
監修弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 副所長 弁護士
離婚訴訟を提起する場合、または提起されたという場合に、弁護士を付けるのとそうでないのとでどのような違いがあるのか、また、その方法はどのようなものかについて解説します。
目次
離婚裁判は弁護士なしでも対応できる?
裁判の手続に、弁護士は当事者の代理人として関与するものです。したがって、「代理人を立てずに、当事者自身が対応する」ということも理論上は可能ですが、法的な手続ですので、実際にできるかどうかは、やる気や時間、能力などの問題があるところです。
弁護士なしで離婚裁判を行うデメリット
弁護士なしで離婚裁判を行う場合、裁判の手続全てを自分で判断して行わなければならないという問題があります。
書面の用意や裁判の出席などで労力がかかる
離婚裁判も裁判手続の一種ですので、訴状や答弁書、準備書面等、主張や反論等は書面で行わなければなりません。また、訴訟期日への出廷や尋問の申し出や同手続への対応等も自身で行わなければならないというのは、容易ならざるところかと思われます。
離婚原因が主張できず、不利に進む可能性がある
訴訟では、主張や証拠は法的に整理し、的確に行うことが肝要です。法律の要件に当てはまらない主張を乱発しても、有利な結果にはつながりません。相手の主張内容への反論一つとっても、その中には極めて重要な意味を持つ主張と、結論にあまり影響しないものが含まれていることが通常ですし、記憶が曖昧な点を安易に認めてしまい、不利な結論に大きく傾くことも懸念されます。これらの見極めと的確な反論・証拠提出等は、ご自身で対応される場合に苦慮される点かと思われます。
相手に弁護士がついている場合、不利になる
上記のとおり、離婚裁判も法的手続の一種であり、主張等は法的に整理し、的確に行う必要があります。相手方だけが弁護士を入れているという状態は、法的手続に対する素養の差によって、不利な状況に陥ってしまうことが懸念されます。
弁護士に依頼するよりも長期化しやすい
主張や証拠・争点の整理等が的確に行われない場合、無意味な論戦を延々展開してしまい、手続が長期化することも懸念されます。
一人で対応することによるストレスが大きい
多くの方にとって訴訟手続は未経験の分野だと思います。裁判所の独特のルールや手続の対応だけでも、負担は少なくないと思います。相手方の主張は、事実とそうでないもの、目線の違いによって評価が異なるもの等、自身にとっては心外と思われる内容が含まれていることがあります。自身で対応する場合、これを真正面から受け止めてしまうことのストレスもあると思います。
離婚裁判を弁護士なしで進めるときの流れ
あくまで自身で離婚裁判に臨むという場合のおおまかな流れは以下のとおりです。
自分が提起する場合は訴状の作成や、添付書類等とともにこれを提出することが必要です。その際には印紙貼用や郵券の納付等も求められます。適式に訴状の提出が行われた場合、裁判所による相手方への送達・期日指定等が行われます。
その後は期日への出廷や主張や反論、証拠の提出の応酬、証人や当事者尋問等の手続に対応していくことになります。判決に不満がある場合は法定期限内に控訴等の手続をとる必要もあります。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
離婚裁判を弁護士なしで行う場合にかかる費用
離婚裁判を自分で行う場合、基本的には裁判所に納付する印紙や郵券や出廷の際の交通費等のみ、ということになります。印紙の額は請求内容によってもやや異なりますが、離婚のみの場合で13,000円、附帯処分は一件につき1200円を追加です。慰謝料を請求する場合は金額によって計算が変わります。
弁護士に依頼した場合にかかる費用
弁護士に依頼した場合は、上記の実費以外に弁護士費用が必要となります。その金額は事務所によって異なりますし、事案によっても異なるところですが、着手金は税別で30万~60万程度、成功報酬は固定報酬(税別30万~60万)と変動報酬(税別10%~16%)の組み合わせとしているところが多いのではないでしょうか。
弁護士なしでも離婚裁判を有利に進めるには?
弁護士なしで離婚裁判を少しでも有利に進めるためには、知識や情報、経験等が不可欠です。時間や労力等には限界がありますので、専門家が積み重ねてきたものに匹敵するというのは困難だと思いますが、あくまでその道を選ぶという場合は、できる範囲でやるしかないと思います。
離婚裁判を検討中であれば、法律の専門家である弁護士に依頼することをおすすめします
弁護士に依頼した場合には、少なく見積もっても70~100万円前後の手出しは必要になると思います。大きな金額ですが、当初から適切に対応していれば生じなかった不利益等は、慰謝料や財産分与等の金銭的なものだけではなく、離婚そのものは親権・養育費、面会交流等の問題にも及びうるところです。
一旦自分で対応してしまった結果、「すでに不利な内容を認めてしまっていた、当初から依頼しておくほうがよかった」というような事態も懸念されますので、まずは事前に専門家に相談することを強くお勧めいたします。
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保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:47535)