく、公証役場で作成された公正証書(ただし、養育費について「強制執行認諾文言」がある場合に限られます。)がある場合にも、強制執行の申立てが可能です。
このように、強制執行は、強制的かつ直接に権利を実現することができる強力な手段であり、養育費を回収する上で最終手段といえます。

民事執行法改正で未払養育費に対応しやすくなりました

強制執行を申し立てる際、相手方の財産(預貯金口座、勤務先など)を特定する必要がありますが、相手方から教えてもらえないケースが多いため、大きな障害になっていました。

そこで、令和2年(2020年)4月施行の改正民事執行法により、相手方の財産状況を調査する制度が強化されました。主な改正内容は、①財産開示手続の罰則強化、②第三者からの情報取得手続の新設です。

①は、裁判所に出頭して自己の財産の内容を明らかにする期日(財産開示期日)について、正当な理由のない不出頭や虚偽陳述等に対する罰則を強化したものです。②は、金融機関から預貯金の存否に関する情報を取得したり、市町村等から給与の支払者に関する情報を取得したりする手続を新設したものです。

これらの法改正により、相手方の財産を特定しやすくなったため、財産の差押えにより養育費を回収できる可能性が高まりました。

口約束で決めた養育費が突然支払われなくなった場合

養育費の取決めについて、口約束しかなかった場合、その養育費が突然支払われなくなったからといって、支払を法的に強制することはできません。このような場合、養育費を回収するために取ることができる手段について、以下で順に説明します。

まず、相手に連絡を取る

まずは、相手方に連絡し、養育費を請求しましょう。連絡手段は、電話・メール・SNS・手紙など、何でも構いません。
もしかしたら、相手方が振込を忘れていたり、金融機関の営業時間の制約により振込処理が遅れていただけかもしれません。まずは、養育費の金額、支払期限などを相手方にきちんと伝え、任意の支払を促すとともに、相手方の反応を見極めることがよいでしょう。
ただし、事務的に淡々と伝えるのがよいか、丁寧にお願いをするのがよいか、ある程度強いニュアンスを伝えるのがよいかは、相手方の性格などに左右される面が大きいため、一概には言えません。

内容証明郵便を出すのも1つの手

内容証明郵便とは、いつ、いかなる内容の文書を、誰から誰宛て差し出したかということを、郵便局が証明する制度です。
普通郵便より料金は高いですが、第三者である郵便局に記録が残る上、相手方に心理的な圧力を与えることにより支払を促す、という効果が期待できます。

内容証明郵便を出す際、郵便局の窓口で、相手方に送る文書とその謄本2通(差出人及び郵便局が1通ずつ保存)、差出人と相手方の住所が書かれた封筒、必要な郵便料金(重さや文書の枚数によって異なります)を提出します。御依頼を受けた弁護士が代理人となる場合にも、内容証明郵便を利用することが多いです。

ただし、内容証明郵便は、調停・審判や公正証書に代わるほどの効力まではありませんので、内容証明郵便のみに基づいて履行勧告、履行命令、強制執行という法的手続を利用することはできません。

交渉・調停で養育費を請求する

相手方が養育費を支払わない場合、まずは話合いで解決を図ることが考えられます。この段階で、弁護士に依頼されることもよいでしょう。
ところで、話合いの手段としては、裁判所外での「交渉」と、家庭裁判所における「調停」の2種類が想定されます。

後者は、家庭裁判所に相手方を呼び出してもらい、調停委員を介して双方の言い分を提出するとともに、調停委員から説得してもらうことにより、円満な解決を図る制度のことです。裁判所外での交渉のみでは話合いが進まないことも多いため、弁護士が代理人となった場合にも、調停手続を活用することが多いです。

調停においては、父母それぞれの年収、子供の年齢・人数などを総合的に考慮しながら、養育費について話合いを行います。
そして、調停が成立した場合、裁判所の調停調書が作成されます。この調停調書に基づくと、将来において、履行勧告、履行命令、強制執行という法的手続を利用することができます。

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養育費の未払い分はどこまで遡って請求できる?

養育費は、毎月支払うという取決めをすることが通常です。このように取り決められた養育費は、5年間(ただし、調停・審判・訴訟で決められた場合は10年間)の消滅時効に服するため、注意が必要です。

したがって、例えば10年より前の未払養育費については、相手方が任意に支払ってくれない限りは、相手方に対して支払を強制することはできません。

未払分の養育費請求については、消滅時効が完成していない限り、子供の現在の年齢は問題となりませんので、例えば子供が成人に達した後、過去の未払分の養育費を請求することも可能です。
ただし、養育費についてそもそも取決めがなかったり、口約束しかなかったりした場合は、問題です。一般的に、養育費の請求時(例えば、書面で請求した日や、調停を申し立てた日)以降の分に限り支払が認められますので、相手方が任意に支払ってくれない限りは、請求時より前の養育費の支払を受けることは困難です。

養育費未払いの理由が環境の変化によるものだった場合

離婚後の父母の再婚、新たな子の出生、収入の大幅な増減、子の養子縁組などの出来事は、養育費の取決めの時点で予測されなかったものに限り、「事情変更」に当たります。
事情変更が生じた場合、当然に養育費の額が増減するわけではなく、養育費の額の変更に関する新たな合意をしたり、調停を成立させたり、審判が行われた後に、初めて養育費の額が変更されます。

なお、相手方から調停(養育費減額請求調停)を申し立てられた場合、請求時(書面で減額を請求した日又は調停申立日)からの養育費が減額されるのが原則ですが、事案によっては、事情変更時(例えば、子の養子縁組時)まで遡って減額される場合もありますので、特に注意が必要です。

未払養育費にお困りなら弁護士にお任せください

養育費は、子供を育てていく上で頼りになるものですが、支払期間が長期間にわたるため、未払が重なってしまうことは珍しくありません。
法的知識が乏しいため、そもそも書面による取決めが全くなかったり、請求の明確な意思表示を行うことが遅れたり、請求方法が不十分だったりする場合が散見されます。また、養育費について公正証書を作成したり、家庭裁判所の調停を成立させたりした後も、未払が発生してしまい、回収方法が分からないという方も多くいらっしゃいます。

養育費の未払が発生するのではないかという不安を抱えている方や、既に未払となった養育費の回収方法が分からずにお困りの方は、早めに弁護士に御相談ください。
弁護士は、正しい法的知識に基づいて、適切な手段を選択するとともに、養育費に関する不安を解消することができます。

福岡法律事務所 所長 弁護士 今西 眞
監修:弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 所長
保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:47535)
福岡県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。