別居中の親権への影響

離婚問題

別居中の親権への影響

福岡法律事務所 副所長 弁護士 今西 眞

監修弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 副所長 弁護士

別居を行う場合、子どもは、片方の親の元で監護されることになります。監護者・親権者を定める場合、どのようなことが重要となるのか、以下説明します。

子供を連れて別居した場合の親権への影響は?

別居をすることと、子どもの親権者となることに、どのような影響があるのが、具体的にみていきましょう。

子供を連れて別居した方が親権獲得に有利?

子どもの親権者として、どちらが適するのかを考える重要な要素の一つとして、「継続性」があります。「継続性」とは、現状の監護者の監護養育状態が安定しており、子が生活環境にも適応しているときには、その環境を重視するという考え方です。
実際、同居している親が、現在の監護状況を評価され、親権者と指定されることが多々あります。
そのような実情があるために、子供を連れて別居した方が、親権にとって有利なのでは?と質問をされることがありますが、親権者は、子どもの福祉を一番に考えて定めるべきものですので、親権の取得のためだけに、子どもを連れて別居をすることはおすすめしません。

子供を勝手に連れて別居した場合

両親で合意ができていないにもかかわらず、片方の親が、子どもを連れ去った場合には、「未成年者略取罪」(刑法224条)の構成要件に該当する可能性があります。
また、互いに子どもを連れ去り合う状況となれば、子どもの監護環境が安定せず、子どもの福祉のためになりません。連れ出す行為が、子どもの福祉のためにならない場合には、親権者として不適切と判断される一要素にもなるところです。

監護者指定について

親権の内容には、子の身上監護と財産管理があります。この内、子の身上監護(身体上の監護保護をする権利)が監護権にあたります。
離婚した夫婦の間や、別居中の夫婦の間で、どちらが子どもを監護するかを決めたい場合に、家庭裁判所で、子の監護者について協議を行い、定めることができます。

別居中の面会交流について

再度の同居とならない限り、子どもは、どちらかの親と同居ができない状態に置かれます。
面会交流は、子の福祉のために行うものです。一般的に、親子の交流は、子の福祉のために重要なものですので、長期間にわたり継続的に実施されることが望まれます。
別居中の場合は、父母間での葛藤が大きく、なかなか面会交流が行えないという場合があります。
しかし、面会交流は、子の福祉のために重要なものですので、面会交流への態度も、親権者として適正があるかどうかを判断する重要な要素となります。
当事者間で、話合いができない場合には、家庭裁判所で、面会交流に関する取り決めを行うことができます。

子連れ別居は実家に行くことで親権獲得に有利になることも

別居を行う場合、住居を確保しなければなりません。しかし、専業主婦や扶養内で就労していた女性の場合、一人で賃貸物件を借りることが難しい場合があります。
実家に居住することができる場合には、同居の両親等により、監護の補助(サポート)が期待でき、子どもにとって安心して生活のできる環境を整えることにつながります。
子どもにとって、良い監護環境を整えられることは、親権者として適格性を有するかという判断において重要なこととなります。

住民票の異動

住民票は、他の市区町村に転出・転入する場合、引越前の市区町村にて、転出前に転出届を提出して転出証明書を受け取ったうえで、引越先の市区町村において、転入した日から14日以内に転出証明書を添えて転入届を提出する必要があります。
また、同一の市区町村内で転居する場合でも、住民票のある市区町村に対して、転居した日から14日以内に転居届を提出する必要があります。
子どもの転校について、新しい住民票が必要な場合もありますので、必ず、住民票の移動は適切に行いましょう。
別居の原因がDVやストーカー行為等によるものの場合には、市区町村に対して住民基本台帳事務におけるDV等支援措置を申し出て、「DV等支援対象者」となることにより、加害者からの「住民基本台帳の一部の写しの閲覧」、「住民票(除票を含む)の写し等の交付」、「戸籍の附票(除票を含む)の写しの交付」の請求・申出があっても、これを制限する(拒否する)措置を講じることができます。 詳しくは、住民票のある市区町村にお問い合わせされることをおすすめします。

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親権者となるための条件

親権者は、子どもの健全な成長を助けることができる必要があります。
親権者の適格性の判断をする基準として、母性優先(幼児期について、特段の事情が無い限り、母性的な役割を持つ監護者に、監護養育を委ねることが、子の福祉に合致するという考え方)、継続性(現状の監護者の監護養育状態が安定しており、子が生活環境にも適応しているときには、その環境を重視する考え方)、子の意思尊重、きょうだい不分離、面会交流の許容(子ともう一人の親との面会交流)、等が挙げられます。
子どもの従前の監護環境から、現在の監護環境、今後の予想される監護環境まで、幅広く事情がみられます。
別居に関わることとして、別居先での監護環境が安定しており、子どももその環境に適応している場合には、その環境を維持する方向で監護者や親権者の検討がなされることが多々あります。

よくある質問

母親が子供を置いて別居した場合、父親が親権を取れるのでしょうか?

親権者は、子どもの健全な成長を助けることができる必要がありますので、子どもの年齢にも寄りますが、一般的に、母性的な役割を持つ監護者に育てられることが望ましいと考えられます。
子どもの主たる監護を行っていた母親であっても、子どもを置いて行った理由が、子どもの福祉に適わないものであれば、子供を置いて出て行った事実が親権者として不適切であると判断される一要素になります。 そもそも、母性的な役割を持つ監護者は、母親に限られません。父親がその役割を担っていたのならば、父親が親権者となる可能性は高いですので、「母親が子どもを置いて別居した」ということよりも、父親として、これまでどのような監護を行ってきたか、が重要になるのではないでしょうか。

高校生の子供と一緒に別居した場合は子供が親権者を選ぶことができますか?

子どもが15歳以上の場合に、監護者や親権者を定める場合、裁判所は、その子の陳述を聴かなければならないと規定されています(人事訴訟法32条4項)。
高校生の子どもであれば、自分の今後の生活も踏まえて、親権者としてどちらを希望するのか、意見を表明することができますし、その希望は尊重すべきものです。
そこで、子どもが選択した親との生活環境が安定するものであれば、子どもの希望が尊重され、親権者が定められます。

母親が子供を連れて別居しても親権者争いで負けることはありますか?

子どもは、別居となると、生活場所が変わらずとも、片方の親がいない環境に置かれることになりますので、少なからず影響を受けます。
そのような影響を受ける子どもの負担を少なくするためにも、母性的な役割を持つ監護者に育てられることが望ましいものです。
5-1と重複しますが、母性的な役割を持つ監護者は、母親に限られません。主たる監護を行うのが父親であった家庭において、子どもが父親と引き離される状態は望ましくありません。
主たる監護者から引き離して、子どもを連れ出す行為は、子どもの福祉のためになりませんので、親権者として不適切と判断される一要素になります。
そこで、主たる監護者でなかった母親が子供を連れ出したならば、親権者として不適切と判断されかねず、親権者となることが難しくなるといえます。

別居後の親権についての不安は一人で悩まず弁護士へご相談ください。

両親の別居は、子どもにとって、生活環境が大きく変わるだけでなく、精神的にも負担をかけうるものです。子どもをどのような環境で誰が監護することが望ましいのか(親権者として誰がふさわしいのか)は、それまでの監護状況等々により、一つ一つの家庭で異なります。
子どもの親権者として、どのように行動を行っていくことが望ましいのか悩まれている方は、一度、離婚に詳しい弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

福岡法律事務所 副所長 弁護士 今西 眞
監修:弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 副所長
保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:47535)
福岡県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。