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相続問題

共有名義で相続登記を行うデメリット

福岡法律事務所 副所長 弁護士 今西 眞

監修弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 副所長 弁護士

相続人が複数いる場合、不動産を含む遺産は、相続人の共有となります。

そして、法定相続分又は法定相続分を修正した割合で、不動産の相続登記をすることが可能です。
しかし、共有の相続登記をすることによるデメリットもあります。
本稿では、共有による相続登記をする場合のメリット・デメリットについて解説します。

共有名義とはどんな状態のこと?

共有とは、各共有者が、共有持分に応じて、不動産の部分的な所有権を有していることです。
共有名義での相続登記をすると、共有者である相続人は、当該不動産の全部について、それぞれの持分に応じた使用をすることができます。

共有名義のメリット

共有名義とするメリットは、共有となった物の利用、管理、処分について、共有持分に応じて、各共有者の意向が反映されることです。

例えば、共有物の管理に関する事項は、持分の価格の過半数で決めるのが原則です(民法252条1項)。
一方、共有物の変更、処分は、共有者全員の同意が必要となるのが原則です。

また、共有物の使用収益は、共有持分に応じて行うことができます。

共有名義のデメリット

共有名義とするデメリットは、上記メリットと表裏一体します。

共有者の意見が合わない場合などは、共有物の管理に支障が生じることがあります。
共有者の一部が行方不明になった場合も同様です。
このような場合の対策として、共有物分割や不在者等不明共有者の持分の取得の制度などが設けられていますが、手間とコストが非常にかかります。

また、共有名義の最大のデメリットとして、時間が経てば経つほど、相続により共有者が増えることが挙げられます。
多数いる共有者全員と連絡を取るだけでも一苦労となります。

共有名義で不動産を相続する場合の手続き

一般的には、複数相続人で不動産を相続する場合であっても、遺産分割協議により、各相続人の持分を決めてこれを登記申請します。
もっとも、共同相続人間で協議がまとまらなかった場合には、相続人は、遺産分割調停を家庭裁判所に申し立てることになります。

あくまで調停は裁判所を介した話し合いの手続きであるため、共有名義とすることに同意を得られない場合には、不成立となります。

調停でまとまらなかった場合には、裁判所に遺産分割を定めるよう求める審判を行うことになりますが、裁判所は共有名義にするとの判断を出来るかぎり避ける傾向にあります。
したがって、共有名義で不動産を相続する場合には、話し合いによる共同相続人間の合意が必要となります。

なお、遺産分割を待たずに、法定相続分で暫定的に登記をすることもできます。
ただし、遺産分割により改めて持分移転登記等が必要となり、登録免許税などのコストがかかります。
そのため、このような方法が採られることは稀です。

自分が相続した持分だけ名義変更したい場合

相続人のうち一人についてのみ、相続登記をすることはできません(不動産登記先例昭和30年10月15日民甲2216局長回答)。
相続人の一人に限り登記を申請すると、登記簿上は、相続人と被相続人が不動産を共有していることになります。

共有名義で不動産を相続したくない場合の対処法

①遺産分割調停で、不動産以外の財産を取得できるよう協議をする、②遺産分割の結果共有になった場合でも、共有物分割により不動産を競売にかける、③そもそも相続しない(相続放棄する)などが考えられます。
不動産以外の遺産がどれだけあるかや、他の共同相続人の方針等により、最適な対処法が異なります。

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共有名義の相続登記を解消する方法は?

①共有持分を処分(売却、贈与等)する、②共有物分割調停を申し立て、共有物分割を行う等の選択肢が考えられます。
対象となる不動産の価値、他の共有者の資力、最悪の場合、共有物を競売により売却できる見込みがあるかどうか、といった点により、方針が異なってきます。
個別具体的な状況に応じて、最適な方法を選択することになります。

共有名義での相続登記に関するQ&A

共有名義の不動産の固定資産税は、どう課税されるのですか?

共有名義の不動産の固定資産税については、共有者が連帯して納付する義務を負っています(地方税法第10条の2第1項)。したがって、共有者全員が固定資産税全額を連帯して納付しなければなりません。

実際には、納付書の送付を受けた代表者が他の共有者の持分も含めてまとめて固定資産税を納付することになりますが、代表者が納付しない場合には他の共有者が納付する必要があります。

もっとも、共有名義の不動産の固定資産税は、各共有者が共有持分の割合に応じて負担するものであるため(民法253条1項)、固定資産税を他の共有者の持分分もまとめて支払った者は他の共有者に対して、他の共有者の持分の割合に応じた固定資産税相当額の支払を求めることができます。

なお、相続によって不動産が共有となった場合には、代表者を指定した上で、市区町村に「相続人代表者指定届」を提出する必要があります。提出することによって、届出をした代表者宛てに納税通知書等が届くようになります。

親と長男の共有名義の不動産、親が死亡したらどうなる?

例)家族構成:父・母・長男・次男で、父と長男の共有名義の場合
共有者は、親族といった相続が生じる関係にあることが一般的には多いといえます。
例えば、父、母、長男、次男の家族で、土地について父が2分の1、長男が2分の1の持分割合で共有しており、父が死亡して相続が発生したとします。
この相続において、遺言もなく、遺産分割協議も未了の状態の場合には、法定相続分に従って、本件土地は以下のとおりの持分割合での共有となっています。

まず、上記の例でのそれぞれの法定相続分は、母が2分の1、長男が4分の1、次男が4分の1です。法定相続分に従った割合で父の2分の1の持分をさらに分割して取得することになるため、母が8分の2、長男が8分の1、次男が8分の1の共有持分を相続することになります。
したがって、母が8分の2、長男が8分の5(元々持っていた8分の4+相続によって取得した8分の1)、次男が8分の1の割合で土地を共有することになります。
このような共有状態を解消するには、代償分割や換価分割といった方法で遺産分割を行う必要があります。

共有持分を相続する場合の登録免許税はいくらですか?

相続登記の登録免許税は、不動産の価格(固定資産税評価額)の1000分の4となるのが原則です。
ただし、この登録免許税は、租税特別措置法により軽減されている場合があります。
例えば、令和7年3月31日までに、土地について所有権の保存登記(不動産登記法第2条第10号に規定する表題部所有者の相続人が受けるものに限ります。以下同じです。)又は相続による所有権の移転登記を受ける場合において、これらの登記に係る登録免許税の課税標準となる不動産の価額(注)が100万円以下であるときは、その土地の所有権の保存登記又はその土地の相続による所有権の移転登記については、登録免許税を課さないこととなっています。

共有名義の相続登記についてご心配な点は、ぜひ弁護士にご相談ください

共有名義での相続登記は、問題の先送りにすぎず、いずれ不動産の処分や活用が難しくなるため、基本的にはお勧めできません。
もっとも、場合によっては共有名義による相続登記が最も適切な遺産分割方法となることもあります。

共有名義にすべきか、それとも単独名義すべきかお悩みの方や、ご心配の点がある方は、ぜひ弁護士にご相談ください。
法律の専門家である弁護士が、ご相談者様のニーズに沿った解決に導きます。

福岡法律事務所 副所長 弁護士 今西 眞
監修:弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 副所長
保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:47535)
福岡県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。