相続欠格になる5つの理由と欠格者が出た場合の相続順位

コラム

福岡法律事務所 所長 弁護士 今西 眞

監修弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 所長 弁護士

相続人に一定の極めて重大な非行が存在する場合、相続人としての権利が全てはく奪されてしまう場合があります。本項は、この相続欠格について、内容や要件等を説明するものです。

相続欠格とは

相続欠格とは、民法891条に規定されている所定の事情(相続欠格事由)がある相続人に対し、その相続権を失わせるという制度です。遺贈を受ける権利や遺留分も失わせる、とても強力な効果がありますので、その適用対象は限定的なものになっています。

どんな場合に相続欠格になるの?

相続欠格は、相続人としての権利を包括的にはく奪するという、とても強い効果を伴うものですので、その対象は、“被相続人を殺害した場合”等の重大な事由に限定されています(民法891条各号)。

遺産を手に入れるために、被相続人や他の相続人を殺害した、または殺害しようとした

故意に被相続人や、先順位・同順位の相続人を死亡に至らせ、または至らせようとしたために刑に処せられた者がこれにあたります(民法891条1号)。“故意に”死亡に至らせた場合等が対象ですので、過失致死等は含まれません。同じ殺人・殺人未遂等でも、後順位の相続人が被害者の場合は対象に含まれません。

被相続人が殺害されたことを知りながら黙っていた

被相続人が殺害されたことを知りながら、これを告発・告訴しなかった相続人が対象とされています。もっとも、但し書きにより、「是非の弁別がない者、殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族のとき」は対象外とされています(民法891条2号)。

詐欺や強迫によって、被相続人が遺言を残すことや取り消すこと、変更することを妨害した

被相続人の相続に関する遺言の作成や撤回、取り消し、変更等を詐欺又は強迫の手段によって妨げた者が該当します(民法891条3号)。被相続人の遺言の自由に対する不法な関与を排斥する趣旨です。

詐欺や強迫によって、被相続人に遺言を残させたり、撤回や取消し、変更させたりした

詐欺又は強迫の手段によって、被相続人に相続に関する遺言をさせたり、撤回、取り消し、変更させたりした場合が該当します(民法891条4号)。これも前号同様、遺言の自由に対する不法な関与を排斥するための規定です。

遺言書を偽造、書き換え、隠ぺい、破棄した

相続に関する被相続人の遺言を、偽造、変造、破棄、隠匿した場合が該当します(民法891条5号)。3号や4号と同じく、不法な遺言への関与を排斥するための規定です。これらについては、詐欺や強迫、偽造等の不法な行為に対する故意に加えて、遺言の破棄等により相続に関して不当な利益を得る目的という、二重の故意が要求されると解されていますが、特に5号については判例も存在しています(最判H9.1.28)

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相続欠格者がいる場合、相続順位はどうなる?

相続欠格の者は、相続人の地位を失います。相続欠格については代襲相続が適用されますので(民法887条2項)、欠格者に子がいる場合は、子が代襲相続します。子供もおらず、同順位の相続人がいない場合は、後順位の相続人が取得します。

相続欠格であることは戸籍に表記されない

相続欠格には、廃除の場合のような審判手続や戸籍の公示方法(戸籍法97条)が存在しないため、欠格者かどうかは戸籍等に表示されません。

相続欠格者がいる場合の相続手続き

相続欠格は手続を経ることなく、欠格事由があれば法律上当然に相続権を失うという効果が生じるものと解されています。欠格者に相続権が存在しないことを前提に遺産分割等を行うことも考えられますが、欠格事由の存在に争いがある場合等において、欠格事由に該当するかどうかを確定させるには、相続権不存在確認訴訟等を利用することになります。

相続欠格と相続廃除の違い

相続欠格と廃除は、どちらも相続に関する権利を失わせるものですが、要件・効果、手続等の異なる制度です。欠格事由は殺害等に限定されているのに対し、廃除は「被相続人に対する虐待、侮辱、著しい非行」とされています。欠格事由が存在すれば、当然に効果が発生する欠格に対し、廃除は家庭裁判所の審判手続を必要とします。

相続欠格に関するQ&A

相続欠格者が、遺言書に書いてあるのだから遺産をもらえるはずだと言っています。従わなければならないのでしょうか?

相続欠格は、遺贈を受ける権利も失うものとされていることから(民法965条)、遺言書に書いているとしても、基本的に欠格者は遺産をもらえないという結論になります。ただし、欠格事由について、被相続人が生前に宥恕することの可否は争いがあるものの、宥恕を肯定するのが多数説であり、これを肯定した審判例も存在することから(広島家裁呉支部H22.10.5審判)、欠格者であることを被相続人が知りながらあえてその者に遺贈した事案等、具体的事情の下では宥恕の有無等が争点になる場合もあるでしょう。

相続欠格者から遺留分を請求されました。無視していいですか?

相続欠格者は、相続権の全てを失いますので、遺留分もありません。したがって欠格事由が明らかと言う場合、これに応じる必要はありません。ただし、遺留分について調停・審判手続や訴訟手続を用いてきた場合は、これを無視すると不利な内容の判決等が下される危険がありますので、きちんと対応しなければなりません。

相続欠格者がいます。相続税の基礎控除額に影響しますか?

相続欠格者は相続税の基礎控除の人数に含まれませんが、代襲相続人がいればその分カウントされます。

相続欠格証明書を書いてもらえない場合は、諦めて遺産分割するしかないのでしょうか?

相続欠格は戸籍の記載には表れないため、欠格者を除いた相続登記を行う場合、法務局は相続欠格証明書の提出を求めてきます。欠格者が任意に作成に応じない場合は、相続権無効確認訴訟を提起し、欠格者に相続権がないことを確定させることになります。

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相続欠格に関する問題は弁護士にご相談下さい

相続欠格に該当する場合は限定的ですので、これに該当する場合はとても少ないです。要件該当性の判断や、具体的な手続等は、専門的な知識と判断が要求されますので、自己判断によってしまうと、主張すべき事案での妥協や、認められる可能性の低い事案で固執することによる紛争の長期化等も懸念されます。まずは専門家である弁護士に相談することをお勧めします。

有職者(サラリーマン、会社役員、自営業者)が事故に遭い、仕事が十分にできなくなるほどの後遺症が残った場合、逸失利益という損害が認められます。逸失利益とは、事故による後遺障害や死亡が原因で、将来にわたり得られなくなった金銭などの利益のことをいいます。

専業主婦・兼業主婦が交通事故に遭い、家事の全部又は一部ができなくなった場合、逸失利益は認められるのでしょうか。主婦は、家事をして収入を得ているわけではありません。「対価をもらわず家事をしている主婦に逸失利益が認められるのか」という点はじめ、主婦の逸失利益について、本項で解説します。

主婦の逸失利益は認められるのか

最高裁判所は、「対価をもらわず家事をしている主婦に逸失利益が認められるのか」という争点について、次のような判断を示し、主婦の逸失利益を認めました(最判昭和49年7月19日最高裁判所民事判例集28巻5号872頁)。
要するに、「主婦は、本来なら対価をもらえる仕事をしているといえ、家事労働には財産的な価値がある」という考え方を示したものです。

『結婚して家事に専念する妻は、その従事する家事労働によつて現実に金銭収入を得ることはないが、家事労働に属する多くの労働は、労働社会において金銭的に評価されうるものであり、これを他人に依頼すれば当然相当の対価を支払わなければならないのであるから、妻は、自ら家事労働に従事することにより、財産上の利益を挙げているのである。一般に、妻がその家事労働につき現実に対価の支払を受けないのは、妻の家事労働が夫婦の相互扶助義務の履行の一環としてなされ、また、家庭内においては家族の労働に対して対価の授受が行われないという特殊な事情によるものというべきであるから、対価が支払われないことを理由として、妻の家事労働が財産上の利益を生じないということはできない。』

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主婦・主夫の逸失利益の計算方法

上記最高裁判例では、『現在の社会情勢等にかんがみ、家事労働に専念する妻は、平均的労働不能年令に達するまで、女子雇傭労働者の平均的賃金に相当する財産上の収益を挙げるものと推定するのが適当である。』との考え方が示されました。つまり、女性労働者の平均賃金額を基に、逸失利益が算定されるのが原則です。

専業主婦の場合

逸失利益には、被害者に後遺障害が残った場合の逸失利益(後遺障害逸失利益)と、被害者が死亡した場合の逸失利益(死亡逸失利益)があります。
専業主婦の場合の逸失利益は、次のような計算式が用いられるのが一般です。

◆計算式:後遺障害逸失利益
逸失利益=(基礎収入)×(労働能力喪失率)×(労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数)

◆計算式:死亡逸失利益
逸失利益=(基礎収入)×(1-生活費控除率)×(症状固定時から67歳までの期間に対応したライプニッツ係数)

なお、上記計算式において、「67歳までの期間に対応したライプニッツ係数」が用いられるのは、実務上、「就労可能年齢が67歳までだ」とされているためです。
もっとも、この「67歳」という数字は、上記の計算式の考え方が採用され始めた当時(1975年)の男子平均余命が67歳だったことが原因です。実務が変更になる予兆はないですが、「就労可能年を67歳としてよいのか」慎重な検討が必要です。

専業主夫の場合の基礎収入はどうなる?

専業主夫の基礎収入には、専業主婦と同様に、賃金センサスの女性労働者の平均賃金額を利用します。女性の家事従事者との平等の観点からです。

兼業主婦の場合

兼業主婦の場合でも、逸失利益の計算式自体は専業主婦の場合と同じです。
両者の違いが表れるのは、基礎収入の部分です。専業主婦の場合には、女性労働者の平均賃金額と、実収入を比較し、より高額である方を基礎収入として計算することになります。兼業主婦の場合には、実収入が女性労働者の平均賃金額よりも多いかを確認することが重要です。

基礎収入には家事労働分が加算されないの?

兼業主婦の基礎収入は、実収入または女性労働者の平均賃金額(家事労働分)のいずれかであって、実収入に家事労働分を加算することは認められていません。裁判所がこのように考えているのは、仮に実収入と家事労働分の合算を認めてしまうと、将来の労働によって取得しうる利益を二重に評価することになってしまい、相当ではないためです。

高齢主婦の場合

高齢の主婦の場合でも、逸失利益の計算式自体は専業主婦の場合と同じです。

ただし、同居家族がいない場合には、「家族のための家事=対価をもらえるはずのところを、家族だからもらっていないだけだ」という考え方が妥当しません。家事は自分自身のために行っていると考えられて、家事労働について経済的評価を受けられず、逸失利益が認められない可能性が高いです(例外的な事例として、東京高判平成15年10月30日判時18476号20頁など)。

また、高齢主婦の場合は、全年齢平均ではなく、より低額の年齢別平均の賃金センサスを用いるべきと判断される可能性もあります。

逸失利益の計算式では、労働能力喪失期間を67歳までで区切っています。そのため、被害者が67歳を超えていたり、67歳に近かったりすると、労働能力喪失期間の調整を行うことが多いです。

具体的には、67歳を超える場合には、簡易生命表の平均余命の2分の1を労働能力喪失期間として計算します。67歳に近い場合には、67歳までの期間と、平均余命の2分の1のいずれか長い期間を労働能力喪失期間として計算することが多いです。

労働能力喪失率

労働能力喪失率は、後遺障害によって、どの程度労働に支障が生じるかを示した数値です。後遺障害の等級に応じて、5%から100%までの幅があります。
裁判では、職業内容や生活状況によって労働能力喪失率が増減することもありますが、交渉、裁判の双方において、労働基準局長通牒昭32.7.2 基発第551号「労働能力喪失率表」が基準とされることが多いです。

労働能力喪失期間とライプニッツ係数

労働能力の喪失期間とは、労働能力が失われる期間を言います。基本的には、症状固定日(被害者が生存して後遺障害が残った場合)または死亡日(被害者が死亡した場合)から67歳までの期間が、労働能力喪失期間となります。

また、逸失利益は、「将来下がるはずの収入(減収分)を、現時点で賠償してもらう」というものです。1年後の100万円の減収分、2年後の100万円の減収分、…、〇年後の100万円の減収分を、先にもらう、というものです。将来の減収分について賠償してもらうとき、法定利率による引き直し計算(将来の金銭の、現在価値への換算)が必要となります。この計算に用いるのが、ライプニッツ係数です。

生活費控除について

被害者が生存していた場合、得られるはずだった利益は、被害者の収入から生活費を引いた金額となります。そこで、死亡逸失利益を計算する場合には、生活費が控除されることとなります。具体的な生活費の金額を算出するのは難しいため、生活費控除率という数値を用いて、割合的に生活費相当額を差し引きます。主婦の場合の生活費控除率は、下表のとおり30%です。

一家の支柱の場合かつ被扶養者1人の場合 40%
一家の支柱の場合かつ被扶養者2人以上の場合 30%
女性(主婦、独身、幼児等を含む)の場合 30%
男性(独身、幼児等を含む)の場合 50%

主婦の逸失利益についてご不明点があれば弁護士にご相談ください

主婦の逸失利益は、「基礎収入を計算式にあてはめて終わり」といった簡単なものではありません。正確な法的知識を前提に、「どのような症状で、家事労働にどのような支障が生じたのか」具体的に立証することが必要となる場合もあります。正確な法的知識を基に、正確な立証するため、専門家である弁護士にご相談いただくことをお勧めします。

交通事故後、一定期間にわたり怪我の治療を続けると、これ以上は治療の効果が生じないという状態に至ります。これを症状固定といいます。

しかし、症状固定後も痛み、しびれ、関節の可動域制限等の症状が残存してしまう場合があります。
このような場合に、被害者が適切な損害賠償を受けられるようにするためには、後遺障害等級認定を受けることが必要です。
この記事では、後遺障害等級の具体的な申請方法、認定結果に不服がある場合の対処法などを詳しく解説します。

後遺障害等級認定とは

自動車損害賠償保障法施行令には、後遺障害の等級が具体的に定められています。
例えば、「一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの」が第10級10号、「局部に神経症状を残すもの」が第14級9号です。
後遺障害等級が認定されると、その等級に応じて、慰謝料等を受け取ることができます。

後遺障害等級認定の申請方法

後遺障害等級が認定されると、その等級に応じて、慰謝料等を受け取ることができますが、症状固定後に後遺障害等級が自動的に認定されるという仕組みは存在せず、まず申請手続を行わなければなりません。

その申請方法としては、「事前認定」と「被害者請求」という2種類があります。「事前認定」は、加害者側の任意保険会社に申請を委ねるという方法であり、「被害者請求」は被害者自らが申請を行うという方法です。

事前認定(加害者請求)による申請方法

交通事故による負傷の治療が終了して症状固定に至った時点で、後遺障害等級認定申請をすることができるようになります。
そして、事前認定(加害者請求)による場合、医師作成の後遺障害診断書を加害者側の任意保険会社の担当者に提出すれば、同保険会社がその後の申請手続を代行してくれます。

その認定結果が判明するまでには数か月程度の期間を要する可能性がありますので、その間は待たなければなりません。

被害者請求による申請方法

まずは必要書類を集めましょう

被害者請求による場合、被害者自らが必要書類を準備する必要があります。具体的には、事案によって異なりますが、以下のものが代表例です。

支払請求書 自賠責保険会社のパンフレットに同封されていることが多いです。
交通事故証明書 加害者側の任意保険会社が所持しており、同社に依頼すれば交付されるのが通常です。
診断書及び診療報酬明細書 加害者側の任意保険会社が一括対応をしている場合、同社が所持しているのが通常です。一括対応がされていない場合、自賠責様式のものを病院で作成してもらうことになります。
後遺障害診断書 自賠責保険会社又は任意保険会社から、後遺障害診断書の書式をもらった上、主治医に作成を依頼します。
事故発生状況説明書、印鑑証明書等

後遺障害等級認定までの流れ

必要書類を準備した後、加害者側の自賠責保険会社に書類一式を送付します。
その後の流れは、事前認定の場合と同じです。すなわち、自賠責保険会社で受付がなされた後、書類一式は、損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所に送付されます。

そして、自賠責損害調査事務所が必要な調査を行いますが、申請時の書類だけでは不足すると判断した場合、事故当時者への照会や追加資料の提出依頼、医療機関等への照会を行うことがあります。
後遺障害等級認定の結果が判明するまでに、数か月程度かかる可能性があります。

事前認定と被害者請求のメリット・デメリット

事前認定(加害者請求)

事前認定(加害者請求)の最大のメリットは、被害者の負担が少ないという点です。後遺障害診断書さえ主治医に書いてもらえば、その後の手続は加害者側の任意保険会社が代行してくれます。
他方で、事前認定の場合、加害者側の任意保険会社に申請手続を委ねることになるので、不十分な資料しか準備されないという可能性があります。その結果、十分な補充資料があれば適正な後遺障害等級が認定されたはずの事案において、資料不足のために適切な認定がされなくなるかもしれません。
このように、事前認定による場合、適正な後遺障害等級が認定されないかもしれないというデメリットを伴います。

被害者請求

被害者請求を行う場合、被害者自らが必要書類を準備したり、申請書類を作成したりしなければならないという負担が生じます。
他方で、被害者請求による場合、適切な後遺障害等級が認定されるようにするため、事故による衝撃を明らかにするような事故車両の写真やドライブレコーダー映像等の客観的資料を準備したり、治療を担当した医師の意見書や回答書を作成してもらったりするなどの証拠収集・追加を自由に行うことができます。
さらに、弁護士に依頼すれば、これらの必要資料の準備や申請書類の作成などを代行してもらうことができます。被害者請求によって適正な後遺障害等級認定を目指す場合、弁護士への依頼をご検討ください。

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後遺障害認定までにかかる期間

後遺障害等級認定の申請を行うと、自賠責損害調査事務所による調査が実施されることとなり、その調査に要する時間は事案によって異なります。
一般的には、認定結果が判明するまでに少なくとも1か月はかかります。
もし、自賠責損害調査事務所が追加資料の提出を求めたり、医療機関に対する照会を実施したり、そもそも資料が膨大な量だったりした場合、調査に要する時間は長くなり、認定結果が判明するまでに数か月程度かかることもあります。

認定されなかった場合・認定された等級に納得いかなかった場合にできること

後遺障害等級申請の結果について、例えば非該当であったり、予想していたよりも低い等級しか認定されていなかったりすることがあります。そのような場合には、異議申し立ての手続きを行うことができます。異議申し立ての手続きは、追加資料等を提出することで、再度判断してもらう手続きですが、非該当が14級、14級が12級というように、結果が覆ることがあります。最初の認定結果の紙に、認定の理由が記載されていますので、その理由を踏まえ、追加資料を収集し、異議申し立てを行う必要があります。

異議申立てをする方法

後遺障害等級の認定結果に対して不服がある場合、①自賠責保険に対しての異議申立て、②自賠責保険・共済紛争処理機構への紛争処理申請、③民事訴訟の提起が可能です。
まず①が選択されることが多いので、①について解説します。

必要書類と入手方法

自賠責保険に対する異議申立てを行う場合、「異議申立書」という表題の書面を提出することが一般的です。
異議申立書には、認定結果に対する不服の内容や、その根拠等を端的に分かりやすく記載することが必要です。自賠責保険会社は異議申立書の用紙を備え付けていますし、弁護士に依頼した場合は、弁護士が異議申立書を作成します。
さらに、異議申立ての証拠として、例えば医療機関のカルテ、医師の意見書や鑑定書等の資料を追加することができれば望ましいでしょう。

異議申立書の書き方

異議申立てをする場合、最初の認定結果が誤っているということを説得的に説明しなければなりません。

例えば、むち打ちによる首の痛み等の神経症状が残存しているにもかかわらず、後遺障害等級に該当しない(非該当)という判断だった場合、事故による身体への衝撃が大きかったことや、事故直後から一貫して症状が続いていたこと、症状が事故によるものとして医学的に矛盾しないことなどを明らかにすべきです。
そして、その主張の裏付けとなる資料を追加提出することができれば望ましいでしょう。具体例としては、事故に遭った車両の破損状況の写真、ドライブレコーダーの画像、各医療機関のカルテ、主治医の意見書や回答書などが想定されます。

書類に不足や不備があるとやり直しになる

異議申立書に不備があると、補正を求められる可能性が高いです。

また、異議申立書が説得力に欠けていたり、裏付けとなる資料が不足していたりすると、後遺障害等級の認定結果は変わらないと思われます。
この場合、自賠責保険への異議申立てには回数制限がないので、何度でも異議申立てをすることはできます。
ただし、異議申立ての回数を増やすこと自体には意味がない上、時効の問題もありますので、あらかじめ最大限の資料を準備した上で1回目の異議申立てを行う方がよいでしょう。

「異議申立て」成功のポイント

異議申立てによっても、後遺障害等級の認定結果を覆すことは容易ではありません。むしろ、結果が覆らない場合の方が多いのが実情です。

異議申立てを成功させるためには、十分な準備と様々な工夫が必要です。
まず、後遺障害等級認定申請に対する結果の通知書には、その判断に至った理由が記載されています。その記載を手掛かりとして、異議申立てに必要な補充資料を考えることは有用です。
また、目標とする等級が認定されるための要件を調べておくことも望ましいでしょう。自賠責保険の支払基準によると、自賠責の後遺障害等級の認定は、原則として労働者災害補償保険における障害の等級認定の基準に準じて行うこととされています。そして、後者は厚生労働省ウェブサイトに種々の資料が公開されており、誰でも容易に検索することができます。

異議申立ての際、ただ漠然と認定結果に対する不満だけを述べても、その認定結果が覆る可能性はほとんどありません。
まずは、目標とする等級が認定されなかった理由を具体的に分析した上、その等級が認定されるために必要な資料を追加するなどして、効果的な主張・立証を行うようにしてください。

後遺障害等級認定・異議申し立ては弁護士にお任せください

後遺障害等級認定申請は、事前認定より被害者請求によることがお勧めです。
そして、弁護士に依頼することによって、必要な資料の準備や申請書類の作成などを全て弁護士に任せることができます。

もし異議申立てをする場合、最初の申請時よりもハードルは高いので、弁護士の助力を得る必要性が更に高いといえるでしょう。

後遺障害等級認定の結果によって、実際に得られる賠償額は大きく変わります。適正な賠償を得るためにも、弁護士にご依頼ください。

むちうちとは?

むちうちは、首(頚部)が強い衝撃を受けたとき等に、不自然な力によって急激に伸びたりすると起こる首の捻挫です。
交通事故では、自動車の追突事故による衝撃や急停車などが原因になって起こります。
むちうちは、受傷時に首がムチのようにしなる動きをするので、むちうちと一般的に呼ばれますが、これは正式な傷病名ではありません。

病院で診断されるときには、頚椎捻挫外傷性頚部症候群といった傷病名が診断書に記載されます。
比較的軽い交通事故であっても、むちうちになっているケースは非常に多いので、どんな症状なのか、慰謝料請求にどう関わっていくのかを見ていきましょう。

むちうちの主な症状

むちうちの症状は、頚部を中心とした症状が一般的ですが、全身症状の場合もあるので、むちうちだと自覚していない方もいます。
むちうちの症状は多種多様で、頭痛や首を動かしたときの痛み、倦怠感、耳鳴り、めまい、眼精疲労、吐き気、上下肢のしびれ、背中の痛みなど様々です。
交通事故の直後に症状がなくても、2,3日経ってから症状が現れることもあります。事故直後に痛みがなかったとしても、すぐに病院を受診するようにしましょう。

むちうちの主な治療方法

治療への第一歩として、まずは事故に遭ったらすぐに整形外科を受診しましょう。
むちうちは首の捻挫だけでなく、脳や神経にもダメージを受けている可能性があるからです。
レントゲンやMRIなどの検査で状態を確認したうえで治療方法を決めていきます。
むちうちに多い頸椎捻挫では、患部を冷やして炎症を抑え、程度によって首にコルセットをつけたりします。
炎症が治まったら、整形外科では首の牽引や温熱療法が行われますが、整骨院では、全身マッサージや電気療法で、血流を促進したりします。

むちうちで認定される可能性のある後遺障害等級と認定基準

●12級13号
後遺症の症状が、レントゲンなどの画像所見や、神経学的検査で、他覚的所見として証明できる場合です。
自賠責での認定基準は「局部に頑固な神経症状を残すもの」となっています。

●14級9号
12級のような他覚的所見での証明ができなくても、事故状況や治療経過から残存症状の訴えに説明がつくものとなります。
自賠責での認定基準は「局部に神経症状を残すもの」となっています。

むちうちで請求できる慰謝料と慰謝料相場

むちうちで請求できる慰謝料は、治療期間に対する入通院慰謝料と後遺障害等級に対する後遺障害慰謝料です。

慰謝料算定には自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準の3種類があり、最も高額になるのは弁護士基準です。

入通院慰謝料

入通院慰謝料は、治療期間の長さに比例して高額になります。
例えば、慰謝料算定基準として弁護士基準を使うと、通院3か月なら53万円、通院6か月なら89万円が相場になります。
また、レントゲンで異常が確認できたときは更に高額になります(画像所見ありで通院6か月:116万円)。

【むちうちで通院期間6ヶ月・実通院日数90日の場合】

自賠責基準 弁護士基準
77万4000円 89万円

後遺障害慰謝料

通院期間が6か月程度になってくると、後遺障害等級に認定される可能性があります。

むちうちに最も多い14級であれば、後遺障害慰謝料として110万円が見込まれます。

自賠責基準 弁護士基準
12級13号 94万円 290万円
14級9号 32万円 110万円
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むちうちで適正な等級認定・慰謝料請求するためのポイント

通院頻度を適切に保つ

外傷の治療は基本的には、整形外科へ通院していただくことになります。整形外科は運動器の疾患を扱う診療科です。身体の芯になる骨・関節などの骨格系とそれを取り囲む筋肉やそれらを支配する神経系からなる「運動器」の機能的改善を重要視して治療する外科です。

そして、むちうちは、頚部を包み込んでいる筋肉や靭帯の軟部組織の部分断裂や出血などによって痛みや運動制限が生じる症状ですので、むちうちの場合は整形外科へ通院していただくことになります。

必ず整形外科を受診する

交通事故の怪我の治療のために整骨院に通院する方もいらっしゃると思いますが、整骨院の治療費は、場合によっては「必要な治療」ではないとして、賠償を受けられない場合があります。これは、「治療」とは国家資格を持つ医師による医療行為のみがと評価されるからです。
ただし、整形外科等医師の診断に基づき、当該医師の了承のもと通院している場合には、治療費が賠償の対象とされる可能性が高くなります。
そのため、整骨院での施術を受けようとする場合は、まずは整形外科の医師に相談の上医師の了承(指示)を受けてから整骨院に通う必要があります。

通院中に保険会社からむちうちの治療費を打ち切られそうになったら

主治医がまだ治療が必要と判断していても、保険会社が治療費打切りを強行することはあります。
では、打ち切られたらもう治療をやめないといけないか、というと、そうではありません。
一旦、自分で立替えた治療費であっても、交通事故とその治療に因果関係があれば、立替えた治療費は損害賠償として請求できます。
治療費打切りとなっても、必要な治療を続けて、適切な賠償を受ける権利を守りましょう。
そして、自費で治療費を立替えるときには、「第三者行為による傷病届」を出すと、自身の健康保険を使って通院ができます。経済的負担を大きく軽減できますので、忘れずに提出しましょう。

交通事故でむちうちになったら弁護士へご相談下さい

弁護士であれば、交通事故でむちうちになった場合、どのような通院方法をおこなえば長く治療できるのか、どのような交渉を行なえば治療費の延長ができ、どのような主張や後遺障害の診断に検査をすれば後遺障害が認定されやすいか、異議申立を行うにあたって必要な事項は何かという点を熟知しております。
後遺障害が認定されるか否かで、示談金額が大幅にことなることもあります。そこで、ぜひ、むちうちの際は、弁護士に一度ご相談下さい。

被相続人(例えば親)と相続人(例えば子)はあくまで他人です。
親が、子の希望どおりに遺言を書いてくれるとは限りません。

相続人が、遺言の内容に納得いかないとき、法的な対処が可能な場合、不可能な場合があります。本稿では、遺言書の内容に納得いかないときの対応についてご説明します。

遺言書は絶対?納得いかない遺言書でも従わなければいけないの?

民法は、被相続人の意思を尊重する制度を採用しています。そのため、相続人の納得が納得しなくても、原則として、遺言は有効です。例外的に、相続人全員の合意がある場合は、遺言の内容と異なる遺産分割ができます。また、相続人の遺留分を侵害する場合には、被相続人の意思が一定程度制約され、遺留分侵害額請求権の行使が可能です。

相続人全員の合意が得られれば従わなくて良い

相続人全員の合意が得られれば、遺言書と異なる相続をすることは可能です。ただし、遺言書どおりに相続しないということは、誰かの取り分が減る一方で、誰かの取り分が増えることがほとんどです。相続人全員が合意して遺言書と異なる相続を行うことができることは稀です。

合意が得られなくても、遺留分を請求できる場合がある

遺言の内容が、相続人の遺留分を侵害するのであれば、その相続人は、遺留分侵害額請求権の行使ができます。
ただし、遺留分侵害額請求権は、「遺言は有効なままとして、遺留分が侵害された分を、金銭的請求(遺留分侵害額請求)でカバーする」という制度です。遺言を尊重しつつ、相続人を金銭的に保護する制度ですので、「遺言の内容を変更する」ものではありません。

そもそも無効の遺言書であれば従わなくてよい

また、そもそも、遺言が無効であれば、その遺言の内容に従う必要はありません。
遺言が無効な場合とは、遺言者(被相続人)に遺言能力がなかった場合や、遺言の方式違背がある場合等です。

遺言が無効になる場合の詳細については、以下の記事をご参照ください。

遺言書が無効となるケース
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遺言書の無効を主張したい場合は?

遺言の無効を主張する場合、以下の手順によることが一般です。
①相続人(及び受遺者等)全員が、遺言が無効であると合意できるのであれば、同合意にしたがって、遺言を無効とし、改めて遺産分割協議を行います。
②遺言の有効性について、利害関係人に争いがある場合、遺言無効確認調停、遺言無効確認訴訟の法的手続を経ることになります。遺言無効確認調停又は遺言無効確認訴訟で遺言が無効との結論(調停、判決等)が出れば、遺言が無効なものとして確定します。

納得いかない遺言書であっても偽造や破棄は違法に

遺言に納得いかないからといって、遺言書の偽造、破棄等は絶対に行わないようにしましょう。相続欠格に該当し、相続人になる資格を喪失します(民法891条4号)。

遺言書に納得いかない場合のQ&A

私は遺言書のとおりに分割したいのですが、納得いかないと言われてしまいました。話し合いが平行線なのですが、どうしたらいいでしょうか?

家庭裁判所に、遺言執行者の選任を申立てた上で、遺言執行者により、遺言の執行を行ってもらう方法が考えられます。
また、珍しい訴訟類型ですが、遺言「有効」確認訴訟を提起するという方法も考えられます(最判令和3年4月16日など参照)。
遺言執行者を選任しても、紛争の矛先が遺言執行者に向くだけですので、遺言「有効」確認訴訟の提起がよいのではと考えています。

愛人一人に相続させると書かれていました。相続人全員が反対しているので、当人に知らせず遺産を分けようと思いますが問題ないですよね?

相続人以外の受遺者として愛人の存在がある以上、相続人全員が同意したとしても、愛人に知らせずに遺言書と異なる遺産分割をすることは認められません。愛人が遺言書の存在すら知らない場合には事実上、遺言書と異なる遺産分割をしても問題ないまま終わることもあるかもしれませんが、事後的に愛人から遺産分割の有効性を争われる可能性が残ってしまいます。そのため、愛人が遺言書のことを知っている場合はもちろん、知らない場合でも、遺言書の内容を知らせないまま遺産分割をすることはおすすめはできません。
愛人にすべて相続させるとの遺言は、公序良俗違反として無効となる可能性もありますので、正々堂々と争うのが得策といえます。

遺言書に納得がいかないのですが、遺留分程度の金額が指定されている場合はあきらめるしかないのでしょうか。兄は多めにもらえるため、このままでいいじゃないかと言っています。

遺留分が確保されているのであれば、遺言書が有効である以上、法的に請求できることは多くはありません。敢えて方法を挙げるとするならば、遺言書における受遺者が被相続人から生前贈与を受けている場合には特別受益を主張して遺留分金額の増額を目指す等の余地はあるといえます。

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遺言書に関して納得いかないことがある場合、弁護士への相談で解決できる可能性があります!まずはご相談ください

遺言に納得いかない場合、法的な争い方は様々です。適切な方法を選択しなければ、思わぬ不利益が生じることもあります。
遺言に疑義があったら弁護士にご相談されることをお勧めします。

内縁関係とは、婚姻届は提出していないものの、お互いに婚姻の意思があり、実質的には結婚している夫婦と同様の状態にある関係をいいます。内縁関係でも、結婚している夫婦と同じような法的保護を受けられる場合があり、そうしたときに内縁関係の証明が必要になることがあります。

結婚している場合、戸籍謄本を見れば夫婦であることは簡単に証明できますが、内縁関係の場合はそうはいきません。戸籍に記録は残らないので、関係性を証明しにくいという問題があります。
それでは、どのように内縁関係を証明していけばいいのでしょうか?必要な書類や具体的な方法について、本ページで詳しく解説していきます。

内縁関係の証明が必要となるのはどんな時?

内縁関係は、「婚姻に準ずる関係」と認められており、結婚している夫婦と同様に、法的に保護されている部分があります。例えば、次のようなものです。

  • 不当に関係を解消された場合、慰謝料を請求できる
  • 関係解消時に、財産分与を請求できる

しかしながら、相手から「内縁関係にはなかった」と主張されて請求を受け入れてもらえないことがあり、そうした場合には、内縁関係の証明が必要になります。

なお、いわゆる事実婚も、用語の使い方で細かな違いはあるものの、内縁とほぼ同じ意味合いです。
内縁関係とは何なのか等、内縁関係の概要については下記のページで紹介しています。こちらもぜひ併せてご覧ください。

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内縁関係を証明するには?書類や方法について

内縁関係を証明するには、主に①双方に婚姻の意思があること、②結婚している夫婦とほとんど変わらない共同生活を送っていることという2つの基準から判断されます。結婚していれば、「戸籍謄本」から夫婦であることを簡単に証明できるのに対し、内縁関係ではこうした決定的な証拠はありません。そのため、次に掲げるような様々な書類や事実関係から、内縁関係を証明していくこととなります。

  • 住民票
  • 賃貸借契約書
  • 健康保険証
  • 遺族年金証書
  • 給与明細
  • 民生委員が作成する内縁関係の証明書
  • 長期間の同居
  • 親族や友人たちから夫婦として扱われている
  • 結婚式や披露宴を挙げたことがわかる書類や写真

上記に挙げた事項について、一つずつ掘り下げてきましょう。

住民票

住民票を同じにしていて、一方の“続柄”の欄が「妻(未届)」や「夫(未届)」といったように記載してあれば、その住民票は内縁関係を証明する有力な証拠になり得ます。
住民票を同じにしているということは、一緒に住んでいることの証明になります。加えて、一方の続柄が「同居人」などではなく、「妻(未届)」や「夫(未届)」になっていれば、婚姻の意思があると判断されやすくなるでしょう。内縁関係を証明するための証拠として、「住民票」は特に重要なものといえます。

賃貸借契約書

同居するお住まいを借りた際に作成した「賃貸借契約書」のなかで、同居人について、「内縁の妻」「内縁の夫」「妻(未婚)」「夫(未婚)」などと記載してあるものは、内縁関係の証拠として使えます。同じ家に住んでいること、そして婚姻の意思があることの証明に繋がる可能性があるでしょう。

健康保険証

健康保険法の規定では、“配偶者”は、「届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む」とされています。そのため、内縁関係でも、一定の要件を満たせば、内縁の妻(夫)を健康保険の被扶養者にすることが可能です。

被扶養者となった者には、内縁の相手が加入する健康保険の健康保険証が交付され、保険証には「被扶養者」と書かれます。内縁関係にあるという確認がなされたうえで、被扶養者として保険証を手にするので、こうした保険証は内縁関係の証拠として役立ちます。

遺族年金証書

内縁の相手が亡くなり、遺族年金を受け取った際の「遺族年金証書」も、内縁関係を証明するための証拠になり得ます。

遺族年金とは、国民年金または厚生年金の保険に加入していた者が亡くなったとき、その者に生計を維持されてきた遺族(配偶者や子供など)が受け取る年金です。先ほどの健康保険と同じく、ここでいう配偶者にも事実婚状態にある者が含まれているため、内縁関係であっても、受給要件を満たしていれば遺族年金を請求できます。

請求が認められると、遺族年金証書が送られてきます。婚姻届は出していないけれど、パートナーが亡くなって遺族年金証書を手にしているということは、内縁関係だと確認されたことを意味します。したがって、内縁関係の証明になる可能性が考えられるのです。

給与明細

給与明細に、会社から受け取っている家族手当(扶養手当)の金額が記載されている場合、内縁関係を証明するための証拠になる可能性があります。
勤務先によっては、「家族手当(扶養手当)」といって、家族を扶養している者に対して手当を支給しているところがあります。そして、なかには内縁関係のケースでも支給を認めている企業も存在します。したがって、給与明細に家族手当の記載があると、内縁関係の証明として役立つこともあるのです。

ただ、家族手当の支給は法律で決められているものではありません。支給するかどうかは企業の自由であり、内縁関係を対象に含めるかも企業次第です。そのため、給与明細が必ずしも内縁関係の証明に繋がるとは言い切れませんので、注意しましょう。

民生委員が作成する内縁関係の証明書

民生委員に作成してもらった「内縁関係の証明書」は、内縁関係を証明する際の証拠になり得ます。

民生委員とは、地域に暮らす人々の相談相手となったり、生活支援をしたりするなどのボランティア活動を行う、非常勤の地方公務員をいいます。お住まいの地域の民生委員に依頼すれば、「内縁関係の証明書」を作成してもらえることがあり、内縁関係を証明する際に役立つ可能性があります。

ただし、民生委員の証明事務は、行政の福祉サービスの利用等を目的として作成されることが前提であり、また、法的証拠として取り扱われるものや状況確認ができない場合には対応してもらえませんので、この点は留意しておいてください。

長期間の同居

夫婦同然の共同生活をしていた同居期間の長さは、内縁関係の成立の判断で考慮される事情の一つです。同居期間は長ければ長い方が、内縁関係にあることを証明しやすくなります。

内縁関係の成立を認めてもらうためには、一般的には3年程度の同居期間が必要だといわれています。ただ、個別の事情によって、必要な期間は異なることもありますので、3年はあくまでも目安だと考えましょう。

例えば、3年より短い同居期間でも、「周囲から夫婦として見られている」「結婚式を挙げている」といった客観的な事情から、内縁関係の成立が認められる場合はあります。

親族や友人たちから夫婦として扱われている

親族・友人・勤務先の人たちなど、周囲の人から夫婦と同じような扱いを受けているという客観的な事情は、内縁関係を証明する一つの材料になります。
例えば、「親族の冠婚葬祭に夫婦として呼ばれている」「お互いの友人に夫婦だと紹介している」といったケースでは、周囲の人から夫婦として扱われていると判断されるでしょう。

結婚式や披露宴を挙げたことがわかる書類や写真

結婚式や披露宴を挙げたことがわかる書類や写真は、内縁関係の証明になる可能性があります。

結婚式や披露宴を挙げる目的には、お二人が夫婦であることを多くの人に広めたい、事実上結婚したという意識を強めたい、といったことが考えられます。お互いに婚姻の意思があることが読み取れますので、内縁関係が成立していたと判断されやすくなるでしょう。

内縁関係の証拠として使えることがありますので、式場の人や友人などに撮ってもらった結婚式の写真などがないかどうか、調べてみてください。

内縁関係の証明に関するQ&A

半同居生活を送っていた場合でも内縁関係を証明することはできますか?

半同居生活でも、家計を同一にしていた等の事情があれば、半同居の理由によっては、夫婦同然の共同生活を送っていたものとして、内縁関係を証明できる可能性があります。ただ、完全同居していた場合に比べると、証明は難しくなることが予想されます。
また、内縁関係にあったと認められるためには、“お互いが婚姻の意思を持ったうえで”共同生活を送っていたといえなければなりません。本人の意思だけではなく、周りから夫婦と認識されていた、といったような客観的な事情も考慮して判断されますので、この点も忘れないでおきましょう。

自分で作成した契約書は内縁関係を証明する証拠になりますか?

自分たちで作成した契約書は、内縁関係を証明する証拠になり得ます。契約書を作成するときは、「お互いに婚姻の意思があることを確認し、夫婦として共同生活を始める」といったような内容を含めるようにしましょう。内縁関係の成立には、婚姻の意思をそれぞれが持っていて、夫婦と同じような共同生活を営んでいることが必要になるからです。
また、作成した契約書を公証役場に持っていき、「公正証書」にすれば、さらに証拠能力は高まります。

自動車保険は内縁関係を証明する証拠になりますか?

自動車保険の契約のなかで、内縁の妻(夫)が配偶者として補償を受ける対象になっている場合には、内縁関係を証明する証拠に使える可能性があります。基本的に、自動車保険では内縁の妻(夫)も配偶者として扱うものとされています。保険会社から内縁関係にあることを確認されたうえで契約を結ぶので、その自動車保険の内容は、内縁関係を証明する証拠の一つになり得るでしょう。
なお、内縁関係の確認方法は保険会社によって違いますが、公的書類(住民票など)の提出を求められたり、実際の状況を聞かれたりするケースが多いかと思います。

内縁関係を証明できれば浮気相手から慰謝料をもらうことができますか?

内縁の妻(夫)が浮気相手と肉体関係を持っていた場合、内縁関係を証明できれば、浮気相手から慰謝料をもらえる可能性があります。内縁関係であっても、法律婚と同様に、パートナー以外の者と肉体関係を持ったら「不貞行為」となり、慰謝料請求の理由になります。慰謝料を請求する際は、不貞行為の証明も必要ですので、証拠をしっかりと集めておいてください。
ただ、浮気相手が「単なる同居人だと聞いていた。内縁関係にあるとは知らなかった。」などと言ってくることもあるでしょう。その場合、故意・過失はなかったと判断され、慰謝料請求が認められないケースもあります。そうした主張をされたときは、内縁関係にあると知っていた、または知り得る状況にあったということを証明していかなければなりません。

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内縁関係を証明できるか不安なときは弁護士にご相談ください

内縁関係を証明するための様々な書類や事実関係を紹介してきましたが、どれか一つがあればいいというものではありません。法律婚のように、戸籍謄本を見れば関係性は一目瞭然とはならないので、いくつかを組み合わせて証明する必要があります。

内縁関係を証明できるかどうかご不安なときは、弁護士に相談することをおすすめします。あなたのご状況を丁寧に伺い、どのように証明していけばいいのか、適切に判断してアドバイスいたします。また、相手と揉めてしまって裁判に発展しても、弁護士があなたの代理人となって、内縁関係が成立していたことを主張・立証していきます。

うまく証明ができずに法的な保護を受けられなかった…といった事態にならないよう、内縁関係の証明についてご不安や疑問を感じた際は、お気軽に弁護士までご相談ください。

不貞(≒いわゆる不倫)の慰謝料を請求された場合、どのように対応すべきなのか、突然のことで迷う場合もあるかと思います。身に覚えがなければ争う方法を検討しなければなりませんし、仮に一定程度は事実であったとしても、相手の主張どおりに支払うべきかというのは一考の余地がありうるところです。

不倫慰謝料を請求されたら確認すること

慰謝料を請求されたとして、その当否や争い方等を検討するにあたっては、“誰からの、どのような理由に基づく、どんな内容の請求なのか”を把握しなければなりません。「弁護士から内容証明郵便が届いた」という場合は書面の記載内容の検討から始めることになりますが、“浮気相手の配偶者を自称する人物から突然のTEL”という場合、自身での対応がマイナスに働く場合もありますので、注意が必要です。

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慰謝料の支払いが必要ないケース

不倫を理由に慰謝料を請求されたとして、法的にも支払う必要がないという場合があります。事実無根や時効の成立はその典型ですし、不法行為に基づく損害賠償請求について、法律上の要件を充たさないとして請求が否定される場合もあるからです。

不倫の事実がない

相手が主張する不倫は全くの事実無根で、そもそも身に覚えがないという場合、支払う必要もないというのが通常だと思います。ただし、実際に肉体関係はないとしても、ラブホテルに二人で泊まった証拠がある等、その蓋然性が極めて高いという証拠が抑えられているという場合は、こちらの側から肉体関係を否定するような客観証拠が出せない限り、不倫の事実を争うのは困難となります。

夫婦関係が破綻していた

不貞慰謝料請求は、平穏な夫婦関係等の法的利益を侵害したことを前提とするものです。すでに夫婦関係が完全に破綻していたという場合、不法行為の要件を充足しないということがあります。
ただし、「夫婦関係の破綻」が認定されるためのハードルは低くはありませんので、既婚者から「妻とは終わってる」等と誘われたとして、それを鵜呑みにするのは危険です。

慰謝料請求の時効を過ぎている

不貞慰謝料の請求は、法的には「不法行為に基づく損害賠償請求」というものです。これは、“損害及び加害者を知ったときから3年”又は“不法行為の時から20年”という時効があります。時効が成立している場合、相手からの請求に応じる必要はありません。

相手が既婚者だと知らなかった

不法行為の成立には、故意・過失という主観的な要件も問題とされます。相手が既婚者であることを知らずに性交渉等に及んだという場合、請求を免れる場合もあります。ただし、故意はなくとも過失はある、と言う場合はありますので、「知らなかった」というだけではなく、「知らなかったことに過失もない」ということが必要です。

不倫慰謝料を請求された際にやってはいけないこと

請求を無視する

“全くの事実無根で証拠もない”との確信がなければ、自己判断で請求を無視することはお勧めできません。特に相手が代理人弁護士を通じてきている場合は、何の対応もしないという先に待っているのは、訴訟提起と言う場合が通常ですし、これをリスクと感じるのであれば、自身も早めに対策を講じておくことが必要でしょう。

開き直る・逆切れする

相手が決定的な証拠を確保している場合、請求そのものを否定するということは困難です。一定の減額や分割払いの交渉を行う必要があるという場合に、一時的な感情に身を任せて相手を攻撃するというのは、感情的な対立を激化させるだけのマイナスにしかならない行為だと思います。

不倫慰謝料が高くなるのはどんな時?

自分から誘った場合

どちらから誘った、という点は慰謝料の金額自体にはそこまで影響するところではありません。金額に影響するのはよほど態様が悪質と言う場合だと思います。

反省していない場合

慰謝料は相手の精神的苦痛等に対する損害賠償ですので、全く反省していないというのはマイナスの評価を受ける可能性があります。とくに、相手から不貞の事実を指摘されても関係を続けるというような場合、金額面に影響する可能性は低くありません。

それまで夫婦円満だった場合

すでに破綻寸前の夫婦よりも、不貞の発覚まで良好だった夫婦の関係を破壊するほうが、侵害された利益は大きいという考えはありうるところですが、これは比較対象の問題ですので、この点を主張すれば金額が大きく上がるというものではありません。

妊娠・出産した場合

不貞行為の結果、妊娠・出産したという事情は、認知等によって親族関係が形成されることで、養育費や遺産相続等、実質面でも影響が生じるところですので、不貞の事実に対する客観的な証拠の一つともなりうる他、慰謝料の増額事由としても影響しうるところです。

不倫が原因で離婚した場合

不貞行為に対する慰謝料の請求において、結果として離婚を余儀なくされたかどうかは、金額に大きく影響する点です。夫婦関係の平穏という利益が完全に破壊されたか否かという点は、損害の大きさへの評価に直結しますし、配偶者と不貞相手の求償問題という観点からも金額に強く影響します。

請求された金額が払えない場合の対処法

不倫に身に覚えがあり、証拠も押さえられているという場合、一定の支払は免れられないでしょう。もっとも、相手方の主張する金額が高すぎるという場合や、金額は穏当でも現実問題として一括で払う経済力がないという場合はありうるところです。

減額交渉する

金額が高すぎると言う場合、減額を求めて交渉するしかありません。相手方が請求している金額が裁判実務の相場と比較してもはるかに高額で、相応の金額での合意ができないという場合は、裁判所で白黒つけてもらうほうが良い、という場合もあるかもしれませんが、自己判断はお勧めしません。

分割払いの交渉をする

一括で払うお金がなければ、支払方法についても交渉するしかありません。相手方から見ると、長期分割は管理の手間や回収リスクを懸念するというのが通常でしょうから、自身が確実に支払可能な上限やその調整、相手の懸念に配慮した条件や合意書の文言の提案等が求められるところです。

不倫慰謝料を請求されたら弁護士にご相談ください

不倫を理由に慰謝料の請求を受けたという場合、何かしら身に覚えがあるという場合も、そうでない場合も、自己の判断で行動する前に弁護士に相談することをお勧めします。

負い目がある状況で現状認識や相手方との対応を冷静に行うというのは、容易なことではありませんし、本来なら減額交渉等で穏便に収束できたはずの事案が訴訟に移行する、余計な言質や証拠を与えてしまう危険もあるからです。自身の置かれている状況を判断してもらい、交渉等も一任してしまうことをお勧めします。

交通事故の被害に遭ってしまい、その治療のために仕事を欠勤したり、早退したり、有給休暇を取得したりした場合、本来得られるはずだった収入について、「休業損害」として加害者に請求することができる可能性があります。

この記事では、交通事故被害者が請求できる「休業損害」について、職業ごとの計算方法の違いや、具体的な請求方法、もらえる期間などに触れながら詳しく解説します。

休業損害とは

休業損害とは、交通事故により負傷し、その治療(入院又は通院)のために仕事を欠勤したり、早退したり、有給休暇を取得したりした場合に、本来得られるはずだった収入に相当する額の損害のことをいいます。

休業損害は、会社から給与を得ている会社員(給与所得者)だけでなく、自営業者、主婦(主夫)、アルバイトやパートタイム勤務の方についても認められる可能性があります。
以下の項目で、詳しく解説します。

休業補償との違い

休業損害と休業補償は混同されがちですが、以下のとおりの違いがあります。

休業損害は、加害者本人又は加害者側の任意保険会社に請求するか、自賠責保険に請求します。請求できる額は、「1日分の基礎収入額×休業した日数」で計算します。

一方、休業補償は、労災保険から支給される「休業補償給付」を指すことが多く、労働基準監督署に請求するものです。労災保険ですので、通勤中又は勤務時間中に遭った交通事故に限られますし、休業損害よりも低く計算されるのが通常です。

休業損害と休業補償について、「二重取り」はできませんが、労災保険から受領した休業補償が全損害に満たない場合、残額を加害者本人又は加害者側の任意保険会社に対して休業損害として請求できる可能性があります。

休業損害の請求条件

休業損害を請求できるのは、会社員として勤めている方が交通事故の治療のために欠勤したり、遅刻・早退したり、有給休暇を取得したりした場合が典型的なケースですが、自営業者や専業主婦(主夫)、兼業主婦(主夫)の方なども、事情によっては請求できる可能性があります。

ただし、会社役員や公務員の場合は前提となる事情が異なりますので、注意が必要です。
以下の記事では、職業ごとに詳しく解説します。

まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
交通事故被害者専用ダイヤル 24時間予約受付・年中無休・通話無料

休業損害の計算方法と算定に必要な要素

稼働日数とは

稼働日数とは、実際に労働に従事していた日数のことをいい、休業損害の基礎となる収入額を算出する際に用います。
1日あたりの基礎収入額がいくらなのかを計算するとき、事故前3ヶ月間の収入額から算出するというのが一般的です。そして、自賠責基準では、3ヶ月の日数=90日として割るため、1日あたりの基礎収入額は少なめに算出されます。

一方、弁護士基準では、事故前3ヶ月の収入を稼働日数で割るため、1日あたりの基礎収入額は実態に即した金額で算出されます。
ただし、示談交渉の際、加害者側任意保険会社からは自賠責基準と同様に90日とすることを主張されることが多く、争いになりやすいといえます。
なお、通院などのために有給休暇を使用した場合は、その日も稼働日数に含めることができます。

基礎収入とは

基礎収入額の算出方法は、自賠責基準、任意保険基準、弁護士基準で変わります。
弁護士基準では、前述のとおり、年収や交通事故前3ヶ月間の収入を、稼働日数で割って算出します。基礎収入額の上限はありません。

一方、自賠責基準では、1日あたりの基礎収入額は6100円とするのが原則です。ただし、事故前3ヶ月間の収入を90(日)で割った基礎収入額が6100円を超える場合、上限1万9000円を限度として、6100円を超える基礎収入額とすることができます。
なお、任意保険基準では、自賠責基準と同じ額で算出することがほとんどです。

職業によって休業損害の算定に違いが出る

主婦の場合

主婦の方の休業損害を弁護士基準で算出する場合、厚生労働省の賃金センサスという統計に現れた平均賃金額を用います。
具体的には、事故の前年における女性の全年齢平均賃金額を年収とみなし、1年の日数である365(うるう年の場合は366)で割ることによって、1日の基礎収入額を算出します。

このように、主婦の家事労働を金銭的に評価するため、統計を用いるのです。

自営業の場合

自営業の方の場合は、基礎収入額を算出する際、確定申告をもとにします。具体的には、事故前年の確定申告書に記載されている所得を365(うるう年の場合は366)で割り、1日あたりの基礎収入額を算出します。
この方法の前提としては、確定申告書の控えを保管していることが必要不可欠ですので、御注意ください。

なお、確定申告をしていなかった場合、預金通帳、現金出納帳、請求書、領収書等の資料から売上や必要経費を計算し、所得を証明するという方法が一応想定されますが、加害者側任意保険会社から争われやすく、訴訟外の示談による解決が難しい場合があります。

アルバイトの場合

アルバイトの方も、会社員(正社員)と同様に、勤務先に休業損害証明書を記載してもらうことによって、休業損害を証明します。

ただし、出勤日数が月ごとにバラバラだったり、アルバイトを始めてから日が浅かったりした場合には、1日あたりの基礎収入額を計算することが難しかったり、そもそも出勤日が特定されていないので交通事故との因果関係が不明確だったりする場合があります。このような場合、加害者側任意保険会社から争われやすく、訴訟外の示談による解決が難しい可能性があります。

無職の場合

無職の方の場合、そもそも交通事故による「休業」が発生していませんので、休業損害を請求することができません。
例外的な事例として、就職活動中又は転職活動中で「就労の意思」「就労の能力」「就労の蓋然性」が客観的に証明できる場合には、休業損害を請求できる可能性がありますが、加害者側任意保険会社から争われやすく、訴訟外の示談による解決は難しいといえます。

公務員の場合

公務員は、民間企業と比べて福利厚生が充実しており、通院のために有給休暇を取得する必要がなかったり、減収が生じなかったりすることが多いので、休業損害の請求が認められづらい傾向にあります。
ですから、公務員の休業損害を請求しようとする場合、通院のために有給休暇を取得せざるを得なかったことや、給与が満額支給ではなかったこと(減額されたこと)などの事情を客観的に証明することが必要不可欠です。

会社役員の場合

会社役員の方の場合、その役員報酬の中には会社からの利益配当分が含まれているとみなされることがあります。交通事故後にこれが減額したとしても、そもそも交通事故による損害には当たらないため、休業損害として請求することはできません。

しかし、会社役員の方でも、一般の従業員と同じように労働に従事しており、収入の中に労働の対価分が含まれていることが多いので、その分を休業損害として請求できる可能性があります。

会社役員の場合、このような証明に注意することが必要です。

会社員の各種手当は含めて算定可能か

会社員の方で、交通事故による怪我のために休んだことが原因で賞与(ボーナス)が減額された場合、その分も休業損害として請求することが可能です。
しかし、休業損害を請求する際に提出する「休業損害証明書」には賞与について記入する欄が設けられていないことが一般的であるため、勤務先に別途の証明書等を作成してもらい、賞与の減額分を証明することが必要です。

また、基礎収入を算出する際には事故前3ヶ月の実収入が参考にされますが、この「実収入」には残業代も含まれますので、1日あたりの収入額は残業代も含めた金額となります。
ただし、残業代の取扱いについては、加害者側任意保険会社から争われやすく、訴訟外の示談による解決が難しい可能性があります。

休業損害証明書の書き方

会社員、パートタイマー、アルバイトなどの給与所得を得ていた方が休業損害を請求する際には、「休業損害証明書」を提出する必要があります。

この「休業損害証明書」は加害者側任意保険会社から送付されることが一般的であり、それを勤務先に提出して、作成してもらうことになります。大きな企業ならば総務部や人事部に担当者がいますが、小さな企業でそのような部署がない場合、経理担当者や代表取締役(社長)に作成してもらうことになるでしょう。

休業損害証明書には、休んだ期間、日付、その期間に発生するはずだった給与、事故前3ヶ月の給与、社会保険と労災保険の給付の有無、勤務先の住所や記入した担当者の署名を記入します。

もし勤務先が休業損害証明書を記入してくれない等の問題が起こった場合、弁護士に相談することをおすすめします。

受け取れるのはいつから?

休業損害証明書は、1か月ごとに作成されるのが一般的です。そして、休業損害の発生について争いがない場合、加害者側任意保険会社に休業損害証明書を提出してから2~3週間程度で受け取ることができます。ただし、源泉徴収票が添付されていなかったり、不備があったりすると時間を要してしまいます。

また、詳細は後述しますが、怪我の程度に比べて長期間休業をする場合、休業の必要性がないとされ、保険会社と争いになることがあります。その場合には、示談が成立してから支払われることが多いので、事故日から数か月以上後になります。

また、主婦(主夫)の方の休業損害も、実務上、示談成立後に支払われることがほとんどです。

休業損害の請求時効

休業損害を含む交通事故による損害賠償の請求権は、法律的にいうと民法上の不法行為に対するものであり、消滅時効に注意しなければなりません。
令和2年4月1日に施行された改正民法により、この時効は3年から5年に延長されました(※人の生命または身体の侵害による損害賠償請求権の場合)。
そして、休業損害ついては、原則として「交通事故の日から5年」ですので、特に注意してください。

先払いはしてもらえる?

休業損害は損害賠償金の一部であり、示談成立後に慰謝料などと一緒に支払を受けることが原則です。
ただし、収入が途絶えてしまえば生活が苦しくなってしまうこともあるため、加害者側の任意保険会社から休業損害の先払いしてもらうことも、実務上は散見されます。

また、自賠責保険にも「仮渡金制度」という、示談成立前に損害の一部を先払いしてもらえる制度があります。こちらも各種証明書を、自賠責保険に対して送付することで請求できます。

休業損害はいつまで貰える?打ち切られることはある?

休業損害は、休業の「必要性」と期間の「相当性」が認められた休業期間に対してのみ支払われます。
具体的には、医師に就労不能証明書を作成してもらう場合もありますが、毎月作成される診断書や、加害者側任意保険会社からの医療照会に対する回答書によって判断されることが多いです。

ただし、任意保険会社は、一般的な治療期間(例えば、むちうちならば3ヶ月といわれています)を目安として、それより更に短い期間で休業損害の支払を打ち切ろうとすることが大半です。
この打ち切りを法的に制止することはできませんので、治療終了後の示談交渉において休業損害の増額を求めて交渉し、その交渉がまとまらない場合には訴訟などの法的措置を検討することとなります。

交通事故がきっかけで退職することになった場合の休業損害

休業損害は、交通事故による負傷で仕事ができなかった分の損害を補償するものです。負傷により退職してしまうと、「休業」ではないことになりますので、休業損害を請求できないのが原則です。

ただし、退職の原因は交通事故に遭ったことであるという因果関係を証明することができれば、退職後の休業損害を請求できる可能性がありますが、加害者側任意保険会社から争われやすく、訴訟外の示談による解決は難しいといえます。

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休業損害について不安なことがあれば弁護士にご相談ください

交通事故の被害に遭ってしまい、その治療のために仕事を欠勤したり、早退したり、有給休暇を取得したりした場合、本来得られるはずの収入が得られなくなったり、本来は不必要なはずの有給休暇の取得を余儀なくされたりしてしまいます。

このような場合、被害者を救済するために「休業損害」の請求を検討すべきであるといえますが、その請求の要件、具体的な方法、請求が可能な期間については、様々な場合がありますし、加害者側の任意保険会社との交渉も必要となります。

休業損害について不安なことがあれば、弁護士にご相談ください。

交通事故による受傷は、打撲・捻挫や骨折などが典型例です。また、交通事故による後遺障害としては、関節の機能障害や、痛み・しびれなどの神経症状の残存がしばしば挙げられます。

これら以外に、顔や手足などに目立つ傷跡が残った場合には、「外貌醜状」として後遺障害が認定される場合があります。
この記事では、「外貌醜状」の後遺障害について詳しく解説します。

外貌醜状とは

外貌醜状とは、人体のうち頭・顔・首などの日常的に露出している部位(外貌)に、目立つ程度以上の傷などが残ってしまった状態(醜状)をいいます。
具体例として、様々な種類・形状の傷や、皮膚の変色などが挙げられます。

また、肘関節より先や膝関節より先などの「露出面」についても、外貌醜状として後遺障害が認定される場合があります。

後遺障害等級認定を受けられる?

外貌醜状について後遺障害等級の認定を受けられた場合、後遺障害慰謝料と逸失利益が認められる可能性があります。

特に外貌醜状の部位・態様によっては、精神的苦痛が大きい場合がありますので、後遺障害慰謝料として適正な損害賠償を受けるべきだといえます。
ただし、後の記事で解説するとおり、逸失利益については争われやすいといえます。

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外貌醜状の後遺障害等級が認められる条件

具体的には、下表のとおりです。

外貌醜状の後遺障害等級が認定される要件

等級 障害の部位 傷跡の詳細
7級12号 頭(頭部) 頭部に残った手のひら大以上の瘢痕または頭蓋骨の手のひら大以上の欠損
顔(顔面部) 顔面部に残った鶏卵大面以上の瘢痕または10円硬貨大以上の組織陥没
首(頚部) 頚部に残った手のひら大以上の瘢痕
9級16号 顔(顔面部) 顔面部に残った長さ5cm以上の線状痕
12級14号 頭(頭部) 頭部に残った鶏卵大以上の瘢痕または頭蓋骨の鶏卵大以上の欠損
顔(顔面部) 顔面部に残った10円硬貨以上の瘢痕または長さ3cm以上の線状痕
首(頚部) 頚部に残った鶏卵大以上の瘢痕
14級4号 腕(上肢) 上肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの
14級5号 足(下肢) 下肢の露出面に手のひらの大きさの醜いあとを残すもの

隠れる部分は醜状として認められない

外貌醜状として後遺障害等級が認定されるためには、「日常的に目立つもの」でなければなりません。例えば、傷跡が眉毛や髪の毛などで隠れている位置にある場合、そもそも後遺障害等級が認定されない可能性があります。

また、後遺障害等級が認定された場合であっても、外貌醜状の具体的態様、被害者の職業や年齢等を考慮すると仕事への支障が認められない場合には、逸失利益が否定される可能性があります。

手のひら大は被害者の手が判断基準

手のひら大とは、被害者の手を基準とするものです。そして、ここにいう手のひらとは、手全体のうち指を除いた部分のことです。

なお、傷跡と手のひらの面積を比較することが必要であるという点には、注意してください。例えば、細長い傷跡があり、その一辺の長さが手のひらより長い場合であっても、面積としては手のひらを下回っていると、後遺障害等級の要件は満たさないという結論になります。

鶏卵大の大きさはどれくらい?

鶏卵大とは「にわとりの卵くらいの大きさ」であり、面積の目安は約15.7㎠(5cm×4㎝程度の卵を想定)とされることが多いようです。
前の項目で述べたとおり、傷跡の形ではなく面積によって判断されますので、注意が必要です。

線状痕とは

線状痕とは、線状の傷跡のことです。例えば、ガラスや鋭利な部品で皮膚を切った場合が典型例です。

2つ以上の線状痕が隣接して残った場合、それらを合計した長さによって後遺障害等級を判断することができる場合があります。例えば、顔面に長さ2㎝の線状痕が2か所あり、それらが隣接している場合、1個の線状痕と同視して長さ4㎝と評価することができれば、12級の後遺障害が認定される可能性があります。

欠損とは

欠損とは、身体の一部が物理的に欠けている状態をいいます。つまり、事故によって身体の一部が欠けてしまえば、欠損があるといえます。
例えば、事故によって頭蓋骨に一定以上の大きさの欠損が生じてしまい、骨形成手術等の治療によってもその欠損が治らないままで症状固定に至った場合、その大きさに応じた後遺障害等級が認定される可能性があります。

組織陥没とは

組織陥没とは、骨の欠損や身体の手術によって、身体組織がくぼんだ状態をいいます。これによって、見た目への影響が現れますので、外貌醜状に当たります。
そして、鼻・耳・顎などの骨が欠損し、顔面部に一定の大きさの組織陥没が生じた場合、後遺障害等級が認定される可能性があります。

瘢痕とは

瘢痕とは、いわゆる「傷跡」のことで、治療期間が終了した(=症状固定した)後に見られる場合があります。例えば、擦り傷・切り傷・火傷といった怪我や手術によって、肌の赤みや腫れなどを生じる可能性があります。
ただし、受傷した部位や傷の深さ、大きさや範囲、その後の治療経過によっては、傷跡の状況が徐々に変化することも散見されますので、瘢痕について後遺障害等級が認定されるか否かは、慎重に見極める必要があります。

等級認定には後遺障害診断書が必須です

交通事故による怪我について後遺障害等級の認定申請をする場合、まず医師に後遺障害診断書を作成してもらうことが第一歩です。
特に外貌醜状に関する後遺障害診断書の場合、傷跡の部位、大きさ、交通事故との因果関係などを記載してもらう必要があります。さらに、外貌醜状については、自賠責提出用に「交通事故受傷後の傷痕等に関する所見」も併せて提出する必要があります。


その後、自賠責損害調査事務所における審査は書類審査を原則としますが、外貌醜状については、担当者との面接が行われる場合があります。この面接は、先に提出した後遺障害診断書などを基にして行われますので、やはり後遺障害診断書が正確に作成されていることが重要です。

自賠責損害調査事務所の審査面接について

前の項目で述べたとおり、外貌醜状の後遺障害等級認定の審査においては、自賠責損害調査事務所による面接が行われることがあります。面接では、後遺障害診断書その他の医療記録に記載された所見、各種検査結果や画像などを基にして、担当者が傷跡の大きさを実際に測定したり、目立つ傷跡か否かを目視で確認したりします。
この面接を経て、後遺障害等級に該当するか否かの判断が行われます。

この面接の際、不正確な測定が行われてしまったり、担当者の予断や主観に基づく確認作業が行われてしまったりすると、不利な認定結果になるおそれがあります。弁護士に依頼して事前に打ち合わせを行ったり、面接当日に同席してもらったりすると良いでしょう。

外貌醜状は逸失利益が問題となることが多い

後遺障害等級が認定されると、後遺症慰謝料のほかに、逸失利益も発生することが原則です。
ただし、外貌醜状については、後遺障害等級が認定された場合であっても、仕事への悪影響や減収のおそれを想定し難いとして、逸失利益を否定されたり減額されたりする可能性があります。

裁判例では、傷跡の程度・職業・年齢・仕事での配置転換や減収の有無などを考慮し、逸失利益を認めるべきかが判断されますが、接客業や営業担当者などは、比較的、逸失利益が認められやすい傾向にあります。
なお、逸失利益が否定されても、外貌醜状による後遺症慰謝料が増額される可能性があります。

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傷跡が残ってしまったら弁護士にご相談ください

交通事故は肉体的・精神的苦痛が大きいものですが、治療終了後も身体に傷跡が残ってしまった場合、精神的苦痛が更に大きいといえます。

これを補うものとして、後遺障害等級認定という制度があるものの、特に外貌醜状については、他の後遺障害とは異なる問題点がありますので、注意が必要です。
弁護士は、医師に後遺障害診断書の作成を求める段階から始まり、後遺障害等級認定申請、自賠責損害調査事務所の審査面接への同行、後遺障害等級が認定された場合の後遺症慰謝料及び逸失利益の請求に至るまでの全ての段階において、被害者が適正な損害賠償を受けられるようにするためのサポートをすることができます。
是非、早い段階から弁護士にご相談ください。

遺産分割協議は、一度成立すると、遺産の分割内容が確定することになりますので、一部の相続人がやっぱりやり直したい等と希望しても、基本的には覆すことはできないものです。本項は、その例外としてのやり直しが可能な場合や、一度決まった内容を無効にするために要求される条件や方法などについて記載します。

遺産分割協議がやり直せるケース

遺産分割協議のやり直しが認められる場合は、大きく分けて二つ、1つは相続人全員の合意による場合、もう一つが詐欺や強迫などに基づく場合です。

全員がやり直しに合意した

すでに成立している遺産分割が、審判や調停などではなく、遺産分割協議による場合であれば、相続人全員が合意によってやり直しが可能です。従前の遺産分割を解除して、再度分割内容を取り決めるということになります。

遺産分割協議後に騙されたと気づいた・勘違いしていた

重大な資産についての虚偽説明に騙されて署名した場合(≒詐欺)や、他の相続人に脅されて無理やり署名させられた場合(≒強迫)等、遺産分割協議の意思表示に取消事由が存在する場合、取消権の行使によって、当該遺産分割協議を無効とすることが可能な場合があります。

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遺産分割協議が無効になるケース(やり直しが必須になるケース)

遺産分割協議は、相続人全員で行う必要があります。その一部が欠けている等の場合、そもそも完全には成立していません。したがって、ここでいうやり直しは、成立したものを覆すというよりも、不完全なものを適正にするためのやり直しです。

参加していない相続人がいる、新たに相続人が現れた

遺産分割協議は相続人全員での合意がなければ有効に成立しません。生前に交流がなくても、法定相続人の地位にある限り、その人物も参加していなければ、遺産分割協議はまだ成立していないということになります。したがって、実は他にも相続人が存在していたという場合、その者を遺産分割協議に加えてやり直しが必要ということになります。

認知症等、意思能力のない人が参加していた

重度の認知症等、意思能力に問題のある者が相続人に含まれている場合、成年後見人等の選任等を検討しなければなりません。意思能力に重大な問題がある者を、形だけ遺産分割協議に参加させても、有効な意思表示と取り扱われないため、成年後見人等を関与させた上で有効な遺産分割協議をやり直す必要が生じてしまうということです。

遺産分割協議後に新たに遺産が見つかった場合は?

遺産分割協議後に新たな遺産が発見されたという場合、従前の遺産分割はそのまま有効として、新たに発見された遺産についてのみ、遺産分割協議を行うことになります。

やり直したいけど相続人の中に亡くなった人がいる場合

遺産分割協議をやり直す際、すでに一部の相続人がなくなっていたという場合は、その者に代わって、同人の相続人全員を参加させることになります。

遺産分割協議のやり直しはいつまで?時効はある?

相続人全員の合意でのやり直しには時効はありません。ただし、相続開始後10年が経過すると、寄与分と特別受益の主張はできなくなる点は注意が必要です。詐欺や強迫等を理由に取消権を行使するという場合は、取消権の時効(追認可能な日から5年)があります。

遺産分割協議をやり直す場合の注意点

合意によるやり直しには、特別受益や寄与分に対する時的制限の他、税金の問題も考慮しなければなりません。

遺産分割のやり直しには贈与税がかかる

遺産分割協議を相続人全員の合意でやり直す場合、その結果として生じる金銭等の移動は、税務上は相続ではなく、相続人間の財産の移転と評価されます。その結果、財産を取得した側には贈与税、財産を譲り渡した側には譲渡所得税の課税の問題が生じうるということになります。

不動産がある場合は登録免許税が発生する

合意による場合も、取消権行使による場合も、遺産分割協議のやり直しによって不動産の登記名義を移転させる場合は登録免許税の納付が必要となります。不動産取得税は課税されません(最判昭和62年1月22日)。

やり直しができないケースはある?

遺産分割が調停や審判による場合、遺産分割協議のやり直しはできません。審判は確定してしまえば再審という極めて高いハードルを超えない限り争うことはできませんし、調停の無効を主張するというのもあまり現実的ではないでしょう。

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遺産分割協議のやり直しについては弁護士にご相談ください

遺産分割協議のやり直しと一口に言っても、その内容は上記のとおり多岐にわたり、その要件なども異なっているものです。税金の問題も考慮した上での判断が求められる場合もありますので、まずは専門家に相談してみることをお勧めいたします。

福岡法律事務所 所長 弁護士 今西 眞
監修:弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 所長
保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:47535)
福岡県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。