監修弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 副所長 弁護士
モラハラとは、モラルハラスメントの略で、蹴るといった直接的な暴力以外の、発言や態度などで精神的に相手方を追い詰める行為であり、精神的暴力(精神的DV)の一種とされています。法律上の定義がありませんが、この精神的暴力のことが「モラハラ」と呼ばれています。法律上の離婚原因(民法770条1項)との関係では、これが「婚姻を継続し難い重大な事由」(同5号)の該当性の有無が問題となります。
目次
モラハラ加害者と離婚したい場合は証拠を用意しておく
離婚原因が何であれ、①夫婦間で話し合う(【協議】)②同意を得られなければ【調停】を行う③それでも同意を得られなければ【裁判】を行うというように進めていくのが一般的です。相手方が離婚の同意をするのであれば、モラハラの事実の有無に拘わらず離婚できます。
残念ながら相手方が離婚に同意しない場合には、上で述べたように、モラハラの事実があったことを証明して、これが「婚姻を継続し難い重大な事由(民法770条1項5号)」に当たると主張する必要があります。この事実を証明するために証拠が必要になります。
モラハラの証拠として有効なもの
家庭内のモラハラは、人目につかないこと、目には見えない精神的な暴力であるため、何を以て決定的な証拠と言えるかが難しいという特徴があります。被害の内容をできるだけ客観性のある証拠を積み重ねて立証していくことになるでしょう。
モラハラの内容を記載した日記やメモ
裁判所は、主観的な証拠より客観性のある証拠を重要視する傾向があります。日記やメモは、本人の知覚や記憶に基づいて作成されるものなので、どうしても主観的なものになりがちですが、可能な限り客観性のある内容・作成方法を心がける必要があります。
証拠になる日記の書き方
内容面では、いつ・どこで・誰に・何を・どのように・なぜ等の項目ごとに整理しながら記載をするとよいかと思います。形式面としては、後に改ざんが疑われないように日付を明確にして、かつ、後に加除訂正等ができないような書き方が好ましいです。例えば、連続した日付で毎日日課のように書く。デジタルデータにして保存データの日付を明らかにしておく等の方法が考えられます。
モラハラの現場を録音・録画したデータ
これも、できるだけ客観性のある証拠にするために、全体の流れをありのままに機械的に録音・録画されたデータで記録しておくのが望ましいです。編集をしたり、都合のいいところだけを録音・録画したものは証拠の価値が低下します。
モラハラ夫(妻)から届いたメールやSNS、LINE
お互いのやり取りをありのままに残しておきましょう。都合のいいところだけを切り貼りしたものは証拠の価値が低下します。連続して撮影するときは、他の端末の録画機能を使って、一連のやり取りを撮影する方法もあります。SNSの場合、送信者が送信した内容を取り消す機能があるものもありますので、証拠が消されてしまう前に保存しましょう。
医師の診断書や精神科・心療内科への通院履歴
最近裁判においても提出されることが多くなったと思いますが、一度だけ診察を受けただけで書いて貰った診断書は証拠としての価値は乏しいと思われます。なぜ診察を受ける必要があったのか、どのような治療がされたのか、いつ・何度通院したかも重要な証拠になります。
親族や友人等、第三者の証言
客観性が大事になります。親族や友人との関係や、相談の内容・頻度・期間・時間等を記録しておくようにしましょう。
警察・モラハラの専門機関への相談履歴
いわゆるDV(ドメスティックバイオレンス)事案としての相談可能な専門機関があります。生命や身体に危険がある場合には警察に相談できるのは当然ですが、そうでなくとも心のケアを専門としている機関があります。
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証拠を集める上での注意点
モラハラ事案に限られませんが、客観性の有無が重要です。データ編集や改ざんが不可能であることや、機械的に収集されているか等が重要になります。
いつでも録音できるようにしておく
いつモラハラがされるのか分からないのであれば、いつモラハラがされても証拠を押さえられるように準備する必要があります。ワンタッチで録音が可能なボイスレコーダーやカメラアプリ等もありますので、事前に準備をしておく必要があります。
データのバックアップを取っておく
相手に知られて消されてしまう危険性はもちろん、デジタルデータは不具合で消えることもあるのでバックアップも取っておきましょう。どうしてもモラハラの証拠が集められないときは
弁護士に相談して証拠の取り方を相談しましょう。以降は弁護士と相談して方針を決めましょう。
離婚前の別居で知っておきたいポイントモラハラの証拠集めに関するQ&A
モラハラの証拠として無断で録音することは犯罪にならないのでしょうか?
現在、秘密録音は犯罪にはなりませんが、民事上の不法行為責任を負う可能性があります。
子供の証言はモラハラの証拠として認められるでしょうか?
証拠としては認められます。証拠の価値については、他の証拠と同様に客観性や証言の具体性等によります。証言する子供の年齢等も重要です。
経験豊富な弁護士がアドバイスさせていただきます
最初に述べたように、モラハラの証拠は集めにくいという特徴があります。弁護士にご依頼いただければ、事前準備の段階から先を見越したサポートが可能です。モラハラでお悩みの方はまずは弁護士にご相談ください。
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保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:47535)