生命保険金は相続の対象になる?

相続問題

生命保険金は相続の対象になる?

福岡法律事務所 所長 弁護士 今西 眞

監修弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 所長 弁護士

日本の生命保険加入率は非常に高いです。公益財団法人生命保険文化センターの調査によると、2022年には、男性では70%以上、女性では80%以上が生命保険に加入しいてるとのことです。
亡くなった方(被相続人)が、生命保険に加入していたとき、受け取りの手続、遺産分割の要否、納税の要否などは、多くの人々に身近な問題です。
本稿では、生命保険と相続について解説します。

生命保険金は相続の対象になる?

生命保険は、人が亡くなったことにより受け取りが可能となるものですので、まず、「生命保険が相続・遺産分割の対象となるか」(生命保険金の遺産性)という点を考える必要があります。

この点については、保険契約の効果として、保険金受取人として指定された者が、保険契約の効果として生命保険金請求権を原始取得することを前提に、生命保険金は、被相続人から相続人へ承継されるわけではない(=受取人固有の権利である)として、生命保険金は、遺産分割の対象とならないと考えられています(このような考え方を前提に、最判平成14年11月5日民集56巻8号、最決平成16年10月29日民集58巻7号などの裁判例が積み重ねられています。)。
そのため、生命保険金請求そのものは、遺産分割の対象とはなりません。

ただし、注意を要するのは、相続税の納税の場面です。生命保険は、みなし相続とされ、生命保険金を受け取った者は、遺産を受け取った者と同様に、相続税又は贈与税の納税が必要となることがあります(相続税法3条、5条、6条他)。
そのため、生命保険の受取人である方は、納税の必要がないか、税理士、税務署に確認をすることが望ましいです。
また、遺産に比較して、生命保険金があまりに多額な場合、特別受益として持ち戻しの対象となることもあります(最決平成16年10月29日民集58巻7号)。

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生命保険金を請求できるのは「受取人」として指定されている人

生命保険金を受け取ることができる者は、保険金受取人(保険法2条5号)として指定された者です(同法42条)。
保険法40条1項では、『保険者は、生命保険契約を締結したときは、遅滞なく、保険契約者に対し、次に掲げる事項を記載した書面を交付しなければならない』とされています。この書面が、一般的に、「保険証券」と呼ばれるものです。この保険証券には、『保険金受取人の氏名又は名称その他の保険金受取人を特定するために必要な事項』の記載が義務付けられており、保険証券を確認すると、受取人が分かる仕組みになっています。

受取人が既に亡くなっている場合

生命保険金の受取人が指定されていた場合、生命保険契約者(被相続人となるべき者)より先に、受取人が亡くなった場合、受取人の相続人全員が、受取人となります(保険法46条)。

受取人が指定なしの場合

生命保険の受取人が指定されていない場合、相続人が受取人となると解されますが、念のため約款を確認しましょう。

生命保険金の請求 に必要な書類

生命保険金の請求に必要な代表的な書類として、保険証券、死亡保険金請求書、保険金受取人の戸籍謄本等、保険金受取人の印鑑証明書、被保険者の住民票、被保険者の死亡診断書、事故状況報告書(災害死亡保険金を請求する場合)などがあります。
保険会社により必要書類が異なることがありますので、保険会社のウェブサイトを確認する、カスタマーサポートに連絡する等により、必要書類を必ず確認しましょう。

生命保険金を受け取るための手続き

生命保険金を受け取るには、受取人から保険会社に連絡することになります。受取人から連絡をしない限り、保険会社は保険金を支払うことができません。保険金の請求権には時効がありますので、手続を忘れないようにしましょう。

生命保険会社に連絡を取る

生命保険金を請求する場合、まずはカスタマーサービスに連絡することが近道です。連絡先は、保険証券の記載や、保険会社のウェブサイトなどで確認できます。また、公益財団法人生命保険文化センターに、保険会社のサービスセンター・コールセンターの連絡先一覧を掲載しています。

請求手続をする

上記の連絡を基に、保険会社から、手続の説明や、保険金請求のための書類の提供があります。必要書類に記入する等し、指示された添付資料を添えて、保険金を請求することになります。

生命保険会社の審査

提出書類・添付資料を基に、保険会社は、約款の保険金支払事由に該当するか、免責事由に該当しないか等、保険金支払のための要件の審査をします。
当然ですが、保険会社が、保険金支払の要件を満たさないとき、保険金は支払われません。このようなとき、あくまで保険金の支払いを求めるのであれば、生命保険相談所への相談、裁定の他、裁判(民事訴訟)の手続などが考えられます。

生命保険金の受け取り

保険会社の審査を通過すれば、指定の口座に保険金が入金されます。

生命保険金は3年以内に請求しましょう

前記のとおり、生命保険金の請求権は、『行使することができる時』から3年間で時効により消滅します(保険法95条1項。ただし、かんぽ生命保険の場合、5年が時効となります。)。生命保険金を受け取ることができると分かった時点で、可及的速やかに手続をとる方が安全です。

生命保険金は相続放棄しても受け取れる

前記のとおり、生命保険金請求権は、受取人固有の権利であるため、「遺産」にはなりません。そのため、相続放棄をした場合であっても、生命保険金を受け取ることができます。
「遺産だけだと債務超過だが、生命保険金で返済しよう」とする場合、法的・経済的にはマイマスですので、慎重に判断しましょう。

生命保険金の受け取りに税金はかかる?

前記のとおり、生命保険金を受け取った場合、相続税又は贈与税の納税が必要となることがあります。どのような課税がされるかは、生命保険契約者と受取人との関係により変わってきます。

契約者と被保険者が同じ人で、受取人は相続人

この場合、相続税がかかります(相続税法3条1項)。相続税が課税されるため、基礎控除の規定(同15条)等も適用されます。

契約者が受取人

この場合、生命保険金は、一時所得となり、所得税がかかります(所得税法34条1項)。また、住民税もかかります。所得税は、総収入金額(保険金・解約返戻金) - その収入を得るために支出した金額(実払込保険料) - 特別控除額50万円] × 1/2との計算式で算定されます。計算が複雑なため、税理士や税務署に相談することをお勧めします。

契約者と被保険者と受取人がすべて違う人

この場合、贈与税がかかります(相続税法5条)。贈与税は、贈与された財産の価格から110万円を控除し、残額に一定割合を乗じて計算されます。贈与税の税率は、一般贈与財産と特例贈与財産により異なりますので、税理士や税務署に相談することをお勧めします。

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生命保険金を受け取る場合、生命保険金以外の財産の調査・検討が不可欠なことが多いです。また、生命保険金を受領しすぎた場合、遺産分割が難航することもあります。
生命保険金の受取等でお悩みの方は、なるべく早めに弁護士に相談してみることをお勧めします。

福岡法律事務所 所長 弁護士 今西 眞
監修:弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 所長
保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:47535)
福岡県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。