セックスレスとは

夫婦間におけるセックスレスとは、法律上の条文や定義はありませんし、信頼性のある明確な統計もありません。
一般的には、夫婦がお互いにセックスをすることができる年齢であるのに、一定期間にわたりセックスがない状態が続いていることを指すことが多いようです。

セックスレスは離婚原因として認められるのか

セックスに関する価値観は人それぞれですし、現代社会においては価値観が更に多様化していますので、一概に言い切ることはできません。
例えば、夫婦の婚姻前又は婚姻後の話し合いにより、セックスレスでかまわないという合意があれば、何ら問題はありません。
問題は、婚姻期間の途中からセックスレスに陥ってしまい、かつ夫婦の一方がこれに不満を抱いている場合です。
このような場合、民法７７０条１項５号の「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に該当するとして、裁判離婚が認められる可能性がありますが、裁判所の判断に際しては、セックスレスに至る具体的事情が考慮される傾向にあります。

セックスレスでの離婚率

セックスレスでの離婚率については、信頼性のある明確な統計はありません。そもそも、セックスレスに関する法律上の定義がないため、信頼性のある統計を得ることは困難といわざるを得ません。
もっとも、セックスレスを理由とする裁判例が散見されることを考慮すると、セックスレスを理由として離婚に至る確率は一定程度あるものと推測されます。

セックスレス離婚の慰謝料

そもそも、セックスレスについて法律上の定義がない上、信頼性のある明確な統計もないため、セックスレスに関する慰謝料について述べることは非常に困難です。
慰謝料を検討する場合、以下のような事情を考慮することができますので、順に解説します。

慰謝料の相場

慰謝料については、法律上の規定はなく、当事者間で合意することさえできれば問題はありません。
ただし、裁判所が判決で慰謝料を定める場合、第三者との不貞行為があったことを理由として定めることが多いと考えられ、セックスレス「のみ」を理由とする慰謝料が認められるか否かについては、そもそも疑問があります。
もっとも、当事者間で例えば「解決金」の名目で金銭を支払う合意ができれば、訴訟上の和解を成立させることはできます。

請求方法

慰謝料請求の方法は、一般的に、以下のとおりです。

• 相手方に対し口頭、電話、メール、LINE、手紙等で請求する。
• 相手方に到着した日が分かるようにするため、内容証明郵便で請求する。
• 裁判所に調停を申し立てる。
• 民事訴訟（離婚訴訟において請求する場合を含みます。）を提起する。

セックスレス離婚の切り出し方

セックスレスを理由として離婚を切り出す場合、具体的な切り出し方については、婚姻期間、セックスレスに至る経緯、相手方の性別・年齢・性格、夫婦間の子の有無などにも左右されますので、一概にいうことは困難です。
セックスという個人の機微に触れる問題ですので、感情的にならないように気を付け、冷静な話し合いをすることが望ましいでしょう。

離婚したくないと言われた場合

セックスレスを理由として離婚を求めたものの、相手方から離婚をしたくないと言われてしまうケースは散見されます。
このような場合、まずは相手方の真意を見極めた上で、相手方の性格や、セックスレスに至る経緯などを慎重に考慮し、適切に行動することが望ましいでしょう。
なお、話し合いによる離婚（協議離婚）が成立しない場合、家庭裁判所に離婚調停を申し立てることができますので、ご検討ください。

セックスレス離婚に必要な証拠

セックスレス離婚に必要な証拠については、一概にいうことは困難です。
一般論として、例えば以下の項目で解説するような証拠が考えられますので、ご検討ください。

夫婦の生活時間帯などがわかる表

夫婦がセックスレスに至る背景として、夫婦のすれ違いがあることが非常に多いといえます。
そうすると、例えば、夫婦それぞれの生活時間帯が分かるような資料を用意することにより、その生活時間のすれ違いを理由としてセックスレスに至ったという経緯が分かるようにしておくという立証方法が考えられます。
日付、時間、行動については、できるだけ詳細なものである方が良いといえるでしょう。

セックスレスについて夫婦で話した会話の録音

夫婦間のセックスレスについては、夫婦の間で話し合いがされることが多いでしょう。
もし、セックスレスの具体的な期間などに関する会話が録音されていれば、それがセックスレスであることの直接な証拠となる可能性があります。
また、音声による会話だけでなく、メールのやり取りにおいてセックスレスについて話し合われている場合、そのメールも証拠となる可能性があります。

セックスレスのことが書かれた日記

セックスレスについて、具体的・直接的な証拠はそもそも存在しないことが非常に多いですし、セックスレスについて話し合った夫婦の会話の録音なども存在しない方が多いです。
そうすると、夫婦の一方がセックスレスについて日記などに書き残し、その日記などが証拠として用いられることの方が多いと考えられます。
ただし、日記などは一方的に書かれたものであり、その記載内容の信用性には疑問を持たれがちです。
例えば、セックスレスの事実について継続的に記載されていたり、迫真性のある感情が記載されていたりした方が、その日記などの信用性が多少高まる可能性があります。

セックスレスにより離婚する場合は弁護士にご相談ください

現代社会においては、セックスに関する価値観が多様化しており、セックスレスについても個人の様々な考え方があるといえます。
この記事では、夫婦間のセックスレスという問題について、離婚という観点から解説しました。
セックスレスについては、そもそも離婚事由となるか否かや、慰謝料が発生するか否かなど、様々な法的問題点が伴います。
セックスレスにより離婚を検討する場合、弁護士にご相談ください。
弁護士は、法律家として、法的問題点に対してアドバイスをすることができます。