浮気による慰謝料について

コラム

福岡法律事務所 所長 弁護士 今西 眞

監修弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 所長 弁護士

配偶者の浮気が発覚した場合、精神的な苦痛が生じることでしょう。この精神的苦痛に対する法的な救済手段として、慰謝料請求を行うことが考えられます。
もっとも、どのような場合に慰謝料請求が認められるのか、どのような方法で慰謝料請求を行えばよいのか、慰謝料請求を準備する上で注意すべき点はあるのか、慰謝料請求が認められなくなるという例外はあるのか、などの検討事項が多くあります。
この記事では、浮気による慰謝料について、詳しく解説します。

浮気・不倫が原因の慰謝料について

配偶者と浮気相手・不倫相手との間で不貞行為があった場合、慰謝料請求をできる可能性がありますが、その行為により法律上の慰謝料支払義務が生じるか否かという点については、慎重な検討が必要です。
また、誰に対して慰謝料請求をするのか、配偶者と離婚をするのかという点についても、併せて検討する必要があります。

浮気の慰謝料が請求できるのはどこからか

夫婦は、配偶者以外の者と性的な関係を持ってはならない義務(貞操義務)を負っており、これに違反して不貞行為を行った場合には、不法行為として慰謝料の支払義務を負います。
ですから、浮気による慰謝料を請求できるのは「どこから?」という観点から見ると、性的関係による不貞行為があったか否かという点が、最も重要です。ここにいう不貞行為は、性交そのものだけでなく、性交類似行為も含まれます。
ただし、不貞行為があったとしても、浮気相手が婚姻関係を知らなかったなどの例外的な事情がある場合には、慰謝料が認められない可能性がありますので、慰謝料請求を検討するに当たっては、注意が必要です。

慰謝料が発生しないケースもある

不貞行為があったとしても、必ず慰謝料請求ができるというわけではありません。
例えば、①不貞行為が行われる前に夫婦関係が破綻していた場合、そもそも慰謝料が発生しませんし、②浮気相手が、配偶者の存在を認識しておらず、かつ認識していないことについて過失がなかった場合(落ち度なく未婚だと信じていた場合)には、浮気相手に対する慰謝料請求を行うことはできません。
また、消滅時効が完成している場合、その消滅時効を主張されると(時効の援用)、慰謝料請求が認められません。
実際に慰謝料請求を検討する場合には、このような事情についても検討しておくことが望ましいでしょう。

不貞行為に対する慰謝料の相場

不貞行為に対する慰謝料については、裁判例上、100万円~300万円程度が一つの目安となります。
ただし、不貞行為の回数が少なかったり、期間が短かったりした場合には、慰謝料は低額になる可能性があります。
ですから、慰謝料請求を検討するに当たっては、そもそも不貞行為を立証するに足りる証拠があるか否かを検討し、その不貞行為の回数、期間、具体的内容を見極めた上で、請求を行った方がよいでしょう。
なお、仮に慰謝料について合意が成立したり、慰謝料の支払を命じる判決が得られた場合であっても、相手方に資力がない場合には、その金額どおりの慰謝料の支払を受けられない可能性が十分にあります。
ですから、実際に慰謝料請求を行った後は、交渉又は民事訴訟の過程で、相手方の資力を踏まえて、現実に回収できそうな金額についても見極めた方がよいでしょう。

浮気の慰謝料が高額になるケース

裁判例上、慰謝料は種々の事情を総合的に考慮して決定されますので、単純化することは困難ですが、一般的な傾向として、婚姻期間が長いこと、不貞行為の回数が多いこと、夫婦間に未成年の子供がいることなどの事情は、慰謝料を高額にさせる方向で考慮される可能性がある事情といえます。
また、相手方に十分な資力があり、かつ早期解決を求めている場合、交渉段階では、高額の慰謝料の支払を受け入れてくれる可能性があります。

浮気の慰謝料について争う場合は証拠が重要

浮気の慰謝料請求を行う際、不貞行為があったことを裏付ける証拠が極めて重要です。
証拠を提示することによって、配偶者又は浮気相手との交渉を有利に進められる可能性が高まりますし、民事訴訟を提起した場合には、証拠を裁判所に提出することが必要不可欠です。
また、一つの証拠だけでは決定的ではないということも珍しくありませんので、複数の証拠を集めることが望ましいでしょう。

写真・動画

不貞行為を立証する上で、写真・動画は重要な証拠となりますが、不貞行為そのものが撮影されることは考え難いですので、通常は、不貞行為を推認させる写真・動画の有無を検討することとなります。
例えば、二人がラブホテルに出入りしている状況が撮影された場合、不貞行為が強く推認されます。また、配偶者が浮気相手の家に宿泊している状況が撮影された場合も、不貞行為が強く推認されます。これらは、不貞行為を裏付ける写真・動画の典型例といえます。
もっとも、これらの写真・動画が撮影されることは少ないですので、実際には、より間接的な写真・動画を複数組み合わせて証拠とすることも多いでしょう。

メール・SNS

メールやSNSのメッセージが、不貞行為があったことを推認させる証拠となる場合があります。
例えば、配偶者が浮気相手の家に宿泊したことに言及している場合などが挙げられます。
もっとも、メールやSNSのメッセージの「文章」だけでは、不貞行為を直接に立証することまではできない場合が多いと考えられますので、実際上、複数の証拠を組み合わせることを検討した方がよいでしょう。

領収書

ラブホテルの領収書、二人の旅行先の領収書、浮気相手に対するプレゼント用の高価なアクセサリーを購入したクレジットカード明細などは、不貞行為の証拠となる可能性があります。
もっとも、これらの証拠だけでは、「誰と一緒に」又は「誰に対して」という点が分からないため、不貞行為を直接に立証することまではできません。ですから、他の証拠と組み合わせることが必要と考えられます。

配偶者本人が自白した音声

配偶者本人が浮気を認めた(自白した)場合、その音声データは最も直接的な証拠となります。
ただし、問い詰められて「はい。」と返事をしただけだったり、「私は浮気をしました。」という一文にすぎなかったりした場合、証拠としての価値はありません。
誰と、いつ、どこで、どのように、何をしたかという事実関係を、具体的・詳細に認めてもらうことが望ましいでしょう。

SuicaやPASMO、ETCなどの利用履歴

Suica、PASMO、ETCなどの利用履歴は、他の証拠と組み合わせることによって、浮気相手と二人でラブホテルに行ったことや、二人で旅行に出かけたことや、浮気相手の自宅に泊まったことを推認できる場合があります。
このように、間接的な証拠であっても、不貞行為の立証に利用できる可能性がありますので、十分に検討することが望ましいでしょう。
ただし、利用履歴自体からは、「誰と一緒に」という事実が分かりませんし、最終的な到着地も分かりませんので、単独の証拠としては証明力が弱いといわざるを得ず、他の証拠と組み合わせることによって、初めて証拠としての意義を有するといえます。

GPS

GPSは、その機器を携帯している本人や、その機器が取り付けられた自動車などの移動状況を具体的・詳細に裏付けることができる客観的資料ですので、不貞行為の立証に役立つ可能性があります。
もっとも、GPS機器が携帯又は取り付けられた手段によっては、違法行為となる場合がありますので、このような違法行為を行うことがないように御注意ください。

あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
離婚問題ご相談受付 24時間予約受付・年中無休・通話無料

浮気の慰謝料は誰に請求できるのか

浮気は、パートナーと浮気相手の二人による「共同不法行為」です。
慰謝料請求の相手方としては、①パートナーと浮気相手、②パートナーだけ、③浮気相手だけという3通りが考えられます。そして、各自に対して全額を請求することができますので、②③の場合であっても、例えば請求額を2分の1に縮減させるなどの必要はありません。
なお、パートナーと浮気相手の間では、本来負担すべき額を超えて支払った分について負担を求めること(求償権を行使すること)ができます。例えば③の場合、浮気相手がパートナーに対して求償権を行使する可能性があることを、事前に想定しておいた方がよいでしょう。

浮気による不貞慰謝料を決める方法と流れ

浮気が発覚して慰謝料を請求する場合、まずは配偶者及び浮気相手と交渉することとなります。請求方法は、書面でも、口頭でも、メールやLINEでも構いません。交渉の仕方に制約はありませんが、慰謝料の金額及び支払方法について明確な書面を作成することが望ましいですし、公正証書にすることも検討すべきでしょう。
もし浮気の事実自体を争われたり、慰謝料の金額や支払方法について合意できなかったりした場合、合意が成立しませんので、次のステップとして、調停の申立て又は民事訴訟の提起をすることができます。調停又は民事訴訟については、裁判所から「期日」を指定されますので、一定のペースで進行することが期待できる一方、「証拠」を提出しないと有利な結果は得られませんので、注意が必要です。

浮気に対する慰謝料請求の時効について

浮気に対する慰謝料請求は、民法上、浮気という不法行為による損害賠償請求と位置付けられます。
そして、「浮気があったという事実及び浮気相手を知った時から3年」又は「浮気があった時から20年」という期間が経過すると、損賠償請求権について消滅時効が完成します。この場合、慰謝料請求をしても、相手方から消滅時効を主張されると(時効の援用)、その請求は認められません。

よくある質問

結婚前の浮気は慰謝料が発生しますか?

結婚前に浮気をされた場合、それだけでは慰謝料は発生しません。
ただし、以下のような事情がある場合には、例外的に、慰謝料が発生する可能性があります。

  • 婚約(婚姻予約)が成立した後であるにもかかわらず、浮気をされた場合。
  • 婚姻届を提出していないため、法律上は夫婦関係にないものの、社会的・習俗的には夫婦と認められる実質を有する関係(内縁関係)にあるにもかかわらず、浮気をされた場合。

もっとも、婚約や内縁関係の成立を証明することは困難である場合が多いので、証拠資料(二人の間でやり取りされたメールやLINE、二人の関係を示す写真、挙式予定を裏付ける請求書・領収書・振込履歴、内縁の夫婦として同居していることを裏付ける住民票写し・公共料金支払履歴等)を準備した上、慎重に検討することが望ましいでしょう。

相手の自白は浮気の証拠になりますか?

配偶者又は浮気相手が浮気を認めた(自白した)場合、最も直接的な証拠となります。その内容を書面化(配偶者による自筆又は末尾の署名・押印)したり、録音・録画するなどして、証拠化することが望ましいでしょう。 ただし、単に「あなたは浮気したでしょう?」と問い詰められて「はい。」と返事をしただけだったり、「私は浮気をしました。」という程度の曖昧な内容だったりした場合、証拠としての価値はありません。 誰と、いつ、どこで、どのように、何をしたかという事実関係を、具体的・詳細に認めてもらうことが望ましいでしょう。また、その内容を裏付ける客観的証拠(メモ、メール、LINE、通話履歴、領収書、クレジットカード利用履歴、ETC履歴等)を入手することができれば、信用性が更に高まります。

パートナーから浮気の濡れ衣を着せられ、慰謝料請求された場合は支払う必要はありますか?

支払う必要はありません。
浮気が濡れ衣だった場合、あなたには法律上の慰謝料支払義務はありませんので、支払を拒絶することができます。
また、パートナーとの間に法律上の夫婦関係がなく、内縁関係にもなく、婚約も成立していないという場合には、浮気が濡れ衣であるか否かを問わず、そもそも慰謝料の支払義務発生の前提が欠けていますので、ますます支払う必要はありません。
もっとも、パートナーから浮気を疑われたことの背景には、何らかの事情があると考えられますので、冷静に話し合って、誤解を解くことが望ましいでしょう。
例えば、濡れ衣を着せられた分の慰謝料を逆に請求する、などという感情的な対応をすることは、パートナーとの関係を更に悪化させるものといわざるを得ません。まずは落ち着いて、パートナーとの今後の関係について冷静に検討することをお勧めします。

不貞(浮気)慰謝料と離婚慰謝料の違いは何ですか?

①不貞(浮気)慰謝料は不貞行為から受けた精神的苦痛に対する慰謝料であり、②離婚慰謝料は離婚という結果から受けた精神的苦痛に対する慰謝料であるといわれます。
もっとも、これらの慰謝料を請求するのは、「配偶者の不貞によって夫婦関係が破綻し、離婚するに至った場合」であるのが通常ですので、①②を一体のものとして請求することが通常と考えられますし、裁判例上も厳密に区別されているわけではないというのが実情です。
ただし、不貞行為から3年以上経過し、①について消滅時効が完成した後、不貞相手に対して②のみを請求することは原則として認められないとする最高裁判決があります。ですから、消滅時効の完成という観点からは、①②を区別する必要がありますので、御注意ください。

3年前の浮気に対して慰謝料請求することはできますか?

3年前の浮気(不貞行為)については、「浮気があったという事実及び浮気相手を知った時から3年」の消滅時効が完成している場合、その消滅時効を主張されると(時効の援用)、慰謝料請求は認められません。
もっとも、浮気の発覚が遅かったため、「浮気があったという事実及び浮気相手を知った時から3年」が経過しておらず、かつ「浮気があった時から20年」も経過していない場合、消滅時効が完成していませんので、時効(改正前民法では、後者は除斥期間と呼ばれました。)の問題はありません。
また、調停申立て又は訴訟提起により時効の完成を猶予させることができますし、相手方が慰謝料の支払義務を承認した場合は時効が更新されます。ですから、過去の浮気については、早急にこれらの手段を取った方がよいでしょう。

浮気による慰謝料について悩んだら弁護士に相談してみましょう。

配偶者の浮気は、大きな精神的苦痛を生じさせます。
この精神的苦痛に対する一つの救済として、慰謝料請求を行うことが可能ですが、法的知識に乏しい方にとっては、どのような方法でどれだけの慰謝料を請求すればよいかという判断は、容易ではありません。
弁護士は、慰謝料請求について、法的な観点からアドバイスをしたり、代理人として交渉や民事訴訟の提起を行ったりすることができます。
もし、慰謝料請求によって、傷ついた心を少しでも癒し、前を向いて歩き出すお手伝いをすることができるならば、弁護士にとっても喜ばしいことです。
浮気による慰謝料についてお悩みの方は、弁護士に御相談ください。

協議離婚とは、当事者夫婦の話合いによって離婚する方法です。必要事項を記載した離婚届を役場に提出するだけで離婚が成立します。調停・訴訟と比べて、手間も費用も掛けずに離婚することができます。離婚が成立した夫婦の約90%は協議離婚を成立させているようです。しかし一方で、本来離婚時に決めておくべきことを決めずに離婚を成立させてしまい、後悔したという方も大勢見受けられますので、注意が必要です。

協議離婚の進め方や流れ

相手に離婚を切り出す

言うまでもありませんが、まずは、相手方配偶者に「離婚したい」という意思を伝える必要があります。前触れの無い場合、相手方も動揺すると思われます。お互い感情的にならないように気を付けましょう。冷静な話合いをするには事前準備が大切です。何を・どうやって伝えるかをしっかり考え、実際の話し合いを具体的にイメージしておくことが大切です。

離婚に合意したら協議離婚で話し合うべきこと

  • 慰謝料:夫婦の一方が婚姻関係破綻の原因を作って離婚せざるを得なくなった場合、夫婦の一方は、破綻の原因を作った配偶者に対し、慰謝料を請求できます。
  • 財産分与:婚姻後に協力して築いた財産を、夫婦で分け合って清算します。
  • 年金分割:厚生年金保険等の年金額の基礎となる標準報酬について、夫婦で分割割合を定めることができます。
  • 養育費:未成熟の子供が生活するための費用のうち、非監護親(子供と一緒に暮らしていない親)がいくら負担するかを決める必要があります。
  • 親権:未成年の子供の身上の世話や教育を行ったり、財産を管理する権利義務です。離婚後は単独親権となりますので、未成年者の子供がいる場合には必ずどちらの親が親権を持つのか決めなければなりません。
  • 面会交流:離れて暮らす子供と非監護親が交流をするための決め事です。特に幼い子供がいる場合には、少なくとも日時や場所を決めておくべきです。

離婚協議書の作成と公正証書の作成

離婚協議書とは、離婚に関して夫婦間で取り決めた内容を記載した書面です。当事者で作成すれば費用はかかりません。ただし、協議書に定めた決め事が守られなかったとしても強制執行はできません。約束事を守らせるには、裁判をしてから強制執行をする必要があります。
一方、公正証書を作成すれば裁判をしなくても強制執行ができますが、手間と費用がかかります。

離婚届けを役所に提出する

夫婦間で合意ができたら、あとは離婚届を提出するだけです。離婚届は、夫婦の本籍地または一方の所在地の市区町村役場に提出します。本籍地以外の市区町村役場に提出する場合には、夫婦の戸籍謄本1通も必要です。

離婚届を提出するタイミングに注意

離婚届提出後であっても、財産分与や慰謝料に関する取り決めをすることは可能です。しかし、裁判所に財産分与の請求をするときは離婚成立から2年以内、離婚に伴う慰謝料の請求は離婚成立から3年以内にしなければなりません。また、先に離婚が成立させてしまうと、相手方の居場所が分からなくなってしまったり、本来分与されるべき財産を使い込まれてしまった等のリスクの可能性が高まります。

離婚に応じてくれない場合や協議が決裂した場合の進め方

別居を考える

離婚を心に決めたのであれば、別居することを考えましょう。
そもそも、これから別れたいと思っている相手と、同居しながら話を詰めていくこと自体が大変なストレスになります。
また、話合いによって離婚の合意ができなかった場合に離婚を成立させる最後の手段は裁判です。裁判で離婚が認められるには「婚姻関係が破綻しているか」が問題になります(破綻主義)。そして裁判所は、長期間の別居がされているかを、婚姻の破綻・形骸化と認定する重要な事実と考えているようです。

調停離婚を視野に入れる

調停とは、夫婦当事者の話し合いができない、条件の折り合いが付かずに離婚できないといった場合に、家庭裁判所を通じて行う手続きです。第三者が当事者の間を取り持つことで、円滑な話合いによる解決が期待できます。

別居中やDV・モラハラがある場合の協議離婚の進め方

別居している場合

当事者で顔を合わせての話合いではなく、手紙・メール・電話等の何らかの通信手段を使って協議を行うことになると思います。電話の場合には「言った・言わない」の争いにならないように注意が必要です。また、どのような場合でも共通して、冷静に話合う必要があります。

DVやモラハラを受けている場合の協議離婚の進め方

当事者同士での話合いによる解決は難しいと思われます。弁護士に依頼すれば、それ以降は弁護士が全ての離婚交渉を引き受けることができます。弁護士が窓口を引き受けることで、依頼者は安全な場所から交渉を話し合いを進めることができます。中には、弁護士に依頼することで報復されるのではないかと心配される方もいらっしゃいますが、実際に報復等を受けるのは非常に稀だと思います。

あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
離婚問題ご相談受付 24時間予約受付・年中無休・通話無料

協議離婚を進める際の注意点

協議内容を録音しておく

録音することで、「言った・言わない」の紛争を防ぐことができます。自分に有利なところだけを切り取っても証拠としての価値は乏しいので、録音するのであれば会話の全てを録音するようにしましょう。敢えて録音していることを伝えることで、お互い発言に慎重になり、感情的な言い争いを防ぐという効果も期待できます。

離婚届不受理申出を提出しておく

離婚の合意がないにも関わらず離婚届がなされることがないように、役所に対して離婚届を受理しないよう届出することを、離婚届不受理申出といいます。相手方配偶者に勝手に離婚届を提出される恐れがある場合には手続きをしておきましょう。

不貞やDV等の証拠を出すタイミング

証拠を出すタイミングに正解はありません。最終的な解決のためには何が適切か、大局的な視点からの判断が重要になります。

協議離婚の子供への影響

離婚が成立すると、夫婦の一方は氏が旧姓に戻るのが原則です。同じ戸籍に入るには氏を同じくしなければなりませんので、仮に親権者の氏が旧姓に戻った場合には子の氏を変更する手続きが必要です。他にも、子供の精神的なケアや、転校を伴う場合の手続き、健康保険の切り替え、銀行口座の名義変更等、大小含めて多くの影響があります。

よくある質問

協議離婚ではなくいきなり離婚調停をすることはできますか?

できます。落ち着いた話し合いができないような場合等には、第三者を交えた調停が望ましいでしょう。

離婚届を提出した後に行う手続きは、どのようなものがありますか?

大小含めれば限りありません。戸籍を編成しなければならないのは言うまでもありませんが、氏が変わるのであれば、運転免許証等の身分証明書の氏の変更や、銀行等の金融機関に対する届出、財産分与等で不動産の名義が変わった等の事情があれば登記をするなど、やらなくてはいけない手続きは山のようにあります。

協議離婚の証人には誰がなれるのでしょうか?

協議離婚をする場合、離婚届に証人2名の署名捺印が必要になります。 この証人は、成人であれば誰でも構いません。一般的には、当事者の両親や兄弟姉妹といった親族に依頼する場合が多いです。

協議離婚を進める際、第三者の立ち合いは必要ですか?

基本的には第三者の立ち合いはおすすめしません。第三者として最も考えられるのは、肉親や友人だと思います。しかし、いずれも当事者達に近い立場にいるからこそ、当事者一方の肩を持ったり、あるいは当事者を感情的に非難してしまうことで、紛争が悪化することがあります。
このような恐れがなく、専門的な知見をもって冷静かつ建設的な協議を進められる方であれば、立ち会っていただくことが有益なこともあるとは思いますが、極めて稀なケースかと思います。

協議離婚を適切に進められるかご不安な場合は弁護士へご相談ください

離婚がしたいと思ってもそもそも離婚を切り出せない方、何をどうしたらいいのか分からないことが大きなストレスになっている人にとっては、専門家によるアドバイスや手助けは不可欠だと思います。
夫婦の話合いで離婚に関する大筋の合意はできそうな人でも、「請求できるものはしっかり獲得したい」「後悔したくない」とお考えであれば、まずは一度弁護士にご相談することをおすすめします。

相続開始後、「共同相続」という状態が生じることがあります。この状態は、暫定的なものであるため、解消しないとトラブルのもとになったり、法律関係が複雑化したりします。
本稿では、共同相続について詳しく説明していきます。

共同相続とは

共同相続とは、被相続人が亡くなり、相続が開始した後、相続人が複数いる状態をいいます(民法898条)。共同相続は、遺産に含まれる個別財産の帰属について暫定的(最終的に決まっていない)状態です。個別財産の帰属について、確定的に決めるためには、遺産分割を経なければなりません。

共有財産とは

共同相続の場合に共有となる「相続財産」とは、遺産分割の対象となる「遺産」を意味します。
共同相続の場合、遺産分割が完了するまで、相続財産は共有状態(遺産共有)になります。
ここで、被相続人が生前有していた財産と「遺産」が、必ずしも同じではないことに注意が必要です。
被相続人が生前有していた財産であっても、帰属上の一身専属権とされるものは「遺産」にはあたりません。また、金銭債権・金銭債務などは、相続の対象となりますが、相続に伴って当然に分割されるため、遺産共有にはなりません。
詳細は、遺産についての記事を参照してください。

相続財産調査 | 財産の種類や調査方法

共同相続人と法定相続人の違い

「共同相続人」と「法定相続人」は、微妙に異なります。
「法定相続人」とは、民法900条、901条所定の相続人を意味します。被相続人が存命中は、「推定相続人」と呼ばれます。
一方、「共同相続人」は、現実に遺産を共有する相続人です。例えば、推定相続人であったとしても、相続放棄をした者、相続廃除をされた者、相続分の全部譲渡をした者は、共同相続人に該当しません。これに対し、推定相続人ではない者に対して、相続分の譲渡がなされた場合、譲渡を受けた者は、共同相続人として、遺産分割に参加することになります。
このように、相続開始後の法律関係に応じて、共同相続人と法定相続人のずれが生じることがあります。

共同相続人ができること

単独でできる行為

共同相続人による遺産共有が生じている場合、共同相続人は、物権法(民法175条以下)の規律に従って遺産を管理することになります。
そのため、共同相続人は、保存行為(民法252条)に該当する行為を、単独で行うことができます。保存行為とは、財産の現状を維持するための行為です。例えば、建物の雨漏りの修繕や、不法占有者に対する明渡請求などです。
裁判例では、法定相続分による相続登記(相続を登記原因とする所有権の移転登記)なども保存行為とされます。そのため、共同相続人のうち一人から、相続登記をすることができます。もっとも、法定相続分での相続登記をしたとしても、後々、遺産分割で、不動産の所有者(共有者)が変わってしまう可能性があります。不動産の所有権移転登記には、登録免許税、不動産取得税等の公租公課や、司法書士費用等の費用がかかることが通常です。後々のことを考えると、保存行為として相続登記をするかどうか、慎重に検討した方がいいでしょう。

全員の同意書が必要な行為

保存行為が単独でできるのに対して、処分行為、つまり、遺産を売却したり、変更を加えたりする行為については、共同相続人全員の同意が必要です。例えば、遺産となった預貯金の払い戻しには、相続人全員の同意書と印鑑証明書の添付が必要となることが一般です。このような取扱いも、預貯金の払い戻しが、処分行為に該当することを前提としています。

共同相続人を辞退する方法

いろいろな事情で、共同相続人の立場から抜けたいということがあります。そのようなときに想定されるのが、相続放棄と相続分の全部譲渡です。

相続放棄は、家庭裁判所への申述により行います。相続放棄の効力が生じると、相続人としての資格を一切失います。これにより、共同相続人ではなくなり、遺産分割への参加もできなくなります。また、相続債務を支払う義務もなくなります。
注意をしなければならないのは、「相続放棄は家庭裁判所へ申述しなければならない」ということです。共同相続人間で、「相続人○○は、相続を放棄します」といった書面を作成しても、相続放棄とはなりません(遺産分割協議と評価される可能性はあります。)。そのような場合、相続債務の支払義務を免れませんので注意しましょう。

一方、相続分の譲渡とは、積極財産と消極財産とを包含した遺産全体に対する譲渡人の割合的な持ち分を譲渡することです。プラスの財産もマイナスの財産も含めて、遺産の共有持ち分を譲渡するものといえます。
相続分の全部譲渡がなされた場合、譲渡人は、共同相続人ではなくなり、遺産分割に参加する資格を失います。一方、相続債務については、相続債権者の同意(免責的債務引受に関する同意)がない限り、引き続き、譲渡人が、支払義務を負担することになります。
相続分の譲渡の場合、注意しなければならないのは、課税が生じるとことがあるということです。無償譲渡の場合、譲受人には相続税又は贈与税が課されることがあります。また、有償譲渡の場合、譲渡人には相続税、譲渡所得税が、譲受人には相続税、贈与税が課されることがあります。

単純に、「一切得しなくてもいいから、共同相続人から外れたい」というときは、相続放棄が望ましいです。

遺産分割協議をしないと共同相続状態が解消できない

遺産共有状態(共同相続状態)は、遺産分割が完了するまで続きます。

この遺産共有状態の時に、共同相続人が死亡すると、さらに相続が発生して、法律関係が複雑化します。
そのため、相続財産の調査が終わり、遺産の全容が分かった後、可能な限り早く、遺産分割協議を始めた方がいいです。

遺産分割協議や遺産分割調停については、解説ページをご覧ください。

遺産分割協議とは|揉めやすいケースと注意点 遺産分割調停の流れとメリット・デメリット
相続に強い弁護士があなたをフルサポートいたします
相続問題ご相談受付 24時間予約受付・年中無休・通話無料

限定承認したい場合は共同相続人全員の同意が必要

特殊な手続として、「限定承認」があります。
限定承認とは、相続財産の限度でのみ被相続人の債務・遺贈を弁済すべきことを留保して相続を承認するとの、相続人による意思表示をいいます(民法922条以下)。
限定承認の手続は、共同相続人の全員で、家庭裁判所に申述してする必要があります(民法924条)。また、共同相続人のうち一人が単純承認(民法920条、921条)、限定承認をすることはできません。
このような制約に加え、限定承認の手続が非常に煩雑であることから、限定承認は、ほとんど利用されていません。
詳細は、各解説ページをご覧ください。

単純承認とは|借金相続のリスクについて 限定承認とは|相続で限定承認を行うメリットとデメリット

共同相続した家に住み続けることはできるのか

被相続人が、父A、法定相続人として、母B、子C、D、Eがいたとします。
父Aと、母B、子Eが、父A所有の不動産甲建物で、同居していたところ、父Aが死亡した場合、母Bと子Eは、甲建物に住み続けることができるかどうか、検討します。
まず、母B、子C、D、Eは、共同相続人として遺産を共有しますので、甲建物も共有していることになります。そして、共有者は、共有持分に基づいて、共有物を使用収益する権限がありますので、母B、子Eは、甲建物を使用収益することが可能です。そして、母B、子Eと別に暮らしている子C、Dも、同じく共有者ではありますが、母Bと子Eに対して、明渡しを請求することは、原則としてできません(最判昭和41年5月19日民集20巻5号947頁)。また、母Bと子Eは、遺産分割により、甲建物の所有者が、最終的に確定するまで、子C、子Dに損害金を支払わなくてもよいと解されます(最判平成8年12月17日民集50巻10号2778頁)。
なお、いわゆる相続法改正により、母Bには、配偶者居住権が認められることもあります(民法1018条以下。相続開始が、令和2年(2020年)4月1日以後であることが必要です。)。

共同相続人が不動産を売ってしまった場合

共同相続人のうち一人が、遺産分割前に、相続分を第三者に譲渡したときは、他の共同相続人は、その価額及び費用を償還して、相続分を取り戻すことができます(相続分の取戻権。民法905条1項)。
これは、相続という家庭内での出来事に、全く無関係の第三者が介入することを防止することを目的とした制度です。そのため、取戻の相手方である「第三者」には、相続人は含まれないと解されています。相続分の取戻権には、1か月の期間制限があるので注意が必要です。

これに対し、例えば、遺産の中の特定の不動産について、保存行為として相続登記がされた後、共有者の一人が、第三者に共有持分を譲渡した場合、相続分の取戻権を行使することはできません。「相続分」の譲渡(民法905条1項)ではないためです。このような場合、共有物分割の手続により、共有関係を解消しなければなりません(最判平成25年11月29日最高裁判所民事判例集67巻8号1736頁)。

なお、遺産の中の特定の不動産について、共同相続人全員の同意により売却することも可能です。この場合、売却代金は、遺産分割の対象とはなりません(最判昭和54年2月22日最高裁判所裁判集民事126号129頁)。売却代金を遺産分割の対象とするためには、別途、共同相続人の全員で、その旨の合意をしておく必要があります。

共同相続はトラブルになりやすい

共同相続状態は、暫定的な状態です。遺産の管理方法でもめることもあれば、遺産の一部を処分する・しないでもめることもあります。
また、不動産の共有持分を処分できてしまう等、流動的な状態でもあります。
このような暫定的・流動的な遺産共有状態をそのままにしておくと、新たな相続の発生、遺産の一部の譲渡、滅失等による法律関係の予想外の変動が生じかねません。

共同相続は早めに解消を。弁護士にご相談ください。

以上のような共同相続状態(遺産共有状態)は、早めに解消するに越したことはありません。
共同相続状態を解消するには、複雑な法律判断が必要です。お早めに弁護士にご相談ください。

遺言書は、遺言者の考えを明らかにできる最期の機会であり、相続人たちにとっても重要なものとなります。もっとも、遺言書には厳格な要件があり、無効となる場合もあります。どのような場合に無効となるのか等、説明します。

遺言書に問題があり、無効になるケース

遺言書には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言という3種類の方式があります。
今回は、自筆で作ることができる一方で、方式で不備が生じる等、遺言書の効力が争われることが多々ある自筆証書遺言について説明します。

日付がない、または日付が特定できない形式で書かれている

自筆証書遺言は、遺言者自身の手によって、遺言書の全文・日付・氏名が書かれていなければなりません。
日付は、一般的に年月日が記載されていることまでが求められます。
もっとも、「還暦の日」「第○○回誕生日」といった一般的に日にちが分かるものは、有効となる場合がありますし、「昭和」を「正和」と記載しているような明らかな誤記についても、有効となる場合があります。

遺言者の署名・押印がない

遺言者の署名が自書となっていることで、遺言者本人を確認し、誰が遺言を作成したか明らかにすることができます。自署によって、本人の真意に基づく遺言であることを確保することができますので、署名が無いものは、原則無効です。
また、押印についても、日本の慣行上、文書の完成を担保することができるという点があります。原則押印を欠くものは無効です。ただ、指印・拇印があれば、有効となる場合があります。

内容が不明確

内容が不明確であると、遺言者の真意が分からず、手続きができないことから、無効となり得ます。
他方で、遺言の解釈にあたっては、遺言書の文言を形式的に判断するだけではなく、遺言者の真意を探究すべきものと考えられており、「単に、遺言書の中から当該条項のみを他から切り離して抽出し、その文言を形式的に解釈するだけでは十分ではなく、遺言書の全記載との関連、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などを考慮して、遺言者の真意を探究し、当該条項の趣旨を確定すべきもの」と考えられています(最高裁昭和58.3.18第二小法廷判決)。
不明確な表現があったとしても、遺言書の他の記載や、作成当時の状況等から解釈ができるのであれば、無効とならない場合があります。

訂正の仕方を間違えている

遺言文中に内容を加えたり、変更を加える場合には、遺言者がその場所を指示し、変更した旨を付記してこれに署名し、さらにその変更の場所に印を押さなければなりません。
二重線で消して訂正したような場合には、変更の方式が履行されていないため、訂正部分は無効となります。

共同で書かれている

遺言は、2人以上の者が同一の証書で行うことができません(民法975条)。
例えば、AさんがBさんに、CさんがDさんに遺贈するといったように、同一の証書に数人のそれぞれ独立した遺言がされる場合で、この遺言書は無効となります。

認知症などで、遺言能力がなかった

遺言者が遺言をする時には、遺言の能力を有していなければなりません(民法963条)。
認知症などで、遺言の能力が無い状態にて遺言書が作成されたとしても、無効となります。

誰かに書かされた可能性がある

遺言者の真意が大事になりますので、脅されて書かされた場合や、認知症などで理解できていないままに唆されて書いてしまった場合には、無効と判断される可能性があります。

証人不適格者が立ち会っていた

遺言の証人や立会人となることができない者について、民法974条に規定されています。
具体的には、

  • 未成年者
  • 推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族
  • 公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人

です。

相続に強い弁護士があなたをフルサポートいたします
相続問題ご相談受付 24時間予約受付・年中無休・通話無料

遺言書の内容に不満があり、無効にしたい場合

遺言書について、何か法的な方式を欠いている場合には、無効となる場合があります。遺言が無効であることを確認するために、遺言無効確認調停の申立てや、遺言無効確認訴訟の提起を行う方法があります。
相続人の一人に、全部の相続財産を相続させる旨の遺言書が有効な場合、他の相続人は、遺留分侵害額の請求を行うことになります(令和元年7月1日より前に被相続人が亡くなった場合には、遺留分減殺請求を行うことになります。)。他方で、遺言書が無効な場合には、他に遺言書が無ければ、遺言が無い状態で相続が発生したことになりますので、法定相続分で分けていくことになります。

遺言無効確認調停

遺言無効確認調停とは、遺言が無効であることを確認するために、話合いを行うことを求めるものです。遺言無効確認については、いきなり訴訟を行うことはできず、調停を先に行う必要があります(調停前置主義)。平行線となり、話合いでの解決が難しい場合には、訴訟に移行することになります。
なお、調停前置主義が取られていますが、いきなり訴訟を提起した場合でも、裁判所が調停に付することが相当でないと認める場合には、調停が省略される場合もあります(家事事件手続法257条2項)。

遺言無効確認訴訟

遺言無効確認訴訟は、遺言が無効であることを確認する訴訟となります。話合いではなく、裁判官が判断を下すことを求めることになります。
訴訟の際には、「1 遺言書に問題があり、無効になるケース」で説明しているような、無効となる事実を主張立証していくことになります。

時効は無いけど申し立ては早いほうが良い

遺言無効確認訴訟に時効はありません。ただ、時間が経過してしまうと、遺言がなされた当時の状況を説明することが難しくなったり、証拠が散逸してしまうこともあります。申立てを考えている場合には、早めに行動に移されることをおすすめします。

遺言書を勝手に開けると無効になるというのは本当?

遺言書の保管者または保管者がいない場合で、遺言書を発見した相続人は、遺言書を家庭裁判所に提出して、その検認を請求する必要があります(民法1004条1項)。
また、封印のある遺言書は、家庭裁判所において、相続人(またはその代理人)の立会いがなければ、開封することができません(同条3項)。
提出・検認は、公正証書遺言を除くすべての遺言書が対象となります。
提出を怠り、検認を経ないで遺言を執行した場合、または家庭裁判所外において開封をした場合には、5万円以下の過料に処せられることが規定されています(民法1005条)。
遺言書の検認は、一種の検証ないし証拠保全の手続きですので、遺言の効力の有無について判断するものではありませんが、保管されている、もしくは発見した場合には、速やかに家庭裁判所に提出しましょう。

遺言書が無効になった裁判例

公正証書遺言は、以下の方式で行われる必要があります(民法969条)
①証人二人以上の立会いがあること。
②遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。
③公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。
④遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。
⑤公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。

証人の立会いが、既に公証人による筆記のなされた後、筆記を遺言者に読み聞かせる段階に進んでからであり、証人の立会い後に遺言者による口授があったとは認められない場合に、証人の立会いを欠くものとして、無効とされた事例があります(最判昭和52.6.14)。

遺言書が無効かどうか、不安な方は弁護士にご相談ください

遺言書が無効かどうかによって、相続財産を取得する人、その内容が大きく変わることがあります。
内容によっては、遺言者が自らの意思に沿って書かれたものなのか、疑問に思われる方もいらっしゃるでしょう。
遺言書の作成時に無効となるような事情が無かったのか、また、遺言書の形式面の不備がないか、気になる方は、一度弁護士に相談されてみてはいかがでしょうか。

成年後見制度とは

成年後見制度とは、認知症、知的障がい、精神障がい等によって判断能力が不十分である者を保護するとともに、そのような者の自己決定権を同時に尊重する制度です。成年後見制度と同種の制度として、保佐人、補助人の制度があり、事理弁識能力の不足・欠缺の程度で後見、保佐、補助が使い分けられています。

成年後見制度等は、1999年(平成11年)12月1日、第146回国会で成立した「民法の一部を改正する法律」により定められました。制度の沿革としては、成年後見制度と同時に施行された介護保険制度が、成年後見制度を必要としたといわれています。
成年後見人は、本人(成年被後見人)の法定代理人として、代理権を有します。この代理権に基づいて、遺産分割協議その他の法律行為を、本人に代わって行うことになります。

相続の場で成年後見人が必要なケース

相続手続で、成年後見人が必要となる代表的な場面は、遺産分割協議をする場合です。遺産分割協議は、複雑な利害得失を踏まえた上で判断しなければなりません。しかし、認知症、知的障がい、精神障がい等によって判断能力が不十分である者は、このような判断を適切に行うことができません。成年後見人の選任が必要となる者は、意思能力がない場合が多いです。このような場合、遺産分割協議自体が無効になりえます(民法3条の2)。そのため、遺産分割を行うために、成年後見人の選任が必要になるのです。
成年後見人は、その代理権(法定代理権)に基づき、被後見人のために遺産分割協議を行います。

相続人が未成年の場合は未成年後見制度を使う

成年後見制度と混同しやすい制度として、未成年後見制度があります。
未成年後見制度は、親権者の死亡等のため未成年者に対し親権を行う者がない場合に、家庭裁判所が、申立てにより、未成年後見人を選任するという制度です(民法840条)。
未成年者は、原則として行為能力がないため、単独で、相続人として遺産分割協議等を行うことができません。未成年が、遺産分割協議等を行うときには、法定代理人が未成年者の法定代理人として行うことが通常です。一方、未成年者に親権者(法定代理人)がいないときは、未成年後見人の選任が必要となります。
なお、未成年者に親権者がいるものの、未成年者と親権者の利益が相反するときや、他の未成年者との間で利益が相反するとき、親権者は、当該行為について、親権を行うことができません。このような場合、家庭裁判所による特別代理人の選任が必要となります(民法826条1項2項)。このような場合に選任するのは、「特別代理人」であって「未成年後見人」ではないので、注意が必要です。
未成年後見人も、成年後見人と同様、代理権を有します。未成年後見人も、その代理権(法定代理権)に基づき、遺産分割協議を行います。

成年後見人ができること

成年後見人の職務には、財産管理事務(民法859条1項)と身上監護事務があります。
財産管理事務として、被後見人の財産調査、財産目録の作成、生活等のための支出金額の予定等があげられます。
身上監護として、被後見人の生活を維持するための仕事や療養監護に関する契約等があります。具体的には、被後見人の住居のための賃貸借契約、介護契約、施設等の入退所の契約、治療や入院等の手続があげられます。これに対し、成年後見人は、医療行為の同意(身体の侵襲を伴う手術等に対する同意)はできないと解釈されています。また、成年後見人は、被後見人のために選挙の投票を代理することもできません。あくまで、被後見人が、選挙権を有し、行使することになります(成年被後見人の選挙権の回復等のための公職選挙法等の一部を改正する法律)。

成年後見人になれるのは誰?

成年後見人には、欠格事由が定められています(民法847条)。特に、成年後見人となろうとする者と成年被後見人となろうとする者との間で、利害対立があるとき、そのような者は、成年後見人になることはできません。成年後見は、あくまで本人(被後見人)のための制度ですので、「本人のためにならないような行動を取るおそれ」がある者は、成年後見人として不適格であるためです。

欠格事由に該当しなければ、誰でも成年後見人になれるというのが建前です。
では、実際には、どのような方が成年後見人になっているのでしょうか。成年後見制度に関しては、最高裁判所事務総局家庭局が、「成年後見関係事件の概況」という統計資料を公表しており、これに成年後見人の内訳が報告されています。
令和2年の統計では、配偶者、親、子、兄弟姉妹その他の親族が成年後見人となったケースが全体の約20%弱となっています。親族以外が成年後見人となる場合、司法書士、弁護士、社会福祉士等が成年後見人になっています。

誰が申し立てすればいい?

成年後見の申立権者は、『本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官』です(民法7条)。民法の定めの他、老人福祉法32条、知的障碍者福祉法28条、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律51条の11の2により、市町村長に、成年後見の申立権が認められています(ただし、市町村長申立てがされることは多くありません。)。

成年後見制度申し立ての手続

成年後見の手続(後見等開始の審判手続)は、概ね、以下のような流れで進みます。

①申立て準備

②申立て(※申立て後は、裁判所の許可がなければ取り下げることができませんので、注意が必要です。)

③-ⅰ 家庭裁判所における調査
・申立人調査(面接)
・候補者調査(面接)
・本人調査(面接)
・親族への照会
などが行われます。
③-ⅱ 鑑定
→本人の意思能力を判断するための手続です。行われないこともあります。

④後見(保佐、補助)開始の審判

⑤審判の確定

⑥登記

⑦成年後見人による初回財産目録の作成、裁判所への提出

成年後見人の候補者を決める

成年後見開始申立書には、『成年後見人等候補者』を記載する欄があります。
成年後見人になってもいいという候補者がいる場合は、この欄に候補者を記載することになります。
もっとも、必ず候補者がいるとは限りません。成年後見人は、被後見人か成年後見人が亡くなるまで、被後見人のために様々な事務を行わななければなりません。もちろん、成年後見人が、被後見人の財産を勝手に使うこともできません。成年後見人の仕事は、非常に責任の重い仕事です。成年後見人の成り手が、常にいるわけではありません。
そのため、候補者がいなくても、後見開始の審判の申立てはできます。候補者がいない場合、家庭裁判所が、候補者名簿の中から、事案に応じて適任な方を選任することになります。
なお、申立書に候補者として記載された方が、必ず成年後見人に選任されるとは限りません。

必要書類を集める

後見開始の審判の申立てに必要な書類は、申立書、申立書付票、本人に関する質問票、親族関係図、親族同意書説明文、候補者質問票、財産目録、診断書、診断書付票などです(福岡家庭裁判所に申し立てる場合の基本的な必要書類)。本人の戸籍全部事項証明書、本人と後見人候補者の住民票又は戸籍の付票、成年後見等の登記が既にされていないことの証明書等も添付書類となっています。また、福祉関係者(ケアマネジャー)などに作成してもらう「本人情報シート」や、本人の健康状態に関する資料(介護保険被保険者証、療育手帳など)も添付書類です。
以上の他、家庭裁判所により必要書類が定められていることがあります。申立ての際には、必ず申立先の家庭裁判所に、必要書類を確認するようにしましょう。

また、医師に作成してもらう診断書等には、本人の意思能力の程度を適切に判断するために必要十分な内容を記載しなければなりません。記載内容に関し、家庭裁判所から「診断書記載ガイドライン」といったものが公開されています。認知症学会専門医等、後見開始の審判のための診断書に慣れている医師でなかった場合、家庭裁判所が公開しているガイドライン等をお渡しして、適切な診断書を書いてもらえるようにしましょう。

後見・補佐・補助について

後見、保佐、補助は、本人の事理弁識能力の程度で決まります。
後見は『精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者』、保佐は『精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者』、補助は『精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者』と区分けされています(民法9条、11条、15条)。
一般に、植物状態、重度の知的障がい(IQ40以下、療育手帳で最重度又は重度)、高度認知症(改訂長谷川式簡易知能スケール11点以下等)の場合、後見相当と評価されるとされています。これより判断能力がある場合、保佐又は補助となりますが、その境界は流動的です。

家庭裁判所に申し立てを行う

申立てのための必要書類がそろったら、家庭裁判所に申立てをすることになります。管轄は、本人の住所地を管轄する家庭裁判所です。

家庭裁判所による調査の開始

申立て後、家庭裁判所による調査が行われます。本人や、後見人候補者の面談が行われ、家庭裁判所調査官や参与員が、申立てに関する事情を詳しく聞き取ることになります。なお、本人の面談は、本人の体調、精神状態等により実施されないこともあるようです。

成年後見人が選任される

家庭裁判所が、後見開始を相当と認めた場合、後見開始の審判がなされ、成年後見人が選任されます。
前記のとおり、申立書記載の成年後見人候補者がそのまま選任されるとは限りません。親族間の対立が大きかったり、複雑な法律問題を抱えたていたりする場合などには、親族ではなく弁護士、司法書士、社会福祉士等の専門職が選任されることがあります。
後見開始の審判が確定すると、家庭裁判所から、東京法務局に対し、成年後見登記の嘱託がされます。成年後見登記が完了すると、家庭裁判所から、成年後見人に対し、「登記番号通知書」が送付されますので、受領後は、成年後見登記にかかる登記事項証明書の取得が可能となります。

相続に強い弁護士があなたをフルサポートいたします
相続問題ご相談受付 24時間予約受付・年中無休・通話無料

成年後見人の役割は本人の死亡まで続く

一度成年後見人に就任すると、その任務は、本人若しくは成年後見人の死亡又は家庭裁判所から解任され若しくは辞任が許可さるまで、続きます。成年後見人の仕事は、簡単にやめられないものです。
「相続の手続だけのために成年後見人になる」というのはできません。当面想定されている手続が多くなかったとしても、軽い気持ちで成年後見人にならない方がよいでしょう。

成年後見制度にかかる費用

後見開始の審判申立てのための費用は、印紙代、後見登記手数料、郵便切手代で計1万円かからない程度です。この他、医師の診断書料等の実費がかかります。また、鑑定が必要となる場合、10万円~20万円程度の費用を予納する必要があります。
これらの他、弁護士に依頼をして申立てを行う場合には、弁護士費用がかかります。
なお、交通事故等の不法行為により後見開始の審判が必要となった場合、一定額(10万円前後)の後見開始費用が認められることがあります(東京地判平成16年12月21日交民37巻6号1721頁他)。

成年後見人に支払う報酬の目安

成年後見人から、報酬付与の申立てをすると、家庭裁判所は、報酬額を決定する審判をします。
専門職が成年後見人となった場合の報酬の目安が公開されていますが、基本的な報酬が月額2万円、成年後見人の管理する財産の額が1000万円超5000万円以下の場合月額3万円~4万円、5000万円を超える場合は月額5万円~6万円です。
親族が、成年後見人となる場合には、専門職がなる場合よりも若干減額されることが多いようです。
ただし、上記はあくまで参考となる基準です。成年後見人が特別の行為をした場合には、相当額の報酬(付加報酬)が追加で付与されることがあります。
成年後見人への報酬は、被後見人の財産から支出されます。

成年後見制度のデメリット

成年後見人が就任した場合、被後見人の財産の管理処分は、成年後見人が行います。例えば、後見開始前は親族が事実上本人の財産を処分していた場合でも、成年後見人が就任すると、このような処分ができなくなります。被後見人が、多額の財産を有する場合、いわゆる相続対策を自由に行うこともできなくなります。
このような効果は、被後見人の周囲の方々(親族等)にとって不都合かもしれませんが、そもそも、被後見人の財産を管理処分するのは、あくまで被後見人本人です。被後見人に十分な判断能力がなくなった場合、周囲の方々が、その財産を自由に処分できなくなるというのは、当然の効果として受け入れるしかありません。

成年後見制度についてお困りのことがあったらご相談下さい

以上解説した他にも、成年後見に関しては、多くの法律問題があります。成年後見人が就いたからそれで安心、という簡単なものではありません。
思わぬトラブルを防止するためにも、成年後見制度の利用を検討されている方は、ぜひ一度弁護士にご相談ください。

遺言書には、公証役場で作成してもらう「公正証書遺言」の他にも、遺言者自らが作成する「自筆証書遺言」というものがあります。特別な手続を経ることなく、時や場所も選ばず作成できますので、とても簡便な方式ではありますが、法定の様式(形式的要件)を充たさないと無効になる等、作成にあたっては正しい知識が求められます。以下解説していきますので、本記事を参考にしていただければ幸いです。

自筆証書遺言とは

自筆証書遺言は、その名が示すとおり、自分で手書きして作成する遺言書のことを指します。いつでも一人で作成することができますし、紙とペン、印鑑・朱肉等の道具さえあれば、特に費用もかかりません。公証役場に出頭して手数料等を負担しなければならない公正証書遺言と比較すると、とても簡便な方式ですが、原則として、全文手書きしなければならない等、遺言書として有効とされるためのルールを遵守しなければなりません。

自筆証書遺言が有効になるための4つの条件

自筆証書遺言の形式的要件は、①全文自筆(遺言者自身の手書きで作成)、②作成日付の明示、③署名、④押印の4つです。その他、遺言者自身の問題として、15歳未満でないことや、遺言当時に遺言能力(意思能力)を有していることも求められますが、文書の形式としては、①~④の4つをきちんと遵守することが肝要です。また、訂正や文章の削除等を行う場合にも形式を守らなければ、その訂正等は無効とされてしまう点も注意が必要です。

パソコンで作成してもOKなもの

自筆証書遺言はその全文を遺言者が自筆しなければならないというのが原則ですが、2019年の民法改正により、「自筆証書にこれと一体のものとして相続財産の全文又は一部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない」との規定が新設されました。
これにより、財産目録(財産の明細を一覧にして遺言書に添付するもの)は、パソコンで作成したものや、登記全部事項証明書、通帳の写し等を添付する方法を用いることも可能となっています。 ただし、財産目録は、遺言者がその各ページに署名して、押印しなければならないというルールがありますので、この点は注意が必要です。

相続に強い弁護士があなたをフルサポートいたします
相続問題ご相談受付 24時間予約受付・年中無休・通話無料

自筆証書遺言の書き方

自筆証書遺言は、自身の財産の死後の行方について、遺言者自身が自筆で指定するものです。文面を作成するにあたっては、自身が持っている財産等の情報を踏まえた上で、どのような内容にするのかを整理しなければなりません。一般的な思考過程を記載しておきますので、頭の整理にご活用ください。

まずは全財産の情報をまとめましょう

遺言書は、財産の一部のみを対象にすることもできますし、財産の全部を対象に作成することもできます。いずれの形にするにせよ、どのような財産があるのかを洗い出すことは、誰にどれだけ分配するかという具体的な記述内容の前提となるものですので、プラスの資産だけではなく、借金等のマイナスも含めて、まずは総財産の情報を簡潔にまとめてみることをお勧めします。

誰に何を渡すのか決めます

遺言書に記載する内容は、どの財産を誰に引き継がせるかという内容が中心です。
誰に何を渡したいのか、特定の財産を引き継がせたいのか、割合的に多くを与えたいのか等、自身の希望を整理して、これに応じた記述をしましょう。

縦書き・横書きを選ぶ

縦書き・横書きは特に制限がありませんので、お好きな方法を選択しましょう。ペンは消えないものを使うべきですが、紙にも制限はありません。もっとも、重要な書類ですので、チラシの裏等に書くのはお勧めできません。市販の便せん等で良いので、遺言書であることが一見して明らかな形にしておくほうが良いでしょう。

代筆不可、すべて自筆しましょう

自筆証書遺言は(財産目録以外は)全文自筆しなければなりません。自筆が困難という場合は、作成することはできません。その場合は、公正証書遺言の作成を検討しましょう。

誰にどの財産を渡すのか書く

「遺言者の財産のうち、別紙財産目録1記載の土地は長男○○に相続させる。」というように、どの財産を誰に渡すのかを具体的に記載することが必要です。

日付を忘れずに書く

遺言書を作成した日付は、形式的要件の一つですので、自筆証書遺言には必ず自筆で記入しなければなりません。〇月吉日というように、具体的な日付が特定できないものはダメです。年月日を正確に自筆するようにしましょう。

署名・捺印をする

遺言書には署名押印しなければなりません。これがない場合、形式的要件を欠くことになってしまい無効とされてしまいます。シャチハタは必ずしも無効とされるわけではありませんが、余計なリスクを生じさせかねません。念のため、きちんとした印鑑を使うようにしましょう。

遺言書と書かれた封筒に入れて封をする

遺言書は必ずしも封筒に入れる必要はありませんが、一見して遺言書とわかるようにしておかないと、発見されないままとなってしまうことや、発見者が誤って捨ててしまうこと等も危惧されます。
また、封筒に入れて封印しておくことで、偽造・変造を一定程度防止することも期待されますので、「遺言書」という表書きや、封筒を二重にして、遺言書は裁判所の検認まで開封しないよう注意書きをしておくこと等の工夫と併せて検討しておくことをお勧めします。

自宅、もしくは法務局で保管する

自筆証書遺言は、遺言者自らが自宅等に保管する以外にも、2020年7月から始まった制度として、法務局に保管してもらうこともできます。遺言者自身が申請しなければならない等、手続の負担はありますが、偽造・変造や紛失・破棄等のリスクを回避することができます。また、関係相続人への通知といった制度もありますので、発見されないままとなるリスクも軽減されるでしょう。

自筆証書遺言の注意点

自筆証書遺言は、自分一人でも作成できるものですが、形式的要件や記載内容等、注意を払うべき点もありますので、以下記載します。

遺留分に注意・誰がどれくらい相続できるのかを知っておきましょう

遺言書は、遺産の行方を遺言者が指定するものですが、分配の偏りを大きくする場合は、遺留分を考慮した内容にしておかないと、相続人間で紛争となるリスクを高めてしまいますので、留意した内容にしておくことをお勧めします。

訂正する場合は決められた方法で行うこと

自筆証書遺言は全文自筆で作成することが求められます。そうなると書き損じや訂正等を行う場合も想定されますが、文章の削除や訂正等の変更は、遺言者自身が二重線で消した上で訂正部分に押印し、さらに変更箇所について指示し、これを変更した旨を記載した上で署名しなければ、当該訂正等は無効とされてしまいます。よくわからないという場合は、全文書き直すことをお勧めします。

自筆証書遺言の疑問点は弁護士にお任せください

自筆証書遺言は、形式的要件の問題はもちろんのこと、どのような内容にするのか、遺留分への配慮は必要か、誰がどのような形で保管するのか等、色々な判断をしなければならないものです。自ら手軽に作成できるというメリットだけに着目するのではなく、まずはどのような内容にするべきか等について、弁護士等の専門家に一度相談してみることをお勧めします。

このページでは、《離婚裁判》についての基本的な情報を詳しくお伝えします。離婚裁判をしたい場合や離婚裁判を起こされた場合の参考にしてもらえたらと思います。

離婚裁判を提起する前に

裁判の前に、裁判所の調停委員会をはさんで話し合う「離婚調停」を行う必要があります。調停で意見がまとまらない場合に、最終的な解決を望んで行うのが「離婚裁判」です。
第三者である裁判所が判断することになるので、法律で定められた要件(民法770条1項各号)に該当する事実が認められなければなりません。

家庭裁判所に訴状を提出する

原告が訴状と呼ばれる書面を提出して請求の趣旨及び請求の原因を明らかにするところから、裁判は始まります。訴状の提出先は、夫婦のどちらかの住所地を管轄する家庭裁判所が原則です(人事訴訟法4条1項)。実際には調停が行われた家庭裁判所に申し立てることが多いと思います。

訴状提出の際に必要な書類と費用

  • 訴状2部
  • 夫婦の戸籍謄本及びそのコピー
  • 主張の裏付けとなる証拠及び証拠説明書
  • 離婚とともに年金分割における按(あん)分割合(分割割合)に関する処分の申立てをする場合は年金分割のための情報通知書」及びそのコピー

等の資料が必要となります。実際に何が必要かは事案毎に異なります。
訴状のひな形や記載例等は裁判所HPからも入手できます。

第一回口頭弁論期日の通知が届く

訴状が受理されると、原告と被告のもとに、裁判所から第1回口頭弁論期日を知らせる通知(呼出状)が届きます。被告には、呼出状と一緒に、原告が裁判所に提出した訴状の副本(原本の写しの控え)等が送付されます。訴状の提出から1か月~1か月半程先の日に第1回が指定されることが多いように思います。

被告が答弁書を提出

被告は、原告の訴えの内容に対する自身の認否・反論を第1回口頭弁論期日までに「答弁書」という書類にまとめ、裁判所に提出します。

口頭弁論を行う

口頭弁論とは、裁判官の前で、原告と被告が自身の意見を主張し合ったり、その主張の裏付けとなる証拠をお互いに出し合ったりする手続きのことです。これが裁判手続きの中心となります。主張を書面で提出した場合には、口頭弁論期日で「陳述」することで、その書面を裁判官の前で読み上げたのと同じ効果が生じます。
福岡家裁の場合、1月半~2か月に1度くらいのペースで次回期日が指定されることが多いと思います。

審理の流れ

当事者の主張を整理して争点を明らかにし、事実を確定する作業が裁判の中心となります。
争点とは、原告が訴状に記載した事実のうち、被告が認めなかった事実、または、被告が主張する事実のうち、原告が認めない事実のことを言います。争点となった事実は、当事者が証拠によって立証する必要があります。裁判審理は、基本的にはこの主張・反論と、それらを裏付ける証拠を提出していく手続きになります。

離婚裁判における事実の認定

離婚裁判における原告は、「婚姻関係が破綻した」という事実を主張・立証して裁判官に認めて貰う必要があります。ところで、裁判官は当事者の生活を実際に目で見ていたわけではありませんので、当事者が主張する事実が真実かどうかわかりません。
配偶者の一方が単に「婚姻関係が破綻した」と主張をしたとしても、実際に婚姻関係が破綻したかどうかは当事者以外にはわかりません。これが事実の存否に関する争いです。
また、どのような状態を「婚姻関係が破綻した」と評価するかは人それぞれです。これが事実の評価に関する争いです。
裁判において、当事者は事実を主張するだけでなく、その裏付けとなる証拠を提出することで裁判官に事実を認めて貰う必要があります。この証拠による裏付けを立証と言います。
どのような証拠が有効かは、主張の内容によって異なります。

証拠調べ

事実認定のために当事者が提出した証拠を確認することを証拠調べと言います。証拠には紙媒体の書証や当事者の供述証拠等、様々な形の物があります。

本人尋問や証人尋問

事実認定のために当事者の話を聞く必要がある場合には、尋問期日が設けられます。尋問は、証拠調請求をした側が主尋問をした後に、相手方から反対尋問を受けることになります。さらに必要がある場合には裁判官から補充質問がされます。

あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
離婚問題ご相談受付 24時間予約受付・年中無休・通話無料

離婚裁判の判決

原告の請求内容について、裁判所が判断するのに十分な事実認定ができれば、裁判官は原告の請求を認めるか、それとも棄却する(認めない)かの判断をします。これが判決です。判決の詳しい内容は、「判決書」という書面に記載され、審理を担当した裁判官がどのような事実を認定したかが明らかになります。事案によって異なりますが、口頭弁論終結から判決までには凡そ1か月ほどかかります。

和解を提案されることもある

和解とは、互いに譲り合いをすることで紛争を解決することを言います。当事者双方が納得する柔軟な解決を図ることが期待できます。

訴えの取下げにより裁判終了

原告が訴えを取り下げた場合、裁判は終了します。判決が確定するまでの間、どの段階でも訴えを取り下げることができます。ただし、口頭弁論を行った後に取り下げる場合には、基本的に被告の同意が必要となります。

判決に対して控訴できる

第一審裁判所の判決に不服のある当事者は、判決送達日から2週間以内に上級裁判所に対して控訴をすることができ、第二審(控訴審)裁判所の判決に不服のある当事者は、上告をすることができます。

判決後の流れ

離婚届を市区町村役場に提出し、戸籍に離婚したことを記載してもらう必要があります。離婚届は、判決の確定後10日以内に提出しなければなりませんので注意が必要です。離婚届を提出する際は、判決書の謄本(原本の内容をすべて写したもの)と確定証明書も併せて提出します。なお、仮に離婚届を提出しなかったとしても、離婚は成立しています。

離婚裁判にかかる期間

司法統計によれば、多くは1年以内に終了しているようです。長くても2年以内に終了しているようです。もっとも、調停でどの程度の話合いができたのかや、争点がどこにあったのか等によってかなりの差が生じると思われます。

よくある質問

離婚届けを提出した後に必要な手続きにはどのようなものがありますか?

まずは、戸籍の問題があります。復籍するか、新戸籍を編成するかを検討する必要があります。また、氏を婚姻前の氏に戻すか、続称するかも決めなければなりません。子供の氏を変更する手続きが必要な場合もあります。事実上、女性の側が手続きを負担することが多いと思われます。

離婚に合意しており養育費のみ争う場合はどのような流れで離婚裁判は進みますか?

話し合いで解決ができない場合には、裁判所が養育費の金額を決めます。公平の観点からみて不合理でない限り、裁判所は標準算定方式という計算式に基づいて金額を決めます。標準算定方式で計算するにも、当事者の収入を認定しなければなりませんので、証拠の提出が求められます。証拠となるのは、給与所得者であれば直近の源泉徴収票、自営業者であれば確定申告書等の資料が挙げられます。

離婚裁判が不成立になってしまったら離婚は諦めるしかありませんか?

諦める必要はありません。ある裁判で請求が棄却されてしまったとしても(前訴)、再度訴えを提起することはできます(後訴)。ただし、後訴では、前訴の口頭弁論終結後に生じた事実しか主張できません。したがって、後訴では離婚が成立する可能性があります。

離婚裁判の流れをケース別で知りたい場合は弁護士にご相談ください

通常、離婚裁判が申し立てられた時というのは、当事者の話し合いでも、調停でも決着が付かなかったことになります。裁判は、離婚をしたい人、逆に離婚したくない人にとっても自分の希望を叶える最後のチャンスです。しかし、離婚の裁判を経験したことが無い場合には、どのような事実が意味を持ち、その事実をどうやって立証するかもわからないと思います。本当に自分の望みをかなえたいのであれば、専門家に相談することを強くお勧めします。

「面会交流調停」とは、夫婦の離婚後又は別居中、子との面会交流に関する話合いがまとまらない場合や、そもそも話合い自体ができない場合に、家庭裁判所で行う調停のことをいいます。
面会交流については、当事者間での話合いによる協議が進まず、お困りの方が多いのが実情です。このような場合に、面会交流調停という制度を利用することができます。
以下の記事において、面会交流調停の申立てから終了までの流れを詳しく説明します。

面会交流調停とは

面会交流とは、離婚後又は別居中に子を養育・監護していない方の親が子と面会などを行うことです。
面会交流の具体的な内容や方法については、まずは父母が話し合って決めることになりますが、話合いがまとまらない場合や、そもそも話合いができない場合が珍しくありません。このような場合に、家庭裁判所に調停を申し立てることによって、面会交流調停の手続を開始させることができます。この調停申立ては、夫婦の離婚後だけでなく、夫婦が離婚前で別居している場合にも行うことができます。
そして、面会交流調停においては、子の年齢、性別、性格、就学の有無、生活のリズム、生活環境等を考慮し、子に精神的な負担をかけることのないように十分配慮して、子の意向を尊重した取決めができるように留意しながら、話合いが進められます。

面会交流調停の流れ

面会交流調停の流れは、以下のとおりです。

①申立書の提出……家庭裁判所に、面会交流調停の申立書を提出します。書式は、裁判所のウェブサイトからダウンロードすることができます。

②第1回期日の指定……家庭裁判所によって第1回期日が指定され、郵便で通知されます。

③調停期日……家庭裁判所において、調停期日が行われます。調停委員、家庭裁判所調査官の同席の下、面会交流に関する話合いを進めます。必要に応じて、第2回以降の調停期日が行われます。

④調停成立又は不成立……当事者間に合意が成立し、これが裁判所の調書に記載されると、調停が成立します。他方で、話合いがまとまらなかった場合、調停は不成立となりますが、審判手続に移行し、裁判官が、一切の事情を考慮して、審判をすることになります。

⑤面会交流の実施……調停又は審判において面会交流の条件が定められた場合、これに従って面会交流が実施されることとなります。

申立てに必要な書類や費用について

◆必要書類

  • 申立書(裁判所のウェブサイトからダウンロードすることができます)
  • 事情説明書(同上)
  • 進行に関する照会回答書(同上)
  • 子の戸籍謄本(全部事項証明書)

◆費用

  • 収入印紙1200円分……申立書に貼りつけます。
  • 連絡用の郵便切手……裁判所からの郵送に使用されます。裁判所によって金額が異なります。

申立書の書き方と書式

面会交流調停申立書の書式と記載例は、裁判所のウェブサイトからダウンロードするがことができます。
具体的には、御自身(申立人)と相手方と子の住所、氏名、生年月日を記載するほか、申立ての理由についても簡潔に記載する必要があります。また、裁判所から期日を知らせる通知が送られるため、相手方の住所も正確に記載しなければなりません。
なお、この申立書は、相手方にコピーが送付されることを留意しておきましょう。

家庭裁判所調査官の調査

面会交流は、子の健全な成長を助けるようなものであることが重視されるべきです。
そこで、面会交流調停においては、心理学、社会学、教育学などの専門知識を有する職員である家庭裁判所調査官が関与し、子の生活状況や心情などについて調査を行います。
具体的には、子の年齢にもよりますが、家庭裁判所調査官が子と一対一で面接し、聞き取りを行うことが多いようです。その結果を踏まえて、調査報告書が作成されます。

面会交流調停で決められる内容

面会交流調停において取り決められる内容は、一般的には、以下のとおりです。

  • 面会交流の可否
  • 面会交流の頻度
  • 面会交流の日時・場所
  • 子の受渡しの方法
  • その他、面会交流に必要な条件等

なお、どの程度まで具体的に取り決めるかという点については、当事者間で合意に達するか否かに左右されますので、全ての事項を取り決めなければならないわけではありません。

あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
離婚問題ご相談受付 24時間予約受付・年中無休・通話無料

面会交流調停を拒否や欠席するとどうなるのか

面会交流調停期日への出席を拒否したり、欠席を続けたりすると、調停不成立となり、自動的に審判手続に移行した上、裁判官が一切の事情を考慮して審判をします。その際、裁判官は、当事者が調停期日への出席を拒否したり欠席を続けたりしたという事情をも、判断材料とする可能性があります。
そうすると、調停期日への出席拒否又は欠席は、最終的に、御自身にとって不利な結果をもたらす危険性があるといわざるを得ません。
ですから、一方的な出席拒否又は欠席を避け、例えば裁判所において相手方と会わずにすむような配慮を求めたり、やむを得ず欠席する場合には事前に裁判所に連絡するなどして、合理的な対応をすることが望ましいでしょう。

調停不成立の場合と不服申立てについて

当事者間の話合いがまとまらず調停が不成立になった場合、自動的に審判手続が開始され、裁判官が、一切の事情を考慮して、審判をすることになります。具体的には、調停手続における各当事者の主張、提出された資料、家庭裁判所調査官の調査結果などを総合的に考慮しつつ、子の健全な成長を重視して、裁判官の判断が示されます。
その後、審判の内容に不服がある場合、2週間以内に即時抗告をすることができます。即時抗告をした場合、高等裁判所で審理が行われます。

面会交流調停の取り下げ

面会交流調停を申し立てた側(申立人)は、調停が終了するまで、申立ての全部又は一部を取り下げることができます。
例えば、調停期日外において当事者間で合意に達したため取り下げるケースや、面会交流の実施が妥当ではないとして調停委員から取下げを勧められるケースもあります。
申立てを取り下げた後、再度調停を申し立てることは可能です。
しかし、取下げから再度の申立てまでの間隔が短い場合や、取下げと再度の申立てを繰り返した場合、そもそも相手方との間で合意に達する見込みが低いといわざるを得ませんし、調停不成立となった後の審判においても、不利な判断がされる可能性があります。
ですから、申立ての取下げについても、再度の申立てについても、慎重な検討をすることが望ましいでしょう。

面会交流調停(審判)に関するQ&A

離婚調停と面会交流調停を同時に行うことは可能でしょうか?

離婚調停と面会交流調停が同じ家庭裁判所に係属している場合、相互に関連する事件として、同じ日に期日が指定された上、両事件の話合いを同時に行うことが多いです。このような進行は、当事者間の紛争の全体的・総合的な解決につながる可能性が高まるため、当事者にとっても合理的といえます。
しかし、それぞれの調停の成立又は不成立が、同時に決まるとは限りません。当事者間の話合いの進捗に応じて、例えば離婚調停が先に成立し、面会交流調停のみが継続するというケースもあります。
また、離婚調停と面会交流調停が別の裁判所に係属している場合には、そもそも、両者を同時に行うことができないため、別々に期日が実施されることとなります。

面会交流調停の成立にかかる回数と1回の時間はどのくらいですか?

面会交流調停が成立又は不成立で終了するまでに何回の期日が行われるかという点は、事案によって異なります。
例えば、当事者間の話合いが円滑に進んだ場合、2~3回目の期日で調停が成立するケースもあります。他方で、当事者間の見解の隔たりが大きかったり、一方当事者が欠席を続けたりする場合であっても、すぐに調停不成立とはならず、調停委員が当事者双方に歩み寄りを促すのが通常ですので、より多くの回数の調停期日が指定される可能性が高いといえます。
調停期日は、平日の日中に行われ、期日1回当たりに要する時間は最大で2~3時間程度(順番待ちの時間を含みます。)を見込んでおけばよいでしょう。

面会交流について取り決めたルールを変更したい場合や守られなかった場合はどうしたらいいですか?

面会交流について、一度取り決めた内容を変更したい場合、再度面会交流調停を申し立てることになります。そして、取決めの内容を変更する必要性について、合理的・具体的に調停委員に説明する必要があります。
また、取り決められたとおりに面会交流が実施されない場合、それを履行するように裁判所から勧告をしてもらうことができます。ただし、この勧告には法的な強制力はありません。
もし、面会交流の日時・場所・方法に関して詳細に定めた調停又は審判がある場合には、強制執行を申し立てることもできます、ただし、執行官が子を面会場所に連れて行くという方法(直接強制)によることはできず、面会交流が実施されない場合に金銭を支払うべき旨を命ずる方法(間接強制)によって、面会交流の実施を促すこととなります。

面会交流調停について悩んだら弁護士に相談してみましょう。

面会交流は、子の健全な成長のために重要なものであり、父母にとっても非常に重要なものです。
しかしながら、面会交流の具体的条件について父母の間で見解の対立が大きかったり、そもそも話合い自体を拒絶されたりすることは、珍しくありません。
そこで、家庭裁判所の面会交流調停を利用することになるものの、法的知識が乏しいために、手続の進め方が分からなかったり、調停委員や家庭裁判調査官への対応方法が分からなかったりするケースも散見されます。
面会交流調停について悩んだときには、弁護士に相談してください。
弁護士は、法的知識と経験に基づいて、あなたに適切なアドバイスをしたり、調停の申立てから終了まで手続代理人としてサポートしたりすることができます。

別居を行う場合、子どもは、片方の親の元で監護されることになります。監護者・親権者を定める場合、どのようなことが重要となるのか、以下説明します。

子供を連れて別居した場合の親権への影響は?

別居をすることと、子どもの親権者となることに、どのような影響があるのが、具体的にみていきましょう。

子供を連れて別居した方が親権獲得に有利?

子どもの親権者として、どちらが適するのかを考える重要な要素の一つとして、「継続性」があります。「継続性」とは、現状の監護者の監護養育状態が安定しており、子が生活環境にも適応しているときには、その環境を重視するという考え方です。
実際、同居している親が、現在の監護状況を評価され、親権者と指定されることが多々あります。
そのような実情があるために、子供を連れて別居した方が、親権にとって有利なのでは?と質問をされることがありますが、親権者は、子どもの福祉を一番に考えて定めるべきものですので、親権の取得のためだけに、子どもを連れて別居をすることはおすすめしません。

子供を勝手に連れて別居した場合

両親で合意ができていないにもかかわらず、片方の親が、子どもを連れ去った場合には、「未成年者略取罪」(刑法224条)の構成要件に該当する可能性があります。
また、互いに子どもを連れ去り合う状況となれば、子どもの監護環境が安定せず、子どもの福祉のためになりません。連れ出す行為が、子どもの福祉のためにならない場合には、親権者として不適切と判断される一要素にもなるところです。

監護者指定について

親権の内容には、子の身上監護と財産管理があります。この内、子の身上監護(身体上の監護保護をする権利)が監護権にあたります。
離婚した夫婦の間や、別居中の夫婦の間で、どちらが子どもを監護するかを決めたい場合に、家庭裁判所で、子の監護者について協議を行い、定めることができます。

別居中の面会交流について

再度の同居とならない限り、子どもは、どちらかの親と同居ができない状態に置かれます。
面会交流は、子の福祉のために行うものです。一般的に、親子の交流は、子の福祉のために重要なものですので、長期間にわたり継続的に実施されることが望まれます。
別居中の場合は、父母間での葛藤が大きく、なかなか面会交流が行えないという場合があります。
しかし、面会交流は、子の福祉のために重要なものですので、面会交流への態度も、親権者として適正があるかどうかを判断する重要な要素となります。
当事者間で、話合いができない場合には、家庭裁判所で、面会交流に関する取り決めを行うことができます。

子連れ別居は実家に行くことで親権獲得に有利になることも

別居を行う場合、住居を確保しなければなりません。しかし、専業主婦や扶養内で就労していた女性の場合、一人で賃貸物件を借りることが難しい場合があります。
実家に居住することができる場合には、同居の両親等により、監護の補助(サポート)が期待でき、子どもにとって安心して生活のできる環境を整えることにつながります。
子どもにとって、良い監護環境を整えられることは、親権者として適格性を有するかという判断において重要なこととなります。

住民票の異動

住民票は、他の市区町村に転出・転入する場合、引越前の市区町村にて、転出前に転出届を提出して転出証明書を受け取ったうえで、引越先の市区町村において、転入した日から14日以内に転出証明書を添えて転入届を提出する必要があります。
また、同一の市区町村内で転居する場合でも、住民票のある市区町村に対して、転居した日から14日以内に転居届を提出する必要があります。
子どもの転校について、新しい住民票が必要な場合もありますので、必ず、住民票の移動は適切に行いましょう。
別居の原因がDVやストーカー行為等によるものの場合には、市区町村に対して住民基本台帳事務におけるDV等支援措置を申し出て、「DV等支援対象者」となることにより、加害者からの「住民基本台帳の一部の写しの閲覧」、「住民票(除票を含む)の写し等の交付」、「戸籍の附票(除票を含む)の写しの交付」の請求・申出があっても、これを制限する(拒否する)措置を講じることができます。 詳しくは、住民票のある市区町村にお問い合わせされることをおすすめします。

あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
離婚問題ご相談受付 24時間予約受付・年中無休・通話無料

親権者となるための条件

親権者は、子どもの健全な成長を助けることができる必要があります。
親権者の適格性の判断をする基準として、母性優先(幼児期について、特段の事情が無い限り、母性的な役割を持つ監護者に、監護養育を委ねることが、子の福祉に合致するという考え方)、継続性(現状の監護者の監護養育状態が安定しており、子が生活環境にも適応しているときには、その環境を重視する考え方)、子の意思尊重、きょうだい不分離、面会交流の許容(子ともう一人の親との面会交流)、等が挙げられます。
子どもの従前の監護環境から、現在の監護環境、今後の予想される監護環境まで、幅広く事情がみられます。
別居に関わることとして、別居先での監護環境が安定しており、子どももその環境に適応している場合には、その環境を維持する方向で監護者や親権者の検討がなされることが多々あります。

よくある質問

母親が子供を置いて別居した場合、父親が親権を取れるのでしょうか?

親権者は、子どもの健全な成長を助けることができる必要がありますので、子どもの年齢にも寄りますが、一般的に、母性的な役割を持つ監護者に育てられることが望ましいと考えられます。
子どもの主たる監護を行っていた母親であっても、子どもを置いて行った理由が、子どもの福祉に適わないものであれば、子供を置いて出て行った事実が親権者として不適切であると判断される一要素になります。 そもそも、母性的な役割を持つ監護者は、母親に限られません。父親がその役割を担っていたのならば、父親が親権者となる可能性は高いですので、「母親が子どもを置いて別居した」ということよりも、父親として、これまでどのような監護を行ってきたか、が重要になるのではないでしょうか。

高校生の子供と一緒に別居した場合は子供が親権者を選ぶことができますか?

子どもが15歳以上の場合に、監護者や親権者を定める場合、裁判所は、その子の陳述を聴かなければならないと規定されています(人事訴訟法32条4項)。
高校生の子どもであれば、自分の今後の生活も踏まえて、親権者としてどちらを希望するのか、意見を表明することができますし、その希望は尊重すべきものです。
そこで、子どもが選択した親との生活環境が安定するものであれば、子どもの希望が尊重され、親権者が定められます。

母親が子供を連れて別居しても親権者争いで負けることはありますか?

子どもは、別居となると、生活場所が変わらずとも、片方の親がいない環境に置かれることになりますので、少なからず影響を受けます。
そのような影響を受ける子どもの負担を少なくするためにも、母性的な役割を持つ監護者に育てられることが望ましいものです。
5-1と重複しますが、母性的な役割を持つ監護者は、母親に限られません。主たる監護を行うのが父親であった家庭において、子どもが父親と引き離される状態は望ましくありません。
主たる監護者から引き離して、子どもを連れ出す行為は、子どもの福祉のためになりませんので、親権者として不適切と判断される一要素になります。
そこで、主たる監護者でなかった母親が子供を連れ出したならば、親権者として不適切と判断されかねず、親権者となることが難しくなるといえます。

別居後の親権についての不安は一人で悩まず弁護士へご相談ください。

両親の別居は、子どもにとって、生活環境が大きく変わるだけでなく、精神的にも負担をかけうるものです。子どもをどのような環境で誰が監護することが望ましいのか(親権者として誰がふさわしいのか)は、それまでの監護状況等々により、一つ一つの家庭で異なります。
子どもの親権者として、どのように行動を行っていくことが望ましいのか悩まれている方は、一度、離婚に詳しい弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

本記事では、代襲相続について解説します。代襲相続の場合、通常の相続とは異なった法律関係が生じることがありますので、慎重な検討が必要です。

代襲相続とは

代襲相続とは、簡単に言うと、ある推定相続人が、相続の開始時に死亡している等、何らかの理由で相続できなくなったときに、その推定相続人の子が、代わって相続人となることです。

代襲相続が起きるのはどんな時?

相続人が先に亡くなった場合

代襲相続は、被相続人の子が、相続の開始時に死亡しているときに発生します。
例えば、祖父Aが死亡し、その推定相続人がAの長男Bであったとします。祖父Aの死亡より先に、長男Bが死亡しており、Bの子としてCがいた場合、Cが、Aの相続人になります(民法887条2項)。
この場合、仮に、Aの相続開始時点で、Cも死亡しており、その子としてDがいた場合、Dが、Aの相続人となります(再代襲。民法887条3項)。

推定相続人が兄弟姉妹であった場合も代襲相続が生じます(民法889条2項)。例えば、被相続人Aがおり、その推定相続人がAの弟であるBだったとします。Bが、Aの相続開始時点で死亡しており、Bの子としてCがいた場合、Cが、Aの相続人となります。ただし、兄弟姉妹の場合、再代襲は生じません。上記の場合で、Cも死亡しており、その子としてDがいた場合には、Dは、Aの相続人とはなりません(民法889条2項は、再代襲を定めた民法887条3項を準用していないためです。)。

相続人の資格を失った場合

代襲相続は、推定相続人の死亡の他、相続廃除の場合、相続欠格の場合にも発生します。相続廃除・相続欠格の対象となった推定相続人は、被相続人の遺産を相続することは相当ではない反面、その推定相続人の子は、被相続人の遺産を相続しても不当ではないことから、代襲相続が認められています。

相続人廃除

相続廃除とは、推定相続人が被相続人に対して虐待をする等の一定の要件を満たす場合、家庭裁判所の審判により、推定相続人の相続権を失わせることです(民法892条)。相続廃除は、遺言でも行うことができます(民法893条)。

相続廃除の場合、その子が代襲相続人となります。

相続欠格

相続欠格とは、推定相続人が故意に被相続人や同順位相続人を殺害した等、一定の場合に、その推定相続人の相続権を失わせる制度です。
相続廃除と異なり、家庭裁判所の審判を待たずに、当然に相続権が失われます。
相続欠格の場合も、代襲相続が生じます。

代襲相続人になるのは誰?

まず、亡くなった人から見て、子が相続人となるはずだった場合、その子が死亡していたら孫が、孫が死亡していたらひ孫が代襲相続人となります。
また、亡くなった人から見て、兄弟姉妹が相続人となるはずだった場合、兄弟姉妹が死亡していたら、甥姪が相続人となります。ただし、甥姪が、相続開始時に亡くなっていたり、相続廃除されたり、相続欠格となった場合には、甥姪の子は、代襲相続人とはなりません。

代襲相続するために必要な手続きはあるの?

代襲相続の場合、代襲相続人であることの証明が必要です。推定相続人(被代襲者)の死亡の場合、代襲相続人と被相続人の関係を証明する戸籍、被相続人の出生から死亡までの戸籍等で足ります。また、相続廃除があった場合には、戸籍の身分事項欄にその旨が記載されるため(戸籍法97条、戸籍法施行規則35条8号)、同様に戸籍を収集すれば足ります。
これに対し、相続欠格の場合、戸籍に記載されるわけではありません。そのため、共同相続人間における相続人の地位不存在確認の訴えによることが必要です。

代襲相続人の相続割合(法定相続分)

代襲相続人の相続分は、被代襲者の相続分と同じです。なお、被代襲者が被相続人から利益を得ていた場合、代襲者の具体的相続分を算定するにあたり、特別受益として考慮されるかどうかについては、争いがあります。また、代襲者が、代襲原因発生前に被相続人から利益を受けていた場合、特別受益に該当するどうかについても争いがあります。

孫が代襲相続する場合

孫が代襲相続する場合

上記例では、子Bの死亡前、被相続人の推定相続人は、配偶者並びに子A及び子Bでした。しかし、被相続人の死亡前に、子Bが死亡してしまったので、孫B1、孫B2が、子Bに代わって、代襲相続人となります。
相続分は、配偶者が2分の1です。孫B1、孫B2は、子Bが相続するはずだった残りの2分の1を2人で分けることになります(それぞれ4分の1ずつ相続。)。

甥姪が代襲相続する場合

甥姪が代襲相続する場合

上記の例では、被相続人の父母が第1順位の相続人となります(民法889条1項1号)。被相続人の父母が双方とも死亡していたり、相続放棄をした場合等には、被相続人の兄及び姉が相続人となるのが原則です。
もっとも、被相続人の姉は、相続開始前に死亡しています。したがって、姉の子(被相続人の甥姪)が、代襲相続人となります。

養子の子の場合

養子も、法律上の子として、推定相続人となります。そして、被相続人の死亡前に、養子について代襲原因(死亡、相続廃除、相続欠格)が生じたときは、養子の子が、代襲相続人となるはずです。もっとも、養子と、養子の子との親子関係が、養子縁組前に生じている場合、養子の子は、代襲相続人となることはできません。養子の子であれば、どのような場合でも代襲相続できるわけではないことに注意が必要です。

代襲相続の代襲相続もある(再代襲)

相続開始時点で、代襲相続人となるべき者(推定相続人の子)について、代襲原因(死亡、相続廃除、相続欠格)があったときは、代襲相続人となるべき者の子(被相続人の孫)が、さらに代襲相続人となります(再代襲。民法887条3項)。

甥・姪の子は再代襲しない

推定相続人が被相続人の子であった場合と異なり、推定相続人が被相続人の兄弟姉妹であり、その子(被相続人の甥姪)が代襲相続人となるべき場合、甥姪が死亡していたとしても、甥姪の子は再代襲しません(民法889条2項は、民法887条3項を準用せず。)。
あまりに被相続人と縁の遠いものが相続人となることは不自然という政策的配慮によるものと考えられています。

相続に強い弁護士があなたをフルサポートいたします
相続問題ご相談受付 24時間予約受付・年中無休・通話無料

代襲相続で税金が安くなることも

相続税の算定にあたっての規則控除額は、相続人の人数により決まります
(2021年6月30日時点で、3000万円+600万円×相続人の人数)。
ここで、推定相続人に代襲原因があり代襲相続が発生した場合、相続人の人数は、「代襲相続人の数」で算定されます。
具体的には、被相続人が祖父A、推定相続人が祖母B及び長男Cであった場合、基礎控額算定のための相続人の人のは、2人です。これに対し、長男Cに代襲原因があり、長男Cの子D,E,Fが代襲相続人となった場合、基礎控除額算定のための相続人の人数は、4人となります。

税金の2割加算について

相続税の2割加算とは、被相続人の一親等の血族または配偶者以外の相続人について、本来の相続税に2割を加算する制度です。例えば、祖父から孫に相続させることで、祖父から子への相続でかかるはずの相続税を免れること等を防止するための制度です。
本来、孫へ遺贈する場合には、相続税の2割加算となりますが、代襲相続の場合には、2割加とならないことに特徴があります。
一方、兄弟姉妹が推定相続人であった場合の代襲相続では、2割加算が適用されます。

相続放棄後の代襲相続に注意

推定相続人に相続放棄があった場合には、代襲相続が生じないことに注意が必要です。例えば、自分の子を代襲相続人にするために相続放棄をしても、その子は代襲相続人となりません。推定相続人以外を相続人とさせようとするときは、相続分の全部又は一部の譲渡等を検討しましょう。ただし、税務の観点からの注意が必要です。

代襲相続人に遺留分は認められているか

遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人のために、法律で保障されている一定割合の相続分をいいます。平成30年の相続法改正前は、「遺留分減殺請求権」という形で認められていましたが、改正以後は、単純な金銭債権である「遺留分侵害額請求権」へと代わりました。
★詳細は、遺留分侵害額請求権の解説記事を参照してください。

遺留分侵害額請求権

代襲相続人には、被代襲者と同様の遺留分が認められます。ただし、兄弟姉妹が推定相続人である場合、そもそも遺留分侵害額請求権(遺留分減殺請求権)が認められないため、代襲相続人がこれを行使することもできません。

代襲相続と数次相続の違い

数次相続とは、相続開始後、当該相続に関する遺産分割が成立する前にさらに相続人の全部又は一部について相続が開始することです。
代襲相続とは、問題となる被相続人の相続前に、相続人となるべき者が生存しているかどうかで区別します。
例えば、被相続人Aの死亡時に、妻B、子Cが生存していたとします。Aの死亡後、遺産分割成立前に、さらに、子Cが死亡し、その妻Dと子(Aの孫)EがCの相続人となったときは、数次相続です。これに対し、被相続人Aの死亡時に、すでにCが亡くなっていた場合は、Eが代襲相続人となります。Cの妻Dは、Aの相続には無関係となります。

代襲相続でお困りでしたらご相談ください

以上のように、代襲相続が生じたときには、代襲相続と特別受益との関係等をはじめとした複雑な法律関係が生じます。代襲相続の場合に限らず、相続の場合には、専門的な法律判断が必要になることが多いため、ぜひとも弁護士にご相談ください。

福岡法律事務所 所長 弁護士 今西 眞
監修:弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 所長
保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:47535)
福岡県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。