亡くなった人が連帯保証人だった場合の相続

相続問題

亡くなった人が連帯保証人だった場合の相続

福岡法律事務所 所長 弁護士 今西 眞

監修弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 所長 弁護士

親子の関係があったとしても、子が親の財産全てを把握しているとは限りません。予想もしない資産をもっていたり、逆に、予想もしない負債を負っていることもあります。本稿では、比較的よく発生する「親(被相続人)が他人の連帯保証人になっていた」というケースについてご説明します。

亡くなった人が連帯保証人だった場合の相続はどうなる?

相続が発生すると、相続人は、一審専属権を除き、一切の権利義務を承継します(民法896条)。この一切の権利義務には、預貯金、不動産等のプラスの財産はもちろん、連帯保証債務、連帯保証人の地位も含まれます。
したがって、被相続人が、連帯保証人となっていた場合、相続人が、連帯保証人としての地位を引き継ぐことになります。

連帯保証人の債務負担の相続割合は?

相続人は、連帯保証債務を法定相続分どおりに負担することになります。相続人間で、負担割合の定めをしたとしても、債権者の合意がない限り、債権者に対しては、法定相続分どおりの義務を負うことになります。

相続人の中に債務者がいる場合

相続人の中に、主債務の債務者がいる場合、その相続人は、主債務者としての地位と、連帯保証人としての地位を有することになります。したがって、その相続人が、相続放棄をした場合、連帯保証人としての責任は免れますが、主債務者としての責任は免れません。

相続開始後に発生した債務は?

相続人は、連帯保証人としての地位を承継します。そのため、相続開始後に発生した債務であっても、相続人は、原則として、法定相続分に応じて、連帯保証債務を負担することになります。

ただし、保証契約が、個人根保証契約(民法465条の2)になる場合は、例外となります。個人根保証契約の場合、主たる債務の元本は、主債務者又は保証人の死亡により確定します(民法465条の4第1項3号)。したがって、個人根保証契約を相続する場合、被相続人(保証人)の相続開始時点であった債務に限り、責任を負うことになります。

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連帯保証の時効について

①債務の時効、②連帯保証債務の時効の双方について検討を要します。
まず、①主たる債務者に生じた事由の効力は、保証人にも及ぶとされています(付従性)。そのため、主たる債務について、消滅時効が完成してれば、連帯保証人は、消滅時効を主張して、債務を免れることができます。なお、主たる債務者が時効の利益を放棄しても、その効力は保証人には及ばないとするのが判例です(大判昭和6年6月4日)。
また、②連帯保証債務について消滅時効が完成している場合にも、連帯保証人は、保証債務に消滅時効を主張できます。
なお、消滅時効の期間は、いわゆる債権法改正(平成二九年六月二日法律第四四号による改正)の前後で異なります。債権法改正の施行日(令和2年4月1日)前に債権が生じた場合、消滅時効期間は、改正前の規定によります(附則10条。原則10年ですが、短期消滅時効に注意。)。一方、債権法改正の施行日以後に債権が生じた場合、消滅時効期間は、改正後の規定により、「債権者が権利を行使することができることを知った時から五年間」又は「権利を行使することができる時から十年間」となります(民法166条1項)。

相続放棄をすれば連帯保証人にならずに済む

相続放棄をした場合、連帯保証人とならずに済みます。
ただし、相続放棄は、相続人とならなかったとみなされるものです(民法939条)。そのため、連帯保証債務のようなマイナスの財産を負担しなくて済む代わりに、プラスの財産を得ることもできなくなります。
相続放棄をするかどうかの決断は、慎重に行うようにしましょう。

連帯保証人の地位は他の相続人に引き継がれる?

相続放棄をした場合、相続放棄をした者がはじめから相続人とならなかったものとみなされます。
この結果として、同一順位の相続人が他にいる場合、同相続人が、連帯保証人として責任を負う割合が高くなることがあります。
例)被相続人が父、相続人が長男、二男の2名だった場合、長男及び二男は、2分の1(50%)の割合で、連帯保証債務を相続します。二男のみが、相続放棄をした場合、長男は、連帯保証債務を100%負担します。
また、同一順位の相続人がいない場合に相続放棄がなされると、次順位の相続人が、連帯保証債務その他の権利義務を承継することになります。

連帯保証人であることを知らなかった場合の対処法

連帯保証契約は、個人間でなされていることが少なからずあります。そのため、金融機関等に対する調査だけでは、連帯保証債務が分からず、相続の手続がひと通り終わってから、連帯保証債務があったと分かるケースがあります。
そのような場合でも、例外的に、相続放棄が認められる場合があります(最判昭和59年4月27日、東京高判平成10年2月9日など)。諦めずに弁護士に相談してみましょう。

相続人が亡くなった人の連帯保証人だった場合は?借金は一人で相続するの?

主債務者が被相続人、連帯保証人が相続人であるというケースもあります。
このような場合、相続人は、主債務を含めて相続を放棄したとしても、連帯保証人としての責任は免れません。そのため、相続放棄をするメリットが大きくないといるでしょう。
もっとも、被相続人が、当該主債務以外に多数の債務があり、かつ、当該主債務以外について、相続人が、連帯保証人になっていないような場合、相続放棄をするメリットがあります。

例)被相続人がAから500万円、Bから1000万円、Cから2000万円を借り入れており、相続人が、Aに対する債務についてのみ連帯保証人となっている場合。相続放棄を選択しない場合、A、B、C全ての債務を相続することになります。相続放棄を選択する場合、連帯保証人としてAに対する債務についてのみ責任を負うに留まることになります。

連帯保証人の相続は弁護士にご相談ください

連帯保証債務を承継するかどうか、弁済するかどうか、相続放棄をするかどうか、適切に判断するためには、他の遺産も含めた法律関係を正確に把握することが不可欠です。
被相続人が、連帯保証人になっていることが分かったら、必ず弁護士にご相談ください。

福岡法律事務所 所長 弁護士 今西 眞
監修:弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 所長
保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:47535)
福岡県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。