監修弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 副所長 弁護士
離婚を行いたい動機として、性格の不一致は代表的なものです。性格の不一致を理由に離婚を行いたい場合、どのような方法で離婚を行うことが考えられるのか等、以下詳細に説明していきます。
目次
性格の不一致で離婚することはできるのか
離婚は、夫婦で話合い、離婚届を提出することで成立します。その場合に、離婚の原因は関係ありません。性格の不一致が原因で離婚することも可能です。詳しくは、次の項目で説明します。
性格の不一致とは
性格の不一致があること(性格が合わないこと)は、裁判所へ離婚調停等を申立てる動機の中で、一番多いものです(司法統計 家事 平成30年度 「32 婚姻関係事件数《渉外》 申立ての動機別申立人別 全家庭裁判所」参照)。 バスタオルを何日ごとに洗うかといった生活面の考え方の不一致から、子どもを私立に通わせるかといった子育て方針の不一致まで、様々なものが含まれます。
法律が定める離婚原因とは?
民法770条1項に、以下のような離婚事由が定められています。
①配偶者に不貞な行為があったとき。
②配偶者から悪意で遺棄されたとき。
③配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
④配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
性格の不一致を原因として、婚姻関係が回復不能なまでに破綻している場合には、「⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当する可能性があります。
性格の不一致で離婚する場合に必要な要素
夫婦の性格が対照的であっても、双方の努力で円満な夫婦関係の修復ができるのであれば、性格の不一致があったとしても、「婚姻を継続し難い重大な事由がある」とまではいえません。「⑤その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当することを示すには、性格の不一致を原因として、婚姻関係が回復不能なまでに破綻していることを示す必要があります。
夫婦関係が破綻した証拠を集める
婚姻関係が回復不能なまでに破綻していることを示すには、性格の不一致を原因として、別居や喧嘩、無視等の具体的にあった事実を集めることが必要です。
例えば、配偶者から送られてきたLINEやメールを保存しておくことが考えられます。また、毎日かかさずつけている日記なども、証拠の一つになり得ます。
長期間の別居
法律上、●年の別居があれば、婚姻関係が回復不能なまでに破綻していることを認定するといった、具体的な年数が定められているわけではありません。
また、婚姻関係が回復不能なまでに破綻していると推定される別居期間は、婚姻期間や、子の有無等によっても異なりますので、一概に●年と示すことは難しいものです。
ただ、一般的には、少なくとも3年~5年程度の別居期間がある場合には、婚姻関係が回復不能なまでに破綻していると認定される傾向にあります。
性格の不一致での離婚の進め方
話し合いによって離婚を行うことができない場合には、離婚調停を行うこととなります。
離婚調停は、家庭裁判所にて、調停委員会が調整を行いつつ、話合いを行うものです。
調停で、離婚を行うことに合意できない場合には、離婚調停が不成立となります。引き続き、離婚を求める場合には、離婚訴訟を提起することになります。離婚訴訟の場合、法定の離婚原因(民法770条1項)の有無によって、離婚が認められるかどうかの判断が変わります。
性格の不一致のみが原因である場合、性格の不一致によって、婚姻関係が回復不能なまでに破綻していることを示すことができなければ、離婚原因に該当しないと判断される可能性が高く、離婚が認められるハードルは高くなります。
離婚の切り出し方やタイミング
性格の不一致を理由に、離婚したいことを相手に話す場合、どのタイミングで切り出せば、相手が話合いに応じる可能性があるのかは、相手の性格や時期等にも依るところです。
例えば、子どもが独り立ちしたときや、定年退職をしたとき等、人生の節目をタイミングとして話してみるのはいかがでしょうか。
性格の不一致と離婚後の子供の親権について
離婚原因ごとによって、親権者をどちらとすべきといった明確な基準があるわけではありません。
子どもの親権について、夫婦間で、離婚後にどちらが親権者となるのかの話合いがつかない場合には、「監護者としてどちらとすべきなのか」を裁判所に判断してもらうこととなります。
裁判所は、今までの養育状況や家庭環境、子どもの意向等、子どもの利益と子どもの福祉に適うかどうかといった基準で判断を行います。現在の監護状況も重視されますので、別居後に子どもがどちらの親権者と、どのような生活を送っているのかも重要な要素となります。
あなたの離婚のお悩みに弁護士が寄り添います
性格の不一致での慰謝料請求について
性格の不一致を理由に、慰謝料を請求するハードルは高いです。
慰謝料は、「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者」に対して、責任を追及するものです(民法709条)。
性格の不一致の場合、他人が一緒に生活する以上、常識や習慣、こだわりの違いなど、互いに我慢・譲歩・理解して生活すべき場合であることも少なくないでしょう。損害賠償請求が認められるには「違法に」「他人の権利又は法律上保護される利益」を侵害したといえなければならず、多くの事案で損害賠償請求は否定されてしまいます。
もっとも、性格の不一致があったとしても、互いに話し合うなど関係修復に向けて努力することを怠ることは許されませんので、何ら努力もせずに離婚に固執するなどした場合には慰謝料が認められることもあります。また、性格の不一致で喧嘩が絶えなかったような場合に、気持ちとして相手方が解決金といった名目で金銭を支払うことに合意する可能性がありますので、諦めずに、相手方に気持ちを伝えてみてはいかがでしょうか。
よくある質問
性格の不一致で離婚しても財産分与を受け取ることは可能ですか?
財産分与は、夫婦が婚姻中に協力して取得した財産を、離婚する際に又は離婚後に分けることをいいます。離婚の原因は関係ありませんので、性格の不一致で離婚を行う場合でも、財産分与を求めることができます。
離婚裁判で相手が離婚を拒否し続けた場合、離婚は認められないのでしょうか。
離婚訴訟を行った場合には、最終的に、裁判所が離婚を認めるか認めないかの判断を示します。相手が拒否したとしても、離婚を認める旨の判断が出された場合には、離婚が認められます。
離婚が認められるかどうかは、法定の離婚原因(民法770条1項)があるかどうかで異なります。性格の不一致によって、婚姻関係が回復不能なまでに破綻していることを示すことができなければ、離婚原因に該当しないと判断される可能性が高く、離婚が認められるハードルは高くなります。
ただ、示すことができない場合でも、他に不貞等、法定の離婚原因(民法770条1項)にあたる事由がある場合には、離婚が認められる可能性があります。
性格の不一致で離婚した場合のデメリットはありますか?
性格の不一致のみが離婚を行いたい理由で、かつ、性格の不一致によって、婚姻関係が回復不能なまでに破綻していることが示せないような場合には、話合いで離婚を行えるようにする必要があります。
相手が離婚したくない場合には、話合いが長引く可能性があります。
性格の不一致で離婚したい場合は弁護士にご相談ください
性格の不一致を理由に離婚されたい場合に、具体的に夫婦間でどのような事情があるのか、婚姻関係が回復不能なまでに破綻しているといえそうな状況なのか、他に原因となる理由があるのか等により、どのような手続きで話合いを進めていくのか(調停をすぐに申立てるか等)考える必要があります。
性格の不一致で離婚を考えているものの、どのように進めていけば良いか悩まれている方は、一度、離婚に詳しい弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。
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保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:47535)