遺留分とは|不公平な相続割合で揉めないための方法

遺留分とは|不公平な相続割合で揉めないための方法

遺言は、遺産の行方に対する遺言者の意思表示として強く尊重されるものですが、その分配内容が一部の相続人に著しく偏っている場合等には、遺留分侵害の問題が生じます。
遺留分に関する規定は強行法規であり、その行使は遺留分権利者の正当な権利なのですが、相手方の理解が得られず、話し合いが進まないというようなトラブルは珍しいことではありません。
法律問題を取り扱うドラマやバラエティ番組、インターネット等、情報として触れる機会は増えているものの、遺留分という言葉は完全に周知されているとは言い難く、そのような権利があること自体知らないという場合も少なくありません。また、“制度に対する知識”という障害以外にも、感情的な反発等を受けることもありますし、「自宅不動産がほぼ唯一の遺産」というような事案では、遺留分侵害額請求権の行使に対し、支払うべき金銭が捻出できないという場合もあるでしょう。

遺留分に関する制度を正しく理解することは、遺言書の作成段階においても、遺留分の権利を行使し、または行使されているという方にとっても、とても重要な点ですので、本記事を参考にしていただければ幸いです。

遺留分とは

遺留分とは、「被相続人の財産の中で、法律上その取得が一定の相続人に留保されていて、被相続人による自由な処分に対して制限が加えられている持分的権利」のことです。遺言者は、自身が亡くなった後の遺産の行方を遺言で指定することができ、その内容は強く尊重されますが、遺留分の範囲で制限を受けます。

相続人の立場からみると、遺言がなければ法定相続分として得られたはずの遺産は、全額は保障されないものの、その一部は遺留分の制度によって守られているということです。その趣旨は、遺族の生活保障や遺産に対する潜在的持分の清算、共同相続人間の公平等と説明されています。

以下、遺留分の権利を有する親族の範囲や、権利を失う場合等、具体的な内容について説明していきます。

遺留分の請求が認められている人

遺留分は、相続人が被相続人(=遺言者)の兄弟姉妹以外の場合に認められる権利です(1042条)。言い換えれば、相続人が被相続人(=遺言者)の配偶者、子、直系尊属の場合が該当します。子については、その代襲相続人も遺留分権利者です(901条、1042条2項)。遺留分権利者の資格や順位は、法定相続権と同様に解されますので、直系尊属の遺留分が問題になるのは、子とその代襲者がいない場合だけです。

相続放棄や相続欠格者、廃除された者等、遺留分の権利を失うべき例外にあたらない限り、これらの者は遺留分を有しますし、相続開始時は胎児でも、無事に出生すれば遺留分を有します(886条)。

遺留分の請求が認められていない人

遺留分の規定は強行法規ですので、「兄弟姉妹以外の相続人(1042条1項)」に該当する限り、基本的には奪われにくい権利です。もっとも、本来ならば遺留分権利者の範囲にある者でも、一部の例外に該当する場合は、遺留分の権利を有しませんので、以下それぞれ説明します。

兄弟・姉妹

民法は遺留分権利者の範囲について、「兄弟姉妹以外の相続人」と規定しています(1042条1項)。被相続人の兄弟姉妹は遺留分権利者の範囲から明文で除外されているということです。したがって、兄弟姉妹は遺留分の請求はできません。兄弟姉妹自体が遺留分を有しないので、兄弟姉妹の代襲相続人も遺留分は有りません。
兄弟姉妹に遺留分が認められない理由は、親子や夫婦の場合と違い、兄弟姉妹は経済的に独立し合うことが多いので、遺族の生活保障や潜在的な持分の清算等の趣旨が妥当しにくい等と説明されます。

相続放棄した人

相続放棄は、その相続について一切の権利義務を放棄するということです。相続放棄をした者は、その相続について、はじめから相続人でなかったものとして取り扱われます(939条)。相続人の地位にない以上、「兄弟姉妹以外の相続人」に該当しません。
よって、相続放棄をした者が遺留分を請求することはできません。相続欠格者や廃除の場合と異なり、放棄の場合は代襲相続もありません(887条2項)。

相続欠格者にあたる人

相続欠格者とは、民法891条各号に規定する、相続人としての資格を失うべき事由に該当する者のことを言います(891条)。欠格事由の内容は、被相続人等に対する殺人、殺人未遂で刑に処せられた者(891条1号)や、詐欺・強迫によって遺言を書かせたり、遺言を妨げたりした者(891条3号、4号)等、相続制度の基盤を破壊するような重大な非行・不正が対象とされています。
相続人としての資格を失う以上、相続欠格者に遺留分の権利はありません。
ただし、相続欠格者に子がいる場合、子は代襲相続人として遺留分権利者となります(887条2項、1042条1項)。

相続廃除された人

被相続人に対する虐待や、重大な侮辱、その他の著しい非行があった場合、被相続人はその推定相続人を相続から廃除することを請求できます。家庭裁判所が、廃除を認める審判を下し、これが確定した場合、その相続人は相続人の資格を失います。廃除によって相続人の資格を失った者は、遺留分の権利もありませんので、請求することはできません。
ただし、廃除された者に子がいる場合、子は代襲相続人として遺留分権利者になります(887条2項、1042条1項)。

遺留分を放棄した人

被相続人の生前に、その相続について放棄することはできませんが、第1順位相続人の遺留分は、被相続人の生前において、家庭裁判所の許可の下、事前に放棄することができます(1049条1項)。家庭裁判所から、遺留分の事前放棄を許可する審判が下されている場合、事前放棄した者は遺留分を請求することはできません。また、その代襲相続人も遺留分の主張はできないものと解されています。

ただし、遺留分の事前放棄は、相続人としての地位を失うものではありませんので、被相続人が遺留分を侵害するような内容の遺言を作成せず、またはこれを破棄した場合は、通常の遺産分割協議に参加することができます。

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遺留分侵害額請求権

改正前民法では、遺留分減殺請求権と呼ばれていたものは、民法改正によって「遺留分侵害額請求権」となり制度も大きく変更されました。改正前は、金銭で支払うか現物を返還するかの選択権は、遺言で利益を受けた側にありましたが、改正後は、遺留分の侵害に対しては「侵害額に相当する金銭の支払を請求できる」との規定に変更され、金銭で請求する形に一本化されました。

遺留分の割合

遺留分の割合は、遺産全体に対する遺留分の割合(総体的遺留分)と、各遺留分権利者の具体的な持分割合(具体的遺留分)に大別することができます。遺留分権利者が直系尊属のみの場合、総体的遺留分は1/3(1042条1号)、それ以外の場合、総体的遺留分は1/2です。具体的遺留分は、総体的遺留分に対し、遺留分権利者の法定相続分を乗算することで算出します。

具体的遺留分は、遺留分権利者の人数が多いほど、各自の持分割合が少なくなる関係にあります。他方で、総体的遺留分は、常にこの割合ですので、遺産総額に対する遺留分の総額は、遺留分権利者の人数に関わらず、常に1/2または1/3ということです。

各相続人の具体的な遺留分割合
相続人 全員の遺留分の合計割合 配偶者 子供 父母 兄弟
配偶者のみ 1/2 1/2 × × ×
配偶者と子供 1/2 1/4 1/4÷人数 × ×
配偶者と父母 1/2 2/6 × 1/6÷人数 ×
配偶者と兄弟 1/2 1/2 × × ×
子供のみ 1/2 × 1/2÷人数 × ×
父母のみ 1/3 × × 1/3÷人数 ×
兄弟のみ × × × × ×

遺留分の計算方法

遺留分は、基礎財産に各自の具体的遺留分割合を乗じて算出します。ここにいう基礎財産とは、【①被相続人が相続開始時(死亡時)に有していた財産(遺贈財産を含む)+②贈与した財産のうち、遺留分算定の基礎に含まれるもの(1044条)-相続債務】で算出された金額です。①や②には株式のように時価額が一定ではないものや、不動産のように資産価値の評価が分かれるものも含まれますので、算出は必ずしも容易ではありません。

遺留分を貰うには、遺留分侵害額請求を行う

遺言や贈与等で、遺留分が侵害された場合、請求するかどうかの判断は遺留分権利者各自の判断に委ねられています。言い換えると、よほど殊勝な相手方でもない限り、請求しない限り支払われることはない、ということです。 遺留分侵害額請求権は、相続の開始と遺留分を侵害する贈与・遺贈を知ったときから1年以内に行使しなければ時効によって消滅してしまいます(1048条)。少なくとも1年以内に、明確な証拠の残る形(内容証明郵便)で、相手方に行使の意思表示をしておくことが何より重要です。

遺留分を渡したくない場合にできること

遺留分侵害額の請求を受けた場合、当該遺留分権利者が欠格事由に該当する場合や、遺言に廃除の意思表示が記載されている場合でもない限り、全く渡さないで済むような方策はほとんどありません。遺留分を放棄しても、その他の遺留分権利者の具体的遺留分は増えませんので、遺留分権利者に遺留分を放棄してもらえれば、総体的に渡す分は少なくなりますが、放棄するかどうかはその人の判断次第で、こちらが積極的に行いうる方法ではありません。

したがって、不動産等の評価額や、基礎財産に含むべき贈与の範囲を争い、基礎財産の金額を減らすことで具体的遺留分の金額を減らすことや、遺留分権利者の特別受益等を主張立証して、侵害額の範囲を減らすというような争い方をする他ありません。

遺留分の権利者が亡くなった場合はどうなる?

遺留分権利者が亡くなった場合、その遺留分を含む、一切の権利義務は相続人が承継します。民法も、これを前提に、遺留分侵害額請求権の行使主体を、「遺留分権利者及びその承継人」と規定しています(1046条1項)。したがって、亡くなった遺留分権利者の遺留分侵害額請求権は、相続人が「承継人」として行使することになります。

遺留分に関するお悩みは弁護士にご相談ください

遺留分の問題は、親族同士で対立するものであるため、感情的な対立によって話し合いが困難という場合や、そもそも親族同士で対立すること自体に忌避感を覚え、請求自体をためらってしまう場合等、色々な問題を抱えてしまうものです。

遺留分の請求は、金額の評価に専門的な知識を要する場合も少なくありませんが、遺留分は正当な権利の行使ですので、自身での計算や話し合い、請求等が難しいとあきらめてしまう前に、弁護士に一度相談し、依頼することを検討してみてください。

遺言書は遺留分に配慮した内容にしてこそ、親族同士が相続問題で争うことを防止できるものです。これから遺言書を作成しようと考えている方は、事前に弁護士等の専門家に相談しておくことをお勧めします。

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この記事の監修

福岡法律事務所 所長 弁護士 今西 眞
弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 所長弁護士 今西 眞
福岡県弁護士会所属。弁護士法人ALGでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。
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