同意書・免責誓約書の効力

代表執行役員 弁護士 金﨑 浩之

監修医学博士 弁護士 金﨑 浩之弁護士法人ALG&Associates 代表執行役員 弁護士

  • 同意書

患者が、手術や一部の検査といった侵襲性の高い治療を受ける前には、医療機関から、同意書に署名するよう求められます。

その後、治療により悪しき結果が生じた際、医療機関から、同意書に同意しているので医療機関としては責任を負いません、などと説明がなされることがあります。この説明は正当なのでしょうか。

同意書

患者は、治療内容を自分で選択することができる権利(自己決定権)を有しています。しかし、通常、患者は医療的な知識を有しませんから、その自己決定権を万全のものとするため、医療機関は、病状、治療のメリット・デメリット、他の治療方法等について十分に説明を行うべきとされています(説明義務)。

そのため、医療機関としては、十分な説明を行った事実、治療に同意を得た事実を証拠として残すべく、同意書に署名を求めるのです。

患者側からすると、同意書に署名した趣旨は、あくまでも治療内容等について説明を受けた上で治療に同意したことを表明するためであり、過誤が生じた場合にこれを許容し損害賠償請求権を放棄することを約束するためではありません。

したがって、同意書に署名したからといって、同意した治療に過誤が発生した場合に損害賠償請求ができなくなるわけではありません。

免責誓約書

医療機関が、同意書の内容を超え、治療により如何なる結果が生じても法的責任を一切追及しない、という内容の免責誓約書に署名を求めてくることがあります。

上述の同意書についての解説内容からすると、患者が免責することに同意している以上は、効力が認められるのではないか、とも思えますが、この効力を否定した裁判例があります。

最判三昭和43年7月16日判時527号51頁は、手術により如何なる事態を生じても一切異議を述べない旨の誓約書を差し入れていた事案について、他の特別な事情がない限り、患者に対して酷に失し衡平の原則に反するとして、同誓約書の効力を無効と判断した高裁の判断は正当であり是認できる、としました。

この最高裁判例からすると、例外的な事情がない限りは、包括的に免責を認める内容の誓約書の効力は否定されると考えられます。

この記事の執筆弁護士

弁護士 上田圭介
弁護士法人ALG&Associates 弁護士 上田圭介
東京弁護士会所属
弁護士法人ALG&Associates 代表執行役員 医学博士 弁護士 金﨑 浩之
監修:医学博士 弁護士 金﨑 浩之弁護士法人ALG&Associates 代表執行役員
保有資格医学博士・弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:29382)
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