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窃盗罪とは?構成要件や刑事処分について

弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 所長 弁護士 今西 眞

監修弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 所長

窃盗罪は、弁護人としてよく経験する犯罪です。令和元年の犯罪白書によれば、平成30年の窃盗罪による検挙件数が約19万件、窃盗罪を除く刑法犯の検挙件数が約11万件となっています。
身近な人が窃盗罪で検挙されることもあれば、窃盗罪の被害に遭うこともあります。本稿では、このような身近な犯罪である窃盗罪の被疑者・被告人となった場合について解説します。

窃盗罪とは

窃盗罪は、刑法235条で、『他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。』と定められています。ざっくり説明すると、他人の者を盗んだ場合に成立する犯罪です。
窃盗罪は、未遂でも処罰されます(刑法243条)。

窃盗罪の刑罰

窃盗罪の法定刑は、『十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金』です。これは、起訴(公判請求、略式命令の請求)された場合に科される刑罰です。不起訴になった場合、前歴は残りますが刑罰は科されません。
起訴されるかどうか、起訴されたとして罰金となるか、懲役となるか、執行猶予がつくかは、情状により異なります。同種前科が複数あったり、前科がない場合でも、犯情が重い(例えば、侵入盗を複数回繰り返す等)場合には、懲役(実刑)となる可能性が高くなります。逆に、示談が成立している等の場合には、不起訴となったり、執行猶予が付いたり、罰金で済んだりする可能性が高くなります。

親族間の場合の特例

窃盗罪の特徴として、親族相盗例の定め(刑法244条)があります。
まず、『配偶者、直系血族又は同居の親族』との間での窃盗罪及び同未遂罪の刑は免除されます(刑法144条1項)。また、これら以外の親族を被害者とする窃盗罪は、親告罪、つまり、告訴がなければ起訴できない犯罪となります(同2項)。
このように、親族相盗例の定めがあるため、事実上、『配偶者、直系血族又は同居の親族』との間の窃盗罪については、被害申告や告訴が門前払いされることが一般です。

窃盗罪の構成要件

窃盗罪の構成要件は、①他人の占有する財物を、②窃取すること、③①②についての故意です。これらの他、窃盗罪特有の主観的要件として、④不法領得の意思が必要とされます。

他人の占有する財物

窃盗罪の客体は、「財物」でなければなりません。「財物」とは、不動産を除く有体物をいいます。

不動産の占有侵奪は、別途、不動産侵奪罪で処罰されます(刑法235条の2)。
情報のように形のないものは、窃盗罪の客体にはなりません。ただし、情報が形を成したもの(紙、DVD、マイクロフィルム等)は、窃盗罪の客体となり得ますし、映像、音楽等の著作物に関する無断複製等は、著作権法で処罰されます。また、電気については、財物とみなされます(刑法245条)。

窃盗罪の客体は、「他人の占有する」ものである必要があります。「占有」とは、事実上の支配をいい、事実上の支配は、支配の意思(主観的要件)と支配の事実(客観的要件)により構成されます。例えば、遺失物であれば、支配の事実の要件が欠け、窃盗罪の対象とはなりません(ただし、占有離脱物横領罪により処罰され得ます。)。

「他人の占有する」ものであれば、自己所有のものであっても、窃盗罪が成立します。例えば、貸した物をなかなか返してもらえないときに、勝手に持ち出す行為は、法律上は、窃盗罪が成立してしまいます。

不法領得の意思

窃盗罪、占有離脱物横領罪のような領得罪には、故意の他、特別の主観的要素として、「不法領得の意思」が必要とされます。
不法領得の意思とは、権利者を排除し、他人の物を自己の所有物と同様にその経済的用法に従い利用し又は処分する意思をいいます。大学法学部の教科書的な設例や講義では、自転車を、元の場所に帰す意思で一時使用する行為は、不法領得の意思がないので、窃盗罪は成立しない、と説明されることがあります。

もっとも、このように即断をして、他人の自転車などを乗り回すのは危険です。市営住宅の駐輪場に置かれた他人の自転車を、数時間にわたり乗り回したという事件で、福岡地裁裁判所は、不法領得の意思がないとして無罪を言い渡しました。しかし、福岡高等裁判所は、令和3年3月29日、「数時間にわたり無断で使用することの可罰性を『一時的な無断使用』として否定することは、一般的な社会通念に反し、認められない」として、原判決を破棄し、実刑判決を言い渡しました。「他人の物は勝手に使ったらダメ」という常識に従って行動しましょう。

窃取

窃取とは、他人の占有する財物を、その占有者の意思に反して、自己又は第三者の占有に移転させる行為をいいます。万引きのように、こっそり盗むような行為はもちろんのこと、ひったくりなども、窃取にあたります(ただし、ひったくりは、態様によっては、強盗罪が成立することがあります。)。

窃盗罪に問われる可能性のある行為

窃盗罪に問われる行為として、万引き、ひったくり、置き引き、車上荒らし、空き巣、無断充電等があります。空き巣については、窃盗罪とは別に住居侵入罪等が成立しますし、被害額が同じ場合、侵入盗(空き巣)は、万引きなどより悪質であると評価されることが一般です。

万引きなどの常習犯の刑事処分

窃盗罪により繰り返し処罰をされると、常習累犯窃盗罪により重く処罰されることがあります。常習累犯窃盗罪は、窃盗罪の加重累計であり、盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律3条に規定されています。
その要件は、①常習として窃盗(未遂を含みます。)をしたこと、②行為日の10年以前の間、窃盗(未遂を含みます。)で3回以上、懲役6か月以上の刑の執行を受けたこと(又は刑の免除を受けたこと)です。

常習的に窃盗をしてしまう場合、環境要因(貧困)や心因性の要因(クレプトマニア・窃盗症)が背景事情としてあることが少なくありません。適切な弁護人や、医療福祉関係者の関与により、窃盗の背景事情を明らかにして、再犯を防ぐことが非常に大切です。

窃盗罪の時効

窃盗罪の時効は、7年です(刑事訴訟法250条2項4号)。窃盗罪は、前科のない方が出来心で犯してしまうことが少なくありません。時効まで不安を抱えながら過ごすより、適切な弁護士に相談の上で、自首・被害弁償をしたことが良いこともあります。

逮捕後の流れ

窃盗罪では、現行犯逮捕の場合や、犯行態様が悪質な場合(侵入盗、ひったくり等)に、逮捕・勾留される可能性が高くなります。初犯の場合は、逮捕・勾留されずに在宅捜査、微罪処分・不起訴(起訴猶予)で済むことも多いですが勾留に至ってしまうと、起訴される可能性も高いと考えてよいと思います。逮捕、勾留された場合、適切な弁護人への依頼が望ましいです。また、逮捕、勾留されないような事案でも、再犯防止のための環境づくりの助言を受けるために、一度は弁護士に相談してみましょう。

逮捕された時の流れを図で分かりやすく解説します

窃盗罪に問われた場合の対応について

窃盗罪の被疑者となった場合、早期の被害弁償、示談をすることが最善です。適切な弁護人を選任し、弁護人から被害弁償、示談を申し入れ、不起訴や、刑罰の軽減を目指しましょう。
また、窃盗の背景には、心因性の問題があることも少なくありません。再犯防止の環境を整えるため、適切な弁護人への依頼が望ましいです。

 

窃盗罪に問われた場合は、弁護士へ相談を

窃盗罪は、身近な犯罪です。安いものを盗んだだけだからといったように軽く考えてしまうと、窃盗の反復などより取返しのつかないことになりかねません。窃盗罪の被疑者として警察に取調べを受けた場合はもちろん、窃盗をしてしまいどうしていいかわからない状態のときから、弁護士へ相談し、助言を受けることをお勧めします。

この記事の監修

弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 所長 弁護士 今西 眞
弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 所長弁護士 今西 眞
福岡県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。
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