監修弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 副所長 弁護士
むちうち症(外傷性頚部症候群、頚椎捻挫等)は、追突事故等の中程度の交通事故において多く見られる傷病名です。画像検査には映らない等の特徴により、慰謝料の算定方法にも若干の影響があるところですので、その相場等について以下解説します。
目次
むちうちで請求できる慰謝料は2種類ある
人身損害のうち、慰謝料と名のつくものには、入通院慰謝料と後遺障害慰謝料の二つがあります。
前者の入通院慰謝料は、事故による怪我の治療で入院や通院をした場合に生じる慰謝料です。後者の後遺障害慰謝料は、後遺症が認定された場合に、その等級に応じて生じる慰謝料です。
まずは交通事故チームのスタッフが丁寧に分かりやすくご対応いたします
むちうちの慰謝料相場
むちうちの慰謝料の計算は、自賠責の計算方式や保険会社独自の計算方法、裁判所や弁護士が用いている計算基準の三種類に大別されます。以下は主に弁護士基準について説明します。
通院のみの場合の慰謝料相場
裁判所や弁護士が用いている通院慰謝料の計算方法は、基本的にはどのくらいの期間通院を要したのかという「通院期間」を元にして算定します。下記表の弁護士基準の欄には同じ通院期間でも2種類の数字が書かれていますが、むち打ちの場合は小さい方の金額を用いることが通常です。大きい方の金額は骨折など、客観的に怪我の存在等が観察できるものに用いられる数字だからです。
通院期間 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
1ヶ月 | 8万6000円 | 28万円/19万円 |
2ヶ月 | 17万2000円 | 52万円/36万円 |
3ヶ月 | 25万8000円 | 73万円/53万円 |
4ヶ月 | 34万4000円 | 90万円/67万円 |
5ヶ月 | 43万円 | 105万円/79万円 |
6ヶ月 | 51万6000円 | 116万円/89万円 |
入院した場合は金額が上がる
入通院慰謝料という呼び方からも明らかなとおり、慰謝料は通院だけではなく、入院した場合についても計算の対象となります。通院は一日のうちせいぜい数時間の負担ですが、入院は一日中治療のために不自由を余儀なくされますので、通院の場合よりも入院の場合のほうが計算の基礎となる金額が高くなります。
後遺障害が残った場合の慰謝料相場
入通院慰謝料と後遺障害慰謝料はそれぞれ明確に区別されるものです。前者は症状固定までの治療期間に対する慰謝料であるのに対し、後者は治療が不要となった症状固定後の状態において、後遺症が認定された場合にのみ、その等級に応じて支払われるものだからです。等級による金額の違いについて、12級と14級を比較すると以下の表のようになります。
後遺障害等級 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|
12級13号 | 94万円 | 290万円 |
14級9号 | 32万円 | 110万円 |
むちうちの入通院慰謝料を計算する方法
自賠責基準
実通院を各月10日ずつとした場合、10日×2×4300円×3カ月=258,000円となります。
弁護士基準
こちらも均等に10日ずつ通ったものと仮定すると、上記表のとおり、53万円となります。
主婦の場合でも慰謝料は受け取れる?相場に違いはある?
慰謝料の認定において、職業の違いはあまり問題になりません。主婦でも有職者でも、事故のために怪我を負い、そのために治療を要したというのであれば、基本的には慰謝料の対象です。もちろん、医師が治療の必要性を肯定することは大前提ですが。
主婦の慰謝料と休業損害について適正な入通院慰謝料には適切な通院が重要
自賠責保険の計算方法に実通院日数が用いられている点や、弁護士基準でも実通院日数が影響することがあるという点が独り歩きしてしまっているのか、中には通院すればするほど慰謝料の金額が大きくなると誤解されている方も散見されます。ある程度の通院は必要ですが、過剰に通院しすぎても、慰謝料は増えないどころか、過剰診療として治療費の返還(≒慰謝料から差し引く)というような事態を招きかねません。
交通事故によるむちうちの慰謝料請求は弁護士にお任せください
慰謝料の請求には、上記のとおり、色々な計算方法の考えかたがありますし、保険会社もその道に精通したプロですので、弁護士が交渉するのと、本人が自分で主張するのとでは、増額に対する見通しは大きく異なります。
通院の頻度等、誤解したままに自己判断で行動したことで本来得られたはずの経済的利益を減らすことも、早期に弁護士に相談することによってリスクを最小化できますので、事故にあったらまずは相談することを強くお勧めします。
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保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:47535)