福岡の弁護士による刑事事件の相談

強制わいせつとなる行動と
逮捕された場合の対処法

弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 所長 弁護士 今西 眞

監修弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 所長

強制わいせつ罪 6ヶ月以上10年以下の懲役(刑法176条)
公然わいせつ罪 6ヶ月以下の懲役若しくは
30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料(刑法174条)

強制わいせつとは、13歳以上の者に対しては、暴行又は脅迫を用いてわいせつな行為をすること、13歳未満の者に対しては、わいせつな行為をすることによって成立する犯罪です。

「暴行又は脅迫」に関し、裁判例では比較的緩やかに評価されています。そのため、強制わいせつは、強制性交等(従来の「強姦」)に比べて、宴会その他の遊びの席で発生しやすい犯罪でもあります。

刑事事件の被疑者となる前から、どのような行為が強制わいせつにあたるのか、理解しておくことが非常に重要です。

強制わいせつ罪とは

強制わいせつ罪は、被害者の性的自由を保護するものです。そのため、客観的に、被害者の性的自由を侵害する行為があれば、強制わいせつ罪等の定める「わいせつな行為」に該当し得ます。そして、刑法では、被害者の年齢、状態、被害者と行為者との関係に分けて、どのような行為があれば、犯罪となるのか、類型化をしています。

強制わいせつ罪の種類

刑法で定められる強制わいせつに関する罪は、①13歳以上の者に対する強制わいせつ罪(刑法176条前段)、②13歳未満の者に対する強制わいせつ罪(刑法176条後段)、③準強制わいせつ罪(刑法178条1項)、④監護者わいせつ罪(刑法179条1項)、⑤①~④の未遂罪(刑法180条)、⑥①~⑤致傷罪(刑法181条1項)があります。これらのうち、④は、平成29年の刑法改正(平成29年6月23日法律第72号・同年7月13日から施行)により新設されました。

①②③が、被害者の年齢に応じた区分、③が、被害者の状態に応じた区分、④が、被害者と行為者との関係に応じた区分です。

公然わいせつ罪
強制わいせつ罪と似た名称の犯罪として、公然わいせつ罪(刑法174条)があります。これは、「公然とわいせつな行為をした」場合に成立する犯罪です。強制わいせつ罪と異なり、被害者が、暴行又は脅迫等を受けている必要はありません。不特定又は多数人が認識できる状態で、わいせつな行為(例えば、全裸で歩き回る等)を行えば、強制わいせつの被害が発生しなくとも、公然わいせつ罪が成立します。

公然わいせつについて詳しく見る

準強制わいせつ
準強制わいせつ罪は、「人の心神喪失若しくは抗拒不能に乗じ、又は心神を喪失させ、若しくは抗拒不能にさせて」わいせつな行為を行った場合に成立します(刑法178条1項)。

「心神喪失」は、泥酔等、自己の性的自由が侵害されていることについての認識を欠く程度であることに注意が必要です。また、「抗拒不能」は、手足を縛られている、酩酊状態、極度の畏怖等で、物理的・心理的に抵抗が著しく困難な場合をいいます。

これらの要件から、「お酒の席で、その場のノリで体を触らせてしまった。後から考えると、嫌だった。」という程度では、準強制わいせつ罪が成立しない可能性があります。

強制わいせつ等致死傷罪
強制わいせつ等致死傷罪は、強制わいせつ罪等(上記①~⑤)を行い、人を死傷せさた場合に成立します。ポイントは、わいせつな行為自体が未遂の場合でも、被害者が死傷してしまうと、この罪が成立することです。

例えば、女性が、夜間、路上で、暴漢から体を触られそうになり、逃げていたところ、転んでけがをしたというような場合や、わいせつ行為をするために、無理やり体を抑えつけたところ骨折してしまったというような場合、わいせつ行為自体が未遂であっても、強制わいせつ等致傷罪が成立し得ます。

被害者が怪我をした分、その罪の下限も重くなっています。

刑罰について

強制わいせつ罪等について定められた刑罰は、次のとおりです。

①13歳以上の者に対する強制わいせつ罪 六月以上十年以下の懲役
※未遂罪の場合は、
任意的減刑(刑法43条本文)
②13歳未満の者に対する強制わいせつ罪
③準強制わいせつ罪
④監護者わいせつ罪
⑤①~④の未遂罪
⑥①~⑤の致死傷罪 無期又は三年以上の懲役

時効について

強制わいせつ罪等、上記①~⑤の罪の時効は、7年です(刑事訴訟法250条2項4号)。これに対し、⑥の致死傷罪については、時効は、15年です(同2号)。

“わいせつ“の定義とは

「わいせつ」な行為とは、被害者の性的自由を客観的に侵害する行為です。胸や性器等の性的部位を触る等がこれにあたります。

行為の態様次第で、わいせつ罪な行為にあたるかどうか、争いになることがあります。そのような場合には、「行為そのものが持つ性的性質の有無及び程度を十分に踏まえた上で、事案によっては、当該行為が行われた際の具体的状況等の諸般の事情をも総合考慮し、社会通念に照らし、その行為に性的な意味があるといえるか否かや、その性的な意味合いの強さを個別事案に応じた具体的事実関係に基づいて判断せざるを得ない」とされています(最高裁判所大法廷判決平成29年11月29日)。

強制わいせつとなる行動とは

13歳以上の者に対しては、「暴行又は脅迫」を用いて、わいせつな行為を行ったとき、強制わいせつ罪が成立します。

この「暴行」について、注意しなければならないのは、「暴行」自体が「わいせつな行為」である場合です。例えば、いきなり陰部を触る行為は、反抗が困難なものとして、わいせつ行為かつ暴行と評価され、強制わいせつ罪が成立してしまう余地があります。宴会の席等で、不意に胸や陰部を触ると、強制わいせつ罪が成立し得ます。

他の犯罪との違い

痴漢との違い

「痴漢罪」という犯罪はありません。俗に言う痴漢行為には、強制わいせつ罪が成立することもあれば、条例違反(迷惑行為防止条例違反)にとどまることもあります。

条文上は、「人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法」で、他人の身体に直接又は衣服の上から触る行為が、迷惑行為防止条例違反(福岡県の場合。福岡県迷惑行為防止条例6条1項)です。

強制わいせつ罪と迷惑行為防止条例違反の区別は流動的です。電車内の痴漢の場合、迷惑行為防止条例違反に問われることが多いですが、痴漢の態様によっては、迷惑行為防止条例違反ではなく強制わいせつ罪とされることが十分にあり得ます。

痴漢について詳しく見る

強制性交等罪との違い

強制性交等罪(刑法改正前の強姦罪)は、「暴行又は脅迫を用いて性交、肛門性交又は口腔性交」を行った場合に成立します。性交等も、「わいせつな行為」に当たりますが、被害者の性的自由に対する侵害の程度が大きいことから、強制わいせつ罪等より重く処罰されることになります。

暴行罪との違い

暴行罪の「暴行」とは、他人の身体に対する物理力の行使をいい、間接暴行の場合(物理力が身体と接触しなかった場合。例えば、他人に向かって石やナイフを投げたが当たらなかった場合)でも、暴行罪が成立します。

強制わいせつ罪の成立要件として、「暴行又は脅迫」が定められていますが、強制わいせつ罪の手段又はわいせつ行為そのものとして「暴行」が行われたときは強制わいせつ罪が成立する余地があり、それ以外の場合には暴行罪(又は傷害罪)が成立すると考えることになります。

暴行罪について詳しく見る

法改正による強制わいせつ罪の変化

親告罪から非親告罪へ

親告罪とは、「告訴がなければ公訴を提起することができない」犯罪のことです。被害者の告訴がなければ、加害者を有罪にできないという制度です。告訴がない場合、仮に、公訴提起により刑事裁判手続が開始されても、公訴棄却となります。刑事裁判になると被害者のプライバシーがさらされ、二次被害が生じるような犯罪が、親告罪とされることが多いです。

これに対して、非親告罪とは、被害者の告訴がなくとも公訴提起が可能な犯罪です。殺人罪、強盗罪などを代表例とします。

強制わいせつ罪は、平成29年の刑法改正(平成29年6月23日法律第72号)により、親告罪ではなくなりました(非親告罪化)。同改正では、改正法施行前の事件であっても、さかのぼって、非親告罪化されていることに注意が必要です(同法附則2条1項)。

監護者わいせつ罪の追加

平成29年の刑法改正(平成29年6月23日法律第72号)により、監護者わいせつ罪が追加されました。これは、親子や、それに類似する関係など、加害者が被害者に対して支配的な関係にあるときに、そのような関係にあることの影響力に乗じてわいせつな行為を行ったことを犯罪とするものです。18歳未満の者を被害者とする場合に、暴行又は脅迫がなくても成立するため、従来の強制わいせつ罪に比べて処罰範囲を拡大するものです。

強制わいせつ罪による逮捕

現行犯逮捕

現行犯逮捕は、「現に罪を行い、又は現に罪を行い終つた者」に対して行うことができます。現行犯逮捕には、犯罪との時間的・場所的接着性が必要である反面、強制わいせつは密室で行われることが少なくないため、強制わいせつ罪に対する現行犯逮捕の数は多くないと思われます。

現行犯逮捕以外の逮捕

現行犯逮捕以外の逮捕は、通常逮捕(刑事訴訟法199条1項)により行われることが一般です。被害者の告訴、被害届の提出や、目撃者による通報などを端緒として、警察・検察が捜査をし、証拠を集めます。その上で、警察官等が、証拠を基に、裁判官の逮捕状を請求し、被疑者を逮捕する、というのが一派的な流れです。

同意の有無について

強制わいせつは、被害者の性的自由を保護するものですので、被害者の同意(承諾)があった場合、成立しないのが原則です。ただし、13歳未満の被害者の場合、性的同意能力がないとされますので、暴行又は脅迫がなくとも、強制わいせつ罪が成立します(刑法176条後段)。

相手が18歳未満の場合

わいせつ行為の被害者が13歳以上18歳未満の場合、監護者わいせつ罪(刑法179条)が成立することがあります。この罪は、被害者の同意があるかどうかに関わらず、成立します。被害者が、わいせつ行為に同意しているとしても、その同意は、監護者としての影響力を行使された結果、同意の過程が歪められた可能性があるのです。そのため、同意の有無に関わらず、監護者としての影響力に乗じてわいせつな行為をした場合が、犯罪とされるのです。

一方、被害者が13歳以上であり、行為者と被害者が、監護者わいせつ罪が成立しない関係にある場合には、被害者の有効な同意があれば、強制わいせつ罪は成立しません。

逮捕された際の対処

逮捕された場合、まず、被疑事実に対する認識次第で方針が異なります。①被疑事実を認める、②わいせつ行為はあったが同意を得ていたと考えている、③そもそも被疑事実自体認めない(犯人ではない、わいせつ行為はしていない)等、被疑事実に対する認識をもとに、どのような方針で刑事手続に臨むか、考える必要があります。

上記①の場合と、時には②の場合、被害者に示談を求めることが得策です。性犯罪の被害者(と主張している人)と直接交渉をすることはまずできません。弁護士に依頼して、方針を決め、必要に応じて示談交渉をすることになります。また、強制わいせつ罪での逮捕の場合、その後の身体拘束が続く(勾留される)可能性が高いです。弁護士に依頼し、示談交渉を行う等の被害者対応の他に、勾留に対する準抗告等、身体拘束からの解放に向けた手続を進めることが望ましいです。

被害者との示談が成立する場合、告訴を取り下げる意思表示を得ておくことが望ましいです。前述のとおり、強制わいせつ罪等は非親告罪となりましたが、告訴の取下げにより、不起訴となる可能性を増やすことができます。

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起訴されてしまったら

起訴されてしまった場合、被疑事実を認めた上で、有利な情状を主張するか、無罪を主張するかで方針が分かれます。犯罪が成立することが明らかであるのに無罪を主張するとか、被害者に二次被害を与えるような訴訟活動をした場合、情状面で不利になることがあります。

公判での方針は、慎重に決めることが望ましいです。

起訴について詳しく見る

強制わいせつについてよくある質問

セクハラは強制わいせつとなりますか。

セクシャルハラスメント(いわゆるセクハラ)とは、一般に、「職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されること」をいいます(雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律11条1項)。

単純な言葉だけでは、わいせつな行為に当たらないとされるため、セクハラ=強制わいせつではありません。もっとも、相手の意に反した執拗なボディタッチなどは、強制わいせつが成立する可能性が否定できません。

逆に、セクハラに当たらないのに強制わいせつに当たる、というのは、考え難いことがあります。

日頃から、セクハラをしないようにしておくことで、強制わいせつ罪の嫌疑をかけられることを防止できるといえるでしょう。

酒の席でついキスをしてしまったのですが、強制わいせつとなるのでしょうか。

相手の意に反して、キスをする行為は、強制わいせつ罪が成立し得ます(東京高判昭和32年1月22日他)。この場合、「キスをされること」そのものを避けることができなかった場合(何ら予告なくキスをした場合など)、他の暴行又は脅迫がなくても、反抗が困難な態様でわいせつ行為(キス)をしたとして、強制わいせつ罪が成立してしまう余地があります。

宴会であっても、その場のノリで普段ならしないようなことをしない、ということは非常に大事です。

相手が18歳未満だと知りませんでした。

教科書的には、行為者が、被害者が13歳以上であり、同意があると誤信して、わいせつな行為を行ったときは、故意がないとして、強制わいせつ罪が成立しないと結論付けられる余地もあります。もととも、実際問題、「13歳以上だったと思った」「同意があると思った」ということを適切に反証することは非常に難しいです。本気でそのような主張をするのであれば、弁護人を選任することが必要不可欠であることはもちろん、そのような主張が認められないリスクを十分に検討すべきです。

弁護士への依頼で、日常生活への影響を最小限に抑えます。

強制わいせつ罪は、日常のちょっとした悪ふざけで成立してしまう余地のある犯罪です。しかし、れっきとした性犯罪であり、法定刑も重いです。強制わいせつ罪にあたり得る行為をしてしまった場合、被害者や警察からのアクションを待つのではなく、積極的に弁護士に相談することをお勧めします。もちろん、逮捕・勾留されてしまった後は、適正な示談や不起訴の獲得のため、弁護士に依頼することをお勧めします。

この記事の監修

弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 所長 弁護士 今西 眞
弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 所長弁護士 今西 眞
福岡県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。
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