看護師の責任
監修医学博士 弁護士 金﨑 浩之弁護士法人ALG&Associates 代表執行役員 弁護士
- 看護師
看護師はどのような職業か?
本ページでは、看護師による医療過誤を紹介します。
看護師とは、保健師助産師看護師法により、「厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者」と定義されています(同5条)。
この定義に看護師の業務内容として挙げられている「療養上の世話」と「診療の補助」は、いずれも看護師の独占業務です。
「療養上の世話」とは、具体的には、食事援助、排泄補助、清潔援助といった内容であり、医師の指示を要しないものが多いです。
「診療の補助」とは、具体的には、医師の指示の下、問診、各種検査、投薬を行うといった内容です。
看護師と医療過誤
上述のように幅広い業務を行うことから、看護師は、入院中の患者にとっては、医師以上に接する機会が多い医療者です。もっとも、接する機会が多い以上、看護師が医療過誤に関わることも少なからず存在します。
看護師には、医療過誤を未然に防止する役割を担っています。例えば、医師の指示、薬剤師の調剤、他の看護師の処置の誤りを発見することが期待されているのです。
その一方で、看護師の過誤によって医療過誤が引き起こされることもあります。
例えば、「診療の補助」を行うにあたっては、患者を取り間違えたり、投与する薬の種類や量を誤ったりすることがあります。これらが過失に当たることは明白です。
「療養上の世話」を行うにあたっても、内容によっては、裁判上、過失と認定されることがあります。以下、裁判例を紹介します。
①多発性脳梗塞の患者がトイレに行き来する間に転倒して死亡した事例において、当時の転倒リスクからすると、看護師には、患者がトイレに行き来する際は必ず付き添うべき義務があったのであり、たとえ患者本人から同行が不要である旨告げられていたとしても過失は否定されない、と裁判所は判断しました(東京高判平成15年9月29日判時1843号69頁)。
②「左上歯銀歯グラツキあり。食事摂取時は必ず義歯装着のこと。誤嚥危険大」と評されていた80歳の患者が、義歯を装着しないままおにぎりを誤嚥して窒息死した事例において、看護師には、少なくとも5分おきよりも頻回な見守りをすべき義務があった、と裁判所は認定しました(福岡地判平成19年6月26日判タ1277号306頁)。
③意識障害の患者の仙骨部に、Ⅳ度の褥瘡が生じた事例において、褥瘡を発症しやすい状態であることを認識していたこと等を理由に、2時間毎の体位変換を中心とする褥瘡を予防する義務を負っていた、と裁判所は認定しました(高松高判平成17年12月9日判タ1238号256頁)。
この記事の執筆弁護士
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東京弁護士会所属
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保有資格医学博士・弁護士(東京弁護士会所属・登録番号:29382)東京弁護士会所属。弁護士法人ALGでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。
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