寄与分の請求に時効はある?特別寄与料の期限についても解説!

コラム

福岡法律事務所 所長 弁護士 今西 眞

監修弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 所長 弁護士

寄与分とは、特別の寄与を行った相続人に対し、そうでない相続人よりも多くの遺産を取得させるというものです。寄与分は資産分割における主張ですので、それ自体に時効はなく、これが認められるのは共同相続人のみです。他方、令和2年7月1日施行の改正民法では、相続人以外の一定範囲の親族による寄与行為について、相続人に対する特別寄与料の請求が新設されました。こちらは時効や除斥期間といった期間制限のある権利ですので、その違い等にも注意しながら、以下説明していきます。

まずは知っておきたい「寄与分」の意味

寄与分とは、共同相続人の中に被相続人に対して特別の寄与を行った者がいる場合に、その者の遺産分割の取り分を多く認めるというものです。名義の上では被相続人の遺産であっても、特別の寄与がなければ存在しなかった財産なのだから、その寄与行為をした者に取得させるべきという価値判断によります。これが認められる場合、法定相続分の他、寄与による割合が遺産分割の割合を定めるための一要素として用いられることになります。

寄与分が認められるための要件

寄与分は相続人間で遺産の分配割合を定めるためのものですので、認められるのは相続人だけです。その行為の内容も、単に介護をしたとか、家業を手伝ったというだけでは足りず、当該行為が特別の寄与に該当することが求められます。
寄与分が認められるためには、当該行為の結果、被相続人の財産が維持増加したということも必要ですし、親族は相互に扶養義務等を負うことから、寄与行為はその親族関係から期待される程度を超えるものであることも求められます。これら要件の詳細は、下記のリンク先をご覧ください。

寄与分とは|請求の要件と計算方法

寄与分に時効はあるのか?

寄与分はそれ単体が何かしらの請求権を構成するようなものではありません。どれだけ献身的に介護を尽くしたとしても、遺産がなければ主張する場はないのです。
遺産分割の場面で主張するものですので、すでに遺産分割協議が成立した後に主張するのは困難です。その意味では実質的には主張できる期間に限りはあるものの、遺産の分け方を定めるための一事情に過ぎない寄与分それ自体の主張に、時効というものはありません。

昔の寄与分が認められにくいのは本当?

寄与分の主張は、単に主張するだけではなく、きちんと証拠資料を確保した上で行うことが肝要ですが、時間の経過とともに、紛失等による資料の散逸は顕著となっていきますし、診療録や預金取引記録等、第三者が保管している資料も、一定の保存期間が経過すると破棄されてしまう場合がほとんどです。
また、寄与行為の詳細を説明するにも、記憶が薄れてしまうことで整合的な説明が困難になってしまう場合もあるでしょう。
相続自体は開始(被相続人が死亡)していたにもかかわらず、遺産分割を棚上げにしてしまい長期間経過したという事態に陥らないよう、遺産分割の問題は早めに着手することが肝要です。

「特別寄与料」には期限があるため注意!

特別寄与料は、相続人以外の被相続人の親族が、無償で療養看護その他の労務の提供をし、これにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与があったと認められる場合に、その寄与に応じた金額を相続人に対して請求できるという権利です。令和2年7月1日施行の改正民法により新設された制度ですので、同日以降に開始した相続が対象となります。ただし、この権利は以下のとおり、行使可能な期間について厳しい制限がありますので、注意が必要です。

特別寄与料の消滅時効

特別寄与料の請求権は、特別の寄与をした者が相続の開始および相続人を知った日から6ヵ月で時効となる旨が規定されています。時効期間が経過してしまうと、援用により、その権利はもはや行使することが出来なくなってしまいます。

特別寄与料の除斥期間

特別寄与料の請求権には、時効だけではなく除斥期間も定められています。この除斥期間は時効の期間とは異なり、完成猶予や更新(≒期間の延長)はできないものと解されておりますので、除斥期間(相続開始の時から1年)を経過すると、もはやその特別寄与料は請求できなくなります。

寄与分を主張するためのポイント

寄与分は、類型別に主張すべきポイントや、有効な証拠が異なります。当初から有力な証拠に基づいた主張立証を行うことは、家庭裁判所の心証を有利に進めることはもちろん、他の相続人への説得にも影響するところです。要件に沿った効果的な主張や、集めるべき資料等を自身で行うのはとても大変です。ぬかりなく行うためにも、相続案件を得意とする弁護士に、早い段階で任せてしまうことをお勧めします。

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寄与分を請求する流れ

遺産分割協議は相続人全員が納得するなら、どのような分け方でもかまいませんが、寄与分を認めるということは、自身の取り分を減らすことでもあります。当事者の主観と法的な評価は一致しないこともありますし、きちんと検討すれば要件を充たしていないという場合もあるかもしれません。自身の利や疑念を乗り越えて、全員が話し合いだけで寄与分を認めるというのは容易な事ではありません。
このように、遺産分割協議がまとまらない場合や、そもそも話し合いが困難という場合、遺産分割調停や寄与分を定める調停を申立て、そこでも協議がまとまらない場合、審判手続に移行して、裁判所の判断を仰ぐというのが一般的な流れです。各手続の詳細は下記のリンク先をご参照ください。

寄与分を主張する方法

よくある質問

遺産分割協議後に寄与分を主張することはできますか?

遺産分割協議は、遺産の分配方法について相続人全員で協議するものであり、その合意は遺産の分配方法に対する最終的な合意です。遺産分割協議にかかる合意が有効に成立した後に寄与分等を主張しても、解決済みの事項の蒸し返しに過ぎないものとして排斥されてしまいます。
遺産分割協議自体のやり直しを認めてもらう他ありませんが、そのためには当該遺産分割協議自体を無効ならしめるような事情が要求されますので、(協議には参加したが)寄与分について主張しそびれたという程度では、やり直しが認められることはないでしょう。

特別寄与料の時効を延長することは可能ですか?

特別寄与料も債権の一種(金銭の請求権)ですので、民法所定の時効完成猶予や時効の更新(裁判上の請求、債務承認、催告等)を行うことは可能です。もっとも、特別寄与料の場合、除斥期間が1年と規定されておりますので、時効完成猶予等を行ったとしても、相続開始の時から1年を経過した後の請求はできません。

夫の親(被相続人)を介護した妻にも寄与分は認められますか?

妻は夫の親の相続人に該当しないため、妻個人に寄与分は認められません。
配偶者の親との同居やその介護の負担というのは比較的よくある話ですし、その負担も大きいのに相続人ではないというだけで何も評価されないというのはいかにも不公平に思われます。
そのため、旧法の事例では、夫の寄与分として妻の寄与行為が評価された事案はありますが、寄与分はあくまで相続人同士の取り分の問題という枠組みを超えるものではないため、夫が先に他界していて子供もいないという場合等、評価されないということになりかねませんでした。
これに対し、現行法は特別寄与料という制度を新設したため、同法が適用される事案の場合、妻には特別寄与料が認められる可能性があります。

寄与分はできるだけ早い段階で主張することをおすすめします。まずは弁護士にご相談下さい。

寄与分の主張や特別寄与料の請求は、要件も複雑で、主張すべきポイントや立証資料の収集等も容易なものとは言い難いものです。特に後者は時効・除斥期間による期間の制限も厳しいため、被相続人の死亡に心を痛める暇もなく、行動しなければなりません。これらは、専門家に一任することにより、負担を大幅に軽減することが出来る場合が多いものです。自身の請求が認められる可能性を確認するだけでも良いと思いますので、早期段階で弁護士に相談することをお勧めします。

遺産分割協議が終わり、ひと段落と思っていたら、新たな遺産が判明して、分割が必要となることがあります。また、非常に稀ですが、遺産分割協議をしたものの、相手方に騙されていて、遺産分割の取消が必要となる場合があります。本稿では、このような場合について解説します。

遺産分割はやり直しができるのか

遺産分割は、原則として、やり直しできません。一度決めた遺産分割協議の内容を、当事者の一部の一存でやり直しできるとなれば、いつまでも遺産分割に関する紛争が続くことになってしまい、よくないためです。遺産分割協議で定めた内容を、相続人の一人が履行しなかった場合でも、遺産分割協議を債務不履行解除するとはできない、というのが、最高裁の判例です(最判平成元年2月9日)。
例外的に、遺産分割をした後、当事者である共同相続人全員が合意している場合、新たな遺産が見つかった場合、遺産分割そのものが錯誤等により取り消されたとき、等には、遺産分割のやり直しをすることはできます。

遺産分割後に他の財産が見つかった場合

新たな遺産が見つかった場合、新たな遺産は、共同相続人で遺産共有した状態のままです。この共有関係を解消するため、新たな遺産についての遺産分割協議が必須となります。
遺産分割協議の方法として、①新たな遺産についてだけ、遺産分割をする、②遺産分割全体をやり直す、の2つの方法があります。
①の方が、手間がかからないことはいうまでもありません。
もっとも、新たな遺産が、価値が高かったり、既存の遺産と関連するような場合には、②の方法を採らざるを得ないことがあります。遺産分割協議のやり直しの法的根拠として、遺産分割協議の合意解除や、錯誤取消(錯誤無効)などが想定されます。どの法的根拠によるかで、やり直しがそもそもできるかどうかや、課税関係に影響を与えることがありますので、慎重に検討する必要があります。

遺産分割のやり直しを行う場合に期限や時効はある?

共同相続人全員の合意により、遺産分割協議をやり直す場合、期限や時効はありません。ただ、大昔の遺産分割協議をやり直すとなると、当時の資料が散逸していることが多いです。そのため、遺産分割協議のやり直しが必要な事情が生じたときは、速やかに対応する必要があります。

取消権には時効があるので注意が必要

遺産分割協議のやり直しの根拠として、錯誤、詐欺、強迫による取消しによるときは、取消権の消滅時効に注意が必要です。
取消権は、「追認をすることができる時から5年間」又は「行為の時から20年」(民法126条)で、時効により消滅します。取消ができると分かったら、すぐ行動を起こさないと、消滅時効によりやり直しができない可能性もあるので注意が必要です。

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遺産分割をやり直した場合の注意点

遺産分割協議のやり直しの際、「どの遺産を誰が取得する」「いくら取得する」といったことだけを考えるのでは不十分です。やり直しの後、どういう手続が必要になるのか、税金をいくら納める必要があるのか、といった、やり直しの効果についても考えることが必要です。

やり直し前に第三者へ譲渡していた場合

遺産分割のやり直しの前に、不動産などの遺産を第三者に譲渡してしまった場合、原則として譲渡した財産を取り戻すことはできません。例外的に、遺産分割を強迫により取り消す場合には無条件に、錯誤又は詐欺で取り消すときは、譲渡を受けた第三者が遺産分割が錯誤又は詐欺によることを知っているか知らないことに過失がある場合に、第三者から財産を取り戻す余地があります(民法95条、96条)。

不動産の名義が変わった場合

遺産分割協議のやり直しの結果、不動産の所有者が変わった場合、所有権移転登記(名義変更登記)が必要になります。登記には、登録免許税や、司法書士に依頼する場合には司法書士費用等のコストがかかります。遺産分割協議のやり直しの際には、このようなコストも考えながら、遺産分割のプランを決めるようにしましょう。

課税対象となる場合がある

遺産分割をやり直した場合、贈与税、譲渡所得税、相続税等の納税が必要となることがあります。遺産分割協議のやり直しの際には、財産を誰がどのように取得するかだけではなく、その結果、どのような税金がかかるかまで、適切に検討しておかなければなりません。

遺産分割をやり直す際の期限について弁護士にご相談ください

遺産分割協議のやり直しは、ただでさえハードルが高いほか、やり直しの結果、予想もつかない課税などの結果が生じることがあります。遺産分割協議の際は、もちろん、やり直し際にも、弁護士に相談することが望ましいといえます。

離婚時の財産分与においては、夫婦それぞれの預貯金が財産分与の対象とされることが非常に多いといえます。
しかし、夫婦それぞれの名義の預貯金が必ず財産分与の対象となるとは限らず、判断に迷う場合は少なくありませんし、財産分与の対象となる場合であっても、具体的な分与の方法・計算において特別な考慮が必要となる場合もあります。
また、そもそも相手方の預貯金の全部又は一部の存在が分からないという場合も珍しくありません。

以下の記事では、財産分与において通帳の預貯金を考慮する具体的な方法について、詳しく解説します。

通帳の預貯金は財産分与の対象になる?

夫名義又は妻名義の通帳の預貯金は、基本的には財産分与の対象となりますが、その全部又は一部が財産分与の対象とはならない場合があります。
すなわち、通帳の預貯金は、財産分与の対象となるものとならないものがある、ということです。
以下の記事では、詳しく解説します。

財産分与の対象になる預貯金

夫婦が結婚したときから別居時又は離婚時までの間に、お金を出し合って形成した預貯金は、基本的に財産分与の対象となります。具体例は、夫名義又は妻名義の預貯金口座に毎月お金を出し合った場合などです。
また、夫又は妻が、結婚したときから別居時又は離婚時までの間に得た収入によって形成した預貯金も、基本的に財産分与の対象となります。具体例は、給与振込口座の預貯金です。

財産分与の対象にはならない預貯金

夫又は妻が、婚姻前に定期預金を作成し、別居時又は離婚時までそのまま維持していた場合、その定期預金は財産分与の対象にはなりません。
また、夫又は妻が、相続や親族からの生前贈与によって預貯金を形成し、別居時又は離婚時までそのまま維持していた場合も、財産分与の対象にはなりません。
ただし、これらの預貯金であっても、次の項目で述べる点には御注意ください。

婚姻前の口座を婚姻後も使い続けている場合は要注意

夫又は妻が、婚姻前に作成した預貯金口座を婚姻後もそのまま使うという例は、何ら珍しくありません。
しかし、このような場合、離婚時の財産分与という観点からは注意が必要です。
すなわち、婚姻前の残高と婚姻後の入金分が口座内で混在してしまい、区別をすることができなくなってしまうため、別居時又は離婚時の残高が全て財産分与の対象とされる可能性が高いのです。特に普通預金の場合は、日々の入出金が繰り返されることにより、このような事態が生じる可能性が非常に高いといえます。
「お金に色はついていない」ために、このような結果が生じるのです。
ですから、婚姻前の口座を婚姻後も使い続けている場合は要注意といえるでしょう。

財産分与の対象にしないためにできることはある?

本来であれば財産分与の対象とならない預貯金について、財産分与の対象となってしまうという事態を回避するためには、婚姻前の残高と婚姻中の入出金履歴が分かるような通帳又は取引履歴を用意することが望ましいでしょう。
また、相続又は生前贈与による形成分がある場合、その状況が分かる通帳又は取引履歴のほか、遺産分割協議書や贈与契約書などの証拠を残しておくことが望ましいでしょう。
過去の通帳を廃棄した場合であっても、銀行から取引履歴を取得できる可能性がありますので、御検討ください。

へそくり用の隠し口座は財産分与の対象になる?

へそくり用の隠し口座は、婚姻中に形成された財産であることには変わりがないため、基本的には財産分与の対象となります。
もっとも、相続又は生前贈与によって形成された預貯金を相手方に隠していた場合や、独身時代から所有していた財産の売却代金を原資として預貯金を形成した場合には、例外的に財産分与の対象とはならないでしょう。
ただし、原資を証明することができるように、必要な証拠を残しておくことが望ましいといえます。

子供名義の預貯金は財産分与の対象になる?

子供名義の預貯金も、財産分与の対象となる可能性があります。
例えば、原資は夫又は妻が入金しており、通帳やキャッシュカードも管理しているという場合、実質的な預金者は夫又は妻であるといえますので、財産分与の対象となる可能性があります。
他方で、子供が入学祝やお年玉としてもらったお金を預貯金に入金しており、その通帳やキャッシュカードも自ら管理している場合には、飽くまで「子供のもの」といえますので、その預貯金は財産分与の対象とはならないでしょう。
なお、学資保険については、夫婦共有財産から保険料が支払われていることがほとんどであり、別居時又は離婚時の解約返戻金相当額が財産分与の対象となることが多いです。

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財産分与するには通帳の開示が必要

預貯金を財産分与の対象とするに当たっては、その形成の経緯及び別居時又は離婚時の残高を確認することが必要であり、互いの通帳を開示し合うことが第一歩といえます。 ただし、この通帳の開示については、問題が生じやすいという実情があります。
以下の記事で、詳しく解説します。

通帳のコピーを用意しましょう

お互いの通帳のコピーを開示することが、預貯金の開示において最も簡単なやり方です。
これまでの記事で述べたとおり、基本的には婚姻日から別居日又は離婚日までの期間分が分かれば足ります。ですから、通帳のコピーを作成するに当たり、日付、入出金額、残高、摘要が分かるように注意してください。
さらに、金融機関名、支店名、口座種別、口座名義、口座番号が分かるようにコピーを作成することによって、お互いに確認しやすくなるといえるでしょう。

通帳開示をしたくない場合

配偶者以外の第三者は、たとえ親族であっても、夫婦の離婚及び財産分与の当事者ではありませんので、そのような第三者からの通帳開示の求めに応じる必要はありません。
また、夫婦相互であっても、通帳を開示しなければならないという法的義務まではありませんので、通帳開示を拒むことができないわけではありません。
もっとも、自らが通帳開示を拒んだ場合、相手方からも通帳開示を拒まれたり、財産分与の協議進まないなどの弊害が容易に予見されますので、どうしても通帳開示を拒否してよいかどうかは、慎重に検討する必要があります。

通帳開示を拒否された場合

相手方から通帳開示を拒否される例は散見されます。
このような事態に備えるため、開示を求める預貯金口座の金融機関名、支店名、口座番号等が分かる資料(例えばコピー)を事前に入手しておくことができれば望ましいといえます。 しかし、このような事前準備を行うことはなかなか困難です。
事前準備を行うことができず、かつ相手方から通帳開示を拒否された場合には、以下で述べるような法的手段を用いるという方法が考えられます。

弁護士会照会制度

弁護士会照会制度とは、弁護士法に基づき、弁護士会が行う照会の制度のことです。
例えば、弁護士が財産分与の事件を受任し、その業務遂行のために弁護士会に申出をすることによって、弁護士会が金融機関に対して預貯金の内容を明らかにすることを求める場合があります。
ただし、近年の金融機関の実務上、相手方(名義人)から同意が得られなければ、回答自体を拒むことが実情のようですので、御注意ください。

調査嘱託制度

調査嘱託制度とは、裁判所が、必要な調査を行うため、官公庁や民間の団体に対して回答を求める制度です。例えば、銀行に対して、預貯金の開示を求めるということも可能です。 ただし、注意点は以下のとおりです。
まず、調査嘱託は調停手続においては採用され難いという実情にあり、審判手続又は訴訟において実施されるのが通常です。
次に、裁判所は当事者から申し立てられた全ての調査嘱託を実施するわけではありません。当事者が嘱託先の金融機関を特定した上、その嘱託を実施する必要性を明らかにする必要があります。

財産分与時の通帳に関するQ&A

別居時に通帳を持ち出され、預貯金を使い込まれてしまいました。財産分与は請求できないのでしょうか?

財産分与は、別居時又は離婚時において存在した財産を対象とすることが原則であり、その後に預貯金を使い込んでしまったという事情は、財産分与の請求には基本的に影響しません。
ただし、注意点は以下のとおりです。
まず、その預貯金が夫婦共有財産としての性質を有しており、財産分与の対象となるということが大前提ですので、その証明をできるように準備する必要があります。
また、別居時又は離婚時における預貯金が財産分与の対象となること自体は明らかという場合であっても、その後の使い込みにより相手方が無資力に陥ってしまった場合には、財産分与の請求に基づき支払うお金がない、という事態も想定されます。

口座があるのは確実なのに、通帳を隠されてしまい残高が分かりません。どうすればよいでしょうか?

金融機関を特定できている場合、弁護士会照会制度を利用することにより、金融機関に対して直接開示を求めることが想定されます。
ただし、その事件を弁護士に依頼しなければ、そもそも弁護士会照会制度を利用することはできません。また、前の記事で解説したとおり、金融機関は相手方(名義人)から同意が得られなければ、回答自体を拒むことが実情のようですので、御注意ください。
最終的な手段としては、調査嘱託制度の利用が想定されます。

銀行口座を解約されてしまったら、通帳開示できませんよね。諦めるしかないのでしょうか。

別居時又は離婚時に存在した預貯金口座であり、かつ夫婦共有財産として財産分与の対象となるものであれば、その後に解約されたという事情は財産分与の請求には影響しません。
ただし、財産分与の請求の前提として、別居時又は離婚時の残高を明らかにする必要があります。
相手方が銀行口座を解約したという事情を考慮すると、任意に取引履歴を明らかにするとは想定し難いですので、前の記事で解説したとおり、調査嘱託制度の利用を想定すべきでしょう。

宝くじの当選金が口座に入っています。財産分与の対象になりますか?

婚姻中に当選した宝くじであり、その当選金が預貯金口座に入金され、そのまま別居時又は離婚時まで維持されていた場合、その預貯金は基本的に財産分与の対象となります。このような当選金であっても、婚姻中に夫婦の協力によって形成されたという法的性質を有すると考えられるからです。
ただし、このような預貯金については単純に折半するのではなく、財産分与の割合を修正し、宝くじを購入した側が多く取得するようにすることが相当と考えられます。

財産分与で預貯金等を確認することは大切です。弁護士に相談することをお勧めします。

離婚時の財産分与において、預貯金は重要な位置を占めます。適正・公平な財産分与を実現するためには、あらかじめ夫婦それぞれが預貯金の内容を確認しておくことが望ましいでしょう。
しかし、そもそも相手方の預貯金の全部又は一部が分からなかったり、預貯金が存在することは分かっていても通帳を開示してもらえなかったりすることは、珍しくありません。また、通帳の開示を受けられた場合であっても、その預貯金が財産分与の対象となるか否かは、別問題です。
財産分与についてお悩みの方は、弁護士に相談することをお勧めします。

離婚に際し、未成年の子どもがいる場合には、どちらが親権者となるかという点で、激しい争いになることが珍しくありません。親権から監護権を分けて、父母のそれぞれが担う場合があります。親権から監護権を分けることで、争いが解決する可能性はありますが、監護権について、夫婦でしっかり認識が一致していないと、後にトラブルとなる可能性があります。
以下、監護権とはどのようなものなのか、親権と監護権を分けるメリット・デメリット、監護権を獲得するために必要なこと等を解説します。

監護権とは

親権には、財産管理権と身上監護権が含まれます。監護権は、親権の一部の「身上監護権」のことであり、子どもの世話や教育をする権利及び義務のことをいいます(民法820条参照)。
子どもと一緒に生活をして、監護や教育をするには、監護権が必要になります。

親権と監護権の違い

親権者の場合、財産管理権があるため、子どもの財産を管理することが可能です。
例えば、子どもが祖父母から財産の贈与を受けたときに、親権者は、管理行為の一環として、現金を定期預金として積み立てる等行うことができます。
監護権には、この財産管理権が含まれない点で、子どものために行うことができる範囲に違いがあります。

身上監護権の内訳

親権の一部である身上監護権には、以下のような権利が含まれています。

居所指定権

監護権者は、子どもが暮らす場所を指定することができます(民法821条参照)。子どもの年齢にもよりますが、監護権者が子どもと一緒に住むことが多いです。

懲戒権

懲戒権とは、子の利益のためにする監護や教育に必要な範囲内で、子どもを戒める権利です(民法822条参照)。
「子どもの利益」のために戒めるものですので、暴力や暴言を加える等、子どもの利益にならない方法で戒めることは、虐待とみなされる可能性があります。

職業許可権

職業許可権とは、子どもが仕事をすることを許可する権利です(民法823条参照)。許可していた仕事について、制限する権利も含まれます。

親権者と監護権者を分けるメリット・デメリット

親権者と監護権者を分けることには、メリットとデメリットがあります。大きなデメリットもありますので、安易に親権と監護権を分けることを考えられるのはおすすめできません。以下、具体的にメリットとデメリットを解説します。

メリット

メリットとしては、親権について争いが激化し、離婚の話合いが進まないときに、親権と監護権を分けることで、離婚に向けた解決ができる場合があるところです。権利を持つことで、子どもとのつながりを感じること、権利を分け合うことで、気持ちとして合意がしやすくなること等が挙げられます。
また、つながりを感じることで、親権者として、監護者への養育費の支払いの動機が高まる可能性もあります。

デメリット

デメリットとしては、例えば子どもの預金通帳開設等、監護者だけではできないことがあるところです。父母で上手く連絡が取れればいいですが、親権者が遠方にいたり、没交渉となっているような場合には、普段一緒に生活している監護者だけで、子どもの大事な対応を行うことができないという状態になり得ます。このように、父母の対立等により、関係ない子どもが不利益を受ける可能性があり、大きなデメリットといえます。
また、親権者は戸籍に記載がされるので、争いが起きる可能性は非常に低いですが、監護権は公的な書類に記載が残るわけではありません。当事者間で書面を残す等、争いとならないような対応が必要となります。

親権と監護権を分ける手続き

親権と監護権を分けることは、夫婦の話し合いによっても可能ですし、調停や審判によって行うことも可能です。
もっとも、上記のように大きなデメリットがあることもあり、家庭裁判所は、親権と監護権を分離することに消極的な立場にあります。審判によって、裁判所が親権と監護権を分離するという判断をする可能性は高くないでしょう。

子供と一緒に暮らすための監護者指定とは

監護権をとるために必要なこと

監護権は、子どもと一緒に生活しながら、子どもの世話をする権利及び義務をいうため、子どもの福祉のために、どちらが監護を行うことが適切か、という点が重要となります。
監護は一朝一夕でできるものではありません。これまでどちらが主な子育てをしてきたのか、今はどちらが子育てをしているのか、将来の子どもの監護環境を整えることはできるのか等の観点が大事になります。
そこで、これまでの監護内容(例えば、夜泣き対応や保育園の送り迎え、定期健診の対応等)、今の監護内容(例えば、一緒に暮らしていることやご飯や小学校の準備の対応等)、将来調えられる環境(例えば、協力してくれる親族等、監護補助者の存在)を踏まえ、自身が監護者として適切であることを主張していくことが必要になります。

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監護を怠った場合の罰則

監護権者が子どもを放置したり、暴力を振るったりすることで、監護を怠った場合、児童虐待防止法違反や、保護責任者遺棄罪といった犯罪が成立する可能性があります。
親権や監護権は、親の権利であると同時に義務でもあります。子どもの福祉のために、親権者として、監護権者として、適切な対応を行っていくようにしましょう。

一度決めた監護権は変更できる?

監護権者は、当事者が話し合いを行い、合意をすることができれば変更することができます。
他方、親権者は、当事者の話し合いだけで変更することはできません。家庭裁判所において、調停や審判、裁判等の手続きを行う必要があります。
なお、監護権においても、当事者の話合いで合意ができない場合には、家庭裁判所において、調停等の手続きを行うことが可能です。

監護権に関するQ&A

親権者と監護権者を分けた場合、親権者に養育費を請求することはできますか?

親権者と監護権者を分けた場合、監護権者は親権者に対して養育費を請求できます。
養育費は、子どもの監護や教育のために必要な費用のことをさし、監護していない他方の親(親権者)は、その費用を分担することが求められるためです。

監護権の侵害とはどんなことをいいますか?

監護権の侵害とは、例えば、子どもを監護している親の元から、他方の親が、子どもを連れ去るようなものをいいます。子どもが、監護権者のもと、もしくは他方の親の元で、安定して暮らしているにもかかわらず、無理やり連れ去るという行為は、子どもにとって不利益となり得ます。子どもの福祉のために、どうすべきなのか、双方の親がしっかり考えて行動することが大事です。

祖父母でも監護権を獲得できますか?

民法において、子どもの監護者や面会交流の方法等については、父母の協議で定めることが前提とされています(民法766条1項参照)。父母のどちらかが子どもの監護者となることが多いですが、祖父母その他の親族等が監護者になることもあります。

監護権を証明する書類はあるのでしょうか?

親権者のように、監護者を公的に届け出る方法はありません。
当事者で親権と監護権を分離することを約束した場合、後の争いを回避するためにも、書面で残すことをおすすめします。ただの覚書ではなく、公正証書等、信用性の高い方法を用いることで、より安心できるでしょう。

監護権のみを持っている場合でも児童扶養手当をもらうことができますか?

児童扶養手当は、「児童を監護する母、監護し、かつ生計を同じくする父又は養育する者(祖父母等)」に支給される手当です。監護権者として子どもと生活をしている親も、支給対象者にあたると考えられ、児童扶養手当を受け取ることができます。

監護権についてわからないことは弁護士にご相談ください

親権と監護権を分離する、という方法はリスクも伴う方法です。安易に分離することをおすすめすることはできませんが、様々な事情により、分離をすることで夫婦間や親子間にとって良い解決となることもあるでしょう。
どのような解決を目指していくのが良いのか、大事なところですので、弁護士にまずは相談されてみることをおすすめします。

相続放棄を考えている場合、被相続人名義の遺産を受け取ってしまったら、放棄が認められなくなる可能性が高くなってしまいます。
民法は単純承認とみなす事由を規定していますが、“相続人による相続財産の処分”はその典型の一つだからです(921条1号)。
もっとも、被相続人に関する金銭等が全て遺産に該当するわけではありません。以下、受け取っても相続放棄に影響しないものや、放棄が認められる可能性があるものについて解説します。

相続財産にならないものなら受け取っていても相続放棄できる

民法921条1号が単純承認事由として定めるのは、“相続財産”の処分です。相続財産に該当しないものであれば、受け取っても相続放棄に影響しませんので、相続放棄を検討している場合に、相続人にまつわる金銭が、相続財産なのか、受取人固有の財産なのかの区別は、とても重要です。

受け取っても相続放棄に影響しないもの

受取人固有の財産と評価されるものは、原則として、相続放棄に影響しません。その典型的な例について以下説明します。

香典・御霊前

葬儀は、喪主が主催するものであり、これに対する香典・ご霊前等は、“葬式の費用に充てることを主たる目的とする喪主への贈与”と解されています。
相続財産には含まれないものですので、実質的には被相続人に対する債務の返済であるものを、名目だけ香典にしてもらう等の特殊な事情でもない限り、喪主が香典を受け取ることは相続放棄に影響しません。

仏壇やお墓

お墓や仏壇、位牌等、先祖を供養するための祭祀は、祭祀承継者が取得するものとして、相続財産とは区別されますので、相続放棄に影響しません。ただし、これは先祖代々のお墓等を受け継ぐ等、祭祀そのものを承継する場合の話です。
相続財産からお墓や仏壇を購入する行為は、祭祀の承継として処理されるものではありません。相続財産の処分には該当しないとの結論を採用した裁判例はあるものの、具体的事情により、逆の結論も十分ありうるところですので、慎重な判断を要します。

生命保険金(元相続人が受取人に指定されている場合)

被相続人以外の人間が受取人に指定されている場合、その保険金は受取人固有の財産と評価されます。相続放棄の事案ではありませんが、相続財産を構成しないとの結論は最高裁判例でも示されているところです( 平成14年11月5日判決、民集第56巻8号2069頁)。特別受益や課税の問題はともかく、指定された受取人が保険金を受領することは、相続放棄には影響しません。

遺族年金

遺族年金は、受給権者やその要件等が法律により、それぞれ規定されているものです(国民年金法37条以下、厚生年金保険法58条以下等)。そのため、裁判実務上も、“相続法とは別個の立場から受給権者と支給方法を定めたもの“として、遺族年金は受給権者たる当該遺族の固有の権利であって、相続財産には含まれないものと解されています(大阪家裁昭和59年4月11日審判)。

未支給年金

未支給年金も当該受給権者固有の財産と解されており、相続放棄には影響しません。
未支給年金も、その受給権者や要件、順序等は法律でそれぞれ規定されています(国民年金法19条、厚生年金保険法37条他)。これら規定について最高裁は、相続とは別の立場から一定の遺族に対して未支給の年金給付の支給を認めたもの”として、被相続人が有していた未支給年金を受け取る権利が別途相続の対象となるものではないと判断しています(最判平成7年11月7日、民集第49巻9号1829頁)。

受け取りが相続放棄に影響するもの

相続財産の処分に該当する行為をとると、単純承認とみなされ、相続放棄が出来なくなってしまいます。
預金の解約や不動産の売却等はその典型ですが、誤解しやすい点についていくつか挙げて説明しておきます。

受取人が被相続人本人になっている生命保険

生命保険は受取人固有の財産と解されます。受取人を単に「相続人」と指定した場合や、何も指定しなかった場合も、約款に定められた順序に従い、当該受取人固有の財産と解されるのが通常です。
これに対し、受取人に被相続人自身を指定していた場合は、当該保険金は相続財産と解されますので、相続放棄を検討している場合は、この点の確認が不可欠です。

所得税等の還付金

払いすぎた税金等の還付金は、基本的に被相続人の相続財産と解されるものです。未支給年金や遺族年金との対比で混乱してしまうかもしれませんが、受け取ってしまうと相続放棄は困難になってしまいますので、相続放棄を検討している場合は受け取らないようにしましょう。

未払いの給与

未払給与は、就業規則等で受取人が明確に指定されている場合を除き、被相続人の相続財産と解されます。相続放棄を検討しているならば、受け取らないようにするか、事前に規定を確認の上で専門家に相談して判断を仰ぐようにしましょう。

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相続放棄できるかどうか、判断が分かれるもの

費目だけでは相続財産か否かの判断ができないものもあります。未払給与もその一つですが、死亡退職金等、判断の分かれるものについて説明します。

死亡退職金

死亡退職金は、被相続人が公務員の場合は、死亡退職金の受給権者について法律や条例等の規定が存在するため、遺族固有の権利と解されます(国家公務員退職手当法、地方自治法204条2項及び各地方公共団体が定める退職手当の支給に関する条例)。
他方、民間企業の場合は退職金規定等の内容に大きく左右されます。公務員の法律に準じた規定や、受給権者について民法の相続人の範囲とは異なる詳細な規定等が存在するか否かによって判断が別れますので、退職金規定等を確認しなければなりません。
受取人が被相続人とされている場合は相続財産と解されますが、何の指定もない場合は、判断が分かれます。

高額療養費の還付金

健康保険の高額療養費の還付金は、保険の主体や誰に対する医療費の還付なのかによって評価が別れます。協会けんぽの場合、高額医療費は被保険者に受給権がありますので、被相続人が被保険者の場合は相続財産、被相続人が被扶養者に過ぎない場合は被保険者の固有財産です。
国民健康保険の場合、高額医療費は世帯主に受給権がありますので、被相続人が世帯主の場合は相続財産、被相続人が世帯主ではない場合は世帯主の固有財産です。
どちらも、後者の場合は受け取っても相続放棄が可能ということです。

受け取っただけならまだ大丈夫、相続放棄したいなら保管しましょう

単純承認とみなされるのは、相続財産の処分に該当する行為です。単に受け取ったというだけで、まだ費消していないという場合には、相続放棄が認められる余地が残る場合もあります。
お金は分別が困難なものですし、使った後穴埋めをしたとの疑いをもたれる可能性もあります。
したがって、凍結されていないなら被相続人の口座に、凍結されているならそのためだけに新たに口座を用意する等して、自身の財産と混同させないようにして、客観的にも手つかずの状態で保管することが肝要です。

財産を受け取ってしまった場合の相続放棄に関するQ&A

受け取った保険金で被相続人の借金を返済しました。あとからもっと多くの借金が判明したのですが、相続放棄できますか?

相続債務を自身の財産から返済する行為は、処分行為に該当しません。「保険金」が受取人固有の財産に該当するものであれば、相続放棄が認められる余地は十分検討に値するでしょう。
他方、被相続人の相続財産を使って返済するのは、処分行為に該当する可能性が高いものです。したがって、ここにいう保険金が相続財産という場合は、相続放棄は極めて困難という前提の下、返済に充てた金額、支払期限、他の債務の割合等から一縷の望みの有無を検討する他ありません。

衛星放送の受信料を払いすぎていたので返金したいと連絡がありました。相続放棄するつもりなのですが、受け取っても問題ないでしょうか?

返金に関する規定や約款の内容にもよるところですが、基本的に被相続人にかかる還付金や返金は相続財産という前提で行動すべきです。相手が返金を求めてきたとしても、相続放棄を検討中なら、受け取るべきではありません。

相続放棄したいのに財産を受け取ってしまった場合は弁護士にご相談ください

相続放棄を検討しているなら、被相続人の財産には手をつけないというのが最善です。もっとも、何らかの金銭を受け取ってしまった場合の対応や、相続放棄の余地の検討等は、自己判断で行うには危険が大きすぎます。リスクを拡大させてしまう前に、専門家に相談することをお勧めいたします。

相続に関する手続の中には、一定の期限があるものが存在します。期限がある場合、期限内に手続をしないと、一定の法律効果が得られないことや、ペナルティが課されることがあります。
本稿では、相続手続の期限について解説します。

相続手続きの期限について

期限のある手続き ・相続の承認、限定承認、放棄(民法915条1項本文 ※伸長可。同但書)
※相続の承認及び放棄の取消し(民法919条3項)
※財産分離(民法941条1項)
・遺留分侵害額の請求(民法1048条)
※相続分の譲渡を受けた第三者に対する価額償還請求(民法905条2項)
※相続回復請求権の行使(民法884条)
・準確定申告
・相続税の申告、納税
・相続税の還付請求
・生命保険金の請求
期限のない手続き ・遺産分割
※相続分の譲渡(民法905条)、相続分の放棄(「相続放棄」ではないことに注意)

相続放棄は3ヶ月以内に手続きが必要

相続に関する手続の中で、期限に注意しなければならないものとして、相続放棄があります。相続放棄とは、相続の効力を確定的に消滅させることを目的とする意思表示をいいます。
相続放棄は、家庭裁判所に申述することにより行います。相続放棄の効力が生じると、相続放棄をした者は、相続人としての地位を失い、資産も負債も承継しないこととなります。

相続放棄は、『自己のために相続の開始があったことを知った時』から3か月以内(熟慮期間といいます。)に、家庭裁判所での手続をしなければなりません。この期間に間に合わないと、原則として、相続放棄が認められません。
ただし、熟慮期間は家庭裁判所に申し立てることで、延長することもできます(民法915条1項但書)。また、熟慮期間を過ぎた後、予想できないほどの多額の負債が見つかった場合等、例外的な場合には、熟慮期間を過ぎていても相続放棄が認められることもあります。
このように、熟慮期間を過ぎていても、相続放棄が認められることもありますので、特に、後々、多額の負債が判明したような場合には、必ず弁護士に相談してください。

相続放棄の手続き方法と注意点

準確定申告は4ヶ月以内

準確定申告とは、年の途中で死亡した者の相続人(包括受遺者を含みます。)が、被相続人が死亡した年の1月1日から死亡した日までに確定した所得金額及び税額を計算して、申告と納税をすることです。
準確定申告は、申告者(相続人及び包括受遺者)が、相続の開始があったことを知った日から4か月以内にする必要があります。
なお、期限内に申告できなかった場合のペナルティとして、延滞税及び無申告加算税があります。ただし、申告できなくなるわけではありませんので、準確定申告が必要な場合には、必ず申告するようにしましょう。

相続税の申告・納税期限は10か月以内

相続税の申告及び納税は、相続人が、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内に行うことになっています。
問題となるのは、上記申告期限までに、遺産分割が完了していないことが多いことです。このような場合、まず法定相続分で申告・納税し、遺産分割後に更正の請求(税額が減少する場合)又は修正申告(税額が増加する場合)により対応することになります。
また、相続税には、以下のような各種の特例があります。期限内に申告することはもちろん、これら特例を適切に利用するため、相続税の申告については、税理士に依頼することがベターです。

  • 非課税控除(死亡保険金、死亡退職金等)
  • 小規模宅地等の特例
  • 中小企業の株式の相続税の納税猶予
  • 農地の相続税の納税猶予
  • 配偶者、未成年者、障害者、数次相続の税額控除

土地建物の遺産相続登記の期限

令和4年6月時点で効力を有する法律では、不動産(土地、建物)の相続登記に期限は設けられていません。もっとも、早期に手続を行うことが望ましいといえます。特に、相続人間に争いがなく、遺産分割が、相続税の申告期限までに完了しそうな場合には、相続登記の必要書類(印鑑証明書等)は、相続税の申告のための必要書類と重複するものもあるため、手続をまとめて行った方が、時間が節約できます。

なお、令和3年の法改正(民法等の一部を改正する法律(令和3年4月28日法律第24号))により、相続登記の申請が義務化されることになりました。具体的には、所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、その相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った日から3年以内に、相続登記の申請をしなければならないとされています(相続登記の義務化。改正後の不動産登記法76条の2。遺贈により所有権を取得した者も同様。)。この法改正は、令和6年(2024年)4月1日から施行されますので、注意するようにしましょう。

遺留分減殺請求、遺留分侵害額請求の期限は1年以内

遺留分とは、被相続人の財産の中で、法律上その取得が一定の相続人に留保されていて、被相続人による自由な処分(遺贈、贈与等)に対して制限が加えられている持分的利益をいいます。要するに、「遺留分だけは相続人に渡しなさい」という法律になっているということです。
遺留分に関する権利は、以前は、「遺留分減殺請求権」というものでしたが、平成30年のいわゆる相続法改正(民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(平成30年法律第72号))により、「遺留分侵害額請求権」に変わりました。名称だけでなく、権利の性質も変わり、「遺留分侵害額請求権」は、単純な金銭債権とされています。令和元年(2019年)7月1日以後発生した相続については、遺留分侵害額請求権を行使することとなります。

そして、遺留分侵害額請求権は、改正前の遺留分減殺請求と同様、『遺留分権利者が、相続の開始及び遺留分を侵害する贈与又は遺贈があったことを知った時から一年間』の消滅時効、『相続開始の時から十年』の除斥期間の制限があります。遺言書があり、遺留分を侵害するような相続の場合には、速やかに、遺留分侵害額請求を行使するようにしましょう。

生命保険金は3年以内に請求

保険金請求権は、保険金の支払事由が発生したときから3年で時効にかかります。この消滅時効期間は、保険法95条1項で定められているもので、民法上の消滅時効期間(5年)の例外となっています。もっとも、保険金を請求できなかった事情次第では、保険会社が、保険金支払いに対応してくれることもあります。時効期間が過ぎていてもあきらめずに、保険会社に確認してみましょう。

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遺産分割協議は10年経過していても行うことができる

令和4年6月時点で効力を有する法律では、遺産分割に期間制限はありません。
しかし、遺産分割を行う際に、必要となる各種資料(特別受益を立証する場合の取引履歴等)には、保存期間があるのが通常です。遺産分割をせずに、相続開始から時間が経てば経つほど、各種の立証が困難となります。遺産分割協議は、早く始めるに越したことはありません。
なお、、令和3年の法改正(民法等の一部を改正する法律(令和3年4月28日法律第24号))により、具体的相続分(特別受益や寄与分を考慮した相続分)による遺産分割は、原則として、相続開始後10年を経過した後、することができない、との制限が設けられることとなりました(改正後の民法904条の3)。この法改正は、令和5年(2023年)4月1日から施行されます。前述の相続登記の期間制限と合わせて、注意が必要です。

遺産分割のやり直し期限

遺産分割は、原則としてやり直しができません。ただし、当事者全員の合意がある場合には、遺産分割を合意解除して、再度の遺産分割をすることは可能です。合意解除の場合には、原則として、期間制限はありません。遺産分割がやり直し(合意解除)になる例として代表的なのは、未分割の遺産が発見されたような場合です。
また、遺産分割にあたり、錯誤、詐欺、強迫等の意思表示に瑕疵があれば、取消しを主張することも可能です。この場合、取消権の消滅時効の制限(追認することができるときから5年。民法126条)があります。

相続手続の期限について詳しくは弁護士にご相談ください

相続手続の中で、期限があるものの中には、複雑な法的判断が必要なものがあります。
また、法改正により、今後、ますます、短期間での適切な意思決定が求められるといえます。相続があったときは、早めに、弁護士、税理士などの専門家に相談するとよいでしょう。

結婚生活を送るなかで、ローンを組んで家や車を購入することもあるでしょう。離婚する際に、夫婦は「財産分与」によって財産を分けることとなりますが、住宅ローンや自動車ローンが残っている場合にはどのように分けていくことになるのでしょうか。
以下、財産分与を行ううえでのローンの取り扱い方法やローンが残っている場合にとるべき対応等について、具体的に解説していきます。

ローンは財産分与の対象になる?

財産分与とは、夫婦が婚姻中に協力して取得した財産を、離婚する際又は離婚後に分けることをいいます。
基本的に、プラスの財産を分け合うことを前提にしています。夫婦の生活のための住宅ローンや自動車ローンといったマイナスの財産のみを財産分与で分けることは難しいですが、プラスの財産がある場合に、マイナスの財産についても考慮を行うことは可能です。以下、詳しく説明していきます。

ローンが残っている家や車を財産分与する方法

ローンに対応する財産、例えば住宅ローンがあるならば土地不動産といったように、財産もセットで存在していることが多いです。このプラスの財産を財産分与の対象とするときに、ローンを考慮する必要があります。具体的にどのように考えるのかは、ローン>財産の評価額となるオーバーローンなのか、ローン<財産の評価額となるアンダーローンなのかによって異なります。

アンダーローン:財産の評価額のほうが高い場合

アンダーローンとは、残存するローンよりも、財産の評価額の方が高い場合をいい、財産を処分したら、ローンを完済できたうえで余剰が残る状態のことをいいます。アンダーローンの場合には、財産の評価額からローンの残額を引いた金額が財産分与の対象となります。
財産を処分するのであれば、ローンを完済し、残った財産を分けあるのが一般的です。この場合、特に問題は生じないでしょう。
一方が財産を取得したい場合には、財産の評価額からローンの残額を引いた金額を財産分与の対象として、金銭的に解決を図るという方法が考えられます。

オーバーローン:ローン残高のほうが高い場合

オーバーローンとは、残存するローンの方が、財産の評価額のよりも高い場合をいい、財産を処分しても、ローンを完済できず、債務が残る状態のことをいいます。
オーバーローンの場合、財産を処分しても、債務が残ってしまうため、処分するという方法はあまり取られません。また、債権者の同意を得て任意売却を行うという方法もありますが、この方法でも基本的に、債務が残ってしまい、債務者であるローンの名義人が支払いを続けることとなります。
そこで、一般的には、一方が財産とローンをセットで取得し、ローンを引き続き支払うという方法が取られることが多いです。

ローンの残高や財産の評価額を知る方法

財産分与について考えるうえで、ローンの残高(残額)と財産の評価額を知ることが重要です。ローンの残額については、借入れ先の金融機関等に問い合わせたり、金融機関から定期的に発送されるハガキ等にて確認する方法があります。財産の評価額を調べる方法について、不動産の場合には、不動産業者に査定を行ってもらい、見積書を作成してもらう方法、自動車の場合には、中古買取業者等に査定を行ってもらったり、インターネット上で類似の販売価格を調べたりする等の方法があります。

住宅ローンが残っている家の名義変更について

家の所有者について、夫婦の単独名義となっている場合もあれば、夫婦の共有名義となっている場合もあります。家が単独名義で、その名義人が住宅ローンの債務者かつ家を取得する方であれば、問題は生じないでしょう。
家が夫婦の共有名義となっているけれども一方が家を取得する場合、また、住宅ローンの債務者でない方が家の取得を希望する場合には、注意が必要です。名義変更をせずにそのままにしていると、トラブルを招きかねません。トラブル回避のためにも、実態に沿った名義変更を行うことをおすすめします。

所有名義人の変更

不動産の所有者は、不動産の権利に関して、登記簿に記載を行うことが一般的です。
登記名義人の変更は、法務局で行うことができますが、ローンが残っている場合には、勝手に行うことはおすすめしません。基本的に、金融機関より不動産に抵当権がつけられており、勝手に名義を変更することで、契約に反したとして、ローンの一括支払いを請求される可能性があります。ローンが残っている状態で、登記名義人を変更する場合には、事前に金融機関と調整を行うことが重要です。

ローン名義人の変更

夫婦間で、ローンの債務者を他方に変更することを決めたり、分担の取り決めを行ったとしても、金融機関等の債権者から了承を得る必要があります。金融機関は、収入等を踏まえ、返済能力がない限り、債務者の変更を認めないでしょう。この場合、ローンの借り換えを行い、他方名義でローンを組みなおすことや、連帯債務者や連帯保証人をつけることで、返済能力を上げてみることが考えられます。

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自動車ローンが残っている車も名義変更できるのか?

ローンが残っている車の名義変更をするには、まずは現在の所有者(所有名義人)が誰なのかを確認することが重要です。所有者は、自動車検査証(いわゆる車検証)を見ることで確認することができます。
以下、車の所有者が誰なのか、場合分けをして説明を行います。

車の所有者が配偶者の場合

車の所有者が配偶者の場合、名義変更を行うためには、ローンを組んでいる金融機関等の了承が必要となります。金融機関と調整を行うことができた場合には、管轄の運輸支局において名義変更の申請手続を行うことで、名義変更を行うことができます。

車の所有者がディーラーやローン会社の場合

ディーラーやローン会社が車の所有者である場合、車の名義を変更するためには原則としてローンを完済しなければなりません。完済後に名義変更の手続きを行うことになります。

オーバーローンの状態の場合、相手にローンを負担してもらうことは可能か

財産分与は、基本的にプラスの財産を分ける手続きであり、マイナスの財産のみの場合に、マイナスを分けることは想定されていません。
当事者間で、分担割合を取り決めたり、他方が支払うことを取り決めたりすることは可能です。
もっとも、金融機関等の債権者との関係で、当事者間の取り決めを主張することはできません。
そこで、事実上、当事者間の取り決めを基に、他方配偶者が支払いを行うことは可能ですが、それが滞ったとしても、債権者に、他方配偶者に請求することを主張することはできないこととなります。

連帯債務者、または連帯保証人だった場合は?

他方配偶者が、ローンの連帯債務者または連帯保証人だった場合、離婚することで、それらの義務を負わなくなるわけではありません。
連帯債務者であれば、離婚の有無関係なく、二人でローンを支払っていく義務を負うため、金融機関等の債権者からどちらも支払いを求められる可能性があります。
また、連帯保証人であれば、債務者が支払いができなくなった場合等に、金融機関等の債権者から支払いを求められることになります。

ローンの財産分与は弁護士にご相談ください

財産分与の対象となる財産にローンが残っている場合、どのように分けていくのか、悩ましい状況になることが多々あります。他方で、当事者それぞれの考えや実情もあるところなので、唯一無二の分け方があるわけでもありません。どのような分け方ができるのかが分かることで、離婚後のご自身の生活設計が変わることもあるでしょう。
大事なことですので、財産分与でお困りの方は、まず、弁護士に相談されてみてください。

介護が原因となって離婚を決意するという場合があります。
妻が夫の親(義理の親)の介護をしているケースが多いですが、夫又は妻本人の介護をしているケースや、障害を持った子の介護をしているケースもあります。これらの介護の負担などが原因となって、離婚をしようとお考えの方は、多いと思われます。

この記事では、義両親の介護、実親の介護、夫又は妻の介護、子の介護というケースごとに分けて、介護を原因とする離婚について解説します。

介護離婚とは

「介護離婚」とは、法律上の定義は設けられていませんが、一般的には介護が原因となった離婚のことをいいます。
例えば、妻が夫の両親(義両親)の介護をしていて、その身体的・精神的な負担が大きいために、離婚を決意するに至るというケースが、典型例です。また、実の親の介護、夫本人又は妻本人の介護、障害を持つ子の介護などが原因となって、離婚を決意するというケースもあります。
介護は、身体的にも精神的にも大きな負担を強いられるものですし、長期間にわたることも珍しくありません。そのような負担が原因となって、夫婦関係が不和となり、離婚を決意するというケースは散見されるでしょう。

義両親の介護を理由に離婚するケース

介護離婚の典型例は、妻が夫の両親(義両親)の介護をしていて、その負担の大きさのために離婚を決意する、というケースです。
特に、夫の収入が多いのに対し、妻が専業主婦又はパート勤務である場合、妻が介護の主な担い手となりがちです。このような場合に、夫が「義理の親でも、介護は妻がやるのが当然だ。」と言わんばかりの態度を示すと、妻のストレスがどんどん重なっていき、やがて離婚を決意するに至る、という事例は珍しくないでしょう。

介護した義両親の遺産は離婚時にもらえるのか

例えば、夫の父が亡くなった場合、相続人は夫の母と夫本人(実子)だけです。また、夫の兄弟姉妹がいる場合、夫と同順位で相続人となります。
しかし、妻(義理の娘)は相続人ではないため、遺産をもらう権利はありません。
また、夫が父からの相続により取得した財産は、その後の離婚において財産分与対象とならないことが原則です。

ところで、民法改正により、令和元(2019)年7月1日以降に発生した相続に関しては、夫の父を介護した妻が、特別寄与料を請求できる可能性があります。
ただし、特別寄与料の請求方法や金額については、証拠と法律に照らした判断が必要となりますので、弁護士に相談することをお勧めします。

義両親の介護をしなければならないのは誰?

民法877条1項によると、「直系血族及び兄弟姉妹」には扶養の義務があります。
しかし、例えば妻と義両親は「直系血族」ではありませんので、扶養の義務はなく、妻は義両親の介護をする義務を負いません。

もっとも、夫は実の両親を扶養する法律上の義務を負い、介護をしなければなりませんので、夫の妻がその手助けをするというケースは、事実上多いと見られます。

また、「長男の嫁の役割」として義理の両親の介護をするという風潮が世間一般に見られることは、否定し難いところです。
しかしながら、このような風潮については、法律上の裏付けはありません。

実親の介護を理由に離婚するケース

家族(特に高齢の親)の介護を抱えている労働者が、仕事と介護の両立ができないため、「介護離職」せざるを得ないという社会問題があります。
これと同じように、実親の介護を理由として、「介護離婚」に至るというケースもあります。

実親の介護については、直系血族としての扶養義務を果たすものであり、本来であれば非難されるいわれはないはずです。
しかし、例えば妻が実親の介護をしている場合に、夫から「家庭をおろそかにしている」などと心ない言葉を浴びせられたり、介護のために妻の収入が減ったことを責められるなどして、妻が離婚を決意するに至るというケースがあります。
これらも、「介護離婚」の一例といえるでしょう。

夫(妻)の介護を理由に離婚するケース

夫又は妻本人の介護を理由として、夫婦が離婚に至るというケースもあります。
民法752条によると、夫婦は互いに協力し扶助する義務を負うものの、介護の身体的・精神的負担が大きいと、離婚を決意するに至る場合があります。

また、夫又は妻本人の介護を理由とする離婚の背景には、そもそも、夫婦間の不和が隠れているというケースも散見されます。
もし、夫婦の愛情や信頼関係が固ければ、夫又は妻本人の介護に伴う負担を乗り切ることができるかもしれませんが、元々夫婦仲が悪かったり、過去にDV行為があったり、モラハラが繰り返されたりしていた場合には、夫婦の一方が要介護状態となったことを契機として他方が離婚を切り出す、という事例も見られます。

介護を放棄した場合の財産分与はどうなる?

財産分与とは、離婚の際に夫婦の一方が他方に対して請求する制度であり、婚姻中に夫婦が共同で形成した財産(共有財産)が対象となります。 夫又は妻が介護を放棄した場合であっても、婚姻中に共有財産を形成したという事実が消えるわけではありませんので、介護の放棄のみを理由として財産分与を否定することはできません。

もっとも、夫婦は互いに協力及び扶助の義務を負うため(民法752条)、もし介護を放棄した夫又は妻が離婚を望んだとしても、相手方から離婚を拒絶された場合には、そもそも離婚自体が認められないという事態が想定されます。

夫(妻)が認知症の場合

夫又は妻の認知症が軽度であり、話合いが可能である場合には、協議離婚(話合いにより離婚届を提出する方法)又は家庭裁判所の調停による離婚が可能です。

もっとも、協議離婚も調停離婚も拒絶され、離婚訴訟を提起した場合には、必ずしも判決で離婚が認められるとは限りません。
裁判例では、認知症のため「長期間にわたり夫婦間の協力義務を全く果たせないでいる」として、民法770条1項5号にいう「その他婚姻を継続し難い重大な事由がある」と認められたケースがあるものの、裁判所は慎重に判断する傾向があるといえるでしょう。

また、夫又は妻の認知症が重度である場合、まず家庭裁判所に成年後見人を選任してもらった上で、成年後見人(法定代理人)に対し離婚訴訟を提起することになります。
このようなケースでは、まず弁護士に相談されることをお勧めします。

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障害児の介護を理由に離婚するケース

子に介護が必要な障害があり、それを理由として離婚しようとする場合、夫婦間の話合いで協議離婚を成立させることは可能ですが、相手方から離婚自体を拒絶された場合には、離婚は難しいといわざるを得ません。
民法770条所定の離婚事由は、飽くまで夫婦間に問題があることを前提としており、子の介護の問題はここに含まれないからです。

もっとも、子に介護が必要であるのに、夫又は妻が家庭を顧みずに不倫をしていたり、子の障害を責任転嫁するかのように配偶者にDV行為をしたり、悪意の遺棄(生活費を全く入れない等)をしているなどの場合、それを理由として離婚できる可能性はあります。

養育費は増額される?

子に障害がある場合、その子を監護養育する親に対して支払われる養育費は、子に障害がない場合と比較して、増額はされないのが原則です。
家庭裁判所実務は、裁判所ウェブサイトにも掲載された「算定表」を参照しながら、父母双方の年収に応じて養育費を決定することが原則であり、子の障害については考慮されないことが原則です。
もっとも、障害がある子を監護養育する親は、将来への不安が絶えないことが実情と考えられますので、まずは話合いにより適正な養育費を定めることが望ましいでしょう。

親権はどちらになる?

障害がある未成年の子がいる夫婦が離婚する場合、必ず親権者を定める必要があります。
親権者については、まず話合い(協議)により決定しますが、協議が調わない場合、家庭裁判所の離婚調停を利用することとなります。離婚調停も成立しない場合、離婚訴訟を提起する必要があります。
家庭裁判所の実務上、家庭裁判所調査官による調査が実施されることが多く、これまでの子の監護養育状況、今後の監護養育体制などを踏まえた上で、家庭裁判所調査官が調査報告書を作成します。この報告書が重要な役割を果たします。

介護離婚のときに慰謝料はもらえるのか

介護離婚において、慰謝料を請求するためには、様々な事情を考慮する必要があります。
介護の負担を専ら負わされた状況(又は介護を放棄された状況)、その介護の負担のために減収・離職・転職などを余儀なくされた経緯、配偶者からDVやモラハラを受けた具体的状況、配偶者が介護をせずに不倫や悪意の遺棄(生活費を入れない等)をした状況などを、詳細に立証する必要があります。

これらの立証のためには、普段からこまめに証拠を残しておき、早期に弁護士に相談することをお勧めします。

介護離婚を考えたら弁護士にご相談ください

介護は、現代の社会問題です。介護離婚も、それに伴う社会問題の一つといえるでしょう。

義両親の介護を押し付けられたり、実の両親の介護をしているのに配偶者からの理解が全く得られなかったり、夫又は妻本人の介護に耐え兼ねたり、障害を持つ子の介護のために夫婦関係が不和になったり、「介護離婚」を考える契機は様々です。

介護は長期間にわたり、大きな肉体的・精神的な負担を生じさせます。
介護が原因で夫婦関係が不和となり、「介護離婚」をお考えの方は、弁護士にご相談ください。

弁護士は、離婚のための証拠集めの段階から、代理人として離婚交渉・離婚調停・離婚訴訟に臨む段階まで、全ての局面でお役に立つことができます。

遺産分割は、相続人全員での話し合いが基本であり、全員で合意することが求められます。
しかしながら、遺産分割は限られた遺産を分けあうものですので、各自の意見が一致せず、話し合いがまとまらないことも当然ありえます。そのような場合に、家庭裁判所に遺産分割の内容を決めてもらう手続が「遺産分割の審判」です。以下、その内容等について説明します。

遺産分割審判とは

遺産分割審判は、当事者間の話し合いや合意ではなく、各自の主張や提出された資料等を基に、裁判所が遺産分割の内容を決するという手続です。
話し合いがまとまらない場合に、いつまでも平行線の議論を続けるよりも、むしろ裁判所に決めてもらうほうが簡潔という場合は少なくありません。また、遺産分割協議や遺産分割調停を成立させるためには、相続人全員の合意が必要とされることから、音信不通の相続人がいる場合等、審判手続による他ないという場合もあります。

遺産分割調停との違い

分割方法 調停委員の関与 当事者全員が同席するのか
遺産分割審判 家庭裁判所の裁判官が内容を決定 なし 審問では全員同席の場合あり
遺産分割調停 当事者全員が合意した内容で分割 あり 初回の説明や成立の際には同席の場合あり

話し合いがまとまらないという場合に、裁判所が遺産分割の内容を決する手続ですので、話し合いを仲介する調停委員の関与はありませんし、全員の関与も求められません。
なお、遺産分割審判の内容は、基本的に法定相続分を前提にする場合が多いですが、申立ての内容によっては寄与分や特別受益等についても判断を下す場合があります。

遺産分割審判の効果

遺産分割の審判は、確定すると調停調書や判決と同様の効果を有することになります。判決等と同様の効果とは、誤解を恐れず簡潔に言うと、強制執行が可能になるということであり、その内容を覆すことが出来なくなるということでもあります。

強制執行を行うことができる

強制執行は、債務名義(≒審判書)に表示された私法上の請求権を裁判所が強制的に実現する手続です。金銭の支払いを命じられた相手に対し、その財産を差し押さえるというのが典型です。これにより、相手が審判の内容を履行しない場合でも、強制力をもって実現を図ることが出来ます。

不動産の名義変更などができる

審判書で不動産の登記名義の変更が命じられている場合、義務者の登記移転にかかる意思表示は擬制されますので、審判に基づく登記移転が可能になります。
また、遺産分割審判の確定により、当該遺産分割の内容は確定し、権利関係が明らかになりますので、預金の解約等の手続にも用いることもあります。

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遺産分割審判の流れ

遺産分割審判は、法律上は調停前置主義の対象外ですので、いきなり審判手続を申し立てることも可能ですが、この場合も、裁判所の判断により、調停手続に付されることが一般的です。
そのため、実務的には遺産分割審判をいきなり申し立てるのではなく、まずは調停を申立て、調停成立の見込みがない場合に審判に移行するという流れが一般的です。この場合、調停が不成立となるとそのまま審判手続に移行します。

遺産分割審判の1回目期日が決まる

遺産分割審判に移行すると、審理終結日が設定され、それまでに主張・立証にかかる資料提出を行うことになりますが、その前に審問期日が設定される場合もあります。
審問は審判を行う裁判官が当事者の陳述を聞く手続です。当事者が希望した場合は必要的とされますが、特に希望がない場合は開かれない場合もあります。

期日当日

審問期日では、裁判官が当事者から意見の陳述を直接聴取します。その際、他の当事者には原則として立ち合いの権利が存するものとされていますが、立ち合いにより事実の調査に支障があると判断された場合等、立ち合いが制限される場合もあります。
審判期日の回数に制限はありませんし、審判前に和解の勧奨が行われる場合もありますが、特に新たな争点が生じてその整理が必要というような場合でもなければ、多数の期日が重ねられる可能性は低いでしょう。
すでに調停で提出しているものの他、主張や証拠の提出を行う場合は審理終結日までに行わなければなりませんので、こちらに注力することも重要です。

審判が下される

判決とは違い、審判の場合に言い渡し期日のようなものは設定されません。審判の内容は、審判書の送達によって当事者に告知されます。

審判に不服がある場合

審判書に記載された結果に不服がある場合、即時抗告という手続をとることが出来ます。これは上級審に再度判断を求める、いわゆる控訴のような手続ですが、申立てには期間の制限があり、審判の告知(≒審判書の送達)を受けた翌日から起算して2週間以内の不変期間内に抗告状を原裁判所に提出して行わなければなりません。

遺産分割審判を有利に進めるためのポイント

遺産分割は親族間の争いであるため、これまでの不満や感情的対立など、争点とは直接関係のない事項に言及するような場面も多いと思いますが、遺産分割審判では、法的に効果的な主張を行うことや、その事実を証するための効果的な証拠の選別等、訴訟と同様の戦略的活動が肝要です。
費用を掛けてでも、早い段階で弁護士に依頼するほうが安全ですし、自身で対応するよりも有利な結果につながる場合も多いと思いますので、早い段階で弁護士に依頼することを検討されてください。

遺産分割審判を欠席した場合のリスク

書面の提出等、自身の主張・立証の機会は審理終結日まで与えられていますが、審問期日は、当事者の陳述を裁判官が直接聴取する手続です。その機会や、和解勧奨を受ける機会を失いかねませんので、欠席はお勧めできません。

遺産分割審判を検討されている場合は弁護士にご相談ください

遺産分割は、法的な知識のみならず、資産の評価や実務の傾向等、判断を求められる点は多岐に及びます。当事者間の利害対立、感情的対立も深くなりがちですので、自身で対応しようとすると精神的な負担も少なくありません。
特に遺産総額の多い事案や、遺産の種類が不動産や株式等、多岐に及ぶ事案等は、適切に対応しなかったがために、本来得られたはずのものが得られないという場合のリスクも大きくなってしまいます。
遺産分割協議や調停段階から話し合いを有利に進めるためにも、審判移行後の主張立証活動を適切に行うためにも、早い段階で弁護士に相談し、依頼を検討することをお勧めします。

離婚後の生活を考えると、離婚に踏み切ることができないと考える方がいらっしゃると思います。専業主婦の期間が長く、夫の年金に頼らなければと思われている方は特にその不安が強いのではないでしょうか。離婚に伴い、年金を分割できる可能性がありますので、以下方法等について、説明します。

離婚時の財産分与と年金分割制度について

年金分割とは、離婚した場合に、夫婦の婚姻期間中の保険料納付額に対応する厚生年金を分割して、それぞれ自分の年金とすることができる制度です。平成19年4月1日以降の離婚について、適用されます。
年金分割の制度が導入されるまでは、財産分与の中で取り扱われていました。

年金分割の按分割合の決まり

年金分割は、将来夫婦が受け取る年金額を公平にするための制度です。当事者が合意できれば、いかなる割合でも分けることができるかというと、そうではありません。以下のような制限があります。一般的には、按分割合2分の1とすることが多いです。

  • 分割によって、分割を受ける方(対象期間標準報酬総額の少ない方)が、元々の持分を減らすことがないようにすること
  • 分割によって、分割される方(対象期間標準報酬総額の多い方)が、分割を受ける方(対象期間標準報酬総額の少ない方)の対象期間標準報酬総額を下回らないようにすること

年金分割のできる年金、できない年金

年金分割の対象となるのは、年金制度の2階部分である「厚生年金」と「旧共済年金」のみです。
夫婦の双方が「国民年金」にしか加入していない場合は、年金分割制度は利用できません。
また、年金制度の3階部分である「確定給付企業年金」、「確定拠出年金」、「退職等年金給付」なども年金分割では対象外となります。

年金分割の種類

年金分割には、2種類の方法があり、その違いは、以下ような部分となります。

合意分割 3号分割
離婚日 平成19年4月1日以降 平成20年4月1日以降
夫婦間の合意 必要(夫婦が合意できない場合、裁判所に按分割合を決定してもらう手続きを行うことが可能です) 不要
分割対象期間 婚姻期間全体(平成19年4月より前の期間も含みます) 婚姻期間のうち、平成20年4月1日以降の「第3号被保険者期間」
分割割合 夫婦の合意による(または裁判所が決定した按分割合) 2分の1
請求期限 離婚日の翌日から2年以内 制限なし(制限する規定なし)

年金分割の方法

年金分割の方法について、「合意分割」と「3号分割」に分け、具体的にみていきましょう。

合意分割の場合

合意分割とは、夫婦の合意や裁判所の決定によって分割割合を決める方法です。
夫婦の話し合いで、按分割合を決めることができない場合には、家庭裁判所に決めてもらうという手続きを行うことが可能です。一連の流れについて、以下で具体的に説明していきます。

夫婦間の合意による場合

夫婦で分割割合について話し合い、合意を目指します。この場合、按分割合の制限以内であれば、その割合について、夫婦が自由に決定することができます。
分割割合の合意ができたら、内容を明らかにすることができる書類(協議書等)を作成します。その後夫婦揃って年金事務所に行き、協議書や必要書類を提出することで手続きが進められます。
協議書を「公正証書」にしておくと、どちらか一方が年金事務所に行くだけで手続きが可能です。

調停による場合

夫婦の話し合いで、按分割合を決めることができない場合には、家庭裁判所に調停を申し立てるという方法があります。
調停では、調停委員が夫婦を仲介しながら話し合いを進め、合意を目指していきます。調停委員という第三者が介入し、双方の意見を踏まえて調整を行っていくことで、スムーズに解決できることが期待されます。調停で、夫婦が合意できた場合、「調停調書」という書面が作成されます。夫婦または夫婦の一方が年金事務所に行き、調停調書と必要書類を提出すれば年金分割の手続きを行うことができます。

審判による場合

調停が不成立となった場合、自動的に「審判」に移行します。
審判では、裁判官が書面照会等により相手方の意見も聴いたうえで、按分割合を決定する判断を示します。
審判に不服がある場合には、審判の決定から2週間以内に「即時抗告」をすることができます。
もっとも、審判や裁判では、特段の事情がない限り、按分割合が「2分の1」となるのが一般的です。

離婚訴訟における附帯処分の手続き

附帯処分とは、離婚訴訟(離婚を認めるかどうか、裁判所が判断する手続き)を行う際、離婚に付随するさまざまな問題も一緒に決定してもらえる手続きです。年金分割も附帯処分のひとつであり、裁判所に申立書などを提出することで利用できます。
附帯処分の手続きをとることで、離婚訴訟が認められた後に、年金分割の手続きをすることが必要なくなるというメリットがあります。

3号分割の場合

「第3号被保険者」にあたる方が、年金事務所に申請することで手続きできます。
3号分割の按分割合は2分の1となりますので、請求者は相手の同意を得ることなく、単独で手続きをすることが可能です。

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年金分割の手続きの流れ

年金分割の手続きは、以下の流れで行います。

①年金分割のための情報通知書を取得する
年金事務所から「年金分割のための情報通知書」の取り寄せを行いますが、取得の手続きは、夫婦揃ってではなく、一人でも可能です。

②「年金分割のための情報通知書」の受け取り

③夫婦間で、按分割合等について話し合いを行う

④③で、夫婦間で合意できた場合には、年金分割の請求手続きを行う
③で、夫婦間で合意ができない場合には、家庭裁判所に申立を行い、按分割合を定めたうえで、年金分割の請求手続きを行う

⑤ 「標準報酬改定通知書」の受け取りを行う
日本年金機構より、按分割合に基づき、厚生年金の標準報酬を改定し、改定後の標準報酬を記載した通知書が届きます。

離婚時の財産分与で専業主婦の年金について

専業主婦の場合でも、年金分割の対象となる期間は、婚姻期間のみです。
夫婦の婚姻期間中の保険料納付額に対応する厚生年金が分割の対象となりますので、配偶者が厚生年金に加入していない場合には、そもそも年金分割は利用できません。
また、年金分割を行っても、離婚後すぐにお金が手に入るとは限りません。分割した年金は年金受給開始年齢になってから支給されるため、その年齢に達していない場合、お金を得るまでに期間を要することには注意が必要です。

熟年離婚した場合の年金分割

相場

婚姻期間が長い熟年離婚では、年金分割できる金額も比較的高くなります。
もっとも、一般的に年金受給額の増額幅は最大でも“月数万円程度”となることが多いので、それだけで老後の生活を安定的なものとできないこともあるでしょう。

年金分割が成立後に配偶者が亡くなってしまった場合

以下、夫が妻に対し、年金分割を行う場合を前提に、夫が亡くなった場合と、妻が亡くなった場合に分けて説明します。

夫が亡くなってしまった場合
年金分割後に夫が亡くなっても、分割を受けた妻の年金受給額に影響はありません。つまり、夫の死亡前に年金分割の手続きを行っておけば、妻は生涯年金受給権を有することになります。

妻が亡くなってしまった場合
年金分割後に妻が亡くなっても、一度分割したものが夫に戻るわけではありません。妻の死亡にかかわらず、夫に支給される年金は、年金分割後の金額ということになります。

離婚時の財産分与の年金についてQ&A

財産分与のときに夫婦共働きの場合、年金分割はどうなりますか?

年金分割は、将来夫婦が受け取る年金額を公平にするための制度です。必ずしも夫から妻に分割されるとは限りません。妻の方が高収入の場合や、夫が自営業者・妻が厚生年金加入者である場合には、妻から夫に分割することになります。

離婚時の年金分割を拒否することは可能ですか?

年金分割を拒否したとしても、相手方が家庭裁判所に調停を申し立てることで、最終的に按分割合が決まることとなります。離婚等をした日の翌日から起算して2年以内に請求されていないといった、年金分割の要件を欠く場合でない限り、基本的に拒否することは難しいでしょう。

障害年金を受給していた場合、離婚後に年金分割の対象になりますか?

障害年金を受給している場合でも、年金分割の対象となります。
もっとも、分割を行う側が、障害厚生年金を受給している場合には、3号分割ができない場合があります。その場合には、合意分割を行うこととなります。

離婚後に夫婦のどちらかが再婚した場合、年金分割に影響はありますか?

年金分割後に、夫婦のどちらかが再婚した場合でも、それによって、それぞれが受け取る年金額に影響はありません。

離婚時に年金分割をしなかった場合はどうなりますか?

年金分割すべきかどうかは、夫婦の状況によって異なります。
年金分割は、将来夫婦が受け取る年金額を公平にするための制度です。特に収入に差がある専業主婦の方は請求した方がよいでしょう。ただし、年金受給開始年齢に達するまでは受給できないこと、生活を安定的にできる金額にまでならないこともあることといった注意が必要です。
他方、共働きで収入に差がない場合や、婚姻期間が短い場合、年金分割による利益はあまり期待できません。年金分割を請求するべきかどうか、しっかり考える必要があります。

あらかじめ離婚後の年金分割の見込み額を知ることはできますか?

日本年金機構において、50歳以上の方または障害年金の受給権者の方は、年金分割の情報提供請求書の所定の欄に、分割後の年金見込額を希望する旨を記入し、年金事務所へ提出することで、年金見込額の通知を受けることができます。
通知を受けることができる年金見込額は、以下の3パターンにて開示されます。

・按分割合の上限(50%)
・按分割合の下限(分割を行わない場合)
・ご本人の希望による按分割合

離婚したいと思った時、年金の財産分与について詳しくしりたいと思ったら弁護士に聞いてみましょう

年金分割について、制度の趣旨を理解し、夫婦できちんと按分割合等について話し合いを行えることが一番ですが、なかなかそうできないこともあるでしょう。また、離婚をお考えの場合、年金分割だけでなく、その他財産分与や親権等についても考えなければならないご状況の方もいらっしゃるでしょう。
何を請求していくべきなのか、それに対して、どのような手段を用いて、離婚について話し合いを進めていけばよいのか、まずは弁護士に相談されてみてはいかがでしょうか。

福岡法律事務所 所長 弁護士 今西 眞
監修:弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 所長
保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:47535)
福岡県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。