過失運転致死傷罪とは?交通事故の刑事処分と対処法

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過失運転致死傷罪とは

過失運転致死傷罪とは、もともと刑法に規定されていた自動車運転過失致死傷罪を抜き出し、自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(以下、「自動車運転死傷処罰法」といいます。)5条に移設されたもので、「自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させる行為」がこれに該当します。

自動車運転死傷処罰法

自動車運転死傷処罰法(自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律)は、交通事故など自動車により人を死傷させる行為等に対する罰則を定めた特別法で、かつて、危険運転致死傷罪及び自動車運転過失致死傷罪など自動車によって人を死傷させる行為も刑法に規定されていましたが、飲酒運転などに対する社会の関心が高まりに伴い、刑法ではなく、特別法として規制すべく制定された法律です(平成26年5月20日施行)。

過失運転致死傷罪の罰則

過失運転致死傷罪(自動車運転死傷処罰法5条)は、自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた場合、7年以下の懲役若しくは禁固又は100万円以下の罰金に処せられます。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができるとされています。

無免許運転による加重

自動車運転死傷処罰法で定める危険運転致死傷罪などの罪を犯した者が、その罪を犯した時に無免許であることを認識して運転していた場合は、以下のとおり、罰則が加重されています(自動車運転死傷処罰法6条)。

自動車運転死傷処罰法2条の危険運転致死傷罪(3号の場合を除く)
人を負傷させた場合15年以下の懲役➡6月以上の有期懲役
人を死亡させた場合1年以上の有期懲役➡加重なし

自動車運転死傷処罰法3条の危険運転致死傷罪
人を負傷させた場合12年以下の懲役➡15年以下の懲役
人を死傷させた場合15年以下の懲役➡6月以上の有期懲役

自動車運転死傷処罰法4条の過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪
12年以下の懲役➡15年以下の懲役

自動車運転死傷処罰法5条の過失運転致死傷罪
7年以下の懲役若しくは禁固又は100万円以下の罰金➡10年以下の懲役

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飲酒運転との併合罪

飲酒運転中に人を死傷させた場合、道交法違反(酒気帯び・酒酔い運転)と過失運転致死傷罪との併合罪となり、2個以上の罪について有期の懲役又は禁固に処するときは、その最も重い罪について定めた刑の長期にその2分の1を加えたものが長期とされます。ただし、長期の合計を超えることはできません(刑法47条)。
また、併合罪のうち2個以上の罪について罰金に処する場合には、それぞれの罪について定めた罰金の多額の合計以下で処断することとされています(刑法48条)。

例えば・・・
酒気帯び運転と過失運転致死傷罪➡10年6月以下の懲役又は150万円以下の罰金
酒酔い運転と過失運転致死傷罪➡10年6月以下の懲役又は200万円以下の罰金

危険運転致死傷罪との違い

アルコールや薬物の影響により正常な運転が困難な状態で自動車を走行させ、よって人を死傷させた場合などを処罰する危険運転致死傷罪(自動車運転死傷処罰法2条、同3条)は、故意で行わなければなりませんが、過失運転致死傷罪は、自動車運転上求められる注意義務を怠ったことのよって人を死傷させた場合に成立し、故意によることを要しません。
例えば、前方注視義務、歩行者等の有無に留意しその安全を確認しながら進行する義務、一時停止義務、徐行義務などを怠ったことによって、人を死傷させた場合に成立します。過失のある交通事故であれば広く該当します。

過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪

アルコール又は薬物の影響によりその走行中に正常な運転に支障が生じるおそれがある状態で自動車を運転した者が、運転上の必要な注意を怠り、よって人を死傷させた場合において、その運転の時にアルコール又は薬物の影響の有無又は程度が発覚することを免れる目的で、更にアルコール又は薬物を摂取すること、その場を離れて身体に保有するアルコール又は薬物の濃度を減少させることその他その影響の有無又は程度が発覚することを免れるべき行為をしたときは、過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪として、12年以下の懲役に処せられます。

逮捕後の流れ

過失運転致死傷罪の多くは、一般的なよくある交通事故ですから、逮捕など身柄拘束されることは少ないでしょう。しかし、ひき逃げなどの場合には、逃亡のおそれや罪証隠滅の可能性が高く、逮捕など身柄拘束される可能性が高くなります。また、信号無視により重大事故を起こし場合に不合理な否認をする場合にも同様です。
交通事故は、誰しも起こしてしまう可能性があることから、逃げることなく速やかに119番通報、救護措置、110番通報などの事故処理を適切に行い、不合理に言い逃れをすることなく正直に話をすることが大切です。

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逮捕後の対処法

無罪を主張する場合

過失運転致死傷罪は、自動車の運転上必要とされる注意義務を怠ったことによる犯罪ですから、過失がなければ構成要件に該当しません。
車両の損傷部位や損傷状況、信号周期、防犯カメラ、ドライブレコーダーなどの客観的な証拠と供述をもとに過失の有無を推認することになります。客観的な証拠がなく、勘違いによる目撃証言だけがあるという場合もあるでしょう。捜査機関は、真実を究明してくれるとは限らず、言い分を聞いてくれないことも少なくありません。曖昧な供述をすることなく、また、捜査機関の誘導に惑わされることなく、自身の記憶に基づいて話をすることが重要です。

事実関係に争いがない場合

事実関係に争いがない場合、被会社への謝罪と被害弁償を行うこと(行えること)が大切です。そのため、任意の自動車保険に加入しておくことは極めて大切です。ここで注意が必要なのは、任意の自動車保険が示談代行してくれるからといって、交渉を保険会社の担当者任せにしないことです。軽微事故であれば別として、死亡事故など重大事故であれば、損害を賠償するだけでなく真摯な謝罪、反省の態度が量刑に影響します。場合によっては、運転免許の返納なども検討することがあります。

交通事故で死傷させてしまった場合は、弁護士に相談を

交通事故で人を死傷させた場合には、通常、刑事事件としては不起訴とされることが多いですが、死亡事故などの重大事故を起こした場合には、正式裁判となることが多く、自動車保険による損害賠償以外の謝罪などを行うことが必要不可欠です。刑事事件の弁護人を依頼することが必要な場合もありますので、重大事故を起こした場合には、今後予想される事態に対する対応など、弁護士へ相談されることをおすすめします。

強制性交等罪という罪名を聞いて、ピンとこない人も少なくないのではないでしょうか。簡単にいうと、男性から女性に対する強制的な性交渉だけでなく、同性同士、女性から男性に対する行為、性交類似行為などを広く処罰するために強姦罪に変わって新たに定められた犯罪です。ここでは、強制性交等罪について解説します。

強制性交等罪とは

強制性交等罪とは、13歳以上の者に対して、暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交をすることをいい、5年以上の有期懲役に処せられます。13歳未満の者に対しては、暴行脅迫を用いなくとも、性交、肛門性交又は口腔性交を行えば成立します。

刑法改正による変更点

平成29年の改正までは、強姦罪が定められており、13歳上の女子に対する暴行脅迫を用いた姦淫行為や13歳未満の女子に対する姦淫行為を処罰(懲役3年以上の懲役)していましたが、性犯罪の重大性や社会の性観念の変化などを踏まえ、これを、強制性交等罪として、懲役5年に引き上げるととともに、性別を問わないこととし、肛門性交及び口腔性交も処罰対象とされました。また、親告罪であったものを非親告罪とされました。

強制性交等罪の構成要件

「性交等」の行為

性交、肛門性交又は口腔性交が処罰対象とされているところ、性交とは膣内に陰茎を入れる行為をいい、肛門内や口腔内に陰茎を入れる行為をそれぞれ肛門性交、口腔性交といいます。

暴行または脅迫を用いて性交等をする

強制性交等罪は、13歳以上の者に対しては、暴行又は脅迫を用いて行うことが構成要件とされています。
暴行とは、身体に向けられた不法な有形力の行使をいい、脅迫とは害悪の告知をいいます。暴行や脅迫は、性交等を行おうとする被害者に対して行われることが必要です。その程度は、反抗を著しく困難にする程度のもので足りるとされており、反抗を抑圧することまでは必要ではありません。反抗を著しく困難にする程度といっても、強く殴りつける、刃物を突き付けるなどすれば該当しますが、明らかな場合でなくとも、態様、時間的場所的状況、被害者の年齢や精神状態など様々な事情が考慮されて判断されているので、これをしたら該当すると明確にいえるわけではありません。
なお、13歳未満の者に対して性交等を行えば、暴行又は脅迫がなくとも成立します。

故意

強制性交等罪は、故意犯とされており、過失によるものは含まれていません。
強制性交等罪に該当する行為の認識認容が必要ですから、13歳未満の者に対する場合は、13歳未満であることの認識が必要です。
被害者が承諾していた(同意のうえだ)と誤信した場合が問題になることが多いですが、被害者が真意で同意していると誤信した場合には成立しません。もっとも、行為者が認識していた事実関係等に基づいて判断されており、行為者が単に思い込んでいただけでは不十分です。反抗を著しく困難にする暴行脅迫を行っている場合に、被害者が真意で同意しているというのは難しいといえます。

強制性交等罪の罰則

強制性交等罪の法定刑は、5年以上の有期懲役と重く処罰される犯罪です。

執行猶予の可否

前に禁固以上の刑に処せられていない者などが、3年以下の懲役若しくは禁固又は50万円以下の罰金とされる場合には、情状により執行を猶予される場合があります(刑法25条)。
強制性交等罪は、5年以上の有期懲役とされていることから、情状酌量減刑など刑が軽減されない限り執行猶予の対象となりません。

強制性交等罪の時効

公訴時効は10年です。

準強制性交等罪との違い

強制性交等罪と類似する犯罪として、準強制性交等罪というものがあります。これは、人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて性交、肛門性交、口腔性交を行った場合です。泥酔者に対するものや睡眠薬などを飲ませる等して行われた場合などです。

逮捕後の流れ

強制性交等罪は、密室で行われることも多く被害者の供述が重要な証拠となるため、直接的間接的に被害者への働きかけがされる可能性が小さくないですし、親告罪でもなくなり、刑の厳罰化が進んでいることも相まってか、逮捕などの身柄拘束される可能性が高い犯罪類型です。

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逮捕後の対応

全てとは言いませんが、逮捕当初から自白を取ろうと厳しい取り調べがされる可能性も高い犯罪類型だといえますので、全く心当たりがない、被害者の同意があったなど言い分があれば、黙秘も含めて毅然と対応しないと取り返しのつかないことになりかねません。
被疑事実に間違いがない場合もあるでしょう。この場合でも、被害者への働きかけがされる可能性があるなどとして、逮捕される場合も少なくありません。被疑事実を認め、捜査も終えたような状況であっても、被害者と示談が済んでいるかどうかが身柄解放の重要なファクターになることも多く、身柄解放に向けて早期に示談の可能性を探る必要があります。起訴され、量刑判断にあたっても、示談が成立しているのかなどは被告人にとって有利な情状となりますので、示談の可能性を探ることは重要です。

強制性交等罪に問われたら、弁護士へ相談を

被害者の連絡先を教えてくれることは基本的にないですが、仮に被害者が顔見知りだったとしても、罪証隠滅を疑われかねないので、被害者と直接連絡を取ることは避けるべきです。とはいうものの、示談の可能性を進める必要もありますので、こういった場合は、被害者の了解があることが前提ですが、弁護人を通じて被害者と連絡を取ります。身に覚えがない、事実関係が違うなどという場合には、毅然と取り調べ対応をしなければなりませんので、弁護人の助力は不可欠でしょう。
いずれにせよ、重い刑罰がかされている犯罪ですので、早期に弁護士へご相談されてください。

保護観察処分とは

保護観察処分とは、犯罪をした人又は非行のある少年が、保護観察所の指導監督を受けながら更生を図る処分のことをいいます。保護観察は社会の中で処遇を行うものであるため、社会内処遇と言われています。

保護観察の対象者

保護観察処分少年

保護観察処分少年とは、家庭裁判所の決定により保護観察の処分を受けた少年のことをいいます。更生保護法48条1号に定められていることから、「1号観察」とも言われています。

少年院仮退院者

地方更生保護委員会の決定により少年院からの仮退院を許された者に対する保護観察(法第48条第2号)処分を受けた者を言います。

仮釈放者

地方更生保護委員会の決定により仮釈放を許された者に対する保護観察(法第48条第3号)処分を受けた者を言います。

保護観察付執行猶予者

裁判所の判決により刑の執行を猶予され、保護観察に付された者に対する保護観察(法第48条第4号)処分を受けた者を言います。

保護観察の種類

一般保護観察

「交通」以外の罪(ぐ犯、施設送致申請を含む。)に係る事件により、保護観察に付されることを言います。

一般短期保護観察

交通事件以外の事件により保護処分に付された少年のうち、家庭裁判所から短期間の保護観察を行う旨の処遇勧告がなされたものを言います。

交通保護観察

一定の交通犯罪(刑法第208条の2及び車両の運転による同法第211条の罪並びに道路交通法、自動車の保管場所の確保等に関する法律、道路運送法、道路運送車両法及び自動車損害賠償保障法に定める罪)に係る事件により、保護観察に付されることを言います。

交通短期保護観察

交通事件により保護処分に付された少年のうち、家庭裁判所から短期間の保護観察を行う旨の処遇勧告がなされたものを言います。

保護観察の期間

成年に関する保護観察の期間は、裁判官が言い渡した期間となります。
少年に関する保護観察の期間は、原則として少年が20歳に達するときまでと規定されています(更生保護法66条)。ただし、保護観察に付することを決定したときから少年が20歳に達するまでの期間が2年に満たないときには、保護観察の期間は2年とされています(同条)。
少年の改善更生に資すると認められるときは、期間を定めた上で、保護観察を一時的に解除することができ(更生保護法70条)、また、保護観察を継続する必要がなくなったと認められるときには、保護観察は解除されることになります(同法69条)。

保護観察官と保護司

保護観察官

保護観察官は、犯罪をした人や非行のある少年に対して、通常の社会生活を送らせながら、その円滑な社会復帰のために指導・監督を行う「社会内処遇」の専門家です。保護観察官は国家公務員試験に合格し、一定の期間実務経験を積んだ国家公務員です。

保護司

保護司は、犯罪や非行をした人の立ち直りを支える手伝いをしてくれます。保護司は、保護観察官とは異なり、民間のボランティアです。

保護観察の遵守事項と良好措置・不良措置

保護観察処分に付される場合、守るべきルール(一般遵守事項・特別遵守事項)が定められます。ルールを守り、社会の一員として更生したと判断された場合には、「良好措置」を取られることがあります。他方、一般遵守事項や特別遵守事項を違反してしまった場合には、「不良措置」を取られることがあります。

一般遵守事項

保護観察中の者全員に共通して定められている遵守事項を一般遵守事項と言います(更生保護法第50条)。①再犯・再非行をしないよう健全な生活態度を保持すること、②保護観察官や保護司による指導監督を誠実にうけること、③住居を定め、その地を管轄する保護観察所の長に届け出をすること、④③に届け出た住居に居住すること、⑤転居又は7日以上の旅行をするときは、あらかじめ、保護観察所の長の許可を受けることが定められています。

特別遵守事項

特別遵守事項は、それぞれの者の犯罪傾向に応じて定められた遵守事項となります。特別遵守事項は、保護観察所長が、保護観察決定をした家庭裁判所の意見を聴いた上で定めます。

保護観察中の再犯

保護観察中に再犯を犯してしまった場合、不良措置や再処分等が行われることになります。不良措置は、仮釈放者に対しては仮釈放の取消しや保護観察付執行猶予者に対する刑の執行猶予の言渡しの取消し等があります。

保護観察中の生活について

面接

保護観察中、月に数回、保護司との面接があります。保護観察対象者の生活状況の話をしたり、遵守事項を守っているかどうかの確認、保護観察対象者の悩みごと相談やその他指導等が行われます。

学校生活

保護観察は、施設に収容せずに通常の社会生活を営ませながら指導等を行うものですので、保護観察となった生徒は、他の生徒と同様に学校へ通うこととなります。保護司との面接は通学に支障のない日時が設定されますので、学校生活に直接的な影響はありません。

仕事・結婚

保護観察中であっても、仕事を始めたり、結婚したりすることはできます。もっとも、保護観察中は、保護観察官や保護司に「生活状況を報告する義務」があるので、保護観察官や保護司に報告しなければなりません。

旅行

保護観察中であっても、旅行をすることはできます。 もっとも、7日以上の旅行をする場合には、あらかじめ保護観察所の長に許可を受けなければなりません(一般遵守事項・更生保護法50条)。海外旅行については、パスポートを申請する際に、「保護観察中か否か」というチェック項目があり、当該項目にチェックをした場合、パスポートが交付されない可能性があります。

少年事件や保護観察についてのご相談は、弁護士へご依頼ください

少年は心身ともに未熟ということもあり、とても難しい問題が多く存在しています。それに伴い、成人事件とも手続が大きく異なります。より専門的な知識や経験が必要になりますので、必ず弁護士にご相談ください。

このページでは背任罪の成立要件と背任行為発覚後の対応について解説します。

背任罪とは

背任罪は、他人の事務処理者が自己若しくは第三者の利益を図り、または本人に損害を加える目的で任務に反する行為をいい、本人に財産上の損害を与えることにより成立する犯罪です。典型的には銀行等の金融機関の役職者が回収の見込みがないのに十分な担保や保証を提供させることなく金銭を貸し付けたり(不良貸付)、法令・定款に反して虚偽の決算を行う(粉飾決算)場合等が挙げられます。

背任罪の刑罰

背任罪の法定刑は、5年以下の懲役または50万円以下の罰金です(刑法247条)。

背任罪の成立要件

他人のために事務を処理している

背任罪の主体は「他人のためにその事務を処理する者」です。ここでいう「事務」とは財産上の事務を指し(通説)、金銭や品物といった財産の管理などのほか、登記手続への協力義務なども含まれます。

任務違背行為

判例が採用していると考えられている説(背信説)では、誠実な事務処理者としてなすべきものと法的に期待されるところに反する行為のことであると解されています。

図利加害目的

背任罪が成立するには、「自己若しくは第三者の利益を図る目的(自己図利目的・第三者図利目的)」または「本人に損害を加える目的(本人加害目的)」が必要とされます。第三者とは自己と本人以外の者をいい、共犯者もこれに含まれます。

財産上の損害

任務違背行為によって、本人に財産上の損害が発生したことが必要です。財産上の損害とは、「経済的見地において本人の財産状態を評価し、被告人の行為によって本人の財産の価値が減少したとき又は増加すべかりし価値が増加しなかった」ことをいうとされています(最決昭和58・5・24)。

背任罪の時効

背任罪の時効は5年です。

未遂でも処罰される

背任罪は未遂でも処罰されます(刑法250条)

特別背任罪とは

特別背任罪は会社の役員・幹部など、特に重要な役割・任務を追っている者による背任行為を、特に重く処罰するもので、会社法(960条以下)や保険業法(322条以下)に定められています。

背任罪と横領罪の違い

諸説ありますが、財物についての領得行為が横領罪であり、その他の背信行為を背任罪として処罰する見解が有力と言われています。

横領罪の初犯は執行猶予がつく?背任罪とのちがい

逮捕前後の流れ

会社などの組織において背任行為があった場合、社内で事実調査が行われ、会社や従業員の通報により刑事事件として捜査が開始されることがあります。他の犯罪と同じように逮捕→勾留期間中に取り調べがされ、起訴・不起訴が決定されます。

逮捕された時の流れを図で分かりやすく解説します

背任行為をしてしまった場合の対応

警察が介入する前に損害を補填する等、示談することで、刑事事件化することを防ぐことができる場合があります。刑事事件化してしまった場合でも、被害者と示談をすることで、処罰を軽くしたり、不起訴を獲得する等の、より良い結果を得られる場合があります。

背任行為をしてしまったら、早期に弁護士へご相談ください

弁護士がより早期の段階で介入して、被害回復や被害者との示談交渉を行うことで、よりよい結果となる可能性が高まります。ぜひ早期に弁護士にご相談ください。

道路交通法違反の罰則内容や法定刑、逮捕される場合等について解説します。

道路交通法とは

道路交通法は、道路における危険の防止や、交通の安全や円滑を図ること、交通公害等を防止することを目的とする法律です(道路交通法1条参照)。

道路交通法違反における罰金と反則金の違い

交通反則通告制度とは、いわゆる青キップのことをいいます。
告知の際に、「納付書」が渡されますが、その納付書により反則金を納付した場合には、刑事事件として刑罰を科されることがなくなります。反則金を期限内に納めなかった場合、指定された交通反則通告センターに出頭して、通告書にて反則金納付の通告を受けます。それでも反則金を納めなかった場合には、交通違反について検察庁等に送致されることとなります。送致されて、罰金刑となった場合には、反則金と異なり、刑事罰が科されたことになります。

道路交通法違反の罰則例

飲酒・酒気帯び運転

飲酒して、酒気を帯びた状態等で自動車等を運転した場合に該当します(道路交通法65条1項)。
酒気を帯びとは、酒に酔った状態である必要はなく、また、運転への影響が外観から分かることも必要ではありません。顔色や呼気等から酒気を帯びていることが分かる状態にあれば、該当します。
酒酔い運転の法定刑は、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金(道路交通法117条の2)、酒気帯び運転の法定刑は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金です(道路交通法117条の2の2)。

無免許運転

公安委員会の運転免許を受けないで、自動車等を運転した場合に該当します(道路交通法64条1項)。
無免許運転の法定刑は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金です(道路交通法第117条の2の2)。

ひき逃げ

交通事故を起こした運転者等は、すぐに運転を停止して、負傷者を救護し、道路の危険を防止する措置をとらなければなりません(道路交通法第72条1項前段)。その義務に反した場合(救護義務違反)の法定刑は、5年以下の懲役または50万円以下の罰金です(道路交通法第117条1項)。負傷者の負傷が、運転者の運転が原因の場合には、10年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます(道路交通法第117条2項)。

当て逃げ

交通事故を起こした運転者等は、警察官に交通事故が発生した日時や場所、交通事故で講じた措置内容について報告しなければなりません(道路交通法第72条1項後段)。その義務に反した場合(事故報告義務違反)の法定刑は、3ケ月以下の懲役または5万円以下の罰金です(道路交通法119条1項10号)。

自転車運転でも道路交通法違反になる

道路交通法上、自転車は「軽車両」に位置付けられています。自転車の運転でも道路交通法違反になることがあるのです。
例えば、自転車も、信号に従わなければならず(道路交通法7条)、違反した場合の法定刑は、3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金です(119条第1項1号の2)。

道路交通法違反で逮捕されるケース

軽微な道路交通法違反の場合、一般的に、交通反則通告制度(青キップ)が適用され、反則金の支払を行うことで、逮捕まで至らないでしょうが、無免許で自動車等を運転していた被疑者が逮捕された事件等あり、道路交通法違反でも逮捕されることが往々にしてあります。

道路交通法違反をしてしまったら、弁護士へ相談を

道路交通法違反により、捜査機関から出頭を要請されている場合や、逮捕された場合には、今後の流れを含めて、どのような弁護活動が可能か、どのような対応を行うべきか、弁護士よりアドバイスを受けることで、ご依頼者様の安心につながると思います。
道路交通法違反に関して、ご不明点やご不安な点がある場合には、まずは、弁護士に相談されてみてはいかがでしょうか。

窃盗罪は、弁護人としてよく経験する犯罪です。令和元年の犯罪白書によれば、平成30年の窃盗罪による検挙件数が約19万件、窃盗罪を除く刑法犯の検挙件数が約11万件となっています。
身近な人が窃盗罪で検挙されることもあれば、窃盗罪の被害に遭うこともあります。本稿では、このような身近な犯罪である窃盗罪の被疑者・被告人となった場合について解説します。

窃盗罪とは

窃盗罪は、刑法235条で、『他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。』と定められています。ざっくり説明すると、他人の者を盗んだ場合に成立する犯罪です。
窃盗罪は、未遂でも処罰されます(刑法243条)。

窃盗罪の刑罰

窃盗罪の法定刑は、『十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金』です。これは、起訴(公判請求、略式命令の請求)された場合に科される刑罰です。不起訴になった場合、前歴は残りますが刑罰は科されません。
起訴されるかどうか、起訴されたとして罰金となるか、懲役となるか、執行猶予がつくかは、情状により異なります。同種前科が複数あったり、前科がない場合でも、犯情が重い(例えば、侵入盗を複数回繰り返す等)場合には、懲役(実刑)となる可能性が高くなります。逆に、示談が成立している等の場合には、不起訴となったり、執行猶予が付いたり、罰金で済んだりする可能性が高くなります。

親族間の場合の特例

窃盗罪の特徴として、親族相盗例の定め(刑法244条)があります。
まず、『配偶者、直系血族又は同居の親族』との間での窃盗罪及び同未遂罪の刑は免除されます(刑法144条1項)。また、これら以外の親族を被害者とする窃盗罪は、親告罪、つまり、告訴がなければ起訴できない犯罪となります(同2項)。
このように、親族相盗例の定めがあるため、事実上、『配偶者、直系血族又は同居の親族』との間の窃盗罪については、被害申告や告訴が門前払いされることが一般です。

窃盗罪の構成要件

窃盗罪の構成要件は、①他人の占有する財物を、②窃取すること、③①②についての故意です。これらの他、窃盗罪特有の主観的要件として、④不法領得の意思が必要とされます。

他人の占有する財物

窃盗罪の客体は、「財物」でなければなりません。「財物」とは、不動産を除く有体物をいいます。

不動産の占有侵奪は、別途、不動産侵奪罪で処罰されます(刑法235条の2)。
情報のように形のないものは、窃盗罪の客体にはなりません。ただし、情報が形を成したもの(紙、DVD、マイクロフィルム等)は、窃盗罪の客体となり得ますし、映像、音楽等の著作物に関する無断複製等は、著作権法で処罰されます。また、電気については、財物とみなされます(刑法245条)。

窃盗罪の客体は、「他人の占有する」ものである必要があります。「占有」とは、事実上の支配をいい、事実上の支配は、支配の意思(主観的要件)と支配の事実(客観的要件)により構成されます。例えば、遺失物であれば、支配の事実の要件が欠け、窃盗罪の対象とはなりません(ただし、占有離脱物横領罪により処罰され得ます。)。

「他人の占有する」ものであれば、自己所有のものであっても、窃盗罪が成立します。例えば、貸した物をなかなか返してもらえないときに、勝手に持ち出す行為は、法律上は、窃盗罪が成立してしまいます。

不法領得の意思

窃盗罪、占有離脱物横領罪のような領得罪には、故意の他、特別の主観的要素として、「不法領得の意思」が必要とされます。
不法領得の意思とは、権利者を排除し、他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従い利用し又は処分する意思をいいます。大学法学部の教科書的な設例や講義では、自転車を、元の場所に帰す意思で一時使用する行為は、不法領得の意思がないので、窃盗罪は成立しない、と説明されることがあります。

もっとも、このように即断をして、他人の自転車などを乗り回すのは危険です。市営住宅の駐輪場に置かれた他人の自転車を、数時間にわたり乗り回したという事件で、福岡地裁裁判所は、不法領得の意思がないとして無罪を言い渡しました。しかし、福岡高等裁判所は、令和3年3月29日、「数時間にわたり無断で使用することの可罰性を『一時的な無断使用』として否定することは、一般的な社会通念に反し、認められない」として、原判決を破棄し、実刑判決を言い渡しました。「他人の物は勝手に使ったらダメ」という常識に従って行動しましょう。

窃取

窃取とは、他人の占有する財物を、その占有者の意思に反して、自己又は第三者の占有に移転させる行為をいいます。万引きのように、こっそり盗むような行為はもちろんのこと、ひったくりなども、窃取にあたります(ただし、ひったくりは、態様によっては、強盗罪が成立することがあります。)。

窃盗罪に問われる可能性のある行為

窃盗罪に問われる行為として、万引き、ひったくり、置き引き、車上荒らし、空き巣、無断充電等があります。空き巣については、窃盗罪とは別に住居侵入罪等が成立しますし、被害額が同じ場合、侵入盗(空き巣)は、万引きなどより悪質であると評価されることが一般です。

万引きなどの常習犯の刑事処分

窃盗罪により繰り返し処罰をされると、常習累犯窃盗罪により重く処罰されることがあります。常習累犯窃盗罪は、窃盗罪の加重累計であり、盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律3条に規定されています。
その要件は、①常習として窃盗(未遂を含みます。)をしたこと、②行為日の10年以前の間、窃盗(未遂を含みます。)で3回以上、懲役6か月以上の刑の執行を受けたこと(又は刑の免除を受けたこと)です。

常習的に窃盗をしてしまう場合、環境要因(貧困)や心因性の要因(クレプトマニア・窃盗症)が背景事情としてあることが少なくありません。適切な弁護人や、医療福祉関係者の関与により、窃盗の背景事情を明らかにして、再犯を防ぐことが非常に大切です。

窃盗罪の時効

窃盗罪の時効は、7年です(刑事訴訟法250条2項4号)。窃盗罪は、前科のない方が出来心で犯してしまうことが少なくありません。時効まで不安を抱えながら過ごすより、適切な弁護士に相談の上で、自首・被害弁償をしたことが良いこともあります。

逮捕後の流れ

窃盗罪では、現行犯逮捕の場合や、犯行態様が悪質な場合(侵入盗、ひったくり等)に、逮捕・勾留される可能性が高くなります。初犯の場合は、逮捕・勾留されずに在宅捜査、微罪処分・不起訴(起訴猶予)で済むことも多いですが勾留に至ってしまうと、起訴される可能性も高いと考えてよいと思います。逮捕、勾留された場合、適切な弁護人への依頼が望ましいです。また、逮捕、勾留されないような事案でも、再犯防止のための環境づくりの助言を受けるために、一度は弁護士に相談してみましょう。

逮捕された時の流れを図で分かりやすく解説します

窃盗罪に問われた場合の対応について

窃盗罪の被疑者となった場合、早期の被害弁償、示談をすることが最善です。適切な弁護人を選任し、弁護人から被害弁償、示談を申し入れ、不起訴や、刑罰の軽減を目指しましょう。
また、窃盗の背景には、心因性の問題があることも少なくありません。再犯防止の環境を整えるため、適切な弁護人への依頼が望ましいです。

 

窃盗罪に問われた場合は、弁護士へ相談を

窃盗罪は、身近な犯罪です。安いものを盗んだだけだからといったように軽く考えてしまうと、窃盗の反復などより取返しのつかないことになりかねません。窃盗罪の被疑者として警察に取調べを受けた場合はもちろん、窃盗をしてしまいどうしていいかわからない状態のときから、弁護士へ相談し、助言を受けることをお勧めします。

迷惑防止条例とは、条例(地方公共団体が自治権に基づいて制定する自主法)のうち、住民や滞在者の生活の平穏を守るために迷惑防止条例や公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例といった名称で制定されているものの総称です。一般的に、粗暴行為、ぐれん隊行為、卑わいな行為、不当な金品の要求行為、ダフ屋行為、押売り行為、不当な客引き行為、ピンクビラ等の配布行為などを禁止しており、違反した場合には罰則が定められています。

内容は、各条例によって異なる部分も多く、ここでは、福岡県迷惑行為防止条例を前提に解説します。

迷惑防止条例とは

迷惑防止条例では、住民や滞在者の生活の平穏を守るために卑わいな行為などが禁止されており、これに違反した場合には、懲役や罰金刑などの罰則があります。

刑罰について

迷惑防止条例の禁止行為に違反した者には、懲役、罰金、拘留、科料といった罰則があります。また、行為者だけでなく、法人(法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。)の代表者、管理人、代理人、使用人その他の従業員が、法人や人の業務に関して違反した場合には、その法人や人に対しても罰金刑が課されることがあります。

時効について

迷惑防止条例違反の公訴時効期間は3年です。

公訴時効とは、一定の期間が経過することによって、公訴できなくなる制度です。公訴時効の期間は、犯罪の種類に応じて定められており(刑事訴訟法250条)、迷惑防止条例違反の罰則は、長期5年未満の懲役若しくは禁固又は罰金であることから、公訴時効は3年となります(刑事訴訟法250条2項6号)。公訴時効期間は、原則として犯罪が終わった時から進行しますので、3年前の行為は処罰されないということになります(刑事訴訟法253条1項)。

【刑事訴訟法250条】
時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの(死刑に当たるものを除く。)については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
  1. 無期の懲役又は禁錮に当たる罪については三十年
  2. 長期二十年の懲役又は禁錮に当たる罪については二十年
  3. 前二号に掲げる罪以外の罪については十年
 
時効は、人を死亡させた罪であつて禁錮以上の刑に当たるもの以外の罪については、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
  1. 死刑に当たる罪については二十五年
  2. 無期の懲役又は禁錮に当たる罪については十五年
  3. 長期十五年以上の懲役又は禁錮に当たる罪については十年
  4. 長期十五年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については七年
  5. 長期十年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については五年
  6. 長期五年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪については三年
  7. 拘留又は科料に当たる罪については一年
 

改正について

スマートフォンの普及や情報技術の進化に伴い、実情に合わなくなったことから、平成31年に福岡県迷惑防止条例の一部が改正され、平成31年6月1日から施行されています。なお、同様の条例改正が全国的に実施されています。

(改正内容)

  • 着衣の上からだけでなく、マフラーや膝掛など衣服以外の上から身体に触れる痴漢行為の禁止(福岡県迷惑防止条例6条1項1号)
  • 透視機能を有する写真機等での撮影行為等(見る、撮影する、これらの目的で透視機能を有する写真機等を設置・向ける行為)の禁止(福岡県迷惑防止条例6条2項2号、3号)
  • のぞき見や盗撮行為等の禁止場所について、公衆が利用できる場所という制限の撤廃(福岡県迷惑防止条例6条3項)
  • 嫌がらせ行為の規制対象行為について、住居等の付近をみだりにうろつく行為、ブログ等の個人のページへの書き込み等の行為などの追加(福岡県迷惑防止条例8条)
  • 卑わいな行為等、嫌がらせ行為に対する罰則の引き上げ(福岡県迷惑防止条例違反11条、12条)

迷惑防止条例と強制わいせつ

迷惑防止条例では、卑わいな行為等(いわゆる痴漢行為を含む)が禁止されています(福岡県迷惑防止条例6条)。

【福岡県迷惑防止条例6条(卑わいな行為等の禁止)】
何人も、公共の場所又は公共の乗物において、正当な理由がないのに、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で次に掲げる行為をしてはならない。
  1. 他人の身体に直接触れ、又は衣服その他の身に着ける物(以下この条において「衣服等」という。)の上から触れること。
  2. 前号に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること。
 
何人も、公共の場所、公共の乗物その他の公衆の目に触れるような場所において、正当な理由がないのに、前項に規定する方法で次に掲げる行為をしてはならない。
  1. 通常衣服で隠されている他人の身体又は他人が着用している下着をのぞき見し、又は写真機、ビデオカメラその他これらに類する機器(以下この条において「写真機等」という。)を用いて撮影すること。
  2. 衣服等を透かして見ることができる機能を有する写真機等の当該機能を用いて、衣服等で隠されている他人の身体又は他人が着用している下着の映像を見、又は撮影をすること。
  3. 前二号に掲げる行為をする目的で写真機等を設置し、又は他人の身体に向けること。
 
何人も、正当な理由がないのに、第一項に規定する方法で次に掲げる行為をしてはならない。
  1. 住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所で当該状態にある人の姿態をのぞき見し、又は写真機等を用いて撮影すること。
  2. 前号に掲げる行為をする目的で写真機等を設置し、又は他人の身体に向けること。
 

また、刑法176条において、13歳以上の者に対し、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為を行った場合や、13歳未満の者に対し、わいせつな行為をした場合に強制わいせつ罪として処罰(6月以上10年以下の懲役)されます。

ともに一定の性的な行為を禁止するものですが、迷惑防止条例が住民や滞在者の生活の平穏を守ることを目的とする一方で、強制わいせつ罪が被害者の性的自由を守ることを目的とするという目的の違いもあって、迷惑防止条例は、強制わいせつ罪よりも広く住民や滞在者の生活の平穏を害する行為を広く規制しているといえます(※迷惑防止条例に反する行為が強制わいせつ罪に該当する行為を包含するというわけではありません。)。

迷惑防止条例違反と強制わいせつ罪のいずれに該当するのかが顕著に問題となるのが痴漢行為です。

個別具体的な事情によって異なりますが、女性の臀部を撫でる行為について、厚手の着衣の上から撫でても強制わいせつ罪にはならない可能性が高く、スカートの中に手を入れ下着の上から撫でる、下着の中に手を入れるなどした場合に強制わいせつ罪になる可能性が高いと言われています。

迷惑防止条例違反となる主な犯罪

痴漢等

電車や道端において、抱きつく、お尻や胸を触るなどいわゆる痴漢行為が禁止されています(福岡県迷惑防止条例6条1項1号)。また、道端で通行人に卑わいな言葉を投げかけ下半身を露出するなどの卑わいな言動も禁止されています。

なお、痴漢という文言は条例にはなく、次のように規制されています。

【福岡県迷惑防止条例6条1項1号】
何人も、公共の場所又は公共の乗物において、正当な理由がないのに、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で次に掲げる行為をしてはならない。
  1. 他人の身体に直接触れ、又は衣服その他の身に着ける物(以下この条において「衣服等」という。)の上から触れること。
  2. 前号に掲げるもののほか、卑わいな言動をすること。
 
痴漢について詳しく見る

盗撮・のぞき

駅やデパートなどのエスカレーターといった公共の場所、公共の乗物において、衣服の中の体や下着をのぞき見る行為、スマートフォンなどで撮影する行為、透視機能を用いて衣服の上から体や下着を見ることや撮影することが禁止されています。また、公共の場所や公共の乗物でなくても、住居、便所、浴場、更衣室など通常衣服の全部又は一部を着けない場所における、のぞき行為、盗撮行為も禁止されています(福岡県迷惑防止条例6条2項、3項)。

上記行為をするためにカメラやビデオカメラを設置したり、他人の体に向けただけでも処罰されることに注意してください。

例えば、女性トイレに隠しカメラを設置することは当然ですが、スポーツ選手のユニフォームの中を撮影しようと考え、観覧席から望遠カメラ、ビデオカメラを設置した場合も迷惑防止条例違反に問われます。

【福岡県迷惑防止条例6条2項、3項】
何人も、公共の場所、公共の乗物その他の公衆の目に触れるような場所において、正当な理由がないのに、前項に規定する方法で次に掲げる行為をしてはならない。
  1. 通常衣服で隠されている他人の身体又は他人が着用している下着をのぞき見し、又は写真機、ビデオカメラその他これらに類する機器(以下この条において「写真機等」という。)を用いて撮影すること。
  2. 衣服等を透かして見ることができる機能を有する写真機等の当該機能を用いて、衣服等で隠されている他人の身体又は他人が着用している下着の映像を見、又は撮影をすること。
  3. 前二号に掲げる行為をする目的で写真機等を設置し、又は他人の身体に向けること。
 
何人も、正当な理由がないのに、第一項に規定する方法で次に掲げる行為をしてはならない。
  1. 住居、便所、浴場、更衣室その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所で当該状態にある人の姿態をのぞき見し、又は写真機等を用いて撮影すること。
  2. 前号に掲げる行為をする目的で写真機等を設置し、又は他人の身体に向けること。
 
盗撮について詳しく見る

嫌がらせ行為(つきまとい行為など)

正当な理由なく、特定に人に対して、つきまとい、待ち伏せ、進路に立ちふさがる、住居等の付近において見張る、住居等に押し掛ける、住居等の付近をみだりにうろつくなどの行為を行うことが禁止されています(福岡県迷惑防止条例8条)。なお、ストーカー規制法(ストーカー等の規制等に関する法律)のつきまとい等を除くこととされており、ストーカー規制法で補足されない行為であっても、住民や滞在者の生活の平穏を守る目的のために規制するものといえます。

また、性的羞恥心を害する事項を告知する、動画を送り付けるといった、性的な嫌がらせ行為は、公共の場所や公共の乗物において行われないとしても、福岡県迷惑防止条例8条8号に該当する場合があります。

【福岡県迷惑防止条例8条】
何人も、正当な理由がないのに、特定の者に対し、次に掲げる行為(ストーカー行為等の規制等に関する法律(平成十二年法律第八十一号)第二条第一項に規定するつきまとい等を除く。)を反復して行ってはならない。 ただし、第一号から第四号まで及び第五号(電子メールの送信等(同条第二項に規定する電子メールの送信等をいう。 第五号において同じ。)に係る部分に限る。)に掲げる行為については、身体の安全若しくは住居、勤務先、学校その他その通常所在する場所(以下「住居等」という。)の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合に限る。
  1. つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居等の付近において見張りをし、住居等に押し掛け、又は住居等の付近をみだりにうろつくこと。
  2. その行動を監視その他の方法により把握していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
  3. 面会その他の義務のないことを行うことを要求すること。
  4. 著しく粗野又は乱暴な言動をすること。
  5. 電話をかけて何も告げず、又は拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかけ、ファクシミリ装置を用いて送信し、若しくは電子メールの送信等をすること。
  6. 汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又はその知り得る状態に置くこと。
  7. その名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。
  8. その性的羞恥心を害する事項を告げ、若しくはその知り得る状態に置き、その性的羞恥心を害する文書、図画、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下この号において同じ。)に係る記録媒体その他の物を送付し、若しくはその知り得る状態に置き、又はその性的羞恥心を害する電磁的記録その他の記録を送信し、若しくはその知り得る状態に置くこと。
 

その他

迷惑防止条例は、住民や滞在者の生活の平穏を守ることを目的とすることから、痴漢、のぞき、盗撮といった性的な行為だけでなく、次のような行為も禁止しています。福岡県では、迷惑防止条例という名称でなく、福岡県押売り等防止条例の名、福岡市独自の規制もあります。

  • 乗車券等の不当な売買行為(ダフヤ行為)の禁止(福岡県迷惑防止条例2条)
  • 座席等の不当な供与行為(ショバヤ行為)の禁止(福岡県迷惑防止条例3条)
  • 景品買行為の禁止(福岡県迷惑防止条例4条)
  • 不当な客引き行為等の禁止(福岡県迷惑防止条例5条)
  • 粗暴行為の禁止(福岡県迷惑防止条例7条)
  • 模造爆発物等を置く行為等の禁止(福岡県迷惑防止条例7条の2)
  • 水泳場等における危険行為の禁止(福岡県迷惑防止条例9条)
  • 自動車等の暴走行為の禁止(福岡県迷惑防止条例10条)
  • 押売り等の禁止(福岡県押売り等防止条例2条)
  • ピンクちらし等の禁止(福岡市ピンクちらし等の根絶に関する条例)

など

迷惑防止条例違反で逮捕されたら

迷惑防止条例違反であっても、罪証隠滅のおそれや逃亡のおそれがある場合といった逮捕の要件を満たせば当然逮捕されます。もっとも、速やかに対処すれば勾留を避けられる可能性が高い犯罪類型も多く、最近では、痴漢行為について逮捕されたとしても、勾留請求却下若しくは即時抗告が認められ釈放される事案が増えています。

逮捕された場合に、身柄解放へ向けた活動を早期に開始すべきであることは多くの犯罪で言えることですが、迷惑防止条例違反は、比較的釈放されやすい犯罪類型だといえます。身柄拘束が続けば、職場に発覚し、職を失いかねず、最終的に起訴猶予や執行猶予判決となったとしても、その不利益はとても大きなものとなります。特に身柄解放に向けた活動が求められる類型だと思います。

逮捕の流れについて詳しく見る

取り扱った迷惑防止条例違反の事例

痴漢のケース

通勤中の電車内で前にいた女性から痴漢と手を摑まれ、駅員へ突き出された事案でした。その後、駅長室で事情を聞かれることになり、ご依頼者は、一貫して犯行を否認していたものの、しばらくして警察官が来て、結局、逮捕されてしまいました。被害者の言い分だけを信じて、ご依頼者の話には全く耳を傾けてくれなかったようです。ご親族から弊所へご相談をいただき、ご依頼者様が明確に無実を訴えていたことから、黙秘も辞さず否認を貫く方針としました。痴漢事犯では、通常、手に被害者の衣類の繊維が付着していないか微物検査が実施されます。例えば、スカートの上から臀部を触ったのであれば、触った手の部分からスカートの繊維が検出されます。

速やかに身柄解放に向けた活動を開始して釈放されたことで職を失うリスクを最小限に抑え、取り調べにおいては、認めることは認め、否認すべきことは明確に否認していただきました。結局、犯行態様とされる行為に整合する部分から繊維片が検出されなかったのだと思いますが、不起訴となりました。当然の結果ではありますが、警察に誘導される形で、「●●かもしれない。」、「●●だとしてもおかしくない。」などと被害者の話と整合する都合の良い供述調書が作成されることは少なくないので、適切な取り調べ対応も奏功したといえるでしょう。

盗撮のケース

スポーツ競技会場内で、女性選手のユニホームの中を撮影しようと、透視可能といわれる赤外線撮影が可能なカメラに望遠レンズを取り付けて観客席から構えようと準備していたところ、主催者に通報されました。ご本人は、まだ撮影を開始していないかったことから、犯罪にならないと思っていたようです。当該会場には、関係者による撮影など、正当な理由のない撮影を禁止する掲示がされており、盗撮目的による立ち入りは、建造物侵入罪に問われますし、透視機能を利用して着衣等の中を撮影しようとカメラを設置、向ける行為は迷惑防止条例に違反します。本件では、カメラの撮影データに盗撮画像が残っておらず、まだ準備段階であったことから、迷惑防止条例に問い難い状況にあったのだと思われますが、不起訴となりました。

迷惑防止条例違反でよくある質問

カーテンが開いており隣家の住人が下着姿でいるところを覗いてしまいました。

福岡県迷惑防止条例6条3項1号では、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で住居・・・その他人が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいるような場所で衣服の全部又は一部を着けない状態の人の姿態をのぞき見することを禁止しています。

目に入ってしまったという程度であれば、故意とはいえませんので、迷惑防止条例違反には問われないでしょう。しかし、この機を利用して、覗こうと考えて覗いてしまったということであれば、該当すると考えられます。カーテンを開いて見えるようにしていたのが悪い、自分の部屋から窓の外の景色をみているのと何ら変わりがないのではないかなどと思ってしまうかもしれませんが、そういうわけではありません。

電車内でつり革を掴もうとしたところ誤って女性の胸に手が当たってしまいました。

つり革を掴もうとして当たってしまったというのですから、故意がなく、迷惑防止条例に違反しません。

旦那の浮気相手に何度も電話をしましたが迷惑防止条例に違反するのでしょうか。

福岡県迷惑防止条例8条5号で、正当な理由がないのに、特定の者に対し、身体の安全若しくは住居、勤務先、学校その他その通常所在する場所(以下「住居等」という。)の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により、電話をかけて何も告げず、又は拒まれたにもかかわらず、連続して、電話をかけ、ファクシミリ装置を用いて送信し、若しくは電子メールの送信等をすることとされています。

浮気相手という特定の者に対して行っていますが、身体の安全などが著しく害される不安を覚えさせるような方法であるかどうかで異なるといえます。何回かけたらダメだということではなく、具体的状況にもよりますが、昼夜を問わず、執拗に無言電話をかける、罵声を浴びせるなどすれば、迷惑防磁条例に違反する可能性が高くなるでしょう。

なお、執拗に無言電話をかけることなどし、人を精神的に追い詰め、精神疾患に罹患させた場合には傷害罪に問われる可能性もあります。

迷惑防止条例違反を犯した場合、すぐに弁護士へご相談下さい。

いわゆる迷惑防止条例は、都道府県、市区町村ごとの実情に応じて制定されていることから、概ね同じ内容の規定もあれば、異なる部分もあります。社会の変化に応じて改正が行われることも多いですし、迷惑防止条例という名称以外の名称で規制がされていることもあります。このため、自身の行為がどういった規定に違反しているのかを把握できないことも少なくなく、警察官でも誤って理解している可能性も否定できませんので、弁護士へ相談することをおすすめします。

児童買春・児童ポルノに関して、特別法(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律。以下、「児童買春・児童ポルノ禁止法」といいます。)で刑罰が定められています。

児童買春・児童ポルノに関する刑罰は、重いものとなっています。また、児童買春・児童ポルノの被疑者・被告人になった者のご家族には、非常に精神的ショックが大きい犯罪といえます。本稿では、主に、児童買春・児童ポルノ禁止法について解説します。

児童ポルノとは

「児童ポルノ」とは、条文上、以下のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいうとされます(児童買春・児童ポルノ禁止法3条)。

  1. ① 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
  2. ② 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
  3. ③ 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀部又は胸部)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの

「ポルノ」といっても、全裸である必要はなく(①、②、③)、性交類似行為等でも足りるとされています(①、②)。

ここで、児童ポルノの対象となる「児童」とは、十八歳に満たない者をいいます(児童買春・児童ポルノ禁止法2条1項)。そのため、アニメや漫画に描写されたものは、上記①~③にあたるような場合であっても、原則として、児童ポルノには該当しません。

ただし、実在した児童を基に作成された写真から、CGにより描写されたものに関して、「本件各写真は、実在する18歳未満の者が衣服を全く身に着けていない状態で寝転ぶなどしている姿態を撮影したものであり、本件各CGは、本件各写真に表現された児童の姿態を描写したものであったというのである。」として、児童ポルノに該当すると判断した最高裁判例があることに注意が必要です(最高裁判所令和2年1月27日 第一小法廷決定)。CG等の場合でも、一切児童ポルノに当たらないわけではありません。

児童ポルノに関する法令

児童買春・児童ポルノ禁止法

児童買春・児童ポルノに関しては、児童買春・児童ポルノ禁止法(平成十一年法律第五十二号)により規制されています。この法律は、平成8年(1996年)8月29日の『児童の商業的性的搾取に反対する世界会議 「宣言」』を受けて、平成10年(1998年)に成立、平成11年(1999年)に施行されました。

自治体の青少年健全育成条例

児童買春・児童ポルノに関しては、自治体の青少年健全育成条例でも規制されています。

例えば、福岡県青少年健全育成条例31条の2では、以下の行為が規制されています。

  1. ① 青少年に拒まれたにもかかわらず、当該青少年に係る児童ポルノ等の提供を行うように求めること
  2. ② 青少年を威迫し、欺き、若しくは困惑させ、又は青少年に対し対償を供与し、若しくはその供与の約束をする方法により、当該青少年に係る児童ポルノ等の提供を行うように求めること

また、青少年健全育成条例による規制の他にも、児童を脅して児童ポルノにあたるような画像を送信させる行為には、強制わいせつ罪が成立することがあります(東京高判平成28年2月19日判例タイムズ1432号134頁など)。

児童ポルノの禁止行為と罰則

単純所持

児童買春・児童ポルノ禁止法7条1項では、児童ポルノの単純所持に関する刑罰が定められています。

すなわち、『自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持した者』や、これと同様の電磁的記録(ハードディスク、SSDに保存されたデータ等)を保管した者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処されます。

この単純所持は、以前は刑罰の対象となっていませんでしたが、これを禁止しなければ児童ポルノの拡散が止まらないと考えられたことなどから、平成26年(2014年)の法改正により、処罰の対象とされました。

製造・提供

単純所持の他、児童買春・児童ポルノ禁止法7条2項~4項では、次の行為が、刑罰の対象とされています。

  1. ① 児童ポルノ提供の罪(同7条2項)
    三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金
  2. ② 児童ポルノ提供目的での製造、所持、運搬、輸入、輸出の罪(同7条3項)
    三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金
  3. ③ 児童に第二条第三項各号(児童ポルノに該当するもの)のいずれかに掲げる姿態をとらせ、児童ポルノを製造する罪(同7条4項)
    三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金

不特定多数への提供・公然と陳列

児童買春・児童ポルノ禁止法7条6項~7項では、次の行為が、刑罰の対象とされています。

  1. ① 児童ポルノの不特定又は多数の者への提供又は公然陳列の罪(同7条6項)
    五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金
  2. ② ①目的での製造、所持、運搬、輸入、輸出の罪(同7条7項)
    五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金
  3. ③ ①目的での輸入又は輸出の罪(同7条8項)
    五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金

以上の同法7条6項~8項の罪は、同法7条1項~5項の罪と比べて重いものとなっています。これは、同法7条6項~8項の罪は、児童ポルノを拡散させるもので、児童の被害を拡大させることから重く処罰されているものと解されます。

児童ポルノの製造目的の買春

児童買春・児童ポルノ禁止法8条では、児童を、児童買春の性交の相手方とさせ、又は、児童ポルノを製造する目的で、児童を買春した行為に対する刑罰が定められています(一年以上十年以下の懲役)。

児童ポルノの製造目的の盗撮

児童買春・児童ポルノ禁止法7条5項では、児童ポルノ製造のための盗撮等に対する刑罰が定められています(三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金)。温泉や更衣室での盗撮等で、この罪が成立することがあります。

児童ポルノ事件の時効

刑罰の時効(公訴時効)は、罪の重さにより変わります(刑事訴訟法250条2項)。

具体的には、以下のとおりです。

長期十五年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については七年(刑事訴訟法250条2項4号) 児童を、児童買春の性交の相手方とさせ、又は、児童ポルノを製造する目的で、児童を買春した行為の罪(法8条)
長期十年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については五年(刑事訴訟法250条2項5号) 児童ポルノの不特定又は多数の者への提供又は公然陳列の罪(法7条6項) 提供又は公然陳列目的での製造、所持、運搬、輸入、輸出の罪(法7条7項) 提供又は公然陳列目的での輸入又は輸出の罪(法7条8項)
長期五年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪については三年(刑事訴訟法250条2項6号) 児童ポルノ単純所持等の罪(法7条1項) 児童ポルノ提供の罪(法7条2項) 児童ポルノ提供目的での製造、所持、運搬、輸入、輸出の罪(法7条3項) 児童に第二条第三項各号(児童ポルノに該当するもの)のいずれかに掲げる姿態をとらせ、児童ポルノを製造する罪(法7条4項)

児童ポルノ事件の捜査

児童買春・児童ポルノの被疑者となった場合、いわゆる家宅捜索(自宅、勤務先等の捜索、差押え)がされる可能性が高いです。児童ポルノは、パソコン、スマートフォン等の電子媒体に保存されていることが多いですし、また、児童買春のためのやり取りなども、メール、LINE、出会い系サイト等、パソコン、スマートフォン等の電子媒体によりなされていることが多いからです。

家宅捜索では、一般的に、事件と関連するパソコン、スマートフォン等が押収(差押え)されることが一般です。

家宅捜索について詳しく見る

逮捕後の流れ

児童買春・児童ポルノに関する罪、特に、児童に対する買春、わいせつ行為等を伴う場合、逮捕されることも少なくありません。児童ポルノの単純所持のように、比較的刑罰の軽い場合でも、逮捕されないとは言い切れません。

逮捕された時の流れについて詳しく見る

児童ポルノで逮捕された場合の弁護活動について

児童ポルノに関して逮捕された場合、勾留阻止をはじめとした早期の身柄解放が非常に重要になってきます。また、事案によっては、被害者(の親権者法定代理人)との示談が必要な場合もあります。

これらに適切に対応するため、早期に弁護人を選任することが望ましいと言えます。

児童ポルノの禁止行為をしてしまったら、早期に弁護士へ相談を

児童買春・児童ポルノの被疑者となった場合、適切な弁護人の選任が不可欠です。また、警察・検察の捜査を受ける前でも、児童買春・児童ポルノの犯罪に心当たりがある場合には、自首等をしておくことが望ましいこともあります。早期に弁護士にご相談ください。

在宅事件と身柄事件の違い

「在宅事件」とは、逮捕又は勾留による身体拘束がない状態で捜査が進められている刑事事件をいいます。

「身柄事件」とは、逮捕又は勾留により身体拘束されている状態で捜査が進められている刑事事件をいいます。

これらの用語は、刑事訴訟法などの条文には用いられておらず、あくまで慣習的な表現にすぎませんし、起訴又は不起訴という結論に直接結びつくものでもありません。

しかし、刑事事件の捜査を受けている人(被疑者)にとっては、逮捕されるか否かは大きな違いであるといえます。

在宅事件となる条件

刑事訴訟法によると、逮捕又は勾留については、犯罪の嫌疑のほかに、罪証隠滅のおそれ又は逃亡のおそれがあることが必要です。また、刑事訴訟法の条文には明確に記載されていないものの、逮捕又は勾留の必要性があることも要件となります。

そうすると、罪証隠滅のおそれがなく、逃亡のおそれもないといえる場合には、逮捕も勾留も認められませんので、在宅事件として捜査が進むこととなります。また、罪証隠滅のおそれ又は逃亡のおそれがあるように見える場合であっても、逮捕又は勾留の必要性があるとは認められない場合には、やはり逮捕も勾留も認められず、在宅事件となります。

在宅事件となるケース(具体例)

在宅事件となるのは、逮捕も勾留も認められない場合ですので、罪証隠滅のおそれがなく、逃亡のおそれもなく、逮捕又は勾留の必要性もないケースということになります。

一般的な傾向としては、過失運転致死傷罪(過失による人身事故)や道路交通法違反は、在宅事件として捜査が進められることが大半です。

万引きによる窃盗罪、盗撮による条例違反、暴行罪又は軽微な傷害罪については、逮捕されることなく在宅事件として捜査が進められることは珍しくありませんし、逮捕された後に釈放されて在宅事件に切り替えられることも散見されます。

その反対に、重大・悪質な事件や、共犯者の存在などにより複雑さがある事件については、在宅事件ではなく身柄事件となることがほとんどです。

在宅事件と起訴(略式起訴)

在宅事件であるからといって、起訴されないわけではありません。逮捕も勾留もされずに在宅事件として捜査が進められ、起訴(在宅起訴)されるということは、決して珍しくありません。

そして、裁判所に起訴された後、有罪の裁判が確定した時点で、前科がつくこととなります。

ですから、逮捕されていないからといって、前科がつかないとは言い切れません。

ただし、在宅事件となるのは、事案として重大とはいえないケースが通常です。

ですから、在宅事件の場合、検察官の不起訴処分で終わったり、略式起訴により罰金刑に処せられたりすることが多く、実刑判決まで受けることは少ないでしょう。

在宅事件の基礎率

検察統計によると、全刑事事件について、2020年の起訴率は以下のとおりです。

  1. 自動車による過失致死傷等事件 12.31%(内訳:公判請求1.36%、略式起訴10.95%)
  2. 道路交通法等違反 37.89%(内訳:公判請求2.39%、略式起訴35.50%)
  3. 上記1,2以外  32.49%(内訳:公判請求20.83%、略式起訴11.66%)

以上のとおり、罪名によって起訴率が異なりますし、特に公判請求率が大きく異なりますので、身柄事件であるか在宅事件であるかという観点だけから起訴率を分析することは、あまり有用とはいえません。

ただし、上記統計は、身柄事件と在宅事件を含めた「全刑事事件」の起訴率ですが、在宅事件については、身柄事件よりも重大とはいえないケースが通常です。罪名別の在宅事件の起訴率は、上記統計と同程度又はそれ以下であると思われます。

在宅事件で実刑となることはあるの?

「実刑判決」とは、執行猶予がつかない懲役刑又は禁錮刑の判決のことであり、端的に言うと、刑務所への服役を命じる判決のことです。刑事訴訟法などの条文には用いられておらず、あくまで慣習的な表現にすぎませんが、起訴された人(被告人)にとっては、実刑判決を受けるか否かで大きな違いがあります。

そして、逮捕も勾留もされず、在宅事件として起訴された場合であっても、実刑判決を受ける可能性はあります。

その典型例は、自動車の運転中に大きな過失により歩行者を死亡させたという過失運転致死罪のケースであり、マスメディアで報道されることが珍しくありません(ただし、過失運転致死罪であっても、過失態様などを踏まえて、執行猶予がつく方が多いです。)。

また、前科の内容によっては、法律上、懲役刑又は禁錮刑に執行猶予をつけることができない場合があり(刑法25条)、在宅事件でも実刑判決が宣告されます。

在宅事件の流れ

身柄事件と在宅事件の流れは、以下の図のとおりです。

在宅事件の大部分は、警察官が捜査を開始した上、捜査書類を検察官に送致(又は送付)します。そして、検察官が、最終的に、起訴又は不起訴を決定します。

在宅事件の流れ 在宅事件の流れ

検察から呼び出しがかかることがあります

在宅事件の大部分は、警察官が捜査を開始した上、捜査書類を検察官に送致(又は送付)します。

そして、検察官は、必要に応じて被疑者の呼出しをします。これは、起訴又は不起訴を決定する上で、取調べを実施する必要があるからです。

その具体的なタイミングは、前の項目の図で示したとおり、「書類送検より後」かつ「起訴又は不起訴の判断よりも前」です。

なお、「書類送検」という言葉の意味は、次の項目で解説します。

書類送検とは?

警察官は、刑事事件の捜査を行った後、その事件を検察官に送致(又は送付)します(刑事訴訟法246条、242条)。

在宅事件の場合、被疑者の逮捕がないので、捜査書類だけを検察官に送ります。これを、マスメディアは慣例的に「書類送検」と呼んでいます。

これは、刑事訴訟法その他の条文には見られない用語ですが、実態に即した表現といえるでしょう。

検察官は、送致(又は送付)を受けた後、必要に応じて被疑者の呼出しをします。

どのように検察から呼び出しがかかるの?

警察官は、その警察署に対応する検察庁の検察官に対して、刑事事件を送致(又は送付)します。

例えば、ある人が東京都内で刑事事件を起こし、東京都内の警察署による捜査を受けた場合、その事件が送致されるのは東京都内の検察庁です。

しかし、在宅事件の場合、逮捕又は勾留されていないので、例えば転勤のために福岡県へ転居するというケースもあり得ます。

この場合、検察庁の担当者に対して事情を説明すれば、その事件が福岡県内の検察庁に移送され、その検察庁に出頭すれば足りるという対応をしてもらえることが通常です。

なお、検察庁からの呼出しは、電話によることが多いですが、郵便による呼出しもあります。また、捜査を担当した警察署を介した呼出しの場合もあります。

在宅事件のメリットは普通の生活ができること

在宅事件の場合、逮捕又は勾留による身体拘束を受けていないので、通常どおり仕事や通学を続けたり、自由に外出したりすることができ、普通の生活を送ることができます。

また、捜査機関は、在宅事件の取調べや実況見分の日程について、被疑者の仕事の都合などを考慮し、ある程度柔軟に対応してくれることが通常です。

このように、身柄事件と比較すると、日常生活への影響が少ないといえる点が、在宅事件のメリットといえます。

在宅事件のデメリットは長期化する可能性があること

在宅事件の場合、身柄事件と比較すると、そもそも捜査が長期化する傾向があります。その理由は、後者については刑事訴訟法上の時間制限が設けられているのに対し、前者については制限が設けられておらず、事件処理が後回しにされやすいためです。

このように、在宅事件は捜査が長期化しやすい傾向にあるという点が、デメリットといえるでしょう。

公訴時効まで捜査が続く可能性も

公訴時効とは、検察官が刑事事件について起訴することができる期間の制限のことであり、法定刑に応じて期間が異なります(刑事訴訟法250条)。

在宅事件となるのは、法定刑が重くはない事件であることが通常ですので、公訴時効について検討しておくことは有益といえるでしょう。

以下は、在宅事件の公訴時効について、代表例を挙げておきます。

  1. 公訴時効1年・・・軽犯罪法違反、侮辱罪
  2. 公訴時効3年・・・暴行罪、脅迫罪、名誉棄損罪、業務妨害罪、器物損壊罪

在宅捜査中にできること

在宅事件の場合、逮捕又は勾留による身体拘束を受けていないので、通常どおり仕事や通学を続けたり、自由に外出したりすることができます。

捜査機関による取調べを受けたり、実況見分に立ち会ったりするときを除いては、普通どおりに日常生活を送ることができます。

また、逮捕又は勾留中の接見とは異なり、お互いの日程の都合さえ合えば、弁護士と自由に連絡を取ったり、アドバイスを受けたりすることもできます。

特に、在宅事件としての捜査中、少しでも有利な情状を得られるようにするため、弁護士を介して被害者との示談交渉を行うことは、珍しくありません。

在宅捜査中に注意すること

前の項目のとおり、在宅事件としての捜査中、法律上の制約を受けずに自由に生活することができるとはいえ、注意しておく点はありますので、以下の記事で詳しく解説します。

検察の呼び出しにはきちんと応じましょう

在宅事件の場合、捜査機関から電話や郵便で呼出しを受けることがあります。

これは、取調べ等のための任意出頭を求めるものにすぎず、これに応じるべき法的義務まではありませんが、放置することはお勧めできません。

その理由は、任意出頭に応じないことが繰り返された場合、捜査機関が身柄事件への切り替えの必要性があると判断し、逮捕状を請求する可能性があるからです。

逮捕状が発布されるか否かは、裁判官の判断によりますし、もし逮捕された場合であっても、勾留されるか否かは更に裁判官の判断によりますが、逮捕・勾留の危険が生じることは否定できません。

特に、検察庁からの呼出しは、事件から数か月以上後で行われることが通常ですので、つい気が緩んでしまうかもしれませんが、軽視又は無視すべきではありません。

仕事の都合などに応じて、日程調整を図るなどの適切な対処が望ましいでしょう。

在宅捜査中の行動に気を付けましょう

在宅事件の場合、罪証隠滅又は逃亡を疑われかねないような行動を慎むべきです。

例えば、被害者との示談交渉については、報復を図ったかのように誤解されるおそれがあるため、特に慎重にすべきであり、直接の接触は避けた方が望ましいでしょう。実務上、まず捜査機関を介して被害者に示談申出をすることは珍しくありませんし、弁護士による示談交渉であれば誤解を避けやすいといえるでしょう。

また、捜査中に引っ越しをしたり、電話番号を変更したりする場合、逃亡のおそれがあると誤解されないようにするため、捜査機関に連絡をしておくことが望ましいでしょう。

これらは、法律上の義務ではありませんが、逮捕状を請求されてしまうことを回避するための予防策です。

在宅事件でも逮捕される可能性があります

在宅事件として捜査が進行している場合であっても、捜査機関が罪証隠滅のおそれ、逃亡のおそれ及び逮捕の必要性があると判断した場合、裁判所に逮捕状を請求する可能性があります。そして、裁判所が逮捕状を発布すると、被疑者は逮捕されてしまいます。

このように、在宅事件であっても逮捕される可能性があることを念頭に置いた上、前の記事で解説したような点に気を付けていただき、誤解を招くような行動は慎む方が望ましいでしょう。

在宅事件は弁護士に相談を

在宅事件は捜査のペースが遅い上、取調べの回数も身柄事件よりは少ないことが通常であるため、前科がつくことはないだろうなどと軽信してしまうことは珍しくありません。

しかし、在宅事件であっても、捜査の途中で逮捕される可能性は否定できませんし、最終的に在宅起訴されて前科がついてしまうことは、珍しいことではありません。

正しい法的知識に基づき、不起訴処分その他の有利な結果を得られるようにするため、在宅事件についても、弁護士に御相談ください。