監修弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 副所長 弁護士
養育費の支払いは一般に長期間に及ぶものではありますが、その終期は未成熟子か否か、との判断基準に委ねられるのが根本的な考え方です。
その上で、家裁実務における一般的な取り扱いと、事案に応じた修正等について説明します。
目次
養育費の支払いはいつまで?
原則的に20歳まで
特段の事情のない事案では、通常、養育費の終期は20歳までと設定される傾向にあります。
当事者間の合意が整わない場合等、家庭裁判所が基本とする年齢も20歳です。
成人年齢の引き下げによって18歳までに変わる?
20歳を成人年齢としていたころは、養育費の終期を「成年に達するまで」と定めることも少なくありませんでした。
成人年齢引き下げにかかる法改正後は、具体的な数字を用いることが一般的となりましたが、家裁実務では、法改正後も養育費の基本的な終期は20歳までを基本とする、という傾向にあります。
20歳を超えても養育費を支払い続けるケース
四年制大学に進学する場合
四年制大学に進学した場合、少なくとも22歳の3月までは卒業できず、その間は就労・自立も不可という点に着目して、大学に進学した場合は養育費の終期を延長する旨の規定を置くことがあります。
家裁実務では、20歳までを養育費の終期とした上で、“この時点で四年制の大学に在学している場合は22歳に達した後、最初に到来する3月まで”を終期に変更する、という二段構えの取り決めが良くみられるところです。
病気や事故等で自立していない場合
病気や障害等の個別事情が、経済的な自立に強く影響するものと評価されるような事案では、20歳を超えても養育費の支払義務が続く場合もあります。
20歳未満でも養育費の支払いが終わるケース
高校卒業後に就職した場合
養育費の支払義務は、子が未成熟子である間に生じるものですので、高卒で就職し、経済的に自立した場合等、20歳を待たずして“もはや未成熟子とは評価されない”という場合もありうるところです。
ただし、調停や公正証書で養育費を定めているような事案の場合、子が就職したから一方的に打ち切る、のではなく、養育費の減額調停等の手続きを履践することが不可欠です。
子供が20歳になる前に結婚した場合
成人年齢の引き下げ・婚姻可能年齢の引き上げに関する法改正以前は、成人に達する前に婚姻した場合、以降は成年として取り扱う「成年擬制」という制度がありました(法改正後は成人年齢・婚姻可能年齢はともに18歳に統一されたため、成年擬制という制度自体がなくなりました。)。
このことから、子が20歳以前に婚姻したことと養育費の終期に関連性を連想する方もおられるかもしれませんが、婚姻と経済的自立は必ずしも=ではありませんので、婚姻しただけで養育費の支払義務が消滅するというものではありません。
再婚したら養育費はどうなる?
監護親が再婚したからといって、養育費の支払義務や終期には基本的に影響しません。
再婚相手と子が養子縁組をした場合は、養親が第一次的な扶養義務者となるため、養育費の支払義務が消滅することがあります(※この場合も、養育費の取り決めが調停や公正証書による場合は、家庭裁判所の養育費減額調停等の手続きを履践する必要があります)。
非監護親側が再婚した場合についても、再婚それ自体は養育費に影響するものではありません。再婚相手との間に子を儲けた場合等、扶養家族の増加を事情変更として、養育費の減額等を請求することはありうるところです。
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一度決めた養育費の支払期間は変更できる?
養育費の終期として定めた時期よりも前に、事情変更が生じた場合には、養育費に関する取り決め内容が認められる場合があります。
そのための手続きが、家庭裁判所の養育費増額(減額)調停です。
適用場面は限られるものの、子の経済的自立や、再婚相手との養子縁組等、期間の増減に関わる事情変更が生じた場合には、支払期間そのものが変更される場合もあります。
離婚後の養育費をいつまで払うか(請求するか)に関するQ&A
養育費が支払われない場合、過去分はいつまで請求できますか?請求に時効はありますか?
①何らの取り決めも請求もしていない過去の養育費を遡って請求することは困難です。
ただし、令和8年4月以降に離婚した場合は、法定養育費制度が適用されますので、以下と同様の時効期間が観念されることとなります。
②当事者間の合意や調停等で取り決めた将来分の養育費は、毎月発生し、そこから5年間が消滅時効までの期間となります。
③調停・審判、訴訟等によって既発生の未払分に対する請求が確定した場合は、確定した日から10年間が消滅時効までの期間となります。
子供が留年した場合、または大学院に進んだなどで大学を4年で卒業できない場合、養育費はいつまで支払うのでしょうか?
養育費の終期を取り決める際に、「大学卒業まで」というような不定終期の取り決めをしていた場合でもなければ、留年等の事情が生じたからと言って、当然に養育費の支払い期間が延長されるというわけではありません。
養育費の期間延長や特別の費用、扶養料としての請求等について、相手方が調停等を申し立てることはありうるとしても、不本意ならば争うことも検討すべきところだと思います。
子供が障害児です。養育費の支払いは一生続くのでしょうか?
障害の程度や経済的な状況にもよるところだと思いますが、養育費や扶養料の支払いが20歳を超えても長期継続するという事案はありうるところだと思います。
養育費を負担する側も、いずれは年を取って就労困難・年金収入が主となるでしょうし、子供の側も障害年金の受給や就労支援等による一定程度の自立等もありうるところですので、高額の負担が一生続くとは考え難いものの、相応の負担を求められる可能性は否定できないところです。
養育費をいつまで支払うかなど、養育費に関するお悩みは弁護士にご相談ください
養育費の終期は、一旦取り決めてしまった後は変更することが困難となってしまうものです。
想定外のリスクの回避や、養育費を含む離婚条件に関する適正な取り決めの獲得、離婚協議の負担軽減等、離婚紛議の段階から、弁護士に相談・依頼することを一度は検討されることをお勧めいたします。

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保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:47535)
