逮捕された時の流れを
図で分かりやすく解説します
監修弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 副所長
目次
逮捕後の流れ
警察による逮捕・取り調べ
逮捕されたあとは、まず警察官が被疑者の取り調べを行うのが通常です。そして、警察官が引き続き留置の必要があると思料した時には、被疑者の身柄が拘束された時から48時間以内に書類及び証拠物とともに身柄が検察官に引き渡されます。
逮捕の種類
通常逮捕通常逮捕とは、裁判官から事前に逮捕状の発付を受け、これに基づいて被疑者を逮捕する強制処分をいいます(刑訴法199条1項本文)。
現行犯逮捕現に罪を行い、又は現に罪を行い終わった者を現行犯といい(刑訴法212条1項)、現行犯は何人でも令状なしに逮捕することができます(刑訴法213条)
緊急逮捕緊急逮捕とは、一定の重大犯罪に当たる罪を犯したことを疑うに足りる十分な理由がある場合で、急速を要し、裁判官の逮捕状の発付を待っていたのでは、その目的を達し得ないときに、逮捕の理由を被疑者に告げて逮捕することをいいます(刑訴法210条1項)。
検察への送致・送検
司法警察員から送致された被疑者を受け取った検察官は、被疑者に弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料した場合には直ちにこれを釈放し、留置の必要があると思料する時には被疑者を受け取った時から24時間以内に裁判官に勾留の請求を行います。
送致されない場合
警察の取り調べ段階で事件が終了するような場合等、警察がこれ以上の留置の必要がないと判断した場合が想定できます。
勾留
被疑者の勾留とは、被疑者を刑事施設又は留置施設に拘禁する裁判及びその執行をいいます。被疑者の勾留は、起訴前捜査段階において、裁判官によりなされる強制処分で、被疑者の逃亡及び罪証隠滅の恐れを防止することを目的としてされます。延長を含めて最大20日間、刑事施設内で身柄拘束がされます。
勾留と拘留は別物です
どちらも「こうりゅう」という読みますが、意味合いは全く異なります。「拘留」とは刑罰(刑法9条)のひとつであり、「1日以上30日未満」の期間を刑事施設に拘置するものです。拘留は、懲役や禁固に比べてもっとも軽い刑罰です。
起訴・不起訴の決定
検察官は、被疑者の性格、年齢や境遇、犯罪の軽重や情状そして社会に戻した場合の更生可能性等を考慮して起訴するかどうかを決定する権限を有しています(刑事訴訟法247条、248条)。検察官が、当該事件を起訴するべきであると判断し、実際に起訴がされた場合には、裁判が開始されます。 他方、検察官が当該事件を起訴するべきでないと判断した場合には、裁判は開始されません。
起訴の種類
いわゆる在宅起訴とは、身柄拘束しないまま当該事件を裁判所に対して行う起訴のことをいいます。略式起訴とは、被疑者の同意の下で通常の刑事裁判を開くことなく、検察官が提出した証拠のみにより100万円以下の罰金又は科料を求める起訴のことをいいます。
起訴について詳しく見る不起訴の種類
検察官が被疑者を起訴しないと判断し、裁判所に対して起訴しないことを不起訴処分といいます。不起訴処分の理由には、起訴猶予、罪とならないもの、嫌疑不十分等があります。
不起訴について詳しく見る起訴猶予とは
起訴猶予による不起訴処分とは、被疑者の性格、年齢や境遇、犯罪の軽重や情状そして社会に戻した場合の更生可能性等を考慮して、検察官が裁量に基づいて起訴しないと判断したことをいいます。例えば、被害者との示談が成立した場合等は起訴猶予による不起訴処分がされることが多くあります。
起訴後、保釈されるには
実務上保釈が認められるための要件で特に重要なのは、「罪証を隠滅する恐れがないこと」、「逃亡の恐れがないこと」です。犯罪事実がどのように立証されるかを予測し、また、如何に説得的に逃亡の恐れがないことを裁判所にアピールする必要があります。また、保釈保証金を用意しなければならないことも注意が必要です。
起訴後の勾留について
起訴後の勾留についても、裁判所が勾留するべきと判断すれば、起訴後の勾留が開始されます。起訴前の勾留期間とは異なり、起訴後の勾留は公訴の提起があったときから2カ月とされ、公判との関係で1か月ごとに更新されます。起訴前に勾留がされていた場合には、そのまま身柄拘束が引き継がれます。
刑事裁判
検察官が裁判所に対して、公訴を提起した場合には、刑事裁判が開かれることになります。 日本での起訴された場合の有罪率は、99.9%と言われています。
有罪判決を受けた場合
刑事裁判において有罪判決が言い渡された場合、当該判決の内容に不服がある場合には有罪判決を言い渡された日から14日以内に高等裁判所へ控訴を申し立てることができます。控訴を申し立てることなく、判決を言い渡された日から14日経過すると、当該判決が確定することになります。
実刑判決とは
実刑判決とは、執行猶予が付されていない有罪判決のことをいいます。実刑判決が下されると、社会生活に戻ることなく、刑務所に収監されることになります。
執行猶予付判決とは
刑の執行猶予とは、有罪判決にもとづく刑の執行を一定期間猶予し、その期間内に再度罪を犯さないことを条件として、刑罰権を消滅させる制度です。例えば、懲役2年、執行猶予3年の判決の場合、執行猶予期間である3年間犯罪を犯さなければ、懲役2年の刑の言い渡しも効力を失います。
逮捕後、早期に釈放されるためには
逮捕から勾留延長までされると、合計23日間留置施設に拘束されることになります。身体拘束が長く続けば続くほど、勤め先の会社や、取引先等にも逮捕されたことが発覚し、信用を失うリスクが増加します。身体拘束から解放されるためには勾留決定がされないようにしなければなりません。そのためには、示談を成立させたり、勾留の必要が無いように環境調整をしたうえで検察官や裁判官と交渉する必要があります。
いかに早く弁護士へ依頼できるかがポイント
少なくとも逮捕から勾留決定までの3日間、ご本人との面会ができるのは弁護士だけです。家族や勤務先への緊急の連絡の伝言を承ることができるのも弁護士だけです。また、検察官や裁判官に対して勾留の必要がないことを申し入れ、勾留されるのを阻止する活動ができるのも弁護士だけです。いかに早く弁護士に依頼するかが命運を分けます。
不起訴の獲得
身体拘束が続いた場合、検察官の処分を不起訴(起訴猶予)に持ち込むことが目標になります。被疑事実を認めている、いわゆる自白事件の場合は、被害者と示談を進めるなど有利な事情を集めて検察官と交渉をしたり、今後の生活のサポート体制が充実していること等を主張して情状酌量を求めます。 否認事件の場合には、有利な証拠を収集したり、検察官に対して補充の捜査をするよう求めるなどして冤罪であることを明らかにします。
不起訴について詳しく見る弁護士へ依頼できるタイミング
国選弁護人が弁護活動を行うことができるのは、被疑者が勾留されてからです。すなわち、国選弁護人は、被疑者が逮捕されてから勾留されるまでの間は弁護活動を行うことができません。 なお、福岡県には「当番弁護」という制度もあります。これは、被疑者の希望があった場合に、逮捕後1度だけ弁護士に無料で相談できる制度です。派遣された弁護士に私選弁護を依頼することもできます。
⇒私選弁護士の場合国選と異なり、介入のタイミングに制約はありません。そもそも勾留されないようにするためには、私選弁護人に、検察官や裁判官と協議を依頼する必要があります。
私選弁護士依頼の重要性について
逮捕時や、それより前の早期にお力になれるのは、私選弁護人だけです。また、国選弁護人は原則選ぶことができませんので、ご本人との相性や、弁護人の経験値にも差があります。一方で、私選弁護人はご自身で選任することができますので、刑事弁護を専門にしている弁護士に依頼することができます。
出来るだけ早く弁護士へご相談下さい
逮捕・勾留がされて長期間自由を失うことの不利益は言うまでもありません。早期の段階で弁護士に依頼することで、活動できる幅が広がり、より良い結果に結びつく可能性が高くなります。特に逮捕されてから勾留されるまでの72時間は、被疑者にとってとても重要な時間です。その間に対応することにより、被疑者の身柄を早期に解放できるかもしれません。まずはお気軽にご相談ください。
この記事の監修
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福岡県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。