離婚裁判の流れをわかりやすく解説

離婚問題

離婚裁判の流れをわかりやすく解説

福岡法律事務所 副所長 弁護士 今西 眞

監修弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 副所長 弁護士

このページでは、《離婚裁判》についての基本的な情報を詳しくお伝えします。離婚裁判をしたい場合や離婚裁判を起こされた場合の参考にしてもらえたらと思います。

離婚裁判を提起する前に

裁判の前に、裁判所の調停委員会をはさんで話し合う「離婚調停」を行う必要があります。調停で意見がまとまらない場合に、最終的な解決を望んで行うのが「離婚裁判」です。
第三者である裁判所が判断することになるので、法律で定められた要件(民法770条1項各号)に該当する事実が認められなければなりません。

家庭裁判所に訴状を提出する

原告が訴状と呼ばれる書面を提出して請求の趣旨及び請求の原因を明らかにするところから、裁判は始まります。訴状の提出先は、夫婦のどちらかの住所地を管轄する家庭裁判所が原則です(人事訴訟法4条1項)。実際には調停が行われた家庭裁判所に申し立てることが多いと思います。

訴状提出の際に必要な書類と費用

  • 訴状2部
  • 夫婦の戸籍謄本及びそのコピー
  • 主張の裏付けとなる証拠及び証拠説明書
  • 離婚とともに年金分割における按(あん)分割合(分割割合)に関する処分の申立てをする場合は年金分割のための情報通知書」及びそのコピー

等の資料が必要となります。実際に何が必要かは事案毎に異なります。
訴状のひな形や記載例等は裁判所HPからも入手できます。

第一回口頭弁論期日の通知が届く

訴状が受理されると、原告と被告のもとに、裁判所から第1回口頭弁論期日を知らせる通知(呼出状)が届きます。被告には、呼出状と一緒に、原告が裁判所に提出した訴状の副本(原本の写しの控え)等が送付されます。訴状の提出から1か月~1か月半程先の日に第1回が指定されることが多いように思います。

被告が答弁書を提出

被告は、原告の訴えの内容に対する自身の認否・反論を第1回口頭弁論期日までに「答弁書」という書類にまとめ、裁判所に提出します。

口頭弁論を行う

口頭弁論とは、裁判官の前で、原告と被告が自身の意見を主張し合ったり、その主張の裏付けとなる証拠をお互いに出し合ったりする手続きのことです。これが裁判手続きの中心となります。主張を書面で提出した場合には、口頭弁論期日で「陳述」することで、その書面を裁判官の前で読み上げたのと同じ効果が生じます。
福岡家裁の場合、1月半~2か月に1度くらいのペースで次回期日が指定されることが多いと思います。

審理の流れ

当事者の主張を整理して争点を明らかにし、事実を確定する作業が裁判の中心となります。
争点とは、原告が訴状に記載した事実のうち、被告が認めなかった事実、または、被告が主張する事実のうち、原告が認めない事実のことを言います。争点となった事実は、当事者が証拠によって立証する必要があります。裁判審理は、基本的にはこの主張・反論と、それらを裏付ける証拠を提出していく手続きになります。

離婚裁判における事実の認定

離婚裁判における原告は、「婚姻関係が破綻した」という事実を主張・立証して裁判官に認めて貰う必要があります。ところで、裁判官は当事者の生活を実際に目で見ていたわけではありませんので、当事者が主張する事実が真実かどうかわかりません。
配偶者の一方が単に「婚姻関係が破綻した」と主張をしたとしても、実際に婚姻関係が破綻したかどうかは当事者以外にはわかりません。これが事実の存否に関する争いです。
また、どのような状態を「婚姻関係が破綻した」と評価するかは人それぞれです。これが事実の評価に関する争いです。
裁判において、当事者は事実を主張するだけでなく、その裏付けとなる証拠を提出することで裁判官に事実を認めて貰う必要があります。この証拠による裏付けを立証と言います。
どのような証拠が有効かは、主張の内容によって異なります。

証拠調べ

事実認定のために当事者が提出した証拠を確認することを証拠調べと言います。証拠には紙媒体の書証や当事者の供述証拠等、様々な形の物があります。

本人尋問や証人尋問

事実認定のために当事者の話を聞く必要がある場合には、尋問期日が設けられます。尋問は、証拠調請求をした側が主尋問をした後に、相手方から反対尋問を受けることになります。さらに必要がある場合には裁判官から補充質問がされます。

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離婚裁判の判決

原告の請求内容について、裁判所が判断するのに十分な事実認定ができれば、裁判官は原告の請求を認めるか、それとも棄却する(認めない)かの判断をします。これが判決です。判決の詳しい内容は、「判決書」という書面に記載され、審理を担当した裁判官がどのような事実を認定したかが明らかになります。事案によって異なりますが、口頭弁論終結から判決までには凡そ1か月ほどかかります。

和解を提案されることもある

和解とは、互いに譲り合いをすることで紛争を解決することを言います。当事者双方が納得する柔軟な解決を図ることが期待できます。

訴えの取下げにより裁判終了

原告が訴えを取り下げた場合、裁判は終了します。判決が確定するまでの間、どの段階でも訴えを取り下げることができます。ただし、口頭弁論を行った後に取り下げる場合には、基本的に被告の同意が必要となります。

判決に対して控訴できる

第一審裁判所の判決に不服のある当事者は、判決送達日から2週間以内に上級裁判所に対して控訴をすることができ、第二審(控訴審)裁判所の判決に不服のある当事者は、上告をすることができます。

判決後の流れ

離婚届を市区町村役場に提出し、戸籍に離婚したことを記載してもらう必要があります。離婚届は、判決の確定後10日以内に提出しなければなりませんので注意が必要です。離婚届を提出する際は、判決書の謄本(原本の内容をすべて写したもの)と確定証明書も併せて提出します。なお、仮に離婚届を提出しなかったとしても、離婚は成立しています。

離婚裁判にかかる期間

司法統計によれば、多くは1年以内に終了しているようです。長くても2年以内に終了しているようです。もっとも、調停でどの程度の話合いができたのかや、争点がどこにあったのか等によってかなりの差が生じると思われます。

よくある質問

離婚届けを提出した後に必要な手続きにはどのようなものがありますか?

まずは、戸籍の問題があります。復籍するか、新戸籍を編成するかを検討する必要があります。また、氏を婚姻前の氏に戻すか、続称するかも決めなければなりません。子供の氏を変更する手続きが必要な場合もあります。事実上、女性の側が手続きを負担することが多いと思われます。

離婚に合意しており養育費のみ争う場合はどのような流れで離婚裁判は進みますか?

話し合いで解決ができない場合には、裁判所が養育費の金額を決めます。公平の観点からみて不合理でない限り、裁判所は標準算定方式という計算式に基づいて金額を決めます。標準算定方式で計算するにも、当事者の収入を認定しなければなりませんので、証拠の提出が求められます。証拠となるのは、給与所得者であれば直近の源泉徴収票、自営業者であれば確定申告書等の資料が挙げられます。

離婚裁判が不成立になってしまったら離婚は諦めるしかありませんか?

諦める必要はありません。ある裁判で請求が棄却されてしまったとしても(前訴)、再度訴えを提起することはできます(後訴)。ただし、後訴では、前訴の口頭弁論終結後に生じた事実しか主張できません。したがって、後訴では離婚が成立する可能性があります。

離婚裁判の流れをケース別で知りたい場合は弁護士にご相談ください

通常、離婚裁判が申し立てられた時というのは、当事者の話し合いでも、調停でも決着が付かなかったことになります。裁判は、離婚をしたい人、逆に離婚したくない人にとっても自分の希望を叶える最後のチャンスです。しかし、離婚の裁判を経験したことが無い場合には、どのような事実が意味を持ち、その事実をどうやって立証するかもわからないと思います。本当に自分の望みをかなえたいのであれば、専門家に相談することを強くお勧めします。

福岡法律事務所 副所長 弁護士 今西 眞
監修:弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 副所長
保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:47535)
福岡県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。