福岡の弁護士による刑事事件の相談

逮捕・監禁罪が成立する場合と
逮捕後の対処法

弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 所長 弁護士 今西 眞

監修弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 所長

逮捕・監禁罪とは

「不法に人を逮捕し、又は監禁した者は、3月以上7年以下の懲役に処する」(刑法220条)。「不法に」、「人(自然人に限ります。)」、を「逮捕」又は「監禁」する行為が対象となります。

「逮捕・監禁罪」は、個人の行動の自由を守るべく、人の行動の自由を不法に制限する行為を処罰するものです。

なお、「逮捕・監禁罪」を犯したことによって人を死傷させた場合には、「逮捕等致死傷罪」となり、傷害罪と比較して重い刑で処罰されます(刑法221条)。

逮捕・監禁罪の成立要件

逮捕・監禁罪における「逮捕」はどのような行為か

「逮捕」とは、人の身体に対して直接的な拘束を加えてその行動の自由を奪うことをいいます。例えば、ロープで手足を縛るなどして動けないようにすることです。

もっとも、保護法益が個人の行動の自由であることから、行動の自由を侵害したといい得る程度の拘束でなければならず、多少の時間継続して行われることが必要とされています。

なお、仮に拘束時間が短くて「逮捕」に該当しないとしても、人の身体に有形力を行使したとして暴行罪に該当するでしょうし、怪我をさせれば傷害罪に該当します。

逮捕・監禁罪における「監禁」はどのような行為か

「監禁」とは、人が一定の区域から出ることを不可能又は著しく困難にしてその行動の自由を奪うことをいいます。「逮捕」と同じく、個人の行動の自由を侵害したと評価できる程度に継続されることが必要です。

「監禁」は、建物や居室、車などに鍵をかけて閉じ込めて脱出不可能にするなど、物理的な遮断を必要としておらず、バイクの後ろに乗せて1km程度疾走した行為で監禁とされたものがあります。また、脱出が容易であったとしても、暴行や脅迫などにより一定の場所から立ち去ることが著しく困難な場合も含まれます。

例えば、凶器を見せて脅されたことで、逃げれば何されるかわからないと怖くて逃げだせなかったという場合にも「監禁」に該当します。

「不法」であること

当然ではありますが、適法に行われた「逮捕・監禁」行為は、処罰の対象となりません。捜査機関による逮捕・拘留など法令上許されているものもあれば、自傷・他傷行為の恐れのある飲酒酩酊者を制圧する場合や懲戒権を行使する場合など、その経緯や態様、程度などから社会的相当性の範囲内として許される場合があります。

とはいうものの、加害者本人が適法だと思っていただけでは不十分で、客観的に適法だといえる状況でなければならないので注意してください。

継続犯

後ろから羽交い絞めし、抵抗されたのですぐに離したという場合は、「逮捕」、「監禁」には該当しません。「逮捕・監禁罪」は、個人の行動の自由を保護することを目的としており、行動の自由を侵害したといい得る程度の時間の継続が必要とされ、瞬時の拘束や閉じ込めなどは逮捕・監禁には該当しません。

このような「逮捕・監禁罪」は継続犯と呼ばれ、逮捕・監禁行為が続く限り、共犯が成立することになります。例えば、誰かが逮捕・監禁行為を開始したあとに加担した場合には、共犯となります。

移動の能力を有する者が客体

「逮捕・監禁罪」は、個人の行動の自由を保護するための処罰されるものだとご説明しました。被害者が逮捕・監禁されていることを認識していない場合は、そもそも行動の自由を制限していないのではいかという問題があります。しかし、判例通説では、被害者の認識は不要とされています。また、法的な意思能力を欠く精神病者や認知症患者に対しても成立すると考えられています。では、そもそも動く意思も能力もない泥酔者や熟睡者はどうでしょうか。この点、自然的、事実的な意味において任意に行動し得る者であれば足り、一時的に行動の自由を失っている者にも「逮捕・監禁罪」は成立すると考えられています。生まれたての嬰児は行動し得る可能性が全くなく「逮捕・監禁罪」の対象にはならないと考えられるものの、自力でハイハイやつたい歩きができる程度の幼児であれば、「逮捕・監禁罪」が成立するとした裁判例があります。

逮捕・監禁罪の刑罰

「逮捕・監禁罪」の刑罰は「3月以上7年以下の懲役刑」です。逮捕してから監禁した場合はどうでしょうか。一見、逮捕罪と監禁罪を犯したようにみえ、2つの罪を犯したようにも思えます。しかし、包括一罪といって一つの犯罪が成立し「3月以上7年以下の懲役刑」のままです。

逮捕・監禁罪に問われるケース

監禁でよくあるのが、「債務者やその親族・友人を事務所へ呼出し鍵をかけて帰らせない。」、話し合いと称して呼出し、「逃げたらどうなるか分かっているな!」などと言い、怖くて逃げだせないようにして示談書や念書にサインさせるというものです。全く非がない相手に対して、脅迫、恐喝、強要目的で監禁することは当然許されませんが、間違いやすいのが、相手にお金を貸したのに、全く返そうとしない相手や、不貞相手といった、非がある相手に対してです。たとえ、相手に非があるとしても、逮捕・監禁してもいいというわけではないので注意してください。

最近では減ったのかもしれないですが、教育と称して行われることもあります。非行や情緒に問題のある子供の更生目的で運営されていたヨットスクールで、自宅に行き、その意思に反して力ずくで合宿所まで連行し、夜間合宿所の格子戸付き押し入れに閉じ込めて鍵を掛け、交代で見張りをさせたり、人の通行を感知する警報装置で人の通行を見張って逃走を防ぐ、日中及び夜間に一定の場所から逃走しないように見張り、逃走したとき実力で連れ戻すなどの行為が逮捕監禁とされています。

誘拐

略取や誘拐の目的で監禁が行われた場合には、略取・誘拐罪だけでなく監禁罪が成立します。このように、逮捕・監禁は、他の犯罪の手段となることも少なくありませんが、強要目的、恐喝目的、強姦目的など基本的に牽連犯ではなく併合罪とされます。併合罪の場合、法定刑の長期を1.5倍されます。

いじめ・虐待

いじめや虐待なのかどうかの判断が難しい場合がありますが、たとえ友人同士の遊びや冗談と考えていたとしても、加害者がどう考えていたかは重要ではなく、客観的に社会相当性を欠くものであれば、逮捕・監禁罪が成立します。また、教育と称して行われたものであっても同じです。強制目的で手錠や足縄で縛って物置に閉じ込めるなどすれば、逮捕・監禁罪に該当します。どの程度であれば許されるのかは個別具体的事案によりますが、体罰が許されない時代であることからすると、程度の問題ではないと考えておくべきでしょう。

私人逮捕

私人による現行犯逮捕は法律上認められており(刑事訴訟法214条)、逮捕罪は成立しません。もっとも、「現行犯人を逮捕したときは、直ちに地方検察庁若しくは区検察庁の検察官又は司法警察職員に引き渡さなければならない。」とされていますので、無用に引渡しが遅くなれば逮捕監禁罪に問われかねません。また、犯人に抵抗されることもあるでしょうから、一定程度の有形力が必要となることも少なくありません。しかし、どの程度まで許されるかはケースバイケースなので、やりすぎると暴行罪や傷害罪などに問われかねません。まさに犯行を目撃した直後であれば、誤認逮捕の可能性は低いと思いますが、どこまでが現行犯人と言えるのかは一般人には判断が難しい場合もあり、安易に現行犯逮捕だと考えてしまうと罪に問われてしまうかもしれません。

逮捕・監禁によって被害者が怪我や死亡した場合

「逮捕・監禁」によって人を死傷させた場合には、逮捕監禁致死傷罪が成立します。逮捕・監禁行為そのものやその手段である行為から生じた場合だけでなく、被害者が走行中の車から飛び降りた場合や監禁された車に他の車両が追突した場合など、被害者自身や第三者の行為が介在した場合でも成立を認めたものがあります。

(法定刑)
逮捕監禁致傷罪:3月以上15年以下の懲役
逮捕監禁致死罪:3年以上の有期懲役

逮捕・監禁事件を起こしてしまったら、早急に弁護士にご相談ください

そもそも、逮捕されれば早期に身柄解放に向けた対応が重要です。逮捕監禁を全くの害意のみで行ったのではなく、何か理由があって行う場合も少なくありません。悪質とまで言えない事案も少なくないでしょう。できるだけ早期に被害者との示談成立を目指し、勾留質問や準抗告に備え、逃亡や罪証隠滅の恐れがないといえる個別具体的な事情と証拠を準備することが重要です。

時間との闘いともいえますので、早期に弁護士へご相談されるようにしてください。

この記事の監修

弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 所長 弁護士 今西 眞
弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 所長弁護士 今西 眞
福岡県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。
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