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離婚問題

「接近禁止命令」でDVから身を守る|申し立ての流れや注意点

福岡法律事務所 副所長 弁護士 今西 眞

監修弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 副所長 弁護士

配偶者、事実婚や同棲相手から暴力などを受け、更に生命又は身体に重大な危害を受けるおそれが大きいDV被害者を保護する法律があります(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(以下、「DV防止法」))。まだまだDV防止法について知らない人も多く、被害に悩んでおられる方も少なくありません。

ここでは、DV防止法に基づき裁判所が命じることができる「接近禁止命令」について解説します。

接近禁止命令とは?

接近禁止命令とは、配偶者や同居する交際相手から暴力を受けているなどといった被害者を保護をするために、被害者(申立人)の申し立てをうけ、裁判所が加害者(相手方)に対して命ずる(配偶者暴力等に関する保護命令)ものの1つで、「6か月間、被害者の身辺につきまとったり、通常所在する場所の付近の徘徊を禁止されます(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律(以下、DV防止法)第10条)。

違反した場合

保護命令を出された相手方は、保護命令に違反すると、刑事罰があります(1年以下の懲役又は100万円以下の罰金)。刑事罰はもちろんですが、逮捕される可能性もあり、保護命令にはこれ以上の加害者の行為を抑止する効果が期待できます。

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接近禁止命令が出る条件

保護命令は、配偶者からの身体に対する暴力又は生命等に対する脅迫を受けた被害者でなければ裁判所へ保護命令を出してもらうよう申し立てることはできません。また、暴力や脅迫があったとしても、配偶者から身体に対する暴力によりその生命や身体に重大な危険を受けるおそれが大きいときでなければならず、一度暴力などがあれば接近禁止命令が出されるわけではありません。

接近禁止命令以外の申し立てておくべき保護命令

保護命令には、接近禁止命令の他、接近禁止命令の実効性を確保するために、申立人への電話等禁止命令、申立人の子への接近禁止命令、申立人の親族等への接近禁止命令、退去命令があります。接近禁止命令以外の各保護命令は単独で出すことができず、接近禁止命令と同時か、接近禁止命令が出ている場合に限られています。

電話等禁止命令

電話等禁止命令を発せられた者は次の行為を禁止されます(接近禁止命令の期間中に限られます。)。

  • 面会の要求
  • 行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又は知り得る状態に置くこと
  • 著しく粗野又は乱暴な言動
  • 無言電話、又は緊急やむを得ない場合を除き、連続して電話をかけ、ファクシミリや電子メールを送信すること
  • 緊急やむを得ない場合を除き、午後10時から午前6時までの間に電話をかけ、ファクシミリや電子メールを送信すること
  • 汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物を送付し、又は知り得る状態に置くこと
  • 名誉を害する事項を告げ、又は知り得る状態に置くこと
  • 性的羞恥心を害する事項を告げ、若しくは知り得る状態に置き、又は性的羞恥心を害する文書、図画その他の物を送付し、若しくは知り得る状態に置くこと

子への接近禁止命令

申立人と同居している未成年の子(15歳以上の場合は、子の同意が必要)の身辺につきまとい、又はその通常所在する場所の付近を徘徊することを禁止されます(接近禁止命令の期間中に限られます。)。幼い子を連れ戻すと疑うに足る言動を行っていることその他の事情があることから被害者がその同居している子に関して相手方と面会することを余儀なくされることを防止するため必要があると認められるときに申立人の生命又は身体に対する危険を防止するために命じられます。

親族等への接近禁止命令

申立人の親族その他申立人と社会生活において密接な関係を有する者(以下、「親族等」といいます。)の身辺につきまとい、又はその通常所在する場所の付近を徘徊することを禁止されます。相手方が親族等の住居に押し掛けて著しく粗野又は乱暴な言動を行っていることその他の事情があることから申立人がその親族等に関して相手方と面会することを余儀なくされることを防止するために必要があると認められるときは、申立人の生命又は身体に危害が加えられることを防止するために命じられます。申立人の15歳未満の子を除き、親族等の同意が必要です。

退去命令

2か月間、申立人と共に生活の本拠としている住居から退去すること及び当該住居の付近を徘徊することを禁止されます。例えば、被害者が自宅から逃げ出したあと、荷物を取りに戻るために一時的に退去させる必要がある場合などに命じられます。

接近禁止命令の申立ての流れ

保護命令の申し立ては、相手方による暴力を受けた状況など所定の事項を記載した書面で行わなければなりません。必須ではありませんが、事前に配偶者暴力相談支援センターや警察へ相談したうえで、相談内容等を申立書へ記載して裁判所へ申し立てるのが一般的です。申立てがされると、裁判所速やかに審尋期日を開き、双方の言い分を聞いたうえで保護命令を命ずるか否か決定を出します。決定については、配偶者暴力相談支援センターや警察に通知されます。

①DVセンターや警察への相談

DV被害に遭ったら、配偶者暴力相談支援センターや警察へ相談することが重要です。手続き的には、保護命令の申し立てにあたり、必須ではないものの申立書へ配偶者暴力相談支援センターや警察へ相談した内容を記載することが求められるためです。また、保護命令に限らず、暴力などは離婚事由になりますし、損害賠償請求も可能なので、証拠を残すという意味でも重要です。

警察への相談は、緊急性があれば110番も必要ですが、警察にはDV被害などについて相談できる専門窓口(♯9110)が設置されているので、緊急性がなければこちらへ電話することをお勧めします。

配偶者暴力相談支援センターは全国各地に設置されており、配偶者暴力相談支援センター、婦人相談所、振興局、男女共同参画センターなどの名称で設置されています。

相談実績がない場合

配偶者暴力相談支援センターや警察へ相談したことがない場合は、相手方から受けた暴力や脅迫を受けた状況など所定の事項について供述書を作成し、公証人の認証を受けたうえで申立書へ添付しなければなりません。

②裁判所に申立てを行う

申し立てができるのは本人だけ

申立てが出来るのは、配偶者(事実婚を含む)や生活の本拠を共にする交際相手から身体に対する暴力又は生命等に対する脅迫を受けた者に限られます。親や兄弟などの親戚であっても他人が申し立てることはできません。

申立先

保護命令の申立先は、次の地方裁判所のいずれかへ申し立てることができます。

①相手方の住所(日本国内に住所がないとき又は住所が知れないときは居所)の所在地を管轄する地方裁判所
②申立人の住所又は居所の所在地を管轄する地方裁判所
③当該申立てに係る配偶者からの身体に対する暴力又は生命等に対する脅迫が行われた地を管轄する地方裁判所

必要書類

保護命令には次の書類が必要です。

①申立書2部(正本・副本)
②委任状(弁護士が代理する場合)
③戸籍謄本及び住民票(婚姻関係(事実婚含む)にある場合)
※外国人の場合は外国人登録事項証明書
④住民票、賃貸借契約書、公共料金の支払い名義がわかる資料、写真、メールなど生活の本拠を共にする事情を証明する書類(生活の本拠を共にする交際相手である場合)
⑤宣誓供述書(配偶者暴力相談支援センターや警察への相談がない場合)
⑥証拠2部(原本・写し)
例えば、診断書、怪我をした部位の写真、手紙やメール、陳述書など

申立てに必要な費用

保護命令の申し立てには、手数料として収入印紙1000円分と郵便切手2000円程度を提出することが必要になります。

③口頭弁論・審尋

保護命令の申立書を添付書類と一緒に裁判所へ提出したら、裁判所は、配偶者暴力相談支援センターや警察から相談内容などを記載した書面の提出を求めるとともに、申立人から速やかに事情を聞きます。そして、申立から1週間程度で原則として口頭弁論又は審尋期日をもうけ、相手方から事情を直接聞いたうえで判断がされます。早ければ、審尋期日にその場で言い渡されます。

④接近禁止命令の発令

審尋期日において、相手方から事情を聞くことで、要件を満たすと判断できれば、その場で保護命令が出されることもあります。保護命令は、相手方への決定書きの送達又は期日での言渡しにより効果が発生します。

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接近禁止命令における注意点

発令されるためにはDVの証拠が必要

接近禁止命令が出されるには、法律上の要件が存在することを立証することが求められます。立証には客観的な証拠が重要になります。診断書、ケガの写真、音声録音、動画、メール、LINEなどのSNSなど、なるべく複数、申立に近い時期のものを準備するようにしてください。

DV加害者と離婚するためにすべきことについて 用意するべき診断書について

相手に離婚後の住所や避難先を知られないよう注意

申立書に住居所を記載すると、相手方に居場所を知らせることになり、報復を受ける可能性も否定できません。このため、申立人の住居所が相手方に判明することによって申立人が被害にあう可能性がある場合は、申立人は、住民票や相手方と一緒に暮らしていた住所を記載することが認められています。ただし、裁判所からの郵便物を受け取れる場所を届けでることが必要です。

モラハラは対象にならない

精神的被害については、保護命令の対象とされていないので、モラハラを理由に接近禁止命令の申し立てを行うことはできません。

離婚前の別居で知っておきたいポイント

接近禁止命令に違反した場合の対処法

万が一、相手方が接近禁止命令に違反した場合には、すぐに警察へ通報してください。 保護命令が発せられると、法律上、裁判所は警察(申立人の住所又は居所を管轄する警視総監又は道府県警察本部長)へ通知することとされていますので、迅速に対応してもらえます。なお、たまたま、街で会ってしまったという場合は、故意によるものではないため、保護命令違反とはなりません。

接近禁止命令に関するQ&A

接近禁止命令の期間を延長したい場合はどうしたらいいですか?

接近禁止命令の期間は6か月です。6か月を経過したあとも被害の恐れがある場合には、再度の接近禁止命令の申し立てを行うこととなります。延長という制度はなく、改めて接近禁止を命じるための要件を満たしているのか判断されることになります。申立書類も改めて揃えなければなりません。

接近禁止命令はどれくらいの距離が指定されるのでしょうか?

接近禁止命令では、具体的な距離やエリアが指定されるわけではなく、申立人の住居その他の場所において申立人の身辺につきまとい,又は申立人の住居,勤務先その他その通常所在する場所の付近をはいかいしてはならないなどと命じられます。

離婚後でも接近禁止命令を出してもらえますか?つきまとわれて困っています。

離婚後であって、婚姻中に暴力を受け、離婚後も暴力の恐れがあるなどの場合であれば接近禁止命令がだされます。

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DVで接近禁止命令を申し立てる際は弁護士にご相談ください

保護命令を申し立てることを検討するということは、暴力等の被害に悩まれている状況だと思います。一人では不安でしょうし、万が一、証拠をそろえることが不十分で保護命令の申し立てが却下されてしまうと、恨みをかってしまい暴力等の被害がエスカレートしかねません。しっかりと対策をする意味でも、不安を解消する意味でも弁護士へ相談されることをお勧めします。

福岡法律事務所 副所長 弁護士 今西 眞
監修:弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 副所長
保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:47535)
福岡県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。