
監修弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 副所長 弁護士
離婚訴訟を提起する場合、または提起されたという場合に、弁護士を付けるのとそうでないのとでどのような違いがあるのか、また、その方法はどのようなものかについて解説します。
離婚裁判は弁護士なしでも対応できる?
裁判の手続に、弁護士は当事者の代理人として関与するものです。したがって、「代理人を立てずに、当事者自身が対応する」ということも理論上は可能ですが、法的な手続ですので、実際にできるかどうかは、やる気や時間、能力などの問題があるところです。
弁護士なしで離婚裁判を行うデメリット
弁護士なしで離婚裁判を行う場合、裁判の手続全てを自分で判断して行わなければならないという問題があります。
書面の用意や裁判の出席などで労力がかかる
離婚裁判も裁判手続の一種ですので、訴状や答弁書、準備書面等、主張や反論等は書面で行わなければなりません。また、訴訟期日への出廷や尋問の申し出や同手続への対応等も自身で行わなければならないというのは、容易ならざるところかと思われます。
離婚原因が主張できず、不利に進む可能性がある
訴訟では、主張や証拠は法的に整理し、的確に行うことが肝要です。法律の要件に当てはまらない主張を乱発しても、有利な結果にはつながりません。相手の主張内容への反論一つとっても、その中には極めて重要な意味を持つ主張と、結論にあまり影響しないものが含まれていることが通常ですし、記憶が曖昧な点を安易に認めてしまい、不利な結論に大きく傾くことも懸念されます。これらの見極めと的確な反論・証拠提出等は、ご自身で対応される場合に苦慮される点かと思われます。
相手に弁護士がついている場合、不利になる
上記のとおり、離婚裁判も法的手続の一種であり、主張等は法的に整理し、的確に行う必要があります。相手方だけが弁護士を入れているという状態は、法的手続に対する素養の差によって、不利な状況に陥ってしまうことが懸念されます。
弁護士に依頼するよりも長期化しやすい
主張や証拠・争点の整理等が的確に行われない場合、無意味な論戦を延々展開してしまい、手続が長期化することも懸念されます。
一人で対応することによるストレスが大きい
多くの方にとって訴訟手続は未経験の分野だと思います。裁判所の独特のルールや手続の対応だけでも、負担は少なくないと思います。相手方の主張は、事実とそうでないもの、目線の違いによって評価が異なるもの等、自身にとっては心外と思われる内容が含まれていることがあります。自身で対応する場合、これを真正面から受け止めてしまうことのストレスもあると思います。
離婚裁判を弁護士なしで進めるときの流れ
あくまで自身で離婚裁判に臨むという場合のおおまかな流れは以下のとおりです。
自分が提起する場合は訴状の作成や、添付書類等とともにこれを提出することが必要です。その際には印紙貼用や郵券の納付等も求められます。適式に訴状の提出が行われた場合、裁判所による相手方への送達・期日指定等が行われます。
その後は期日への出廷や主張や反論、証拠の提出の応酬、証人や当事者尋問等の手続に対応していくことになります。判決に不満がある場合は法定期限内に控訴等の手続をとる必要もあります。
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離婚裁判を弁護士なしで行う場合にかかる費用
離婚裁判を自分で行う場合、基本的には裁判所に納付する印紙や郵券や出廷の際の交通費等のみ、ということになります。印紙の額は請求内容によってもやや異なりますが、離婚のみの場合で13,000円、附帯処分は一件につき1200円を追加です。慰謝料を請求する場合は金額によって計算が変わります。
弁護士に依頼した場合にかかる費用
弁護士に依頼した場合は、上記の実費以外に弁護士費用が必要となります。その金額は事務所によって異なりますし、事案によっても異なるところですが、着手金は税別で30万~60万程度、成功報酬は固定報酬(税別30万~60万)と変動報酬(税別10%~16%)の組み合わせとしているところが多いのではないでしょうか。
弁護士なしでも離婚裁判を有利に進めるには?
弁護士なしで離婚裁判を少しでも有利に進めるためには、知識や情報、経験等が不可欠です。時間や労力等には限界がありますので、専門家が積み重ねてきたものに匹敵するというのは困難だと思いますが、あくまでその道を選ぶという場合は、できる範囲でやるしかないと思います。
離婚裁判を検討中であれば、法律の専門家である弁護士に依頼することをおすすめします
弁護士に依頼した場合には、少なく見積もっても70~100万円前後の手出しは必要になると思います。大きな金額ですが、当初から適切に対応していれば生じなかった不利益等は、慰謝料や財産分与等の金銭的なものだけではなく、離婚そのものは親権・養育費、面会交流等の問題にも及びうるところです。
一旦自分で対応してしまった結果、「すでに不利な内容を認めてしまっていた、当初から依頼しておくほうがよかった」というような事態も懸念されますので、まずは事前に専門家に相談することを強くお勧めいたします。
相続の場面においては、様々な問題が発生します。その中で相続人のうちの一人が、認知症になっているという場合も、近年の高齢化社会においては十分に考えられます。
本稿では、相続人の中に、認知症の人がいた場合、どのような問題が発生する可能性があるのかについて、解説していきます。
相続人が認知症になったらどうなる?
相続人が認知症となった場合、その程度にもよりますが、判断能力が低下し、意思能力(法律行為をするに際し、自身の行為の意味や結果を判断することのできる能力)が失われてしまうことがあります。
民法上は、「当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。」(民法3条の2)とされています。
そのため、相続人の中に一人でも認知症の人がいる場合、以下のような問題が発生する可能性があります。
遺産分割協議ができなくなる
認知症になった場合、判断能力が低下し、意思能力が失われてしまいます。その結果、遺産分割協議において有効な意思表示ができないと判断されることとなります。
そのため、認知症のある相続人が合意をしたとしても、そのような遺産分割協議は、有効な意思表示がないものとして、無効となります。
また、遺産分割協議は、相続人全員が参加する必要がある以上、仮に、他の相続人のみで遺産分割協議書を作成したとしても、無効となります。
認知症になった相続人は相続放棄ができなくなる
相続放棄も法律行為であるため、意思能力がなければ無効となります。そのため、認知症になった相続人は、法律上、単独で、相続放棄を行うことができなくなります。
仮に、相続放棄の意思表示がなされたとしても、意思表示に欠陥があるものとして、無効であるとされる可能性があります。
相続できなくなる認知症の程度はどれくらい?
相続人が認知症であるからと言って、一律に相続ができなくなるというわけではありません。認知症と言っても、その症状の重さは様々です。
この点、相続できなくなる認知症の程度に関して、明確な判断基準は存在せず、個別の症状の重さに応じて、判断されていくことになるでしょう。
軽い認知症だったら相続手続きできる?
前述したように法律上、意思表示が無効とされるのは、意思能力を有しない場合です。
認知症の程度が軽く、意思能力がある、すなわち、法律行為をするに際し、自身の行為の意味や結果を判断することのできる能力があると判断された場合には、上記のような意思表示が有効になる可能性はあります。
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認知症の相続人がいる場合は成年後見制度を利用して相続手続を行う
認知症の相続人がいる場合には、成年後見制度を利用して、相続手続を行うことができます。
成年後見人は、認知症の相続人に代わって、法律行為を行う権限があるので、認知症の相続人が単独で行うことのできない、遺産分割協議や、相続放棄について、代理人として、行うことができます。
成年後見人は、将来認知症になった場合に備えて、事前に後見人を選任し、契約をしておく任意後見という方法と、裁判所に選任してもらう法定後見という方法の二通りで選任することができます。
認知症の人がいる場合の相続手続きに関するQ&A
認知症であることを隠して相続したらバレますか?
相続手続においては、銀行口座の移動等、本人確認を伴う場面が多々存在します。そのため、そのような本人確認の場面で、相続人が認知症であることが判明する可能性は十分にあります。
前述したとおり、認知症の方がいる場合の遺産分割協議は無効となりますし、仮に、遺産分割協議書等の書類に、認知症の方に代わって署名押印した場合には、私文書偽造罪(刑法159条1項)に問われる可能性もあります。
唯一の相続人が認知症になってしまった場合、相続手続きはどうなるのでしょうか?
相続人が一人ということであれば、遺産の分割という問題が生じることはありません。しかし、認知症となり、相続人に意思能力がないと判断される場合には、そのことから、いくつかの問題が発生します。
具体的には、本人確認の必要な口座の移動手続や、弁護士等への相続手続の委任(委任も法律行為であるため)、相続により取得した不動産についての処理(売買や賃貸借)等々です。
認知症の方がいる場合の相続はご相談ください
高齢化が進んでいる社会状況の中で、相続人の中に認知症の方がいる可能性はどんどん高まっていきます。そして、そのような場合には、前述したような問題が起こり得ます。
適切な手続の下、相続をしなければ、せっかくの手続も無駄になってしまいます。相続の際のご不安やご不明点があれば、ぜひ弁護士に一度ご相談ください。
別居や離婚に伴い、父母のどちらかは、子供と離れて暮らさなければならなくなります。
しかし、特に子供が幼い場合、面会交流を実施するためには、子供と暮らし監護養育する親(監護親)の協力が必要不可欠であり、監護親に面会交流を拒否されてしまうと、なかなか子供と会うことができないのが現実です。
では、子供との面会交流を拒否された場合、どうしたら良いのでしょうか。
面会交流を拒否されてしまうケースとその対処法について解説します。
面会交流は原則的に拒否できない
面会交流は、子供の健全な成長のために非常に重要なことであり、子供の福祉のために行われなければならないものです。
そのため、実務では、子の福祉を害するような特段の事情がない限り、面会交流の実施が認められるべきであると考えられています。
面会交流の拒否が認められてしまう正当な理由とは?
上記のとおり、原則として、面会交流の実施は認められるべきであると考えられています。
しかし、一定の場合には、面会交流の実施が認められないケースがあります。
以下例を挙げてご紹介します。
子供が面会交流を嫌がっている
面会交流を拒否される理由の一つとして、「子供本人が面会交流を嫌がっている」というものがあります。
これには、子供が非監護親から虐待を受けたり、目の前で監護親が非監護親からDVを受けたりしていたために、恐怖心があり純粋に会いたくないと思っているケースに加えて、監護親の心情を慮っていたり、監護親から非監護親の悪口を吹き込まれて悪感情を持っていたりするために、面会交流を拒否しているケースが考えられます。
難しい問題ですが、面会交流は子供のための制度という側面が大きいので、子供が自身の意思をしっかりと伝えることができるある程度の年齢(10歳程度)に達しており、面会交流を拒絶する意思が真意であると判断されるときには、子供の意思が尊重されることになります。
子供を虐待するおそれがある
面会交流時に非監護親が子供を虐待するおそれがあるケースでも、面会交流を拒否されることがあります。
別居以前に子供を虐待していた事実があり、面会交流時にも虐待する危険性が高い場合、面会交流を拒否できる正当な理由になることは明らかでしょう。
子供を連れ去るおそれがある
面会交流時に非監護親が子供を連れ去るおそれがあるケースでも、面会交流を拒否されるでしょう。たとえ親の片方である非監護親によって連れ去られるのだとしても、突然、慣れ親しんだ環境や監護親、友人等から切り離され、強制的に生活環境を変えられてしまうことは、子供にとって大きな精神的ダメージになります。
もっとも、①弁護士等の第三者を立ち合わせる、②面会交流支援団体を利用する、③建物内で面会交流を行う、④試行的面会交流から始める等、連れ去りの危険を抑えながら面会交流を実施する手段はあるため、監護親の意思のみで完全に拒否できるものではないでしょう。
配偶者や子供へのDV・モラハラがあった
被害者が監護親であった場合には、面会交流を拒否する正当な理由にはなりません。
なぜなら、監護親が非監護親からDV・モラハラを受けていたからといって、必ずしも子供が非監護親を恐れる等、悪感情を抱くとは言い切れないからです。
被害者である監護親が、非監護親と直接会うことを拒んでおり面会交流を実施できない場合は、弁護士や面会交流支援団体等、第三者を通じて面会交流を実施することを提案すると良いでしょう。
一方、子供がDV・モラハラ加害者である非監護親を恐れている場合には、面会交流が子供の福祉に資するものでないとして、面会交流を拒否される可能性が高いでしょう。
このような場合に面会交流の実施を希望するのであれば、まずは間接的な交流(間接的面会交流)から段階を踏んでいくことをお勧めします。
間接的面会交流とは、子供と対面して交流するのではなく、手紙のやり取りをしたり、誕生日や記念日等に贈り物をしたり、定期的に写真や動画等を送ってもらったりする方法で子供と交流する、面会交流のひとつの形です。
間接的面会交流を重ねることで、お子様に徐々に慣れてもらいましょう。
面会交流を拒否されたときの対処法
面会交流は、法律で定められた権利です。不当に拒否された場合には対処する方法があります。
しかし、具体的にどのような対処方法を採るべきかについては、個別の事情を考慮したうえで、専門的な判断をすることが必要です。
ここでは、面会交流を拒否された場合に採りうる手段を挙げていきます。
ご自身のケースでどの手段が使えるか分からないという場合、弁護士に相談することをご検討ください。きっと最善の手段を示してくれるでしょう。
元配偶者と話し合う
まずは、元配偶者と話し合うという方法が考えられます。話し合いをすることで、どうして面会交流を拒否するのか、面会交流にするにあたって元配偶者が何を求めているのか、ということが分かることもあります。
それが分かれば、法的手続を採らなくても、話し合いによって面会交流を実現することができる可能性があります。
面会交流調停の申立てを行う
話し合いによっても面会交流に応じてもらえなかった場合や、そもそも話し合いを拒否されてしまった場合には、裁判所に面会交流調停の申立てを行うという方法があります。
調停手続は、裁判所で調停委員を間に挟んで行われる話し合いの手続です。
両当事者がそれぞれの言い分を主張していき、調停委員がそれを調整していきます。
話し合いがまとまり、調停が成立すれば、面会交流が実現できます。
ただ、調停はあくまで話し合いの場ですので、話し合いがまとまらない場合、調停が成立せず、面会交流を実現することはできません。
調停が成立しなかった場合、審判という裁判所の判断によって、面会交流が認められる可能性があります。
間接強制の申立てを行う
面会交流の条件について合意した調停調書や、面会交流を命じる審判書には執行力があるため、監護親が任意に面会交流をしない場合には、強制執行を行うことができます。
この場合に行うことができる強制執行は、間接強制に限られます。
間接強制では、面会交流を実施する義務を負う監護親に、面会交流を実施しないことについて一定額の金銭の支払いを命じ、心理的に圧を掛けることにより、面会交流の実施を促します。
ただし、間接強制を行うためには、監護親の義務をある程度特定している必要があります。
具体的には、当初の取り決めの際に、①面会交流の日時または頻度、②各回の面会交流時間、③子供の引渡し方法を取り決めておく必要があるとされています。
親権者の変更の申立てを行う
面会交流の拒否が続いた場合、親権者の変更を申し立てるという方法が考えられます。
親権者の変更は、「子の利益のため必要があると認めるとき」、すなわち、親権者と定められた父または母が親権の行使を続けることが、子供の福祉のために不適当であることが判明した場合や、その後の事情の変更により親権者を他の一方に変更する必要が生じた場合に認められます。
事情の変更とは、親権者が病気に罹患したり、所在不明となるなどして親権者としての職責・義務を果たすことができなくなったり、子供に対する監護を放棄したりするなど、親権者を変更しないと、子供の福祉が害されるような事情が生じることを指します。
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面会交流を拒否されたら慰謝料請求は可能?
面会交流を拒否されたことを理由に、慰謝料を請求できる場合があります。
ただし、面会交流の拒否を根拠とする慰謝料請求が認められる場合には、ある程度強度の違法性がなくてはなりません。
例えば、面会交流に関して監護親の義務がある程度特定されているにもかかわらず、嘘をついて子供との交流を妨害していた、または正当な理由なく長年実施することを拒否し続けていたといった事実を証明することが必要となります。
慰謝料の相場としては、数十万~100万円程度でしょう。
なお、面会交流の協議に一切応じようとしなかったり、実施を拒否した理由が身勝手なものであったり、実施できなかった期間が長かったり、面会交流に関する約束を一度も守っていなかったりする等の悪質なケースでは、慰謝料が高額になりやすいと言えます。
面会交流を拒否された際のQ&A
面会交流を拒否されたので養育費の支払いを止めようと思いますが構いませんか?
面会交流は、子供の健全な成長にとって重要なことであり、子供の福祉のために行われるべきものです。
そして、養育費の支払は、親の監護義務・扶助義務の履行であり、面会交流の実施とは直接関係するものではありません。
したがって、両者は性質が異なりますので、面会交流を拒否されたとしても、養育費を支払わなくていいということにはなりません。
面会交流を子供が拒否した場合はどうしたらいいでしょうか?
子供の真意が面会交流を拒否するというものであるときは、面会交流を実施することは困難です。
このような場合に強引に面会交流を行おうとすれば、子に対して精神的苦痛を与えることになりますし、子供自身も、非監護親が自分の意向を受け入れてくれないとして、非監護親に対して不信感を抱き、非監護親と監護親及び子供との関係がさらに悪化するおそれもあります。
そのため、子供が面会交流を拒絶していて、これが、子供の年齢や発達の程度、拒否の実質的な理由やその背景事情、その他の事情により真意であるといえる場合には、面会交流を強引に行うべきではないでしょう。
他方、子供が面会交流に消極的であるものの、面会交流を実施する余地があるときにおいて、子の心身の負担が過大とならない内容や条件の下で面会交流の実施が可能な場合には、面会交流の実現へ向けて、監護親や子供への働きかけをしていくことが考えられます。
面会交流を拒否されてお困りの方は弁護士にご相談ください
ここまで、面会交流を拒否されてしまうケースやその対処法について説明してきました、面会交流は、子供の福祉のためにも積極的に実施されるべきものであり、正当な理由なく拒否することは許されません。
しかし、正当な理由の有無にかかわらず、面会交流を拒否されてしまうケースが多くあるのは事実です。
面会交流を拒否されてしまった場合の対処法は、拒否される理由によって異なるので、まずはその理由を聞き出し、適切な手立てを考える必要があります。そのためにも、専門家である弁護士への相談をご検討ください。
交渉のプロでもある弁護士は、相手方である監護親の頑なな心を解きほぐし、きっと面会交流を拒否する理由を明らかにすることができるでしょう。
そのうえで、専門知識と交渉力を活かして話し合いに臨むので、満足のいく結果をもたらしてくれることが期待できます。
面会交流を拒否されてしまったら、お一人で悩まず、ぜひ弁護士にご相談ください。
借金を残して死亡した場合、その人が残した借金はどうなるでしょうか。
相続人は借金も引き継がなければならないのか、借金を引き継がないでよい方法はないのか、借金を引き継ぐ場合、債権者にどのように対応しなければならないのか等、相続に関する借金問題は、正しく理解しておかなければ予期しない損害を被る可能性がありますので、注意する必要があります。ここでは、相続と借金の問題について、いくつか解説していきます。
親の借金は相続放棄すれば払う必要がなくなる?
相続人は、被相続人から、一切の相続財産を引き継ぎます。相続財産には、プラスの財産のみならず、マイナスの財産(借金等)も含まれます。
マイナスの財産(借金等)がある場合、相続人が、マイナスの財産を相続しないようにするためには、相続放棄が第一の選択肢です。
相続財産の範囲内でマイナスの財産を弁済する制度として、限定承認という制度もありますが、相続人全員の同意が必要なことに加え、非常に複雑なため、あまり利用されていません。
相続放棄したら借金はどうなる?誰が払うの?
相続放棄の申述が受理された場合、相続放棄をした相続人は、初めから相続人とならなかったものとみなされます(民法939条)。
ある相続人が相続放棄をした後、同順位の相続人(配偶者を除く。)が他にいれば、その同順位の相続人が、借金を相続したままの状態となります。
一方、同順位の相続人がいなくなれば、次順位の相続人が、相続人となります。
すべての相続人が相続放棄をした場合、後記のとおり、相続財産は法人となり、相続財産清算人が管理処分することになります。
借金がある場合の相続放棄によるトラブルを防ぐための注意点
相続放棄を行うにあたって、最も注意しなければならないことは、「そもそも相続放棄をすべきかどうか」です。
仮に、借金(相続債務)があったとしても、相続債務を払っても残るような遺産がある場合もあります。
このようなときは、相続放棄をしてしまうとかえって損になってしまいます。
相続放棄をすべきかどうか、冷静に判断するために、遺産の調査が不可欠です。
また、相続放棄を検討している間は、遺産を元手に借金の返済をしないことも重要です。
遺産を処分する行為をすると、法定単純承認として、相続放棄が認められなくなってしまいます。
相続人全員が相続放棄したら借金はどうなる?
すべての相続人が相続放棄をした場合、相続財産が法人となります。
この場合、債権者その他の利害関係人の申立てにより、家庭裁判所が、相続財産清算人を選任します。
その後、相続財産清算人により、相続財産から借金が弁済されることになります。
ただし、相続人全員が相続放棄をするような事案では、借金を支払えるだけのプラスの財産がないことが通常であるため、相続財産清算人の選任が申立てられることは稀です。
相続に強い弁護士があなたをフルサポートいたします
相続放棄には期限がある
相続放棄は、『自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内』(民法915条1項。「熟慮期間」といいます。)にする必要があります。
熟慮期間を過ぎた場合、原則として、相続放棄をすることはできません。
借金があることを知らなかった…期限後には相続放棄できない?
熟慮期間を過ぎた後でも、例外的に、借金があることを知らなかった等の事情があれば、相続放棄ができる場合があります(最判昭和59年4月27日判タ528号81頁など)。
借金ないと思い、相続放棄の手続を行わなかったものの、後々、借金が判明したようなケースでは、必ず弁護士に相談することをお勧めします。
熟慮期間経過後に相続放棄できた事例
熟慮期間経過後に相続放棄が受理された事例としては、以下のようなものがあります。
- 被相続人が借金をしていた形跡がなく、相続開始後数年後経ってから督促状が送付された事案
- 被相続人の死亡後長期間経って、固定資産税の納付通知が届いた事案
相続放棄後に借金の取り立てを受けた場合の対処法
相続放棄が受理された場合、「相続放棄申述受理証明書」を取得することができます。債権者に対し、「相続放棄申述受理証明書」を見せると、取立てが止まることが通常です。
極めて稀ですが、債権者が、相続放棄の効力自体を争ってくることがあります。
このような場合、相続放棄の効力は、民事訴訟で判断されることになります。
借金の相続放棄に関するQ&A
亡くなった人の借金はどうやって調べたらいいですか?
銀行や消費者金融での借金については、信用情報機関(CIC、JICC、全銀協)に対する開示請求により調べることが可能です。
また、その他の借金についても、被相続人の自宅の書類などを調べることで、借用証、請求書といったものが出てきて判明することがあります。
ただし、個人とのお金の貸し借りなどは、借用書もないことがあるため、被相続人の借金(連帯保証などを含みます。)を完全に調べ尽くすことは困難です。
実家の住宅ローンが残っていることが判明しました。相続放棄したらどうなりますか?
相続放棄をした場合、借金だけでなくプラスの財産も受け取ることができなくなります。
そのため、住宅ローンを相続しないだけでなく、実家も相続できないという結果になります。
実家での居住継続を希望する場合などは、相続放棄をせずに、住宅ローンの借換えをする方法や、相続放棄をした後、任意売却等で実家を買い取る方法などを検討することになります。
親が借金まみれなのですが、生前に相続放棄できますか?
相続放棄は、相続開始後でなければすることはできません。
したがって、被相続人となるべき方が存命の間は、相続放棄をすることはできません。
借金の相続放棄についてお困りでしたら、弁護士にご相談ください
相続放棄は、「提出すれば終わり」といった簡単なものではありません。
相続放棄をすべきかどうか、相続放棄が認められるかどうか、相続放棄が受理されるかどうかなど、様々な法的な検討が必要となります。
相続放棄をするかどうかお悩みの方は、お早めに弁護士にご相談ください。
相続人が複数いる場合、不動産を含む遺産は、相続人の共有となります。
そして、法定相続分又は法定相続分を修正した割合で、不動産の相続登記をすることが可能です。
しかし、共有の相続登記をすることによるデメリットもあります。
本稿では、共有による相続登記をする場合のメリット・デメリットについて解説します。
共有名義とはどんな状態のこと?
共有とは、各共有者が、共有持分に応じて、不動産の部分的な所有権を有していることです。
共有名義での相続登記をすると、共有者である相続人は、当該不動産の全部について、それぞれの持分に応じた使用をすることができます。
共有名義のメリット
共有名義とするメリットは、共有となった物の利用、管理、処分について、共有持分に応じて、各共有者の意向が反映されることです。
例えば、共有物の管理に関する事項は、持分の価格の過半数で決めるのが原則です(民法252条1項)。
一方、共有物の変更、処分は、共有者全員の同意が必要となるのが原則です。
また、共有物の使用収益は、共有持分に応じて行うことができます。
共有名義のデメリット
共有名義とするデメリットは、上記メリットと表裏一体します。
共有者の意見が合わない場合などは、共有物の管理に支障が生じることがあります。
共有者の一部が行方不明になった場合も同様です。
このような場合の対策として、共有物分割や不在者等不明共有者の持分の取得の制度などが設けられていますが、手間とコストが非常にかかります。
また、共有名義の最大のデメリットとして、時間が経てば経つほど、相続により共有者が増えることが挙げられます。
多数いる共有者全員と連絡を取るだけでも一苦労となります。
共有名義で不動産を相続する場合の手続き
一般的には、複数相続人で不動産を相続する場合であっても、遺産分割協議により、各相続人の持分を決めてこれを登記申請します。
もっとも、共同相続人間で協議がまとまらなかった場合には、相続人は、遺産分割調停を家庭裁判所に申し立てることになります。
あくまで調停は裁判所を介した話し合いの手続きであるため、共有名義とすることに同意を得られない場合には、不成立となります。
調停でまとまらなかった場合には、裁判所に遺産分割を定めるよう求める審判を行うことになりますが、裁判所は共有名義にするとの判断を出来るかぎり避ける傾向にあります。
したがって、共有名義で不動産を相続する場合には、話し合いによる共同相続人間の合意が必要となります。
なお、遺産分割を待たずに、法定相続分で暫定的に登記をすることもできます。
ただし、遺産分割により改めて持分移転登記等が必要となり、登録免許税などのコストがかかります。
そのため、このような方法が採られることは稀です。
自分が相続した持分だけ名義変更したい場合
相続人のうち一人についてのみ、相続登記をすることはできません(不動産登記先例昭和30年10月15日民甲2216局長回答)。
相続人の一人に限り登記を申請すると、登記簿上は、相続人と被相続人が不動産を共有していることになります。
共有名義で不動産を相続したくない場合の対処法
①遺産分割調停で、不動産以外の財産を取得できるよう協議をする、②遺産分割の結果共有になった場合でも、共有物分割により不動産を競売にかける、③そもそも相続しない(相続放棄する)などが考えられます。
不動産以外の遺産がどれだけあるかや、他の共同相続人の方針等により、最適な対処法が異なります。
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共有名義の相続登記を解消する方法は?
①共有持分を処分(売却、贈与等)する、②共有物分割調停を申し立て、共有物分割を行う等の選択肢が考えられます。
対象となる不動産の価値、他の共有者の資力、最悪の場合、共有物を競売により売却できる見込みがあるかどうか、といった点により、方針が異なってきます。
個別具体的な状況に応じて、最適な方法を選択することになります。
共有名義での相続登記に関するQ&A
共有名義の不動産の固定資産税は、どう課税されるのですか?
共有名義の不動産の固定資産税については、共有者が連帯して納付する義務を負っています(地方税法第10条の2第1項)。したがって、共有者全員が固定資産税全額を連帯して納付しなければなりません。
実際には、納付書の送付を受けた代表者が他の共有者の持分も含めてまとめて固定資産税を納付することになりますが、代表者が納付しない場合には他の共有者が納付する必要があります。
もっとも、共有名義の不動産の固定資産税は、各共有者が共有持分の割合に応じて負担するものであるため(民法253条1項)、固定資産税を他の共有者の持分分もまとめて支払った者は他の共有者に対して、他の共有者の持分の割合に応じた固定資産税相当額の支払を求めることができます。
なお、相続によって不動産が共有となった場合には、代表者を指定した上で、市区町村に「相続人代表者指定届」を提出する必要があります。提出することによって、届出をした代表者宛てに納税通知書等が届くようになります。
親と長男の共有名義の不動産、親が死亡したらどうなる?
例)家族構成:父・母・長男・次男で、父と長男の共有名義の場合
共有者は、親族といった相続が生じる関係にあることが一般的には多いといえます。
例えば、父、母、長男、次男の家族で、土地について父が2分の1、長男が2分の1の持分割合で共有しており、父が死亡して相続が発生したとします。
この相続において、遺言もなく、遺産分割協議も未了の状態の場合には、法定相続分に従って、本件土地は以下のとおりの持分割合での共有となっています。
まず、上記の例でのそれぞれの法定相続分は、母が2分の1、長男が4分の1、次男が4分の1です。法定相続分に従った割合で父の2分の1の持分をさらに分割して取得することになるため、母が8分の2、長男が8分の1、次男が8分の1の共有持分を相続することになります。
したがって、母が8分の2、長男が8分の5(元々持っていた8分の4+相続によって取得した8分の1)、次男が8分の1の割合で土地を共有することになります。
このような共有状態を解消するには、代償分割や換価分割といった方法で遺産分割を行う必要があります。
共有持分を相続する場合の登録免許税はいくらですか?
相続登記の登録免許税は、不動産の価格(固定資産税評価額)の1000分の4となるのが原則です。
ただし、この登録免許税は、租税特別措置法により軽減されている場合があります。
例えば、令和7年3月31日までに、土地について所有権の保存登記(不動産登記法第2条第10号に規定する表題部所有者の相続人が受けるものに限ります。以下同じです。)又は相続による所有権の移転登記を受ける場合において、これらの登記に係る登録免許税の課税標準となる不動産の価額(注)が100万円以下であるときは、その土地の所有権の保存登記又はその土地の相続による所有権の移転登記については、登録免許税を課さないこととなっています。
共有名義の相続登記についてご心配な点は、ぜひ弁護士にご相談ください
共有名義での相続登記は、問題の先送りにすぎず、いずれ不動産の処分や活用が難しくなるため、基本的にはお勧めできません。
もっとも、場合によっては共有名義による相続登記が最も適切な遺産分割方法となることもあります。
共有名義にすべきか、それとも単独名義すべきかお悩みの方や、ご心配の点がある方は、ぜひ弁護士にご相談ください。
法律の専門家である弁護士が、ご相談者様のニーズに沿った解決に導きます。
将来の相続に備えて、生前に遺言書を作成される方も多いと思います。
遺言書を作成した場合には、相続人において、「遺言書の検認」を行う場合があります。
今回は、遺言書の検認手続が必要となるケースや期限、手続の流れについて、ご説明いたします。
遺言書の検認とは
遺言書の検認とは、家庭裁判所において、遺言の種類や遺言書の状態を確認し、遺言書の現状を明確にする手続です。
その目的は、相続人間で紛争が生じないように、遺言書の偽造や変造を防止し、遺言書の現状を保全することにあります。
有効性を判断するものではない
遺言書の検認は、あくまでも将来的に、相続人間で遺言書をめぐる紛争が生じないように遺言書の偽造・変造を防止し、現状を保全するために行うものであって、その遺言書が、有効なものか、無効なものであるかを判断する手続ではありません。
遺言書の検認が必要になるケース
遺言書の種類としては、主に①自筆証書遺言、②秘密証書遺言、③公正証書遺言があります(特別方式の遺言書は除く。)。
この中で、作成された遺言書が①自筆証書遺言または②秘密証書遺言である場合には、検認手続が必要となります。③公正証書遺言の場合には、公証人が遺言書を作成することから、遺言書の偽造・変造の可能性が少ないと考えられ、検認手続は不要とされています。
また、自筆証書遺言については、令和2年7月10日より、「法務局における自筆証書遺言の保管制度」が創設されて法務局で保管できるようになりました。
この制度を利用して法務局で保管された自筆証書遺言は偽造や変造される可能性がないため、検認が不要となります。
検認せずに遺言書を開封してしまったらどうなる?
民法上、封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人等の立会いがなければ開封することができないと定められています(民法1004条3項)。
そして、検認手続を経ずに、遺言書を勝手に開封してしまった場合には、「5万円以下の過料に処する」ことが定められています(民法1005条)。
そのため、遺言書を発見しても、勝手に開封しないよう注意が必要です。ただし、遺言書を開封してしまっても、検認を行うことは可能です。
遺言書の検認に期限はある?
民法上、遺言書の検認に明確な期限の定めはありません。
もっとも、遺言書の保管者または遺言書を発見した相続人は、遅滞なく家庭裁判所に検認を請求しなければならないと定められています(民法1004条1項)。
遺言書の検認手続きの流れ
以下では、遺言書の検認手続の流れについてご説明いたします。
実際に、遺言書を保管している人や遺言書を発見した場合には、以下のような手続を踏む必要があります。
手続きをする人(申立人)
遺言書の検認手続の申立人となる者は、遺言者の保管者または遺言書を発見した相続人です。
必要書類
遺言書の検認手続を行うにあたって、必要となる書類は以下のとおりです。
- 検認手続の申立書
- 戸籍謄本(遺言書の出生時から死亡時まで)
- 相続人全員の戸籍謄本
- 遺言者の子(及びその代襲者)が死亡している場合には、その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までの戸籍謄本
- 相続人が第二順位や第三順位の場合には、遺言者の相続人であることを示す戸籍謄本
- 相続人が不在の場合には、遺言者の父母の出生時から死亡時までの戸籍謄本
申立先
遺言書の検認手続の申立先は、遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所となります。
遺言者の最後の住所地を確認するためには、遺言者の住民票あるいは遺言者の戸籍の附票等で住所を確認する必要があります。
検認手続きにかかる費用
遺言者の検認手続の申立てにかかる費用としては、遺言書1通につき、収入印紙800円分が必要となります。
それに加えて、裁判所に納めておく郵便切手も必要となり、その郵便切手については、申立先の家庭裁判所に事前に問い合わせを行い、確認しておく必要があります。
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遺言書の検認が終わった後の流れ
家庭裁判所において、検認期日において、裁判官は、出席した相続人等の立会いの下に封がなされた遺言書を開封します。
そして、裁判所書記官は、当該遺言書を複写して、遺言書検認調書を作成します。
その後、相続人は、遺言の執行(遺言書の内容を適正に実現すること)を行うために、検認済証明書の発行を行い、遺言書の内容に沿って遺言の執行を行うことになります。
遺言書の検認に関するQ&A
遺言書の検認に行けない場合、何かペナルティはありますか?
遺言書の検認手続の申立てがあると、遺言書の検認期日が指定され、家庭裁判所で検認期日において検認手続が実施されます。
申立人が出席すれば、相続人全員が出席しなくても検認の手続は行われます。
なお、相続人が遺言書の検認を拒否しても、遺言検認手続には影響はなく、遺言書の効力にも影響はありません。
検認できない遺言書はありますか?
上述したように、遺言書の検認手続の目的は、遺言書をめぐる紛争が生じないように遺言書の偽造・変造を防止し、現状を保全することにあります。
そして、公正証書遺言は、公証人が作成するものであって、遺言書の偽造・変造の可能性が低いため、検認手続を経る必要はありません。
遺言書の検認を弁護士に頼んだら、費用はどれくらいになりますか?
遺言書の検認手続にかかる弁護士費用は、各弁護士事務所で異なりますが、一般的には10万円~20万円程度となります。
検認せずに開けてしまった遺言書は無効になりますか?
遺言書の検認手続は、遺言書の有効・無効に影響を及ぼすものではありません。
そのため、検認手続を経ずに遺言書を開封してしまったとしても、遺言書の効力に影響はありません。
ただし、上述したように、民法には検認手続を経ずに遺言書を勝手に開封した場合の罰則が定められていますので、遺言書を勝手に開封しないように注意が必要です。
遺言書の検認手続きは専門家にお任せください
今回は、遺言書の検認手続についてご説明いたしました。
検認手続は、公正証書遺言や法務局で保管された自筆証書遺言以外の遺言書において必要な手続です。
他方で、検認手続を行うためには、申立てに必要な書類も多く、一人で検認手続を進めていくには、戸籍の取得や申立書の作成等に、非常に時間と労力を要します。
そのため、遺言書の検認手続を行うにあたっては、弁護士に相談・依頼すべきです。
当法人には、検認手続を含む相続手続について豊富な経験を有する弁護士が在籍しておりますので、お困りの際には是非ご相談ください。
「モラハラ」とは「モラルハラスメント」の略ですが、男性から女性へのイメージが強い方も多くいらっしゃるのではないでしょいうか?
近年、女性から男性へのモラハラも増え、「モラハラ妻」などと呼ばれたりしています。
どんな人であってもモラハラをされていい理由はありません。
モラハラで離婚したいと考えることは普通のことではないでしょうか。
この記事では「モラハラ妻」に着目し、モラハラ妻の特徴やモラハラ妻と離婚する手順などについて解説していきます。
妻によるモラハラの具体例は?
「モラハラ」という言葉は最近よく聞かれる言葉ですが、いったいどのようなことを指すのでしょうか。
「モラハラ」とはモラルハラスメントの略語で、倫理や常識を超えた嫌がらせで、相手を精神的に追い詰める行為全般を指します。そのため、精神的DVに該当することもあります。
身体的に暴力を振るわれているわけではないので、周囲に気づかれにくく、モラハラをしている側もされている側もモラハラの事実に気づかないことがあります。
では、どのような行為が「モラハラ」に該当するのでしょうか。
ここでは、「モラハラ妻」の特徴を挙げていきます。
- なんでも夫のせいする
- 夫のお小遣いなどを極端に制限する
- 自分(妻)が常に正しいと思っている
- 事実と異なることをいう
- もともとの性格が細かく文句が多い
では、ひとつずつ見ていきましょう。
なんでも夫のせいにする
妻の身の回りで起きた悪いことをすべて夫のせいにするのもモラハラ妻の特徴です。
例えば、仕事でうまくいかなかったときも「あなたが○○してくれなかったから仕事でミスをしてしまった」などと文句を言い、責任転嫁しようとします。
夫のお小遣いなどを極端に制限する
妻が家庭のお金を管理し、お互いにお小遣い制を導入していることは、双方が合意していれば何ら問題はありません。
しかし、夫の意思を無視して、夫のお小遣いだけ極端に少なく、妻は自由にお金を使っているケースではモラハラ妻の可能性が高いです。
専業主婦であっても共働きであっても夫婦が婚姻中に築き上げた財産は共有財産です。
どちらか一方が独占する権利はないため、意思を無視したお小遣い制の導入はモラハラ妻といえるでしょう。
自分(妻)が常に正しいと思っている
モラハラ妻は常に自分が正しい、自分が中心と思っている傾向があります。
そのため、「自分がやることはすべて正しく、夫がやることはすべて間違い」という法則がモラハラ妻の中では定着しているのです。
なにか不都合が起きた場合でも、その原因をすべて夫に押し付けてしまうこともあります。
なぜならいつも自分中心の世界にいるので、「正しいのは自分(妻)、悪いのは夫」という価値観が当然だと思っているのでしょう。
事実とは異なることを言う
自分が夫より優位に立つために事実とは異なることを言うこともモラハラ妻の特徴です。
例えば、「夫が自由にお金を使わせてくれない」「家事を全く手伝ってくれない」など事実と異なることを言い、かわいそうな妻を演じ、周囲を味方につけようとします。
元々の性格が細かく文句が多い
モラハラ妻は元々の性格が細かく神経質な面があります。
またモラハラ妻は自分が嫌だったことをいつまでも覚えている特徴があり、親切にしてもらったことは忘れ、新しく文句をつけるときも「あの時もこうだった」と過去を蒸し返す傾向があります。
妻のモラハラが子供に与える影響
子供のことを思い、なかなかモラハラ妻との離婚に踏み切れない方もいらっしゃることでしょう。
しかし、両親間のモラハラ行為の中で育つ子供には様々な悪影響が及んでしまいます。
子供に与える悪影響は以下のとおりです。
- 人間関係を上下関係で認識してしまう
- 人の顔色を伺って物事を判断するようになる
- 子供が人間関係に不安を持つようになる
- 子供の心身に対して見えないダメージを与えてしまう
- 将来子供もモラハラを行う大人に成長してしまう
モラハラ妻と親権の関係
通常、子供の親権は、モラハラ妻であっても母親がとりやすいと言われています。
特に、子供が乳幼児の場合は、主たる監護者が母親となる場合が多く、母親の方が子供との心理的な結びつきが強いことから、父親より母親と暮らした方が望ましいとされ、母親に親権が有利になりやすくなります。
しかし、母親のモラハラの程度がひどい、子供にもモラハラをしていたような場合など、父親と暮らす方が子供にとって利益であると認められるときには、父親が親権者になることもあります。
モラハラを理由に妻と離婚できる?
離婚することに双方が合意すれば、どのような理由でも離婚することができます。
しかし、どちらかが離婚に応じない場合は離婚調停、離婚裁判へと進みます。
離婚裁判では、「法定離婚事由」という離婚するための理由が必要となります。
法定離婚事由は以下のとおりです。
- 配偶者に不貞行為があったとき
- 配偶者から悪意の遺棄があったとき
- 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
- 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
- その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
妻のモラハラによって既に婚姻関係が破綻していると客観的に見て判断できる場合は、「婚姻を継続し難い重大な事由」に当てはまり、離婚できる可能性があります。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
モラハラ妻と離婚する方法と手順
証拠集め
離婚の話し合いの前に、より有利に離婚するためにも「証拠集め」が大事です。
証拠を相手に突きつけることで、「そんな事実はない」と反論されるのを防ぐことができます。
モラハラの証拠となるものは以下のとおりです。
- モラハラの内容を記載した日記やメモ
- モラハラの現場を記録した録画や音声
- モラハラ妻から届いたメールやSNS
- 医師の診断書や精神科・心療内科への通院履歴
離婚について話し合い(協議離婚)
モラハラ妻と離婚するためには、まずは妻と話し合います。慰謝料や親権、養育費、財産分与などについても話し合いによって決めなければなりません。
モラハラ妻は基本的に強気ですので、夫は離婚したい理由や証拠をしっかり話さなければなりません。
しかし、モラハラ妻に圧倒され、不利な条件を提示されたり、暴言を吐かれたりするおそれもあります。なるべく2人での話し合いは避け、弁護士など第三者を交えて話し合いをするべきでしょう。
夫婦での話し合いが成立しなければ離婚調停へ
話し合いでまとまらない場合は、離婚調停へと移行します。
離婚調停では、調停委員が間に入り、双方の話を聞くことで、スムーズに話し合いがまとまるようサポートしてくれるため、離婚そのものに加えて慰謝料などの金額も改めて話し合うことができます。
また、離婚調停が不成立になった場合でも、双方の対立点がそれほど多くなく、裁判所が「離婚させるのが相当だ」と判断することがあれば「調停に代わる審判」がなされ、審判離婚が成立する場合もあります。
離婚調停については以下のリンクで詳しく解説しています。ご参考ください。
離婚調停について詳しく見る調停が成立しなければ離婚裁判を申し立てる
離婚裁判とは、調停で夫婦が合意できない場合に家庭裁判所に訴訟を提起することにより、裁判官の判決にて離婚を成立させる手続です。
離婚裁判では、離婚理由が問われるため、法律が定める離婚の原因(法定離婚事由)が夫婦間に存在するかが重要です。
そのため、モラハラが法定離婚事由でもある「婚姻を継続し難い重大な事由」に該当するかがカギとなります。
妻のモラハラの証拠が十分にあり、夫婦関係が破綻していると認められると離婚できる可能性も高まります。
反対に、証拠が十分でないと、モラハラが法定離婚事由に該当していないとされ、裁判所に離婚を認めてもらうことは難しいでしょう。
離婚成立まで時間がかかる場合は別居を検討する
モラハラが日常的で生活に支障が生じているのであれば、一度別居をして精神を休ませることも大事です。
モラハラ妻と顔を合わせない生活を送ることで、状況を冷静に判断するきっかけとなりますし、モラハラ妻も自分の行いを見直すことができるでしょう。
別居中は収入の多い方から少ない方へ「婚姻費用」を支払う必要がありますので、注意しましょう。
また、子供がいる場合はどちらについていくのか考えることも大切です。
妻のモラハラで慰謝料はいくらもらえる?
慰謝料とは、相手の不法行為によって受けた精神的苦痛に対し支払われるものです。
モラハラでも慰謝料を請求することはできますが、そのためには、ある程度強度のモラハラが行われたことが必要です。
例えば、
・一度説教を始めると3、4時間かかる
・わめきだしたら止まらない
・束縛が異常
といったことが週に何回も起こるような場合に慰謝料を請求することができるでしょう。
モラハラでの慰謝料の相場は数十万~100万円ほどですが、双方が納得していればいくらになっても構いません。
モラハラ妻との離婚を検討している方は弁護士にご相談ください
モラハラ妻は常に「自分が正しい」と思っているため、離婚を切り出そうとしてもなかなか応じてもらえないことも考えられます。 また、モラハラは根がまじめで優しい男性が被害に遭いやすい傾向にあります。 しかし、モラハラは精神的DVであり、決して許されるものではありません。 少しでも「これってモラハラかな?」と感じた場合や家に帰るのが億劫になった場合などは弁護士にご相談ください。
自分では気づいていなくても、弁護士に相談することで、妻のモラハラに気づく場合もあります。また、離婚をお考えの際はモラハラ妻と一対一で話してもなかなか離婚がまとまらないでしょう。代理人として弁護士が妻と話すこともできます。 モラハラ妻にお悩みの際は私たち弁護士法人ALGにご相談ください。
配偶者との離婚に際して、婚姻関係を破綻させた責任として、相手方から慰謝料の請求をされることがあります。
これに応じるべきか否かを判断するにあたっては、典型的な発生原因や相場等の知識が不可欠ですので、以下に記載していきます。
離婚慰謝料を請求されたら確認すべきこと
慰謝料が発生する理由
離婚に至ったからと言って、慰謝料が必ず発生するというものではありません。
婚姻関係を破綻に至らしめた原因が主として一方の側に存する場合だけです。
不貞やDVは、その典型です。
モラハラや経済的DV、悪意の遺棄等も対象となりうる場合はありますが、証拠の確保や事実認定の問題があるため、これらの事由だけで請求が認容される可能性は高くありません。
相手の主張は真実か
虚偽のでっちあげや思い込み等、相手の主張する内容が事実と合致するものでないという場合もありうるところです。
「異性とラブホテルに滞在したけど不貞はしてない」という場合のように、事実がそうであったとしても、客観的には争うのが困難と言う場合もありますが、まずは相手の主張する事実が事実と合致するか、これを裏付ける証拠は存在しうるか、というような面からの検討は不可欠でしょう。
請求金額は妥当か
離婚の慰謝料は数十万円程度から数百万円というように、大きな幅があるものです。
婚姻関係の破綻に至った要因や相手方の帰責性の有無等にもよりますし、DVの場合は行為態様、怪我の程度等の具体的事情にも大きく左右されるところです。
不貞行為の場合、特殊な事案では500万円前後とされたものもありますが、一般的には100~300万円程度と言われています。
離婚慰謝料の支払いを拒否できるケース
争うことを前提にした場合、離婚慰謝料の請求は拒否することが可能な事案もあります。
以下はその典型例です。
相手が主張する内容が虚偽である・証拠がない場合
慰謝料請求の主張が虚偽によるものの場合、そもそも完全なでっち上げと言う場合と、事案の細部にズレはあるが本質部分は事実に沿っているという場合とでは異なりますが、的確に反論することで支払いを免れる場合もありうるところです。
不貞やDV等の事実は請求する側が立証することを求められますので、これらの立証に足る証拠が存在するか否か、との点も重要な意味を持ちます。
時効が成立している場合
離婚に伴う慰謝料は、原則として離婚成立の日から3年(※損害及び相手方を知った時から3年又は不法行為のあった日から20年)の経過で時効となります。
ただし、DV事案の場合、生命又は身体に対する損害部分については、3年ではなく5年です。
時効が成立している場合は、これを援用することで請求を免れることが可能です。
婚姻関係がすでに破綻していた場合
離婚慰謝料は、一方的に婚姻関係を破綻させられたことに対するものです。
別の原因でとうに破綻していたことが証拠上も明らかという事案のように、離婚慰謝料の請求が否定される場合はありうるところです。
離婚慰謝料が減額できるケース
相手にも過失がある
破綻に至っていたとまでは言えないものの、相手方に著しい落ち度が存することが証拠上も明らかというように、一定程度減額の余地につながりうる場合はありうるところです。
相場以上の慰謝料を請求された
離婚慰謝料の請求事案では、「類似の裁判例の傾向等に照らしても、相手方の請求は高額すぎる」ということもあります。
考慮されうる要素は多数ありますので、単純に「○○円以上だから高すぎる」というように明確な基準を示すことはできませんが、高いと思ったら専門家に相談するほうが良いでしょう。
有責性が低い
慰謝料の金額は事案によって幅のあるものです。
DV事案の場合でも“怪我の程度は軽微で回数も少ない”という事案と、“骨折や入院を伴うような怪我を負わせた”事案とでは、そもそもの金額が変わってきます。
離婚慰謝料が増額されるケースもある?
行為態様の悪質性や、その後の対応等、慰謝料の算定に悪影響な事情というものも存在します。
典型的には、不貞発覚後も交際関係を継続するというようなものです。
すでにやってしまったことを覆すことはできなくても、その後に適切な行動をとることで、不利な事情を積み重ねないようにするのも大事です。
離婚慰謝料を決める流れ
離婚慰謝料は、当事者間の話し合いや弁護士を通じた交渉、離婚調停等、話し合いのレベルで請求うしてくる場面と、離婚裁判等の訴訟で請求される場面の二通りがあります。
このうち、強制力を持つのは後者です。前者の過程を経た上で、決裂後に訴訟移行し、その中で認定・判断されるという流れが典型的です。
離婚慰謝料が支払えない場合の対処法
支払いたくてもお金がなくて払えない、という場合でも、債務名義(※判決や調停調書、公正証書等)
に支払うべき旨が記載されている場合は、差押え等を覚悟しなければなりません。
判決は一括払いのみですので、分割払い等にするために和解等で決着させるという判断はありうるところでしょう。
離婚慰謝料の減額に関するQ&A
公正証書を作った後でも慰謝料を減額できますか?
公正証書を作成した時点で、もはや争う余地はほぼありません。
公証人の介在の下、自ら作成したものですので、詐欺や強迫等の取消事由を主張するにも、よほどの証拠等が存在しないと困難と言わざるを得ません。
減額等を希望するならば、作成前に専門家に相談しましょう。
内容証明郵便で慰謝料請求された場合、減額交渉はどのように進めたらいいですか?
上記のとおり、考慮すべき点や判断要素が多数存するものですので、こうすればうまく行くというような一般化は困難です。
内容証明郵便は、文書の送り方の一つであり、これ自体が強制力を持つものではありませんが、自身で交渉するなら、事前に専門家に相談した上で、事案の見極めを行うべきです。
離婚慰謝料を請求されたら、弁護士に相談してみましょう
離婚慰謝料は、事案に応じた見極めや対応が求められる問題ですので自己判断は危険です。 不用意な発言等により、相手に証拠を与えてしまうなど、事態を悪化させるおそれもあります。
公正証書等を作成してから後悔しても、時すでに遅しとなる場合も、少なくとも事前に弁護士に相談しておくほうが安全ですし、内容によっては依頼を検討されたほうが良いと思います。
DVが原因で離婚を検討されている場合、配偶者に慰謝料請求できる可能性があります。
「できるだけ相手と関わりたくない」、「一刻も早く離婚をしたい」と思うかもしれませんが、離婚後の経済的な不安を少しでも払拭するためにはしっかり請求するべきです。
また、離婚後に心身が安定してから慰謝料を請求することもできます。
そこで、本記事では、
- DVが原因の離婚で慰謝料を請求できるかどうか
- DVの慰謝料の相場
- DVによる離婚で慰謝料請求する流れ
など、DVによる離婚慰謝料に関して、詳しく解説していきます。
DVで離婚する場合の慰謝料相場はいくら?
DVの慰謝料の相場は、数十万~300万程度とされています。
慰謝料の相場に幅があるのは、DVの頻度や回数、期間、婚姻年数、子供の有無など個別の事情によって金額が異なるからです。
もっとも、裁判所の手続を利用することなく、当事者間での話し合いで合意すれば、相場より高額な慰謝料を獲得できるケースもあります。
慰謝料が高額になる要素
DVが原因の離婚慰謝料は、次の要素によって高額になりえます。
①DVの回数
DVの回数が多ければ多いほど、被った精神的苦痛は大きいとして慰謝料は高額になりえます。
②DVの期間
DVの期間が長ければ長いほど、被った精神的苦痛は大きいと評価され慰謝料は高額になりえます。
③DVによる怪我や障害の程度
DVによる怪我や障害の程度がひどいほど損害が大きいとして慰謝料は高額になりえます。
④DVを受けて精神疾患を発症した
DVを受けてうつ病やPTSDなどを患ってしまった場合には損害が大きいと評価され慰謝料が高額となりえます。
⑤婚姻期間の長さ
婚姻期間が長いほど、離婚による精神的苦痛は大きいと評価され慰謝料は高額になりえます。
⑥未成熟子の人数
夫婦に監護養育が必要な子供が多ければ多いほど、離婚による精神的苦痛は大きいと評価され慰謝料は高額になりえます。
慰謝料を請求するにはDVの証拠が必要
DVが原因で離婚する際に慰謝料請求する場合、相手からDVを受けた事実を裏付ける客観的な証拠が必要です。
証拠がなければ、相手から「DVなんていない」と否定され、慰謝料の支払いに応じてもらえません。具体的に、次のようなものが有効な証拠となります。
- ケガを負った部位の写真
- ケガを負って治療した際の医師の診断書、受信記録
- DV中の動画、音声
- 室内の様子を映した写真、動画
- 警察や公的支援機関などへの相談記録
- 第三者の証言
- DVを受けていることを詳細に記載している日記・メモなど
DVによる離婚で慰謝料を請求する流れ
DVを原因とする離婚で慰謝料請求するには、一般的に次の流れで行います。
①話し合いで請求する
②離婚調停を申し立てる
③最終的には離婚裁判を提起する
次項でそれぞれ詳しく解説していきます。
①話し合いで請求する
まずは、当事者間での話し合いで離婚と慰謝料の請求をします。
ただし、相手がDV加害者の場合は、自分が行ってきた言動がDVであるとの自覚がない人も多く、離婚を切り出すと逆上して暴力を振るわれる危険があるため、話し合いが困難を極めることが多いです。
無理に自分たちだけで話し合おうとせずに、まずは実家や賃貸住宅などに別居をして、身の安全を確保してから、電話やメール、LINEなどで話し合いを行います。
子供がいるのであれば、子供にも危害が及ぶおそれがあるので、子供を連れて別居するようにします。
できれば当事者間の話し合いは回避して、弁護士に代わりに話し合ってもらうことをお勧めします。
②離婚調停を申し立てる
恐怖を感じて相手と話し合いができない、話し合いを試みたものの折り合いがつかなかった場合などは、家庭裁判所に離婚調停を申し立てて、離婚調停の中で慰謝料についても話し合います。
離婚調停は、調停委員を介して話し合いをしますので、DV加害者である相手と直接対面して話し合うことはありません。
こちらの言い分は調停委員を介して相手に伝えられ、相手の意見も調停委員を介してこちらへ伝えられます。
離婚調停においては、調停委員にDVを受けていた事実を認識してもらうことが大切です。
調停委員は事実確認をして相手に非があることがわかれば、調停委員から慰謝料を支払うように説得してくれる場合もあります。
また、はじめにDV事案であると伝えると、相手にはこちらの部屋がどこにあるか分からないように配慮してもらえ、裁判所内で偶然顔を合わせたり、待合室に押し掛けられたりすることが無いようにしてくれます。
③離婚裁判で請求する
離婚調停での離婚や慰謝料について合意できなければ、調停不成立となりますので、最終的に離婚裁判を提起します。
離婚裁判では、DVを受けていた事実と損害について証拠を用いて主張・立証していきます。
相手が離婚や慰謝料の支払いを拒否していても、裁判官がDVの事実を認めれば、判決によって離婚と慰謝料支払いが命じられます。
離婚裁判でも重要になるのがDVの事実を裏付ける客観的な証拠です。
証拠によって、DVが行われていたことが明らかであると判断されれば、離婚が認められるうえに慰謝料も獲得しやすくなります。
なお、既に離婚していても、裁判でDVを原因とする離婚慰謝料請求をすることは可能です。
離婚後に慰謝料請求する場合は時効に注意
「身の危険を感じたので一刻も早く離婚したくて、慰謝料は請求せずに離婚届を提出してしまった」という方も多いかと思います。
離婚後であっても慰謝料の請求はできますが、いつまでも請求できるわけではなく、時効が設けられています。
DVを原因とする離婚慰謝料の時効は、離婚したときから3年になります。
もし、DVを受けていたのが3年以上前というケースでも、DVが原因で離婚した場合は離婚後3年以内であれば請求できます。
時効が迫っているのであれば、時効までに内容証明郵便を郵送する方法で請求すると、時効の完成が6ヶ月間猶予されます。
また時効までに訴訟提起をすれば、時効をリセットすることができて、時効期間を延ばすことができます。
相手がDVの慰謝料を支払わない場合の対処法
一度取り決めた慰謝料が支払われないという事態が起きるケースもあります。
では、慰謝料を支払われない場合はどのような対処をしたらいいのでしょうか?
次項で詳しく解説していきます。
履行勧告・履行命令
調停や審判、裁判など裁判所の手続でDV慰謝料の支払いが決定したにもかかわらず、支払わない場合は、裁判所から「履行勧告」、「履行命令」を行ってもらえます。
「履行勧告」は、家庭裁判所が慰謝料の未払いの有無を調査した上で、取り決めた通りに支払うように電話や書面で促してくれる制度です。
法的な強制力はありませんが、相手にプレッシャーを与えられます。
「履行命令」は、家庭裁判所が一定の期限までに慰謝料を支払うように命じてくれる制度です。
正当な理由なく命令に従わなければ、10万円以下の過料に処せられる可能性があります。
履行勧告に比べて制裁があるため、ある程度の効果が見込まれますが、制裁といっても10万円以下なので強い強制力があるわけではありません。
強制執行
当事者間の話し合いで取り決めて強制執行認諾文言付公正証書を作成した場合や、裁判所の手続で取り決めて調停調書、信販調書、和解調書、判決書などを保有している場合は、強制執行の手続が行えます。
強制執行とは、相手の給与や預貯金などの財産を裁判所を通して強制的に差し押さえる手続のことです。
裁判所に強制執行を申し立てることで、相手の財産から慰謝料の未払い分を回収できます。
ただし、相手の財産や住所などを把握しておく必要があります。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
DVを行う配偶者への慰謝料請求は弁護士への依頼がおすすめ
DVを原因とする慰謝料を請求する場合は、弁護士に依頼して進めることをお勧めします。 弁護士に依頼すれば、次のようなメリットがあると考えられます。
●代わりに交渉や裁判所の手続を任せられる
DVを受けている方は恐怖心から直接相手と話し合うのは困難なケースが多いです。
弁護士であれば、代わりに相手と話し合いますので、相手と直接やりとりせずに離婚問題を進められます。
また調停や裁判などの裁判所手続も一任できますので手間も軽減できます。
●より多くの慰謝料を獲得できる可能性が高まる
弁護士であれば、過去の裁判例や法律の専門的知識、今までの経験やノウハウを活かして、より多くの慰謝料を獲得できるように尽力してくれます。
●有効な証拠についてアドバイスがもらえる
DVを理由に慰謝料請求するには、DVを受けた事実を証明できる証拠が非常に重要です。
弁護士であれば、個別の事情に合わせてどのような証拠が必要なのかアドバイスしてくれます。
弁護士法人ALGの解決事例
【事案概要】
相手方が不貞行為(浮気・不倫)と依頼者へのDVを行っていた事案です。
【弁護士方針・弁護士対応】
交渉で受任し、相手方は不貞行為の事実を認めていたものの、①離婚自体を拒否している、②弁護士介入後も依頼者本人へ連絡を取ろうとしている、③慰謝料の減額を要求してくる、といった問題点がありました。
そこで、弁護士は、相手方が有責配偶者であること、復縁はあり得ないこと、慰謝料の支払いがなければ調停や裁判を行うほかないことを書面や電話で主張しました。
【結果】
粘り強く交渉した結果、離婚への合意と慰謝料150万円の一括払いを獲得しました。
裁判まで移行すれば、慰謝料の金額を増額できた可能性もありましたが、依頼者が離婚できない状態の長期化を嫌い、早期の解決を切望されたため150万円で合意しました。
DVの慰謝料に関するQ&A
一度の暴力でも慰謝料請求できますか?
一度の暴力でも不法行為になりますので、慰謝料請求は可能です。
ただし、一回だけ平手打ちされた、一回だけ頭を引っ張られたなどでは、多くの場合、DVの証拠が残りづらく、被った精神的苦痛も少ないと判断される可能性が高いため、慰謝料額が低額になる、もしくは慰謝料の支払いが認められないのが実情です。
そのため、一度のDVで慰謝料請求するには、証拠を確保して、どのような経緯でDVが行われ、一度のDVでどの程度の怪我を負って、どんなに精神的苦痛を受けたかなどを主張・立証する必要があります。
夫が物に当たることを理由に慰謝料を請求できますか?
直接的な暴力でなくても、物に当たる、暴言を吐くといった行為は精神的に虐待する言動として不法行為に当たるので、慰謝料請求は可能です。
ただし、慰謝料請求するには、これらの行為により精神的苦痛を受けたことを証明しなければなりません。
また、被害の程度によっては、慰謝料額が低額になる可能性がありますので、慰謝料請求できるかどうかを含めて法律の専門家である弁護士に相談して進めてみてはいかがでしょうか。
DVの慰謝料請求は弁護士にご相談下さい
DVによる慰謝料請求をお考えの方は、ぜひ弁護士にご相談ください。
ご自身でDV加害者に直接慰謝料請求をするのは、危害が及ぶ可能性があり、リスクが高いです。
弁護士であれば、証拠集めから別居のサポート、相手との交渉、裁判所の手続などその都度、適切な状況判断をしてトータルサポートいたします。
DVで悩んでいる方は、一人で全てを抱え込みがちになります。
一人で抱え込んでいる間にどんどん状況は悪化するおそれもありますし、証拠を確保しそびれる恐れもあります。
離婚問題やDV問題に精通したん弁護士に相談すれば、解決の糸口が早朝に見つかり、早期に新しい人生を踏み出せるでしょう。
一人で抱え込まずに、まずはお気軽に弁護士法人ALGにお問い合わせください。
ありもしないDVを主張されたとして、それが事実と認定されてしまう可能性は否定できません。
通り魔に襲われる可能性の絶対的な排除が困難なように、不法な行為に対する完璧な予防策をとるのは難しいと思いますが、万一そのような事態になったときの心構えだけでもお示し出来たらと思います。
DVをでっち上げられた場合でも離婚は成立してしまうのか?
配偶者に対する暴力・DVは、法定の離婚原因(※婚姻を継続しがたい重大な事由)の典型であり、不貞と同様、その事実が立証された場合には、一方的な離婚や慰謝料請求が認容される可能性が極めて高いものです。
神の視点で判断されるわけではありませんので、相手方の主張や提出した証拠の内容等によっては、事実としてはでっち上げだったとしても、不利な内容の判決等はありうるところです。
そのような可能性を減らすためには、日ごろ疑わしい行動は避ける、話し合いの際には自身でも録音等の記録を残す等の予防的な防衛策をとる他ありません。
また、実際に主張された場合には、怒りにまかせず、冷静かつ的確に反論することを心掛けなければなりません。
DVをでっち上げられたときの対処法
DVの主張がされる典型的な場面として、裁判所に保護命令の申立てがされた場合と、弁護士を通じた交渉や調停、訴訟等で主張される場合が想定されます。
後者も適宜反論等は必要ですが、前者のほうが速やかな対応を求められます。
保護命令の内容は、接近禁止や自宅から一定期間の退去を命じるというものですが、だからといって、これを放置してしまうと、ありもしないDVを前提とした決定が下されてしまいますし、その決定は、後の離婚訴訟等でも不利な判断につながりかねません。
審尋までに相手の主張や証拠を吟味し、矛盾点の指摘や反証の証拠の準備をした上で、同期日でも冷静に反駁する等の対応を必ず取りましょう。
なお、虚偽申告を行うような相手方の場合、離婚届を偽造する、勝手に提出するということも懸念されます。
相手が主張するDVが虚偽であるとの証明につながるものではありませんが、離婚そのものを勝手にされたくないと思うなら、事前に市役所等に対し、「離婚届不受理申出」の手続しておくべきでしょう。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
DVの冤罪は名誉毀損で訴えることができるのか?
名誉棄損に該当するためには、当該行為が「公然と」行われたことが必要です。
相手方から自分に対してDVを主張された場合や、相手方が代理人弁護士にその旨主張し、同弁護士からそのような連絡文が送付されてきたというだけでは、この要件を充足しません。
他方で、インターネットやSNS等で虚偽のDVを拡散されたという場合は該当する可能性があります。
DVをでっち上げられてお困りの場合は弁護士に相談してみましょう
虚偽のDVを主張された場合、冷静に対応することがとても大切です。冷静に対処しなかったことで、覆せたはずの事案がそうでなくなるということもありうるからです。とはいえ、嘘をつかれたことに怒りを覚えるのは自然なことですし、自分がその当事者と言う場合に冷静かつ的確な対応をし続けるというのは、難しいことだと思います。
弁護士に相談することは、相手方の提出した証拠の内容等も踏まえて、自身が置かれている状況を確認するためにも必要でしょうし、対応を依頼することが手助けになることも多いと思いますので、万一の際にはご検討下さい。
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保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:47535)