親権を変更したい|親権者変更調停の手続き方法

コラム

離婚をすると、単独親権となるため、父母の両方が親権を持つことはできなくなります。
そこで、離婚の際には父母のどちらかに親権者を定めなければなりません。一度定めたものの、事情が変わった等の理由で変更をしたい場合、どのような手続きにより、変更を行うことができるのでしょう。

親権変更に関する手続きの内容や流れについて、詳しく解説していきます。

離婚後に親権者を変更することはできる?

離婚後に親権者を変更することはできます(民法819条6項)。
ただ、親権者の変更は、必ず家庭裁判所の手続きで行うことが求められており、当事者が合意して役所へ届出るだけでは変更できません。子どもの親族(一般的には、親権の変更を求める父か母)が、調停若しくは審判を申立て、親権者の変更が認められれば、調停成立若しくは審判確定から10日以内に、役所へ調停調書や審判書の謄本を添付のうえ、親権者変更届を提出する必要があります。

親権者の変更に関する裁判所の手続きといっても、裁判所が関与する度合いは状況によって様々です。
例えば、当事者が親権者の変更に合意をしており、新しい親権者の監護環境にも問題がなく、更に子どもも変更を希望するような場合には、両親の意向や親権者を変更する理由、子どもの意向などを確認する程度で、親権者を変更する旨の調停が成立することになります(※審判においては、15歳以上の子どもの陳述を聴くことが必須とされています。家庭裁判所調査官が子どもから直接に話を聞くこともありますが、年齢や事情によっては子どもの意向を文書で確認する程度で済ませることもあります。)。

他方で、当事者で争いがある場合や子どもの意向に反する場合など、子どもの利益を守るために裁判所が後見的に関与すべき場合には、家庭裁判所調査官による調査が行われるなど、離婚時の親権争いに似た手続きが進められます。

親権変更が可能な場合とは

父母間に争いがある場合には、「子どもの利益のために親権を変更する必要があるのか」かどうか慎重に検討されます。親権を変更すると、子どもの身分関係のみならず、生活環境を大きく変えることにつながるためです。子どもの利益を考えて、親権者指定時から相当程度の事情変更があったことが必要となります。

この点、離婚事由のように法定されているわけではなく、法律上は「子の利益のために必要があると認めるとき」に家庭裁判所が親権者の変更をすることができると定めているだけなので、個別具体的な事情によって判断されています。
例えば、

  • 親権者が子どもを虐待している場合
  • 親権者が病気となり、監護養育ができない場合
  • 親権者が亡くなった場合
  • 親権者の海外赴任先の治安が悪く、子どもを連れて行くと子どもが危険な場合

には親権が変更される傾向にあります。

親権を変更する方法

離婚をする際に、親権者を決める場合には、父母の合意で行うことができますが、親権を変更する場合には、父母の合意があるか否かにかかわらず、家庭裁判所の手続きによって行わなければなりません。
一般的には親権変更を希望する父か母から、親権変更調停・審判を申立てます。
調停や審判で親権の変更が決まれば、調停成立日や審判確定日から10日以内に、調停調書や審判書の謄本を添付して役所へ届出なければなりません。

父母間で合意ができているのか、それとも争いがあるのかにより、裁判所の関与の度合いは様々です。争いがある場合には、親権者変更の制度が子どもの利益のために認められた公益的なものであることを踏まえ、家庭裁判所調査官が子どもに裁判所へ来てもらい面談を実施したり、学校や家庭へ訪問するなど積極的に関与するのが一般的です。家庭裁判所調査官の調査結果などを踏まえても解決できなければ、裁判所が後見的に親権変更を認めるか否かの審判をするという流れで行われています。

親権者変更調停とは

親権者変更調停は、子の親族(一般的には、親権者でない父か母)から親権者に対して、親権者を変更することを求めて裁判所へ申立てる調停です。もっとも、調停は裁判所が判断して解決するものではなく、あくまでも裁判所の協力を得ながら当事者が任意に解決(調停成立)を目指すものです。

親権者変更調停の手続き方法

親権者変更調停を行うには、どのような書類が必要なのか、費用はかかるのか等、申立ての手続きの具体的な内容について、解説します。

申立てに必要な書類

①親権者変更調停申立書とその写し1通(相手方に送付されるコピーとなります。)
②事情説明書
③進行に関する連絡表(相手方には非開示です。)
④送達場所の届出書
⑤申立人の戸籍謄本(全部事項証明書)
⑥相手方の戸籍謄本(全部事項証明書)
⑦未成年者の戸籍謄本(全部事項証明書)
が必要となります。

①~④の書類は、家庭裁判所のホームページに掲載されており、ダウンロードすることができます。
⑤~⑦の戸籍謄本は、それぞれの本籍地のある市区町村役場で取得することができます。遠方等で直接出向くことが難しい場合には、郵送での取得も可能です。

申立てに必要な費用

申立てを行うには、収入印紙と、連絡用の郵便切手が必要となります。
収入印紙は子ども1人につき、1200円分です。
例えば、子ども2人場合は、1200円×2人=2400円となります。
連絡用の郵便切手は、申立先の家庭裁判所によりますので、問い合わせによる確認が必要となります。

書類を提出したら調停期日の案内が届くのを待つ

申立てに必要な書類の提出先は、相手方の住所地の家庭裁判所です。父母間で合意ができた場合には、合意地の家庭裁判所となります。
申立てを行うと、裁判所は、申立てに必要な書類が揃っているのかどうか、確認を行います。
確認が完了すると、一般的には1か月程度で、初回調停期日に関する案内が届きます。

親権者変更調停の流れ

  1. 1.裁判所より、初回の調停期日が決定されます。
  2. 2.初回の調停期日が開かれます。
  3. 3.第二回以降の調停期日が開かれます。
  4. 4.調停が成立するまたは不成立となることによって終了します。
  5. 5.調停が不成立となった場合には、自動的に審判に移行することにより、裁判所の判断が示されます。

調停成立後の手続き

調停が成立し、親権者の変更が確定した場合、新しい親権者は、確定した日から10日以内に市区町村役所の戸籍係に「親権者変更」を届け出る義務があります(戸籍法79条、63条1項)。
届出を行うに際し、

  • 新しい親権者の印鑑 (朱肉使用のもの)
  • 親権者変更届
  • 調停調書の謄本、または審判書の謄本および確定証明書
  • 子の戸籍謄本1部

が必要となります。

調停が不成立になった場合

話合いがまとまらず、調停が不成立になった場合には、自動的に審判手続に移行されます。
審判手続きは、調停と異なり、裁判官が一切の事情を考慮して、結論を示すこととなります。
親権変更ができなかった場合でも、子どもとの交流方法や頻度について話し合いたいという場合には、面会交流調停等により、話合いの場を設けることができます。

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親権者変更調停の申立て~成立にかかる期間

父母が変更に合意をしており、新しい親権者の監護環境に問題がなく、子どもも変更を希望していることが明らかな場合には、第一回の調停期日で成立することもあります。
この場合には、申立てから成立まで約1か月程度の見込みとなることが一般的です。

他方で、申立人と親権者の間で争いが生じていることが多く、この場合には、父母からの話だけでなく、家庭裁判所調査官による家庭訪問や学校訪問等の調査の実施、子どもの年齢が大きい場合には、子どもから話を聴くといったこともなされるため、成立まで半年~1年程度かかることも少なくありません。
父母間の争いの状況によって、かかる期間は変動します。

親権者変更にあたって裁判所が重視していること

親権者の変更は、子どもの利益になる、つまり子どもの健全な成長を助けるようなものでなければなりません。
調停手続では、

  • 申立人が自分への親権者の変更を希望する事情や現在の親権者の意向
  • 今までの養育状況
  • 双方の経済力や家庭環境

といった、申立人と親権者の事情が考慮されます。
上記事情に加えて、

  • 子ども自身の意向(15歳以上の場合は、特に重視される傾向があります)

が重視されます。

なお、一般的に、子どもが幼年の場合には、母が親権者として優先される傾向にありますが、母という一事をもって決められるものではありません。親権を変更すべき事情を適切に伝えることが重要となります。

親権者の再婚相手と子供が養子縁組したあとでも親権変更できる?

親権者変更の手続きは、単独親権行使者から単独親権行使者への変更を前提に考えられています。
親権者の再婚相手と子どもが養子縁組を行った場合には、親権者と親権者の再婚相手の共同親権状態となります。共同親権からの変更は想定されていませんので、親権者の再婚相手が子どもと養子縁組した後には、親権を変更することができなくなります。

離婚後に親権者が死亡した場合、親権はどうなる?

親権者が亡くなることにより、子どもの親権者がいない状態となります(当然に生存親が親権者になるわけではありません。)。
他方の親が生存している場合には、他方の親に親権を変更するという方法があります。

他方の親が全く子どもと没交渉の場合等、子どもの利益を考え、子どもの親族等親以外の第三者が子どもの監護養育をすることが良いと考えられる場合もあるでしょう。
この場合には、未成年者の親族等が、未成年後見人(未成年者の監護養育、財産管理、契約等の法律行為等を行う法定代理人)の選任を行うように裁判所に申し立てを行う方法があります。

親権者を祖父母に変更したい場合は?

祖父母が親権者になりたい場合には、孫と養子縁組を行うことにより、養親として親権を行使することができます(民法818条2項)。
ただし、孫が15歳未満である場合には、養子縁組について親権者の承諾が必要であるため(民法797条1項)、その承諾を得ることが必要となります。

親権者の変更を希望するなら弁護士に依頼したほうがスムーズにすすみます

親権者の変更は、子どもの育つ環境を大きく変える等、子どもにとって大きな影響を与えかねないものです。子どもにとって、親権を変更しなければならない事情を的確に裁判所で示していくことで、子どもの利益になる結果が得られる可能性が広がります。
どのような事情を重点的に示すべきなのか、子どもにとって誰が監護養育することが利益となるのか等、弁護士に相談・依頼をされることで、ご希望の方針が見つかるのではないでしょうか。

親権変更に関して、お困りのことや、気になることがある方は、一度、経験豊富な弁護士に相談されてみることをおすすめいたします。

「親権」という言葉は、広く知られています。
特に、未成年の子がいる夫婦が離婚を考える場合、親権について十分に検討する必要があります。離婚の際、いわゆる親権争いが夫婦間に生じることも珍しくありません。また、親権について不安があるために離婚に踏み出すことができない、という方もおられます。

以下では、まず親権の内容について解説した上、離婚する際に親権について検討が必要な事項についてお伝えします。

親権とは

親権とは、成年に達しない子(未成年の子)を監護養育する権利のことをいいます。未成年の子は、心身が未成熟であり、保護が必要な存在ですので、親権に服するのです。
親権の具体的内容は、子の身上に関する権利義務(身上監護権)と、子の財産に関する権利義務(財産管理権)の二つに大別されます。

それでは、以下において、親権の内容について解説します。

親権の種類

財産管理権

親権者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表する権限があります(民法824条本文)。これを、財産管理権といいます。
親権者の財産管理権は、広範で包括的なものであり、子の財産関係の一切に及ぶのが原則です。

ただし、財産管理権の行使は無制約というわけではなく、自己のためにするのと同一の注意をもって行使しなければならず(同法827条)、子との利益相反行為については行使を制限されるなど(同法826条)、法律上の制約があります。
親権者の財産管理権は、未成年の子のために設けられたものです。親権者自身の利益を図るためではなく、子の利益にかなう方法で行使しなければなりません。

身上監護権

親権者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有します(民法820条)。これを、身上監護権といいます。
その具体的内容は、居所指定権(同法821条)、懲戒権(同法822条)、職業許可権(同法823条)などが挙げられます。このように、身上監護権は、子の生活全般に影響を及ぼす非常に広範なものです。

ただし、身上監護権は「子の利益のため」(同法820条)に行使されるべきものであって、親権者が無制限に行使できるわけではありません。そればかりか、身上監護権の行使が子の利益を著しく害する場合、親権の停止又は喪失の審判が行われる可能性すらあります(※親権停止・喪失については、後で詳しく説明します。)。 

親権と監護権について

親権の中には身上監護権が含まれますので、親権と監護権を分けて考える必要がないのが通常です。
しかし、例えば、一方の親が子の身上監護には適任であっても、財産管理については不適当というケースがあり得ますし、父母の親権争いを円満に解決するために一方を親権者、他方を監護者とすることが適切なケースも想定されます。

そこで、離婚の際、「子の監護をすべき者」すなわち監護者を定めることができます(民法766条1項)。

親権が有効なのはいつまでか

親権に服するのは、「成年に達しない子」に限られます(民法818条1項)。
そして、子が20歳になると成年に達しますので(同法4条)、親権は当然に消滅します。また、20歳未満の子が婚姻をしたときは、成年に達したものとみなされますので(同法753条)、やはり親権は消滅します。

なお、民法改正により、2022(令和4)年4月1日から成年年齢が「18歳」に引き下げられますので、注意が必要です。

離婚の際に親権を決める流れ

離婚をするときは、未成年の子の親権者を決めなければなりませんが(民法819条1項)、法律上の明確なルールはなく、父母の話合いで決めることとなります。
そして、親権者が決まらない場合、離婚自体が成立しませんので、家庭裁判所に離婚調停を申し立てて離婚条件及び親権について話し合う必要があります。

なお、調停が不成立となり離婚訴訟が提起され、判決で離婚が認められた場合、裁判所が親権者を定めます(同条2項)。

親権獲得のためのポイント

親権者の指定については、まず父母の話合いで決めることとなります。離婚調停を申し立てた場合も、家庭裁判所から親権者を指定されるわけではなく、父母の話合いをすることに変わりありません。

しかし、裁判所が離婚訴訟の判決で親権者を定める場合、どちらが親権者に適任であるかを判断しますので、子の身上監護の状況を重視すると考えられます。
親権獲得のためには、親権者として適任であると主張できる事情の有無が重要です。

父親が親権を取得することは可能?

一般的に、親権の獲得については、母親が有利だと言われます。これは、「母親だから」有利なのではなく、「子の身上監護を実際に行っているのが母親であることが多いから」有利なのだと考えられます。

親権獲得のために重要なのは、父親であるか母親であるかという点ではなく、身上監護を行っている実績があるか否かという点です。親権は、子の利益のために行使すべきものですので、その行使に適任である者が、親権者にふさわしいといえます。

もし、あなたが父親で、子の親権を望む場合、まず子の身上監護を実際に行った上、自分が親権者として適任であるということを主張すべきです。

無職でも親権を獲得したい場合

まず、無職の場合、親権を獲得する上で不利な立場にあることは、否定できません。
これは、無職であるということが悪いわけではなく、今後の子の身上監護の上で経済的な不安が大きいためです。親権は、子の利益のために行使すべきものですので、子の身上監護を適切に行うことができる者が、親権者として適任です。経済的条件も、その判断の一要素となる可能性があります。

もし、あなたが、無職だけれど親権を望む場合、子の身上監護を実際に行ったという実績があるか否かを、まず顧みてください。次に、今後の身上監護の上で経済的な不安がないと主張できるか否かを、よく検討してください。

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親権を決める際に注意すべきこと

安易に決めると後々の変更は困難です

離婚後に親権者を変更することは、全く不可能というわけではありませんが、容易ではありません。
たとえ父母双方の話合い(協議)で合意に達した場合でも、それだけでは親権者を変更することはできず、必ず家庭裁判所の審判又は調停によって行うこととなります(民法819条6項)。そして、親権者の変更において重視されるのは、「子の利益のため必要がある」といえるか否かという点です。

このように、親権者の変更は容易ではないということを理解しておきましょう。くれぐれも、離婚の際、安易に親権者を決めることがないように注意しましょう。

親権獲得後の養育環境で、親権停止・喪失する場合も

親権停止は、「親権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するとき」(民法834条の2第1項)、2年を超えない範囲内で(同条2項)、家庭裁判所の審判により親権を停止する制度です。

親権喪失は、「虐待又は悪意の遺棄があるときその他父又は母による親権の行使が著しく困難又は不適当であることにより子の利益を著しく害するとき」(同法834条)、家庭裁判所の審判により親権を喪失させる制度です。

いずれも、子の福祉のための制度であり、離婚後の養育環境が非常に劣悪であるときには、これらの審判が行われる場合があります。
なお、子本人又はその親族が、家庭裁判所に対し請求を行うことができます。

子を連れた勝手な別居は不利になる場合も

父又は母は、婚姻中は親権を有しており、身上監護権を行使することができますので、子を連れて別居した場合であっても、違法とまではいえないことが多いです。
しかし、一方の親が、他方の親と話し合うこともせず、一方的に子を連れて別居してしまった場合、裁判所から不利な判断をされる危険性があります。具体的には、監護者指定の審判において監護者として不適任であると判断される可能性があるほか、子の引渡しを命じる仮処分又は審判が行われてしまう場合すらあります。

このように、子を連れた勝手な別居は、裁判所から不利に扱われてしまうという法的リスクが伴うことを、十分に理解しておく必要があります。

親権を獲得できなかった場合の養育費について

養育費とは、子の世話をしていない親が、実際に子の世話をしている親に対して支払う金銭のことです。離婚に際して親権を獲得できなかった親は、子の世話をしない代わりに、養育費を支払う義務を負う場合が多いです。

そして、養育費の具体的な金額については、互いの収入、子の数と年齢に応じて、1か月ごとの金額を定める「標準算定方式」があり、裁判所のウェブサイトでも公開されていますので、一つの参考となります。

親権が取れなかった側の面会交流について

面会交流とは、子と別居している親が、子と会うことをいいます。離婚に際して親権を獲得できなかった親が、面会交流を求めることとなります。

子の年齢にもよりますが、子と同居している親に協力してもらう必要があることが多いため、離婚の際に、面会交流の条件についても話し合っておいた方が望ましいでしょう。また、面会交流の実施に際しては、子の福祉に十分配慮すべきと考えられます。

親権問題は弁護士に相談して入念な準備をしましょう

離婚の際、親権争いが生じることは、珍しくありません。
どのように話合いをすればよいのか、親権を獲得するために何をすればよいのか、話合いが決裂した場合にはどうすべきかなど、悩むことも多いでしょう。また、子の将来を考えて、親権は相手方に譲ると決心した場合であっても、養育費の支払をどうすべきかなど、不安は絶えないことでしょう。
残念ながら、世の中には不正確な情報が多く見られますし、法的知識が乏しいために不利な立場に置かれてしまうケースもしばしばあります。

もし、あなたが、離婚を考えていて、未成年の子の親権問題について不安がある場合、まずは弁護士に相談することをお勧めします。

本ページでは、離婚調停について解説します。ご自身で調停を申し立てたいという方の参考になれればと思います。

離婚調停とは

離婚調停は、夫婦関係の調整を行う調停の一種です。夫婦の一方が相手方に対し、離婚を求めて家庭裁判所にする調停の申し立てです。離婚調停では、離婚について合意ができ、調停が成立するとただちに離婚の効果が生じます。

離婚調停のメリット・デメリット

離婚調停を含む家事調停は、紛争の自主的な解決を図る手段です。当事者双方が譲歩して紛争の解決に関する合意を目指しますので、それぞれの紛争の実情に則した柔軟な解決を図ることが期待できるというメリットがあります。裏返しになりますが、当事者双方又は一方が譲歩をせず、合意に至らない場合には紛争の解決にならないというデメリットがあります。

離婚調停の流れ

家庭裁判所に調停を申し立てる

(1)申立の方法
離婚調停は事件を管轄する裁判所に申し立てることによって始まります。申立書のひな型は家庭裁判所の窓口で貰うか、裁判所のHPで入手できます。
https://www.courts.go.jp/saiban/syosiki/syosiki_kazityoutei/index.html)。申立は郵送でも可能です。

(2)管轄
原則、裁判所は管轄権のない事件を処理することはできません。離婚調停を行うのは、裁判所法上の裁判所である家庭裁判所です(裁判所法31条の第1項1号)。離婚調停事件は、相手方の住所地の家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所の管轄とされています(家事事件手続法245条1項)ので、相手方の住所地のある地域の家庭裁判に申し立てることになります。

調停開始

調停が申立てられると、当該調停委員会を組織する裁判官が調停期日を指定します(家事事件手続法260条2項・34条1項)。時期や地域差もあると思われますが、福岡家庭裁判所本庁の場合、申立がされてから1月~1月半程度で初回期日が指定されることが多いように思います。ちなみに第2回以降は、当事者や調停委員会の日程を調整しながら、概ね2カ月以内に指定されることが多いように思います。

調停終了

調停成立

当事者間に合意が成立し、調停機関がその合意を相当と認めて、これを調停調書に記載した時は調停が成立したものとして終了します。これにより調停離婚が成立します。

調停不成立

当事者間に合意の成立する見込みのない場合、又は成立した合意が相当でないと認める場合には調停は成立しないものとして、調停機関は事件を終了させることができます。調停機関が調停不成立の措置を執ると調停手続きは当然に終了し、その旨が調書に記載されます。

調停取り下げ

申立人は、相手方の同意の有無に関係なく、いつでも調停の申立てを取り下げることができます(家事事件手続法273条1項)。調停をいったん取り下げても、再度、調停の申立てをすることはできます。

離婚調停の準備

申立書を作成する

裁判所の用意しているひな形に記入する場合には、項目に従って記入していただければ十分です。最低限、当事者(申立人・相手方)及び法定代理人の他、申立ての趣旨(どのような内容の調停を求めるのか)及び理由(どのような紛争で、どのようなことを求めるのか等)を記載し、証拠書類がある場合にはその写しを添付しなければなりません(家事事件手続規則127条・37条)。

第一回調停期日までの準備

どのような調停成立を求めるのかを検討することが不可欠です。子供がいる場合にはどちらの親が親権者になるべきか、養育費の額、面会交流の方法・頻度等、財産分与を求めるのであれば財産の全体像等を網羅的に検討する必要があります。話したい内容は忘れてしまわないようにメモにして調停期日に持参しましょう。服装に指定はありませんが、調停委員や裁判官と対面する必要があることを踏まえた服装を心がけましょう。

調停期日ごとの準備

争点毎に臨機応変な対応が必要です。慣れた調停委員であれば適切に調停を運営し、当事者に対し次回期日までに準備すべき証拠や主張を整理するように指示がされます。

調停の付属書類について

申立書のひな型を見ていただければ分かるとおり、事情説明書や進行に関する照会回答書という書面の提出を求められます。調停機関は当事者のことを全く知らないところからスタートします。申立の際にどのような紛争なのか、当事者がどのような属性の方なのかについて理解して貰えるように記載する必要があります。

離婚調停で聞かれること

個々の紛争の主な争点、申立書の記載内容、調停機関のキャラクター等によって、調停機関が関心を持つトピックは異なります。少なくとも離婚を決断するに至った理由や、子供の育て方等については話ができるように用意をしておきましょう。

離婚調停にかかる期間や回数

明らかに調停成立の見込みがない場合には1回か、多くて2回程で不成立となり終了します。調停成立の見込みがある場合には回数に上限はありません。代理人に委任しない場合には適切な主張整理・進行は期待できませんので、成立まで短くとも半年程度は見込んだ方が賢明かと思います。

離婚調停で決めておいたほうがいいこと

当事者間に未成年の子がいる場合には、必ず親権者を決めなければなりません。それ以外は任意になりますが、養育費・面会交流・財産分与・慰謝料・年金分割等の協議をすることができます。

離婚調停に欠席したい場合はどうしたらいい?

指定された期日に出席できない場合には、期日変更を申し出ましょう。無断で欠席をした場合、調停成立の見込み無しとして調停が終了することもあります。

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離婚調停が成立したら

調停調書の確認

調停が成立し、書記官が調書を作成すると、確定した判決又は審判と同じ効力が生じます。それゆえ、成立時には当事者双方を同席させたうえで、調停条項の確認が行われるのが原則です。調停条項案が作成されると、裁判官は調停委員及び書記官と共に調停室において調停条項を読み上げ、内容を説明したうえで、条項が当事者の合意に則しているかを確認します。この時にも気を抜かず、間違いがないかどうかを注意するようにしてください。

離婚届を提出する

調停離婚が成立したことで離婚の効果は発生します。しかし、戸籍にも身分関係が変更したことを記載しなければなりません。離婚調停の申立人(合意すれば相手方)は調停の成立後、10日以内に、調停調書の謄本を添付してその旨を市区町村長に届出なければなりません(戸籍法77条1項、63条1項)。

その他、提出すべき書類

婚姻により氏を改めた一方配偶者は、離婚すると原則として婚姻前の氏に復しますが、離婚の際の氏を称することもできます(民法767条、戸籍法77条の2)。こうした届出は、本籍地の市区町村長にするのが原則です。

いきなり離婚裁判をしたくても、まずは調停が必要

調停前置主義とは

人事に関する訴訟事件その他一般に家庭に関する事件について訴えを提起しようとする者は、まず、家庭裁判所に調停の申立てをしなければなりません(家事事件手続法257条1項)。よって、離婚訴訟を提起するときには、まず、調停を申し立てなければなりません。これを「調停前置主義」と言います。

調停前置主義の例外

調停前置主義は、家族に関する紛争の解決には、まずは紛争当事者の自主的な紛争解決能力と意欲を基本にするという考えに基づいてます。当該事件について、実質的に調停を経たといえる場合、調停が取り下げられた場合、客観的に調停を経ることができないもの等について、場合によっては調停前置主義の例外となり得ます。

離婚調停を希望するなら弁護士にご相談ください

離婚が人生の大きな節目であることはいうまでもありません。悔いのない離婚条件の獲得の為にも、専門家に相談することをお勧めします。

離婚後や別居中には、子どもを監護していない親(非監護親)は、子どもとなかなか会うことができないという状況に陥りがちです。非監護親が、子どもと安心して面会交流を行っていくためには、どのような方法があり、どのようなことを取り決めておく必要があるのか、説明します。

面会交流とは

面会交流とは、離婚後又は別居中等に、子どもを監護していない親(非監護親)が、子どもと直接会う等の交流をすることをいいます。
以下で詳しく説明しますが、面会交流の方法は、直接会うという方法に限られず、メールや電話での間接的な方法も含まれます。

面会交流ができるのは何歳まで?

子どもは、成年に達するまで、父母の親権や監護権が及びます(民法818条1項参照)。
子どもを監護している親(監護親)と非監護親が面会交流について協議を行うのは、親権や監護権に依拠したものですので、成年に達するまでの間に限られます。
成年年齢について、現在は20歳ですが、2022年4月1日より、18歳に引き下げられます。2022年4月1日以降は、面会交流について協議を行うことが想定されるのは、18歳までということになります。

もっとも、成年に達していなくとも、子どもの年齢が大きくなれば、子どもが会いたい・会いたくないといった意思を持って行動するようになります。父母間で、面会交流の取り決めをしたとしても、子どもが会わないという選択肢を取るような場合には、実現が難しいでしょう。

別居中でも面会交流はできるのか

離婚調停中で別居している場合でも、面会交流が原則可能です。

ただし、離婚調停中で別居している場合には、父母間で感情の対立が大きいうえに、非監護親が、子どもを連れ去ってでも子どもの親権者となりたいという意図を有している場合や、より良い離婚条件を引き出すための駆け引きの材料として面会交流を求める場合、監護親と接触したいために、面会交流を求める場合等があります。
そこで、離婚後に比べ、面会交流を行うことに慎重な判断を要することがあります。

面会交流について決めるべきルールとは

面会交流を実現させるためには、いつどこで子どもと会うのか、調整方法はどうするのか等、事前に取り決めておく方が良いことが多々あります。どういったルールを決めておく方が良いのか、以下説明します。

面会頻度

面会交流は、「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」(民法766条1項)と規定されています。
多数回の面会を実施すると監護親や子の負担が大きくなりがちであることや、非監護親もなかなか現実的に実施できないことが多いため、調停において一番多く取り決められている面会頻度は、「月1回(程度)」です。
上記頻度はあくまで一例であり、子どもの負担が無く、子どもの意向に沿った頻度を話合うことが重要です。

面会時間

面会の回数頻度だけでなく、事前に面会の具体的な時間(例えば、午後1時~午後5時等)を決めておくと、スムーズに面会交流の日程調整を行うことができるでしょう。

面会場所

事前に、特定の面会場所を定めておくという方法もありますが、子どもの意向等に合わせて柔軟に会うことができるように、非監護親に任せるといった方法もあります。

子供と会う方法

子どもの年齢によっても異なります。
例えば、子どもの年齢が小さい場合には、自宅まで迎えに行ったり、監護親やその親族等に待ち合わせ場所まで連れてきてもらったりします。
子どもの年齢が大きくなれば、子ども自身に直接待ち合わせ場所まで来てもらうことができます。

連絡方法

連絡方法は、電話で行っても良いですし、話したくなければSNSやLINE、メール等を使うことも可能です。父母間で無理なく行える方法でやり取りを行いましょう。

学校行事への参加

非監護親が入学式・授業参観・運動会といった小学校等の行事に参加することは可能です。
ただし、監護親に何の連絡もなく参加すると、当日もめることが予想され、子どもに父母の争いを見せてしまうことにつながりかねません。事前に連絡をしておくことをおすすめします。
調停において、「学校行事(入学式・授業参観・運動会等)に参加することができる」といった内容の取り決めを行うこともできます。

プレゼントやお小遣い

非監護親がクリスマスや誕生日等にプレゼントを渡すことや、お小遣いを会うたびに渡すことも可能です。
ただし、監護親の教育方針(子どもに月々いくらのお小遣いを渡すか等)がありますので、事前に伝えておくことをおすすめします。

対面以外の交流方法

SNSや電話等を使って間接的な交流を行うことが可能です。
非監護親と子どもが直接会える機会は限られることが多いため、間接的な交流を合わせて行うことで、子どもとの交流機会を増やすことができます。

宿泊について

面会交流は、日帰りのものに限られず、宿泊を伴うものを実施することも可能です。
ただし、急な宿泊となると、子どもの予定や宿泊準備といった問題や、監護親の心情もありますので、トラブルの元になってしまいます。事前に宿泊について取り決めを行うことをおすすめします。

祖父母の面会交流

祖父母には、法律上、面会交流を実施する権利はありませんが、監護親が認める場合、会わせることに問題ありません。子どもと祖父母が交流することは、子どもの成長にとって重要なものです。子どものために、会えるように調整できると良いでしょう。

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面会交流を決める際の流れ

面会交流について父母間で話合いを行い、合意ができれば、合意内容に沿って面会交流を実施していくことができます。具体的には、子どもと非監護親間で実施するという方法や、支援団体の仲介によって実施する方法があります。

父母間で話合ったものの、合意を行うことができなかった場合には、面会交流調停を申立てることで、話合いを進めることができます。調停が成立する場合には、調停内容に沿って、面会交流を実施していくことができますし、調停が成立しない場合には、審判によって裁判所の判断が示されることになりますので、示された審判内容に沿って、面会交流を実施していくことができます。

まずは夫婦間での話し合い(協議)

夫婦間で話合いによって、面会交流の頻度や方法について合意を行うことができる場合には、口頭でなく、公正証書等、書面に残す形にされるのをおすすめします。
後々にどういった内容で合意したのかを双方で確認できることにより、トラブルを回避することにつながるためです。また、以下のように、間接強制を行える場合もありますので、面会交流の実施の促進につながり得ます。

話し合いで決まらない場合は面会交流調停へ

夫婦間の話合いで合意することができない場合には、家庭裁判所に面会交流調停を申立てる方法があります。
面会交流調停とは、裁判所において、面会交流の頻度や方法について話し合いを行うものです。
面会交流は、子どもの健全な成長を助けるようなものである必要があるので、子どもの年齢、性格、生活環境等を考えて、子どもの負担にならず、子どもの意向を尊重した取決めができるように、話合いが進められます。

なお、生活環境や子どもの意向等の調査は、家庭裁判所調査官が行います。
話合いでまとまらない場合には、裁判官が、一切の事情を考慮して、審判をすることにより、判断を示します。

取り決めた面会交流が守られなかった場合

面会交流の日時又は頻度、各回の面会交流時間の長さ、子どもの引渡しの方法等が具体的に定められているにもかかわらず、面会交流ができなかった場合には、間接強制を行うことができます。
間接強制とは、裁判所が、監護親に対して、合意通りの面会交流の実施を行うように、相当と認める一定の額の金銭を、非監護親に支払うように命じるものです。金銭を支払わせることにより、面会交流の実現を促進させる働きがあります。

取り決めた面会交流を拒否したい場合

面会交流は、「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」(民法766条1項)とされています。非監護親と子どもが定期的に会える環境にあることは、子どもの成長のために不可欠なものですので、特段の事情が無い限り、拒むことはできません。

拒むことのできる特段の事情がある場合とは、例えば、非監護親が子どもを連れ去る恐れがある場合、非監護親が子どもを虐待する恐れがある場合、面会交流の合意事項の不遵守等があります。
面会交流が子どもにとって重要なものであることを踏まえると、特段の事情があるかどうかは慎重な判断を要するところです。

面会交流と養育費の関係

養育費は、子どもの両親が負担すべき、扶助義務に基づいた支払いです。
面会交流は、子どもの利益のために実施されるものであり、性質が違うものですので、養育費の不払いと面会交流の実施は連動しません。そこで、養育費を支払わないからといって、面会交流を拒否することはできません。

再婚した場合の面会交流

再婚をしたとしても、非監護親と子どもが会うことが、子どもの成長等にとって良いならば、面会交流を続けるべきでしょう。再婚相手が拒否したとしても、子どもの利益になるならば実施すべきですし、再婚相手の同伴を子どもが希望するようなことが無い限りは、同伴を断ることは可能でしょう。

ただし、再婚すると、子どもの環境は大きく変わりますし、再婚家庭の安定も重要なものですから、子どもの感情に寄り添った面会交流を行えるように配慮が必要となります。

面会交流で不安なことがあれば弁護士に依頼してみましょう

面会交流は、子どもの成長に資するものであり、非監護親と子どもが交流する重要なものとなります。
子どものために、しっかりと取り決めをし、安心して会えるようにすることが大事です。
子どもと安心して会うためにはどうしたらいいのか、また、子どもを安心して会わせるにはどうしたらいいのか等、不安に思われている方は、一度、経験豊富な弁護士に相談されてみてはいかがでしょうか。

そもそも別居とはどういう状態なのか、別居と離婚がどのように関わっていくか等、離婚に向けた別居について、以下解説します。

別居すると離婚しやすくなるのは本当か

例えば、別居が長期化すると、婚姻関係が破綻していることを客観的に示す一事情となり得ます。
また、別居状態で話合いを行うと、同居中よりも感情的にならずに、話合いを進められることで、スムーズに離婚について合意ができる場合もあるでしょう。

どれくらいの別居期間があれば離婚できる?

別居の長期化は、婚姻関係が破綻していることを客観的に示す事情となり、「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」(民法770条1項5号)として離婚原因になり得ます。どのくらい別居期間があれば良いのか、法律上の定めはありませんが、一般的に少なくとも3~5年は必要と考えられます。

また、別居期間が短くとも、相手が有責配偶者の場合には、「配偶者に不貞な行為があったとき」(民法770条1項1号)等、他の離婚原因にあたる可能性がありますので、注意が必要です。

単身赴任や家庭内別居も別居として認められる?

単身赴任とは、家族を持つ就労者が、本人一人で任地へ赴くことをいいます。あくまで就労のために住居を分けているにすぎず、夫婦間で経済的な協力関係がありますので、一般的な単身赴任の場合、離婚に向けた別居とはいえないでしょう。

また、家庭内別居の場合、多くの場合では同居している限りは経済的な協力関係があるので、一般的には、離婚に向けた別居とはいえないでしょう。

正当な理由なしに別居すると、離婚時に不利になる

夫婦には、同居義務があります(民法752条)。そこで、別居してしまうと、離婚時に不利になるのではないかと思われるかもしれません。正当な理由がある場合には、同居義務違反になりませんし、不利にならない別居の方法もありますので、以下説明します。

正当な理由とはどんなもの?

例えば、以下のような場合には正当な理由があると考えられます。

  • 配偶者から暴力を受けている場合
  • 夫婦の勤務先が離れており、生活面から別居を選択する場合
  • 勤務先より遠方での勤務を命じられ、それに伴い単身赴任する場合
  • 病気療養のために別居を選択する場合

不利にならない別居の方法

離婚に際し、不利にならないためには、どのような方法で別居を行うと良いのでしょうか。以下、説明します。

相手に別居の同意を得る

相手に同意を得てから、別居を行った場合、夫婦間で決めた生活スタイルなので、同居義務に反しないでしょう。
なお、収入の高い配偶者が、生活費を一切入れずに別居したような場合には、「悪意の遺棄」にあたる可能性がありますので、注意が必要です。

親権を獲得したい場合は子供と一緒に別居する

離婚の際に、親権が争われた場合、一般的に、現状監護を行っている親の方が、親権を得る可能性が高まります。

親権者や監護者は、子どもの利益を最優先に考えられます。現在の監護環境に問題がないのであれば、現状子どもを監護している親が、そのまま子どもを監護していくことが、子どもの利益となるのではないかと一般的に考えられるためです。

相手が浮気していた場合は証拠を確保しておく

別居してからだと証拠を集めにくい…というような内容で執筆してください。相手が不貞をしていた場合には、責任追及をしたり、離婚原因として主張するために、しっかりと証拠を保存することが大事です。
別居をしてしまうと、同居時に比べて、証拠の収集が難しくなってしまう場合があります。何か証拠として保存することができるものが無いか、保存しておく方が良いものが無いか等、考えてみると良いでしょう。

別居のメリットとデメリット

別居のメリットは、例えば以下のものがあります。

  • 相手と顔を合わせずに済むこと
  • 離婚の内容に左右されずに、住む場所が確保できること
  • 婚姻費用の請求を行いやすくなること
  • 離婚したいという気持ちを客観的に示すことができること

別居のデメリットは、例えば以下のものがあります。

  • 直接話合いをしたい場合には、会う機会が減ることにより、話合いを行うことが難しくなること
  • 生活水準が下がってしまう可能性があること
  • 別居先によっては、遠方等になることにより、勤務先等を変えなければならなくなる可能性があること

別居の際に持ち出すべきもの

別居の際、最低限持ち出した方が良いものとして、以下の物があります。

  • 現金、預金通帳、キャッシュカード、クレジットカード、生命保険の証券、車検証、実印といった貴重品
  • 宝石等の貴金属、ノートパソコン、タブレットといった高価な物
  • 運転免許証、マイナンバーカード、パスポート、健康保険証といった身分証明書類
  • 生活を始めるために最低限必要な衣類等、身の回りの物
  • 思い出の品といった相手より捨てられると困る物
  • 子どもの教科書や体操服といったすぐに必要な学校に関する物
  • 子どもの母子手帳
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別居に伴う手続き

別居を行う場合には、行方不明になったと思われないように、出ていく旨は一報しましょう。口頭で直接伝えなければならないわけではなく、メールやラインでも良いですし、置き手紙でも構いません。
また、別居後には住民票の移動届けを行う必要があるので、各種身分証明書が必要となります。
子どもがいる場合には、「児童手当の受給者変更」「乳幼児医療証・子ども医療証の住所変更」「転園・転校手続き」等が必要であり、事前に必要かつ準備できる物を確認しておくことをおすすめします。
別居後の生活を考え、婚姻費用としてどのくらいの金額を請求できるのか、「養育費・婚姻費用算定表」(裁判所のホームページにアップされています)にて確認しておくのも良いでしょう。

別居後、荷物を取りに行きたくなった場合

別居をすると、元々自分が住んでいた家であっても、住居侵入罪(刑法130条前段)に該当してしまう可能性があります。また、勝手に取りに行くと、物が無くなった等、トラブルが生じる危険もあります。そこで、勝手に入るという方法ではなく、相手より一括で郵送してもらったり、事前に了承を取って日時を調整したうえで取りに行く等、トラブルが少ない方法を取りましょう。

別居後、生活が苦しくなってしまった場合

別居をしても、婚姻関係が続く限り、相手には、配偶者や子どもを扶養する義務があります。

別居をした場合には、まずは相手に婚姻費用(生活費)の請求をできる場合には、それを行い、生活を安心して送れるようにしましょう。婚姻費用の請求が難しい場合には、生活保護の申請等、行政の支援が受けられる可能性がありますので、役所に相談してみましょう。

有利な結果と早期解決へ向けて、離婚に詳しい弁護士がアドバイスさせて頂きます

離婚に向けて別居される場合には、安心して話合いを進められるように、離婚後の生活等も考えることが重要です。離婚の話合いを進めていくためにはどのような方法があるのか、別居を行って婚姻費用の請求を行うにはどのような方法があるのか等、離婚までの生活や離婚の話合いについて、心配なことがある方は、離婚に詳しい弁護士に一度相談されてみてはいかがでしょうか。

このページをご覧いただいている方の中には、ご自身・友人・ご家族等の身近な方が不貞に関するトラブルの渦中にいる方もいるのではないでしょうか。このページでは実務上よく問題になる点について概要をまとめていますので、トラブル解決の参考になればとは思います。

しかし、このページを通して一番お伝えしたいのは「慰謝料は決められたものがない」という点です。自分でどうにかしようとせず、専門家である弁護士に相談すべきです。自身の有利な事情を見落としていることも少なくありません。

不貞慰謝料とは

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負います(民法709条、同710条)。

夫婦は「婚姻共同生活の維持いう権利又は法的保護に値する権利」を有すると考えられているところ、夫婦の一方が配偶者以外の第三者と肉体関係を持つこと(不貞行為)で他方の配偶者の上記権利を侵害した場合に、不貞をした配偶者が損害賠償責任を負うことは実務上殆ど争いのないところだと思います(最高裁平成8・3・26等)。

不貞慰謝料と離婚慰謝料の違い

上述のとおり、夫婦の一方が配偶者以外の第三者と肉体関係を持つこと(不貞行為)で夫婦の「婚姻共同生活の維持いう権利又は法的保護に値する権利」を侵害した場合には、もう一方の配偶者は「不貞慰謝料」を請求することができます。

また、離婚に至った原因が一方の配偶者にあると認められる場合には「離婚慰謝料」を請求することが出来ます。この場合の原因の代表的なものが不貞行為ですが、不貞行為に限られるわけではありません。

不貞行為に対する慰謝料の相場

精神的苦痛は、本来金銭に置き換えることができない性質のものなので、慰謝料の金額に絶対の基準はありません。個々の事件の悪質性(不貞の期間・回数等)や、生じた結果の重大性(離婚の有無等)等によって慰謝料の額は変わってきますが、一般的には以下のような傾向があるといえます。

不貞慰謝料の相場
離婚の有無慰謝料の相場
離婚も別居もしなかった場合50万~100万円
離婚しなかったけど別居した場合100万~200万円
離婚した場合200万~300万円

不貞慰謝料額の判断基準

上で述べたとおり、慰謝料の額を決める絶対的な基準はありませんが、一般的に裁判所が関心を持っていると思われる事情をいくつか紹介します。

・浮気発覚前の夫婦関係
不貞行為によって慰謝料が認められるのは、「婚姻共同生活の維持いう権利又は法的保護に値する権利」が侵害されたと言える必要があります。したがって、そもそも不貞の時点で婚姻関係が破綻していたのであれば、慰謝料は生じません。これを「破綻の抗弁」と呼ぶこともあります。逆に、長期間円満であった婚姻関係が不貞によって破綻に至ったのであれば、慰謝料の増額事由になると考えられます。

・浮気していた期間
不貞の期間が長ければ長いほど、不貞の回数が多ければ多いほどそれに伴う慰謝料の額も大きくなる傾向があります。ただし、どの程度の期間を「長い」、どの程度の回数を「多い」と評価するのかに明確な基準はありません。

・夫婦に子供がいるのに浮気した
夫婦間に未成熟の子がいることを指摘して慰謝料の増額事由としている裁判例も、未成熟の子ないし子がいないことを減額事由とする裁判例もあります。いずれにせよ、裁判所は、未成熟の子の有無を、具体的慰謝料算定の事情の一つとして考慮することが多いと思われます。

・浮気発覚後の謝罪の有無
不貞が発覚して他方の配偶者を傷つけた場合、不貞をした当事者が採るべき最も望ましいのは真摯に謝罪をすることです。裁判例においても、発覚直後に謝罪したことを減額事由としているものや、逆に、謝罪していないことを増額事由に挙げているものもあります。

不貞慰謝料を請求したい方

不貞慰謝料は誰に請求できる?

学説上異論はありますが、実務上は不貞した者と不貞相手(相姦者)は共同不法行為者の関係に立ち、両者の責任はいわゆる不真正連帯債務(注)の関係にあります。詳しいことは割愛しますが、被害者は不貞をした配偶者と相姦者のいずれに対しても慰謝料請求ができます。

(注)なお、民法改正により、不真正連帯債務という概念自体が不要になり、全て連帯債務に統一されたと評価できる状況となっていますが、改正前民法が適用される事案も少なくないことから、本ページでは、不真正連帯債務という概念を用いておきます。

不貞慰謝料を請求する前に確認すべきこと

不貞慰謝料請求に限ったことではありませんが、①法的に請求が可能か②請求の根拠となる事実を裏付ける証拠があるかを検討する必要があります。例えば、時効が成立していないかどうかは①の問題で、証拠の収集が②の問題といえます。

証拠になるもの

当事者間に争いのある事実は、当事者から提出された証拠に基づいて、事実認定がされます。不貞慰謝料の請求が認められるには、「不貞行為」を立証しなければなりません。以下、証拠に関する考え方を簡単に説明します。

なお、相談者様から、「私が問い詰めたら相手は認めましたが、それでも証拠が必要ですか?」と質問されることがあります。一時認めていたとしても、後に否認に転じることは普通にありますので、否認に転じた場合に備えて証拠を準備しておくべきです。言った言わないの争いにならないためにも、できることなら「認めた」という事実を録音や書面に残しておくことは有益です。とは言うものの、それでも否認されることはあります。よくあるのが、「その場をおさめるために認めただけだ。」という言い分です。冷静な話し合いの中で相手が不貞の事実を認めたといえるよう、聞き方にも注意してください。

証明

実務上、裁判官に事実の存在について確信を抱かせることを「証明」といいます。どのような状態になった時に証明出来たといえるかは所説あるものの、「通常人なら誰でも疑いを差し挟まない程度」に至った場合です。「十中八九間違いない」と言える状態だとイメージすればよいでしょう。

●具体例
1.肉体関係を直接推認させる写真等
自宅、ホテル等で性交渉を行ったこと自体を撮影した写真や動画は、肉体関係を直接立証できる証拠です。あまり多くはありませんが、ベッドで一緒に撮影した写真などです。

2.ホテルへの出入りを撮影した写真等
ホテルに入る場面を撮影した写真等は、肉体関係を直接立証することはできません。しかし、特にラブホテル等に2人で入った(出た)ことは、不貞の事実を強く推認させる証拠になります。ホテルに入っておいて、何もなかったというのは一般感覚で理解されないでしょう。「仕事の話をしていた」等の主張がされることもありますが、仕事の話をラブホテルでしなければならない合理的な理由を説明できない限り、不貞の事実が認められる可能性は高いといえます。入ってすぐに出てきたと言われることもあるので、できれば入ってから出てくるまでを押さえるべきです。いわゆる探偵も、入ってから出て来るまで待って出入りを撮影するのが一般的です。

3.不貞相手とのメール・LINE等
「~時にホテル集合ね」「奥さんにばれたら大変だね」等のメールのやり取りから、不貞が発覚することがよくあります。これらも、肉体関係を直接立証する証拠ではありません。しかし、何の関係もない男女が上記の内容のメールを送り合うことは不自然で、不貞の事実を推認させる事実の一つになります。「夫のスマホのLINEを撮影した証拠があります!」と仰る方がいますが、冷静になってみると、誰かのスマホからとあるニックネームの相手へ送られた内容だとしかわからない場合が少なくありません。誰のスマホから、何時、誰から誰に送られたのかを読み取れるように撮影するようにしてください。

4.ホテルの領収証
財布からホテルの領収証がでてきたということもあるでしょう。ホテルに泊まったという事実は、肉体関係を強く推認させます。しかし、ホテルの領収証は、ある日にホテルに宿泊したという事実を推認させるものの、誰が誰と宿泊したのかまではわからないことが多いでしょう。こういった場合に、ホテルの宿泊者台帳を弁護士会照会などで開示を求めることもあります。開示してもらえない場合や、開示されても偽名である場合、1人分の記入しかない場合もあるので必ず不貞の事実や不貞相手が判明するわけではありません。

5.複合的な立証
やはり、探偵による調査や自分で浮気現場へ乗り込んで写真撮影するなどが確実な証拠と言えます。否認されたとしても、単体で立証できる証拠がない場合であれば、他の証拠を積み重ねて立証せざるを得ません。証拠が不十分なまま問い詰めたところ、否認されてしまい、悔しい思いをすることになりかねませんので、思い切った行動に出る前に一度、証拠が十分なのかどうかを弁護士へ確認されてください。

不貞慰謝料を請求する方法

弁護士が依頼を受けた場合には、配達証明付内容証明郵便で請求を行うことが多いと思いますが、慰謝料請求の方法に制限はありません。したがって、書面での請求はもちろん、口頭でもメールでも構いません。

内容証明郵便での請求について
配達証明付内容証明郵便は誰でも利用できます。送った手紙の内容の控えが残ること、手紙が到達した日が特定されることから、後で相手方に「知らなかった。受け取っていない。」と言われるトラブルを防げるというメリットがあります。ただし、当然のことながら送り先(相手方)の住所や就業場所などが分からない場合には、これらを調べるところから始めなければなりません。相手の住所は、相手の車の登録番号、携帯電話番号などから調べることができる場合があるので、諦めずに弁護士へご相談ください。最近では、SNSの投稿などから手掛かりがつかめることも多くなっています。

内容証明郵便に記載する内容

内容証明郵便は、文字数や行数、使用できる記号などの制限がありますが、内容自体は自由に記載して構いません。一般的には、自分が何者で、何を考えて手紙を送るに至ったのか、手紙の受け取り手には何をしてほしいのかは最低限明らかにします。氏名、住所、事情、請求内容、賠償請求であれば振込口座、返答期限です。中には、「会社に伝えるぞ。」、「周囲に話すぞ。」、「○○にバレたら困るでしょ。」などと記載しようとされる方もおられますが、脅迫罪になりかねませんので注意してください。また、敢えて、実家や会社へ送ろうとされる方もいますが、プライベートな事柄で周りに知られたくないのが普通でしょうから、反対に慰謝料請求を受けかねませんのでやめておくべきでしょう。

離婚後でも慰謝料請求は可能?

消滅時効にかかっていない限り、慰謝料の請求は離婚後であっても可能です。もっとも、離婚成立後に不貞が発覚した場合には、離婚(婚姻関係破綻)と不貞との因果関係が争われることがあります。離婚した原因は別にあるのではないかということです。実は配偶者が不貞関係にあったことを知ったことで、事後的にではあるものの、精神的苦痛を感じたとして損害賠償請求することは一応可能です。

相手が慰謝料を支払わないときの対処法

相手方が金銭の支払いを約束したにもかかわらず、賠償義務を果たさない場合には強制的に払わせたくなるでしょう。いわゆる不動産や動産、預金口座、給与債権を差し押さえるなどといった強制執行です。もっとも、合意書や念書等の私署証書で慰謝料の支払を約束させたとしても強制執行はできませんので注意が必要です。強制執行を行うには、執行認諾文言付の公正証書、調停調書、判決書等の債務名義が必要です。

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不貞慰謝料の請求を受けた場合

慰謝料を請求されたらまず確認すること

慰謝料を請求されたら、少なくとも心当たりがある場合は弁護士に相談することをお薦めします。本当に慰謝料を払うべき状況なのかどうか、請求額が妥当なのかなど確認することで、払うとしても納得して払うことができます。心当たりがない場合でも、放置すれば就業場所に連絡が来たり、訴訟を提起されることも考えられますので、弁護士に相談して適切な対応をするべきです。

方針を決める

慰謝料請求に対してどう対応するかを決めなければなりません。相手の言うことを認めて従うのか、事実関係を争うのか、支払額を争うのか、支払の方法(一括か分割か)をどうするのか等を考えなければなりません。個別の事案でどれを選択すべきか異なります。返事は請求と同じく内容証明で行うべきなのか、電話で対応するのかなど交渉の方法も色々あります。お金がないということもあるでしょうし、ダブル不倫であれば、請求がクロスするので、一挙解決する方が望ましいこともあります。個別具体的に方針を検討すべきところです。

内容証明を無視することは避けるべき

内容証明郵便は手紙に過ぎませんので、無視をしたとしても違法ではありません。しかし、心当たりのある場合、無視をしたことで被害者の感情を逆撫ですることは否定できず、また、裁判所も誠実に対応をしない加害者の態度を非難して慰謝料の増額事由とすることもあり得ます。
心当たりのない場合であっても、無視はせずに回答するようにしてください。

代理人を通して請求されたら

誰からの請求であっても、やるべきことは特に変わりません。ただ、請求する側も弁護士費用をかけてまで請求していること、弁護士倫理の観点から弁護士が無茶な請求をする可能性は高くないことから、何らかの証拠がある場合が少なくないので、慎重に対応すべきではあります。弁護士は、請求する側も請求される側も経験しているので、一度相談されると良いと思います。

請求された慰謝料を減額するには

慰謝料を減額する方法

慰謝料に決まった額はありません。たとえ相場と言われる金額より多いとしても、当事者が納得して合意すれば有効な合意となります。証拠があるかどうかにもよりますが、話し合いで解決に至らない場合には訴訟が提起されることも少なくないです。裁判になれば必ず判決まで進むというものではなく、多くの事案が和解によって解決されています。もっとも、相手が弁護士費用や時間をかけているのであれば、それなりの金額でなければ和解に応じないでしょう。慰謝料請求は、調停で行うことも可能ですが、調停は裁判所で調停委員を介して話し合う場なので、話し合いで解決できる見込みがないのであれば、調停を利用する価値はないといえます。

慰謝料が減額されやすいケース

合意後、慰謝料を支払わないとどうなる?

執行認諾文言付の公正証書、調停調書、判決書等の債務名義が作成されている場合には、強制執行手続が執られる可能性があります。強制執行では、動産・不動産・給与債権等の資産が差し押さえることが可能です。
合意書・念書・覚書等の私署証書で合意した場合には、直ぐに強制執行ができず、判決や調停調書などの債務名義を取得することから始めなければなりません。

不貞慰謝料について悩んだら弁護士に相談してみましょう

不貞慰謝料請求は一般的に多く行われていますが、請求する側も、された側も様々な角度から個別の事案に応じた対応をしなくてはなりません。中には、不貞は夫婦や家族の問題であり、非常にプライベートな内容を含むため、「恥ずかしい」と考えて相談を躊躇う方もいらっしゃると思いますが、決して少ない賠償額ではないので、弁護士へご相談されてください。

相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に、単純承認、限定承認、相続放棄のいずれかを選択しなければなりません。そして、3か月が経過してしまえば、単純承認をしたものとみなされます。
このような法的知識が乏しい場合、被相続人(亡くなった方)の債務を全て相続することによって、予想外の経済的不利益を受けてしまうおそれがあります。
この記事では、相続の基本形態である単純承認について、詳しく説明します。

単純承認とは

単純承認とは、相続人が被相続人の権利義務を無制限・無条件に承継することを内容として、相続を承認することをいいます(民法920条)。
単純承認は、単純承認の意思表示をする場合と、一定の事由により単純承認をしたものとみなされる場合(法定単純承認、同法921条)とに分かれます。そして、現実的には後者が多数を占めると考えられます。
以下では、単純承認について、より詳しく説明します。

単純承認のメリット

単純承認の場合、被相続人の権利義務が無制限・無条件に承継されますので、相続人は、被相続人の不動産、自動車、家財道具、預貯金、金銭債権などの財産を全て無制限・無条件に承継することができます。

単純承認の意思表示をするために特別な形式は必要とされませんし、現実的には、期間経過により単純承認をしたものとみなされること(法定単純承認)が多いと考えられます。このように、特別な形式や手続を経ることなく、被相続人の財産を全て無制限・無条件に承継することができるという点が、単純承認のメリットです。

単純承認のデメリット

単純承認の場合、被相続人の義務も無制限・無条件に承継されますので、相続人は、被相続人の借入金、住宅ローン、自動車ローン、カードローン、未払賃料その他の債務も全て無制限・無条件に承継することとなります。
このように、特別な形式や手続を経ることなく、被相続人の義務を全て無制限・無条件に承継してしまうという点が、単純承認のデメリットです。
なお、現実的には、金銭を支払う義務(金銭債務)の承継が多いですが、それ以外の義務を承継する場合もしばしばありますので、御注意ください。

単純承認と見なされるケース(法定単純承認)

法定単純承認とは、一定の事由により単純承認をしたものとみなされる場合(民法921条)をいいます。
単純承認は、単純承認の意思表示によって行うことも可能ですが、現実的には、法定単純承認が多数を占めています。特に多いのは、熟慮期間の経過による単純承認(同条2号)です。
このように、法定単純承認は、一定の場合に単純承認をしたものとみなされる制度であり、現実的にも多数を占めていますので、法定単純承認について正しい理解をしておくことが望ましいでしょう。
以下では、法定単純承認について、より詳しく説明します。

相続財産の全部または一部を処分した場合

相続人が相続財産の全部又は一部を処分したときは、法定単純承認となります(民法921条1号)。その典型例は、家屋の取壊し、土地の売却、株式の質入れなどです。判例上、相続人が自己のために相続の開始した事実を知り、又は少なくともその事実を確実に予想しながら処分したことを要します。
ただし、保存行為及び短期賃貸借(民法602条)は、法定単純承認に当たりません。

不動産の名義変更を行った場合

被相続人名義で登記された不動産について、相続人名義に変更するという登記手続を行った場合、法定単純承認となります。また、判例に現れた事案としては、被相続人の債務の代物弁済として相続財産である不動産を第三者に譲渡した場合、法定単純承認となります。
このように、不動産の名義変更については、注意が必要です。

熟慮期間内に何も行わなかった場合

熟慮期間とは、相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内の期間のことをいい、この期間内であれば、単純承認、限定承認、相続放棄のいずれかを選択することができます(民法915条1項)。
そして、熟慮期間内に何も行わなかったときは、法定単純承認となります(同法921条2号)。現実的には、この法定単純承認が発生することが多いと考えられます。

相続放棄や限定承認後に財産の隠匿・消費などがあった場合

相続人が限定承認又は相続放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったときは、法定単純承認となります(民法921条3号)。
被相続人の債務が多い場合、相続人が限定承認又は相続放棄をする例はしばしばありますが、たとえ限定承認又は相続放棄をした後であっても、法定単純承認が発生してしまう可能性がありますので、特に注意が必要です。

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単純承認にならないケース

相続人が相続財産を処分した場合、法定単純承認となるのが原則です。
しかし、このルールをあまりに形式的に徹底すると、相続人にとって過酷となる場合もありますので、判例上、その例外が認められています。
以下では、具体的な事例に即して説明します。

葬儀費用を相続財産から出した場合

相続人は、遺族として、被相続人の葬儀費用を支出することが通常ですが、相続人自身の現金や預貯金が乏しい場合、相続財産から葬儀費用を支出せざるを得ない場合があると考えられます。このような場合、一律に法定単純承認を認めてしまうと、遺族にとって過酷となる可能性があります。

そこで、相続財産から被相続人の葬儀費用を支出した場合、法定単純承認を発生させないという裁判例が、散見されます。
ただし、ここにいう葬儀費用の額は、社会通念上相当な範囲内に限られており、無制限に認められるわけではありませんので、特に注意が必要です。

生前の入院費を相続財産から支払った場合

被相続人の生前の入院費は、相続債務です。もし、相続財産から入院費を支払った場合、相続財産全体としてはプラスマイナスがゼロになるはずですので、相続財産の保存行為にすぎないともいえそうです。
しかし、相続財産による支払を行ったことについて、相続財産の処分に当たるとみなされてしまい、法定単純承認となる可能性は、否定できません。
この点は、見解が分かれるところであり、法定単純承認となる可能性があることに注意すべきです。

形見分けは単純承認となるかどうか判断が分かれる

形見分けとして、亡くなった方の遺品を遺族に分配することは、慣習としてしばしば行われます。
これについて、相続財産の処分として法定単純承認となるか否かは、判断が分かれます。一般的には、遺品の経済的価値の大小が考慮される傾向にあり、裁判例上、形見分けによる法定単純承認が発生しないと判断された事例は、あります。 しかし、形式的・一律な判断基準を見出すことは困難といわざるを得ません。
形見分けについては、法定単純承認となる可能性があることに注意すべきです。

単純承認するかどうかはどうやって決める?

相続人が自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内は、熟慮期間であり、この期間内であれば、単純承認をするか否かを決めることができます。
その判断に当たっては、まず被相続人のプラスの財産とマイナスの財産(負債)を全て把握し、最終的にプラスの方が多いか否かを見極めることが重要です。そして、プラスの財産の方が多ければ、単純承認をするという選択肢が現実味を帯びてきます。 ただし、相続税が発生する場合には、その負担をも考慮しなければなりません。
いずれにせよ、3か月という期間は短いですので、早急な検討が望ましいでしょう。

単純承認したくない場合

熟慮期間内に相続財産の内訳を把握した結果、マイナスの財産の方が多いことが判明した場合、単純承認による経済的不利益が大きいですので、単純承認を回避するという選択肢が現実味を帯びてきます。
この場合、共同相続人全員で限定承認を行うか(民法922条、923条)、相続放棄を行うこと(同法938条)が可能です。いずれの手続も、熟慮期間内に、家庭裁判所に対して行わなければなりませんので、特に注意が必要です。

単純承認についてお悩みの方は弁護士へご相談下さい

相続人となった遺族は、葬儀などに忙しいため、相続手続にまでは気が回らない、ということは珍しくありません。被相続人が亡くなった後で初めて債務が判明した、という事例もしばしば見られます。
このような場合であっても、3か月という短い熟慮期間内に、単純承認をすべきか、限定承認をすべきか、相続放棄をすべきか、という選択を迫られます。そして、3か月が経過してしまえば、法定単純承認が発生します。
すなわち、単純承認をすべきか否かという判断には、時間的な余裕が乏しいのです。
残念ながら、法的知識が乏しいために、相続によって予想外の経済的不利益を受けてしまう方は、しばしば見られます。
このような事態を避けるためには、相続発生の前後を問わず、早めに弁護士に相談されることをお勧めします。

親をはじめとした親族が亡くなると、相続が発生します。不動産、預貯金、株式といったプラスの財産だけが遺産であればよいですが、返済できないほどの負債がある場合、負債も相続してしまうと大変なことになります。このような場合に、検討しなければならないのが、相続放棄です。

相続放棄とは

相続放棄とは、「自己に関する関係で不確定的にしか帰属していなかった相続の効果を確定的に消滅させる相続人の意思表示」をいいます。難しいですが、要するに、「相続をなかったことにする」ものです。
相続放棄により、資産も負債も一切合切、相続しなかったことになります。

相続放棄は、被相続人の債務を免れるために利用されることが多いですが、相続人の誰か一人に遺産を渡したいという場合や、遺産分割の手続が面倒で関わりたくないといった場合に利用されることもあります。

相続放棄の手続き方法

相続放棄のためには、熟慮期間(後記)内に、管轄家庭裁判所に、相続放棄の申述書を提出することが必要です。
例えば、相続人間で、「相続を放棄する」といった合意書を交わしていたとしても、それは、法律上、相続放棄とは評価されませんので、注意が必要です。

必要書類を集める

相続放棄の手続のためには、相続放棄申述書の他、標準的な添付書類を揃えることが必要です。

必要書類の代表的なものとして、被相続人の戸籍、相続放棄をする相続人の戸籍があります。戸籍は、本籍地の市区町村役場で取得しますが、婚姻、離婚、転籍等に伴って本籍地が変っている場合、各地の役場とやり取りしなければなりません。被相続人の戸籍は、被相続人の出生から死亡まで全てを揃える必要がありますので、収集に時間がかかります。
また、被相続人の住民票の除票又は戸籍の附票も必要です。これらも、住所地又は本籍地の役場で取得します。
(なお、裁判所のウェブサイトでは、戸籍が揃わない場合、追加提出でも良いとされています。)。

家庭裁判所に必要書類を提出する

相続放棄の申述先は、被相続人の最後の住所地の家庭裁判所です。郵送でも提出できます。提出の際には、必ず控えを残し、配達が記録されるレターパック等を用いるようにしましょう。
また、万一の郵便事故等に備えて、熟慮期間の終期まで余裕をもって発送することが望ましいです。

家庭裁判所から届いた書類に回答し、返送する

相続放棄の申述から2週間~1か月程度で、家庭裁判所から、相続放棄照会書が送られてきます。これは、相続放棄が相続人の真意に基づくかどうかや、相続放棄の理由等について問い合わせをするものです。
相続放棄照会書が送られてくることなく、相続放棄申述書が受理されることもありますが、稀なケースです。相続放棄の申述から一定程度経過して、相続放棄照会書が届かない場合には、申述先の家庭裁判所に確認をした方が良いでしょう。

返送期限内に回答書を送れない場合

相続放棄照会書の返送期限内に、回答書を送付しないと、最悪の場合には、相続放棄が受理されないリスクがあります。司法統計によれば、相続放棄の申述が却下されるのは、0.3%以下ですが、回答書は必ず送付するようにしましょう。

相続放棄申述受理通知書が届いたら手続き完了

相続放棄が受理されると、家庭裁判所から、相続放棄申述受理通知書が送られてきます。この通知書は、債権者に対して、相続放棄が受理されたことを証明するときに用います。相続放棄申述受理通知書は、再発行できないので、大切に保管するようにしましょう。

相続放棄申述受理通知書を紛失してしまった場合や、相続債権者から求められた場合等には、家庭裁判所から、相続放棄申述受理証明書を発行してもらうことができます。相続放棄申述受理証明書は、再発行してもらうことが可能です。

相続放棄の期限は3ヶ月

相続放棄には、「自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内」という期間制限があります(熟慮期間。民法905条1項)。この期限を過ぎてしまうと、相続の効果が生じてしまい(法定単純承認。民法921条2号)、相続放棄ができなくなってしまうことが原則です。

なお、熟慮期間経過前に、必要な戸籍の一部を入手できなかった場合、相続放棄申述書と、戸籍の一部を提出し、残りの戸籍を追完することは可能です(https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html)。

3ヶ月の期限を過ぎそうな場合

資産と負債のどちらが多いのかはっきりせず、熟慮期間内に遺産の調査が終わらないときがあります。そのような場合、家庭裁判所に、「相続の承認又は放棄の期間の伸長」を申し立て、熟慮期間を延長してもらうよう求めることができます。「相続の承認又は放棄の期間の伸長」が認められた場合、家庭裁判所が、新たな熟慮期間を設定しますので、その期間内に、遺産の調査を済ませ、相続放棄をするかどうか判断をし、必要に応じて相続放棄の申述をすることになります。

3ヶ月の期限を過ぎてしまった場合

熟慮期間経過後は、「相続の承認又は放棄の期間の伸長」の申立ては認められません。

また、熟慮期間経過後は、法定単純承認となり、相続放棄が受理されなくなってしまうのが原則です。
例外的に、相続放棄が認められる場合がありますが、「自己のために相続の開始があったことを知った時」を、実際に被相続人が亡くなったことを知った時ではなく、「債務の存在を現実に知った時」と解釈すべきといった主張立証が必要です。『相続人が相続財産の一部の存在を知っていた場合でも、自己が取得すべき相続財産がなく、通常人がその存在を知っていれば当然相続放棄をしたであろう相続債務が存在しないと信じており、かつ、そのように信じたことについて相当の理由があると認められる場合には、上記最高裁判例の趣旨が妥当するというべきであるから、熟慮期間は、相続債務の存在を認識した時又は通常これを認識し得べき時から起算すべきものと解するのが相当である』とした裁判例(福岡高裁決定平成27年2月16日判時2259号58頁)を踏まえ、相続放棄の必要性を、いつ、どのようなきっかけにより認識したか、主張立証しなければなりません。

被相続人が亡くなって長期間経過しているときには、被相続人の預貯金の処分等、法定単純承認に該当する余地のある事情があることが一般です。このような場合には、裁判例(大阪高裁平成14年7月3日決定家庭裁判月報55巻1号82頁など)を踏まえて、遺産の処分が法定単純承認事由に当たらないことの主張立証も必要になります。熟慮期間経過後にやむなく相続放棄の申述を検討する場合には、遺産を処分しないようにしましょう。

相続放棄の効力

相続放棄の申述が却下された場合、申述をした相続人は、高等裁判所に即時抗告をすることができます。
これに対して、相続放棄の申述が受理された場合、相続放棄をした者からは、相続放棄の効果を否定することができないのが原則です。
つまり、債務超過だと考えて相続放棄をした後、実は債務超過ではなく、多額の資産が判明したようなケースでも、原則として、相続放棄の効果を争うことはできません。

もっとも、相続放棄に、民法上の取消原因(詐欺、錯誤等)があるような場合には、家庭裁判所に対し、相続放棄の取消しの申述をすることが可能です。取消しの申述が受理されれば相続放棄の効果が覆り、単純承認されたことになります。

なお、相続放棄の効果は、家庭裁判所に受理されただけでは確定しないことに注意が必要です。相続放棄の効果が実体法上発生したかどうかは、民事裁判により判断されます。例えば、相続放棄が受理された後、相続債権者が、民事訴訟を提起し、その訴訟の中で、相続放棄の効力が生じたかが判断されることになります。このようなケースは滅多にありませんが、相続放棄の申述受理=相続放棄の効果が確定的に生じる、というわけではありませんので注意が必要です。

相続放棄は一人でもできるがトラブルになる場合も…

相続放棄は、相続人がそれぞれ一人で行うことができます。もっとも、一人だけで相続放棄をしてしまうと、他の相続人が思わぬ負担を被ったということになりかねません。

明らかに相続放棄したほうがいい場合

例えば、相続債務が300万円・相続人が3名で、2人が相続放棄したとします。残る1人が、100万円の負債なら返済できると思い相続放棄をせずにいたら、300万円の負債を返済しなければならなくなります。このような結果は、相続人間に大きな軋轢を生んでしまいます。
債務超過を理由に、相続放棄をするときには、相続人全員が、足並みを揃えることが望ましいです。

把握していない相続人がいる場合がある

相続放棄申述書の添付書類として、被相続人の戸籍を収集します。必ず、被相続人の戸籍の内容を確認し、ご自身の他に相続人がいないか、確認するようにしましょう。

実は被相続人に婚外子がいた等、他の法定相続人がいる場合があります。このようなとき、軽々に相続放棄を行ってしまうと、予想外の効果が発生してしまいかねません。
例えば、被相続人である父A、母B、子Cの3人で同居していたとします。遺産は債務超過ではなく、子Cが、母に全て相続させるために、相続放棄をしたものの、実は、父Aには、婚外子Dがいたという場合、母Bに相続させるつもりが、子Dに相続させることになってしまう、という結果になります。
特にプラスの財産があるときには、相続放棄をする前に、戸籍を精査し、「相続放棄によりどのような効果が発生するか(次の相続人となるのは誰か)」を確定しておくことをお勧めします。

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相続放棄後の相続財産について

「相続放棄をすれば、それで一切終わり」というわけではありません。
相続放棄をしても取得できる財産や、誰が取得するか協議をしなければならない財産、管理を継続しなければならない財産がありますので注意が必要です。

墓や生命保険など、相続放棄しても受け取れるものはある

相続放棄は、遺産について効力が生じます。遺産にあたらない財産については、相続放棄をしても、受け取ることができます。代表的なものは、受取人を相続人と指定された生命保険金です。この生命保険金は、保険金受取人固有の財産となり、相続放棄をしたとしても、受け取ることができます。

ただし、受取人を被相続人と指定されていた生命保険金は、遺産にあたり、相続放棄により受け取れなくなります。また、受取人を相続人と指定されていた生命保険金は、民法上は遺産に該当しないと評価されますが、税法上、みなし相続財産として、相続税がかかることがありますので注意しましょう。

生命保険金の他、お墓をはじめとしたいわゆる祭祀に関するものは、遺産とは別に、「祭祀を主宰すべき者」が承継するとされています(民法897条)。つまり、相続放棄をしたとしても、お墓を誰が継ぐのかといった事項の話し合いをしなければなりません。話し合いがまとまらなかったときは、家庭裁判所に、祭祀承継者の指定の調停・審判を申し立てることになります。

全員で相続放棄をしても家や土地の管理義務は残る

相続放棄をしたとしても、他の相続人が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、その管理を継続しなければなりません。これは、相続財産の毀損を防ぐための規定です。管理が困難な場合等には、家庭裁判所に、相続財産管理人を申し立てることになります。なお、この管理責任等の明確化等に向けた議論が、法制審議会民法・不動産登記法部会で行われていますので、今後、法改正がされる可能性もあります(http://www.moj.go.jp/content/001318248.txt 他)。

相続放棄したのに固定資産税の請求がきたら

固定資産税の納付については、「台帳課税主義」が取られています(地方税法343条2項)。「台帳課税主義」を基に、納税義務者に、納税通知書が発送されます。相続放棄をしたのに、この納税通知書が到着した場合、固定資産税を納税しなければなりません。

納税後、本来の納税義務者に、立て替えた納税額を請求することになります。また、事案によっては、固定資産税の課税処分に対する不服申し立てを行う余地もあります(不服申立てには、期間制限があるので注意しましょう。)。
また、相続放棄をしたのに、固定資産税台帳に名前が載っている場合、役所に相続放棄申述受理証明書を送付して、固定資産課税台帳の記載を変更することも考えられます。

相続放棄手続きにおける債権者対応

遺産から、相続債務を支払ってしまうと、法定単純承認として、相続放棄ができなくなってしまいます。そのため、相続放棄をするかどうか、判断する前であっても、債権者対応を誤ってしまうと、相続放棄ができなくなってしまうので、注意が必要です。

「とりあえず対応しよう」はNG

被相続人の遺産の全貌が判明する前に、「被相続人に借金があった。遺産の通帳を見ると、借金を返せそうな残高がある。通帳からお金を引き出して払ってしまおう」といった判断をすることはNGです。返済できないほどの債務がないか、信用調査機関(CIC、JICC、KSC)で、被相続人の債務を確認するようにしましょう。

「利子だけ払っておこう」はNG

被相続人の預貯金からお金を引き出して、利息だけ払ってしまうというのも、同様に、単純承認にあたり、相続放棄ができなくなるリスクがありますので、注意しましょう。
なお、遺産から支払いをするのではなく、相続人固有の財産から弁済をする場合には、単純承認に当たらないとされていますが、相続放棄をするのであれば、不要な債務の返済をしてしまうことになります。「相続放棄をするかどうか決まるまで、返済はしない」と考えておく方が安全です。

サインはしないようにしましょう

債権者から、債務の承認を求められ、書面にサインをしてしまうと、単純承認にあたると評価され、相続放棄ができなくなるリスクがあります。また、昔の債務の返済を求められ、「時効だから払わない」と言ってしまうと、同じく単純承認にあたると評価され、相続放棄ができなくなるリスクがあります。

遺産に触れないようにしましょう

債務の返済の他、遺産を売却したり、遺産である住宅を取り壊したり、自分の物として使ってしまったりすると、同じく法定単純承認にあたると評価され、相続放棄ができなくなるリスクがあります。
「遺産に何かする」場合には、それが法定単純承認にあたってしまわないか、慎重に判断することが必要です。

相続放棄に関するお悩みは弁護士にご相談下さい

相続放棄は、「家庭裁判所に書類を提出すれば終わり」と考えておられる方が少なくありません。しかし、家庭裁判所の手続の前後で、複数の法律上の問題点があります。問題点に気付かずに行動してしまうと、相続放棄ができなくなったり、他の相続人に思わぬ迷惑がかかったり、損をしてしまう可能性があります。「相続放棄は簡単」と考えずに、弁護士に相談されることをお勧めします。

親族が亡くなった時、相続の問題を考えるにあたって最初に確認しなければならないのが、法定相続人の範囲です。相続人が複数存在する場合、遺産分割協議を行うことになりますし、負債がたくさんあって相続放棄を検討しなければならない場合にも、自身がどの順位なのかによって、先順位の者の判断を待つべきなのか、一日でも早く相続放棄の申述をすべきなのかが変わってくるからです。

相続のもっとも基本的なルールの一つである法定相続人の範囲等について、以下説明していきます。

法定相続人とは

民法は、相続人になるべき者の範囲や順序、各自の相続分の割合を規定していますが(887条以下)、法律上、相続人の範囲に含まれる者のことを法定相続人と言います。

法定相続人の順位や人数の把握は、遺産分割協議の要否や割合等、相続に関する問題を考える大前提となるものですので、基本的な事項を確認しながら説明していきます。

法定相続人の範囲

法定相続人の範囲に含まれるのは、㋐被相続人の配偶者(890条)、①被相続人の子(及びその代襲者、再代襲者等)、②被相続人の直系尊属(父母・祖父母等、③被相続人の兄弟姉妹(及びその代襲者)です。
㋐は常に相続人となりますが、①②③は順列の関係にありますので、②③は①等、順位の者がいないときに限って相続人となります(887条~890条)。

配偶者は必ず相続人になる

死亡した方が結婚していた場合、その配偶者は常に相続人となります(890条)。相続放棄した場合や、相続人の欠格事由・廃除等に該当する場合、相続開始前に死亡した場合等は、相続人の地位を失いますが、そうでなければ、遺産分割や遺留分に関する権利を持つ、ということです。

なお、ここにいう結婚は法律婚のことを指します。離婚した元妻や、内縁の妻に相続権はありません。
被相続人と同居し、生計を同じくしていた者の場合、他の相続人が全員放棄する等、相続人がいない場合で相続債権者等への弁済等を経てもなお、残余財産の存する場合は、特別縁故者としての分与が請求できる場合もありますが(958条の3)、確実に遺産を渡すことを希望するなら、生前に遺言書を作成する等の手当が必要です。

子供がいる場合

被相続人の子供は、第一順位の相続権を有します(887条以下)。遺言等がなく、配偶者もいない場合、子供たちだけで遺産を分け合うことになります(同順位の相続人間の割合は原則として均等です)。配偶者がいる場合は、配偶者が1/2、子供が1/2の割合です(900条1号)。

子供がいない場合

被相続人にはそもそも子供がいなかった、という場合は、両親や祖父母等の直系尊属が存命の場合、その中で最も親等の近い者が相続人となります(889条1項1号)。直系尊属もいない場合、被相続人の兄弟姉妹が相続人となります(889条1項2号)。

なお、被相続人には子供がいたが、先に死亡していたという場合や欠格・廃除等に該当したという場合は、直ちに後順位の者を検討するのではなく、代襲相続の問題を確認しなければなりませんので、注意が必要です(887条2項、3項)。

子供がいるが離婚している場合の法定相続人は?

相続権を有する「配偶者」は、被相続人の死亡時点において、法律上の夫婦だった者です。被相続人が死亡する前に離婚した元妻は相続人ではありません。
したがって、この場合、子供がいればその子供たちが(第一順位相続人)、子供がいない場合(相続放棄等含む)、孫等がいればその孫たちが(第一順位相続人の代襲者)、孫等もいなければ父母等の直系尊属が(第2順位)、これらのいずれもいなければ兄弟姉妹らが相続人となります。

死別などで配偶者がいない場合の法定相続人は誰か

被相続人より先に死亡した者に相続権はありません。子供や兄弟姉妹の場合、代襲相続が問題になりますが、配偶者の場合、代襲相続はありません。したがって、この場合も相続人となる配偶者はいないものとして、子供や孫、父母・祖父母等、兄弟姉妹等が、その順位に応じて相続人になります。

独身の場合の法定相続人は誰か

結婚歴がなければ、相続人となる配偶者はいませんので、子供がいればその子供、子供が死亡・欠格・廃除等により相続権を失っている場合は孫らが、これらの者がそもそもいないか、子供らが全員相続放棄している場合は、第2順位以下の相続人が、相続権を有します。

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兄弟・姉妹は法定相続人になるか

兄弟姉妹は第3順位の法定相続人です(887条以下)。上位の相続人(配偶者は別枠です。)がいない場合や、全員が相続放棄等で相続人の資格を失った場合に限り、相続権を有します。配偶者がいる場合は、配偶者3/4、兄弟姉妹1/4の割合です(900条4号)。

なお、同順位の相続人の割合は均等なのが原則ですが、兄弟姉妹については、父母が共通する者と、父母の一方のみが共通する者とで区別されており、後者の権利は前者の1/2と規定されています(900条4号)。

甥・姪は法定相続人になるか

兄弟姉妹の子(甥・姪)は、第3順位相続人たる兄弟姉妹の代襲相続人として、相続人となる場合があります。被相続人の子供や孫、祖父母等の先順位相続人がいない場合で、かつ兄弟姉妹のうち、被相続人よりも先に死亡した者がいる場合、その子供(甥・姪)は代襲相続人となります(901条2項)。

法定相続人の問題とはやや異なりますが、「兄弟姉妹Xが被相続人Aよりも後に死亡した」、という場合、Aの遺産分割が終わっていなければ、Xが有していたAに対する相続権をXの子(=Aの甥・姪)が相続し、Aの遺産分割協議に参加するということもあります。

孫は法定相続人になるか

被相続人の孫は、子の代襲相続人として、第1順位の法定相続権を取得する場合があります。被相続人に子があり、その子が先に死亡していた場合や、相続欠格、廃除によって相続権を失った場合がこれにあたります(887条2項)。

他方、被相続人の子が存命で、これら事由に該当しない場合は代襲相続の余地はありません。被相続人の子が相続放棄をした場合も代襲相続の対象外です。

養子は法定相続人になるか

養子も、実子と同じく、第1順位の法定相続人です。血のつながりで区別されるようなことはありませんし、相続権の割合も同じです。なお、養子は養親だけではなく、実の親に対する相続権も有します(※特別養子縁組の場合を除く)。普通養子縁組は、実親との親子関係を消滅することなく、養親との間で、法律上親子関係を新たに築くものだからです。

法定相続人がいない場合

民法は、「相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする」と規定しています(951条)。この“相続人のあることが明らかでないとき”には、相続人の存否が不明という場合だけではなく、相続人全員が相続放棄をした場合等、相続人が存在しない場合を含みます。
すなわち、法定相続人の範囲に該当する者がいない場合、その被相続人の遺産は法人を形成します。この法人の財産は、利害関係人等の申立てによる相続財産管理人の選任や、各種の公告、相続債権者に対する弁済等を経て清算されることになります(951条~958条の2)。

これらを経てもなお、残余財産が生じた場合、特別縁故者らの請求がある場合、家庭裁判所は残余財産の分与を検討します(958条の3)。それでもなお、残余財産のある場合、その財産は国庫に帰属します(959条)。

法定相続人についてお困りなら弁護士にご相談ください

法定相続人の範囲や順序、相続分の割合などは、ある程度周知されつつあるものの、民法は細かく条文を規定していることから、その全てを正確に理解するのは骨が折れるものです。

法定相続分は遺産分割の大前提となるものですし、特別縁故者としての請求、相続放棄をした場合の財産の帰属等、正確な知識の下で、事案に応じた方針を策定することは、無用なトラブルを回避し、相続に関する紛争を最小限に抑えることに有益です。

相続問題全般に言えることですが、弁護士等の専門家に、なるべく早い段階で相談しておくことを強くお勧めします。

弁護士などの法律専門職でなくても、「遺産分割調停は、話し合いで遺産を分けるだけだから自分でできる」と考える方もいるのではないでしょうか。
しかし、遺産分割に関する法律論は非常に難解です。また、遺産分割のための手続も、家庭裁判所だけでなく地方裁判所の手続も必要になる場合もあります。

遺産分割は、理論的にも手続的にも非常に複雑です。本頁をご覧いただき、「難しい!自分でできなさそう!」とお考えの方は、弁護士にご相談ください。

遺産分割調停とは

遺産分割調停は、家事事件手続法(平成25年1月1日に施行)に定められた家事調停手続の一つです。遺産分割のための家庭裁判所の手続は、遺産分割調停と遺産分割審判の2種類があります。このうち、遺産分割調停は、家庭裁判所を通じて、遺産の分割に向けて、当事者間の利害を調整していくものです。これに対して、遺産分割審判は、裁判所が事実認定を行いそれに基づいて公権的な判断を下す手続です。

遺産分割調停と、遺産分割審判は、解決方法のイニシアティブが、当事者よりか裁判所よりかで違いがあります。

遺産分割調停の流れ

遺産分割をするには、遺言の有無、相続人の範囲、遺産の範囲、特別受益や寄与分の内容が確定していなければなりません。そのため、調停申立てのためには、単に申立書のひな形を受ければいいというわけではなく、これらについてきちんと調査し、資料を揃える必要があります。

必要書類を集める

家庭裁判所のウェブサイトでは、遺産分割調停の必要書類として、申立書、戸籍(戸籍謄本、除籍、改製原戸籍)、相続人全員の住民票又は戸籍附票、遺産に関する証明書(不動産登記事項証明書及び固定資産評価証明書、預貯金通帳の写し又は残高証明書、有価証券写し等)が挙げられています。

これらは、①相続人の範囲を確定するため、②遺産の範囲と評価額を確定するために用いられます。
戸籍及び附票、固定資産評価証明書は各市区町村の役所、不動産登記事項証明書は法務局、預貯金通帳、残高明細等は各金融機関から取り付ける必要があります。

また、上記の他、遺言書がある場合には、遺産分割調停ではなく、遺留分侵害額の請求調停や、遺言無効確認調停等を申し立てることが必要となる場合もあります。遺産分割調停の申立て前に、上記必要書類に限らず、網羅的に相続人調査、相続財産調査をした上で、遺産分割調停以外に必要となる手続がないか、検討することが望ましいです。

相続人全員の住所が必要なことに注意が必要

遺産分割調停は、相続人全員が合意をして初めて効力が生じます。そのため、遺産分割調停には、相続人全員の関与が必要です。そして、相続人を遺産分割調停に関与させるには、家庭裁判所から申立書を送達する必要があります。
相続人のうち、住所が不明な者がいる場合、不在者財産管理人の選任手続や、失踪宣告等の手続が必要となる場合があります。

未成年・認知症の相続人がいる場合は代理人が必要

未成年者は、原則として、行為能力(自らの行為により法律行為の効果を確定的に自己に帰属させる能力)がありません。行為能力のない未成年者は、単独で遺産分割協議・遺産分割調停を行うことができません。そのため、相続人の中に未成年者がいる場合、親権者又は未成年後見人が法定代理人として手続を行います。ここで、未成年者と、その法定代理人が、ともに相続人だった場合等、未成年者と法定代理人の利害が対立する場合や、同一の者が、複数の、相続人である未成年者の法定代理人であるような場合には、利害対立が起こる恐れがあるので、「特別代理人」を選ぶ手続が必要となります。

また、遺産分割のためには、意思能力(行為の結果を弁識するに足りるだけの精神的能力)が必要となります。相続人に、重度の認知症、高次脳機能障害等、意思能力に疑問がある者がいた場合、これらの者に成年後見の申立て等が必要となる場合があります。さらに、成年後見人と、成年被後見人との間に、利害対立がある場合には、特別代理人の選任等が必要となります。

管轄の家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てる

遺産分割調停の管轄は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所又は当事者が合意で定めた家庭裁判所です。
管轄のある裁判所に、申立書その他の必要書類を添えて、郵送で申し立てることが一般です。
なお、遺産分割審判は、被相続人の最後の住所地(相続開始地)を管轄する家庭裁判所又は当事者が合意で定めた家庭裁判所が管轄となります。

申し立てにかかる費用

遺産分割調停の申立てには、被相続人1名に対して収入印紙1200円の他、各相続人への送達等のための郵便切手が必要です。
民事訴訟を提起する場合と比較すると、印紙代は低額です。ただし、遺産確認の訴え等の民事訴訟手続が必要になる場合、各手続ごとに、民事訴訟費用等に関する法律所定の手数料(印紙代)が必要になります。

1カ月程度で家庭裁判所から呼出状が届く

遺産分割調停を申し立てた後、家庭裁判所での審査を経て、申立書や、呼出状が、相続人に送達されます。申立てから呼出状が届くまで、概ね1か月程度の期間を要することが多いですが、近年、感染拡大防止のための緊急事態宣言等の影響により、家庭裁判所によっては、1か月を大きく超える期間がかかる場合も散見されます。

調停での話し合い

調停期日では、原則として、各当事者ごとに、調停室に入り、調停委員と協議をします。各当事者に代理人が就いており、代理人全員と調停委員が認識を共有した方がいい場合や、足並みがそろっている当事者がいる場合には、複数の当事者が一緒に調停室に入ることもあります。

第1回期日で、遺産分割の方法等がまとまらない場合、次回期日が指定され、次回期日までの提出書面が定められることになります。第2回期日以後も同様です。

調停成立

遺産分割調停が成立すれば、遺産分割の方法等が記載された調停調書が作成されます。調停調書は、判決書等と同様、「債務名義」(強制執行が可能となる公的な文書。民事執行法22条)であり、これをもとに強制執行することができます。

つまり、例えば、ある相続人Aが、遺産分割調停で、相続人Bに対する金銭の支払いを約束したのに、支払いをしなかったという場合、相続人Bは、調停調書により、相続人Aの給与や預貯金を差押えることができます。

成立しなければ審判に移行する

調停不成立と判断されるタイミング

家事事件手続法上、遺産分割調停が不成立となった場合、「家事調停の申立ての時に、当該事項についての家事審判の申立てがあったものとみなす」とされています(家事事件手続法272条4項)。つまり、調停不成立の場合、当事者が審判申立てをしなくても、必ず審判に移行します。
「遺産分割調停期日を〇回開催しても話し合いがまとまらない場合、審判移行」といった決まったルールがあるわけではありません。

遺産分割調停の当事者は、兄弟姉妹、親子等、親族関係があり、調停手続が終わっても当事者の関係が続きます。当事者が納得の上で、話し合いで解決することが望ましいことから、家庭裁判所は、遺産分割調停を簡単に不成立にするのではなく、粘り強く話し合いを求めることが多い印象です。

遺産分割調停にかかる期間

遺産分割調停期日は、1か月~2か月に1回程度のペースで開催されます。1回の調停期日では、概ね2時間~3時間程度の時間が取られることが多いです。

家庭裁判所での遺産分割調停・審判手続にかかる期間ですが、司法統計によれば、約70%が1年以内に終了、約90%が2年以内に終了となっています。遺産分割手続終了までの期間は、事案の難易度次第ですが、概ね2年以内に終わることが多いと考えてよいです。

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遺産分割調停のメリット

当事者間では、冷静に遺産分割協議ができなかったり、のらりくらり躱されて話し合いが進まなかったりということがあります。家庭裁判所で遺産分割の手続を行うことで、感情的になることを避けたり、テーマごとに詰めた協議をしていくことができます。

冷静に話合いを行うことができる

遺産分割事件は、当事者の感情的対立が激しいことが少なくありません。感情的対立が大きい当事者同士で協議をしたとしても、法的な点以外で紛糾してしまい、いつまでたってもまとまらないということがあります。

一方、家庭裁判所の遺産分割調停は、「法律上解決が可能な点」に絞って協議がされます。感情的な対立であったり、「昔、〇〇ということがあった」というような遺産分割とは無関係な事項は、家庭裁判所では取り上げてもらいにくいです。
遺産分割調停には、協議の対象を絞ることで、当事者が、遺産分割で解決可能な事項と、解決できない事項を理解し、解決可能な事項の解決へ向けて動いていくという効果があります。

また、調停委員を介して協議をするため、お互い悪口の言いあいになったり、感情のぶつけ合いが起きにくいという効果もあります。

遺産分割を進めることができる

遺産分割調停は、1か月~2か月に1回、開催されていくため、手続が動いていきます。のらりくらり躱されたり、無視をされたりといったことがありません。
また、仮に、遺産分割調停が不成立になった場合でも、審判移行により、強制的に遺産の分割がされますので、「遺産分割がされない状態が固定化する」ということがありません。

遺産分割調停のデメリット

遺産分割調停は、中立公正な家庭裁判所を通じて協議をするものです。当事者の一方に偏った判断がされることはまずありません。そのため、遺産分割調停を申し立てた場合、申立人側に不利な判断がされることもあります。

希望通りの結果になるとは限らない

家庭裁判所は、中立な立場から、審判になった場合の見通しも踏まえて、遺産分割調停案を提案します。例えば、当事者が特別受益を得ている場合等には、これが考慮されるのが原則です。法律上、受け入れられないような結果を希望しているような場合には、遺産分割調停で希望が通ることはないと考えた方がいいでしょう。

また、「自分は、〇〇という財産を取得したい」という希望が必ず受け入れられるとは限りません。例えば、遺産に不動産があり、他の相続人が居住している場合、その不動産の取得を希望しても、認められず、代わりに金銭をもらうことになった、ということもあります。

長期化する恐れがある

前記のとおり、遺産分割調停は、概ね2年以内に終了することが多いです。もっとも、相続人や遺産の範囲に争いが生じたときは、さらに1~2年程度の期間がかかることが少なくありません。また、後々、未分割の遺産が発見されたような場合にも、未分割の遺産を巡る争いが生じることになります。

基本的に法定相続分の主張しかできない

遺産分割調停では、特別受益、寄与分といった相続分の修正が認められないときは、法定相続分での分割となることが一般です。「長男だから遺産を全て引き継ぎたい」といった主張をしても、まず認められません。

遺産分割調停で取り扱えないもの

遺産分割調停は、「遺産分割の対象となる財産」のみが対象になります。
例えば、被相続人の生前、多額の使途不明金があり、贈与等が成立する余地がないような場合、使途不明金の返還請求権(不当利得返還請求権又は不法行為による損害賠償請求権)は、遺産分割の対象となりません。このような場合、別途、地方裁判所に、民事訴訟を提起する必要があります。

また、遺言書の効力に争いがある場合や、遺産の範囲に争いがある場合には、それぞれ遺言無効(有効)確認の調停・訴えや、遺産確認の調停・訴えをする必要があります。

遺産分割調停を欠席したい場合

家庭裁判所での調停手続は、平日に開催されます。仕事等で調停期日に出席できない場合、期日変更を求める他、期日を欠席するという選択肢もあります。
もっとも、期日を欠席すると、期日で必要な主張ができなかったり、場合によっては、調停成立の見込みがなく審判移行というリスクもあります。
調停手続で主張したい事項があれば、代理人を選任する等して、期日に欠席しないようにすべきです。また、欠席を続けた場合、不利な判断がされるリスクがあることも理解しておく必要があります。
なお、管轄の家庭裁判所が遠方で出席しにくい場合には、電話会議システムによる手続参加も検討しましょう。

遺産分割調停の呼び出しを無視する相続人がいる場合

遺産分割調停は、相続人の全員が参加しなければ成立しません。そのため、調停期日の呼び出しを無視する相続人がいる場合、遺産分割調停は成立しません。この場合、審判に移行することになります。

遺産分割調停に欠席を続けた相続人がいるからといって、他の相続人に有利な遺産分割審判がされるとは限りません。遺産分割の方法として、何が適切かという点に関し、しっかり主張立証しておくことが望ましいです。

遺産分割調停は弁護士にお任せください

弁護士は、遺産分割に関連する実体法上・手続法上のリスクについて、適切な知識を有しています。十分な知識がないまま、遺産分割調停・遺産分割審判に臨むと、思わぬ不利益を被ることがあります。また、「後々、不利になったら弁護士に相談すればいい。」といった考えをしていると、取り返しがつかなくなることがあります。

遺産分割調停手続を行う前から、可能な限り相続人調査・相続財産調査の段階から、弁護士の関与を検討されることをお勧めします。

この記事の監修

福岡法律事務所 所長 弁護士 今西 眞
弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 所長弁護士 今西 眞
福岡県弁護士会所属。弁護士法人ALGでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。
福岡県弁護士会所属。弁護士法人ALGでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。