逮捕後、72時間以内の刑事弁護が
運命を左右いたします
「48(ヨンパチ)」という俗語があります。警察官が人を逮捕した後、48時間以内に検察官に送致する手続をしなければならない(刑事訴訟法203条1項)というルールに由来します。その後、検察官は、24時間以内に勾留請求又は釈放という判断をしなければならない(同法205条1項)というルールがあります。このように、逮捕から「48+24=72時間」という制限時間内に、身体拘束の継続(勾留請求)か釈放かという重要な判断が下されるのです。
また、逮捕後早期の段階で、被疑者の取調べ、参考人の取調べ、証拠物の収集・解析な–どの捜査活動が実施されます。もし、冤罪であることを示す重要な証拠や、情状酌量の余地があることを示す証拠が早期に収集されなかった場合、警察官と検察官が判断を誤ってしまう危険があります。
逮捕後72時間の刑事弁護は、非常に重要です。
逮捕されてしまった人が、正しい処遇を受けられるようにするためには、早急に弁護人の支援を受けなければなりません。
勾留されてしまうと、最大20日間の身柄拘束になります
勾留請求の日から10日(刑事訴訟法208条1項)+10日を超えない勾留延長(同条2項)。これが、法律で定められた被疑者勾留の最大限の期間です。
ところで、勾留された人にとっては、最大20日間という期間は、決して短いものではありません。
その人の家族、知人、仕事仲間などにとっても、精神的な面や経済的な面で、大きな負担となるでしょう。
勾留は、罪を犯した人に対するペナルティーではなく、罪証隠滅や逃亡を阻止するための制度です(同法60条1項)。
ですから、人権保障の観点から、勾留は必要最小限にとどめられなければなりません。
勾留をされてしまうデメリット
もし、あなたが留置施設や拘置所に勾留された場合、学校や職場に行くことができませんし、家族や知人と自由に会うこともできません(弁護人以外との面会を禁止される場合すらあります)。
学校や職場から処分を受けたり、知人や取引先から信用を失ったり、家庭内が不和に陥ったりするかもしれません。大事な支払が滞ることにより、利子や延滞料が発生してしまったり、借家からの退去を求められたりするかもしれません。
勾留には、多くのデメリットが伴います。いかなる場合にも、不必要な勾留は避けなければなりません。
勾留されず在宅事件となった
勾留されずに捜査が進められた場合、「在宅事件」と呼ばれます。 しばしば誤解されますが、逮捕・勾留は、罪を犯した人に対するペナルティーではなく、罪証隠滅や逃亡を阻止するための制度です。ですから、勾留されなかった場合も、刑事事件として終わったわけではなく、在宅事件として起訴される可能性があります。
在宅事件についても、冤罪は絶対に防がなければなりませんし、情状酌量の余地があることを示す証拠が収集されることにより、起訴・不起訴の判断が正しく行われるべきです。
在宅事件についても、弁護人が果たす役割は多くあります。
起訴された場合
起訴されてしまうと 99%有罪となり 前科がついてしまいます。
日本の検察官は、有罪判決を得られるという確信がない限り、起訴しません。その結果、起訴された場合の有罪率は、極めて高いものとなっています。平成30年版犯罪白書(法務省)によると、平成29年の通常第一審における有罪率は、約99.78%でした。
これについて、批判も多くあるものの、「起訴されてしまうと99%有罪になり、前科がついてしまう」という現実は、現実として直視すべきです。
もし冤罪であれば、当然、起訴を未然に防ぐことが不可欠です。
たとえ罪を犯してしまった人でも、不起訴という寛大な処分を得られれば、前科がつかずに、もう一度やり直すチャンスがあります。
前科が付くデメリット
前科がつくデメリットとして、禁錮以上の刑の前科であれば公務員の欠格事由に該当するなど、一定の職業に就けなくなったり、失職したりする場合があります。
また、会社によっては、採用前に前科の有無を確認したり、前科がついた従業員を解雇したりする場合もあります(※就業規則等の内容により異なります)。たとえ解雇されなかった場合も、心理的に職場にいづらくなってしまい、自主退職を選ぶ場合もあり得るでしょう。
このように、前科がついた場合には、法律上、事実上のデメリットが伴います。
国選弁護人と私選弁護人の違い
弁護士の選択 | 料金 | 接見可能時期 | |
---|---|---|---|
国選弁護人 | 不可能 | 安い | 勾留状が発せられた後から |
私選弁護人 | 可能 | 高い | 逮捕直後から速やかに |
本人又は家族等から依頼を受けた弁護士を、私選弁護人といいます。いつでも、どのような刑事事件についても、私選弁護人を依頼することは可能ですので、信頼関係を築くことができる弁護士に相談することが望ましいでしょう。
これに対して、貧困その他の事由により弁護人を選任することができない場合、裁判所(裁判官)に国選弁護人を選任してもらうことが可能です。その時期については、起訴前(被疑者)であれば、勾留状が発せられているか又は勾留請求された場合に限定されますが(刑事訴訟法37条の2)、起訴後(被告人)は、身体拘束の有無を問いません(同法36条)。国選弁護制度は、弁護人を依頼する権利を保障するために設けられた、非常に重要な制度だといえるでしょう。
人生において、被疑者・被告人となることは、幸せなことではありません。
しかし、被疑者・被告人となった全ての人に、弁護人を依頼する権利が保障されなければなりません。