勾留とは?
勾留の流れや期間、対応策について
監修弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 副所長
勾留の意義や、要件、期間等について説明のうえ、弁護活動としてどのようなことを行うことができるのか説明します。
目次
勾留とは
被疑者の勾留とは、刑事施設又は留置施設において、被疑者の身体の自由を継続的に拘束する手続きのことをさします。
勾留される要件
被疑者の勾留の要件として、「勾留の理由」と「勾留の必要性」があります。
「勾留の理由」は、罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があり、
- ・住居不定である
- ・証拠隠滅のおそれがある
- ・逃亡のおそれがある
のいずれかにあたる場合をさします。
勾留の必要性」は、身体拘束の相当性をいいます。在宅での捜査が十分可能である場合には、勾留の必要が無いという判断をされるでしょう。
罪を犯したと疑うに足りる相当な理由がある
勾留における「相当な理由」とは、通常逮捕を行う場合よりも高度の嫌疑が必要となります。
勾留は、逃亡や罪証隠滅のおそれを防止することを目的としています。
そこで、以下3つが、勾留の要件に含まれています。
住居不定である
各地を転々と逃げ歩いている、野宿生活を送っている、簡易宿泊所などに住み短期間で転々としている場合など、住所や居所を有しない場合があたります。
証拠隠滅のおそれがある
被害者や目撃者に働きかける、証拠データを消去するなど、証拠に対して不正な働きかけを行うことによって、捜査を誤らせ起訴不起訴の判断に影響を及ぼすなど、捜査や公判へ不当な影響を与える可能性がある場合です。
逃亡のおそれがある
文字どおり、逃げるおそれがある場合です。例えば、捜査機関が取調べ等で呼出しても出頭しない可能性がある場合には、逃亡のおそれがあると評価される可能性が高いといえます。
勾留と拘留の違い
拘留とは、「1日以上30日未満とし、刑事施設に拘置する」ものです(刑法16条)。刑罰の一つにあたります。
一方で、勾留とは、刑事施設又は留置施設において、被疑者の身体の自由を継続的に拘束する手続きのことをさします。
勾留までの流れ
警察に逮捕されると、48時間以内に、警察から検察に送致されます。検察官が勾留請求を行い、裁判所より勾留決定がなされると、勾留されることになります。検察官が勾留請求を行わない場合は、釈放となります。
勾留請求
被疑者の勾留請求は、検察官が、所定の事項を記載した勾留請求書を裁判官に提出するという方法で行われます。裁判官は、検察官の請求に対して、勾留すべきかその要件該当性を判断します。
勾留質問
検察官から、勾留の請求を受けた裁判官は、被疑者に対して、被疑事件を告げ、これに関する陳述を聴くといった手続きを行います。この手続きが勾留質問にあたります。手続き上は、裁判官が勾留の要件を判断する重要な機会ですが、時間も短く、勾留の要件を踏まえて端的に説明しなければなりません。弁護人が、事前に意見書を差し入れたり、裁判官と面談するなど、如何に勾留の理由や必要性といった要件を満たさないか説明をしても多くの場合、勾留が認められているのが実情です。法的知識に乏しい一般の方が、適切に説明することは難しいでしょう。
勾留後の処分
起訴前、起訴後のどちらについても勾留の手続きが用意されています。
両者は、その目的や期間等、違いがあります。例えば、被疑者の勾留期間は、原則として、勾留請求の日から10日となっている一方で、起訴後の被告人については、原則として公訴提起のあった日から2ヶ月となっています(刑事訴訟法208条1項/同法60条2項)。
また、被疑者の勾留は、被疑者の逃亡と罪証隠滅のおそれを防止することを目的としている一方で、被告人の勾留は、被告人の公判廷の出廷を確保することを目的としています。
釈放と保釈
釈放とは、一般的に、拘束されていた人の身体拘束が解かれ、解放されることをいいます。
保釈とは、一時的に身体拘束が解かれるにすぎず、取り消される場合もあります。取り消された場合には、身体拘束が再度なされることになります。
勾留の期間
勾留の日数や、その延長等について、説明します。
起訴前の勾留・勾留延長
被疑者の勾留期間は、原則として、勾留請求の日から10日以内です(刑事訴訟法208条1項)。「やむを得ない事由」があると認められるときには、さらに10日を超えない限度で期間の延長が可能です(同法208条2項)。
準抗告が認められた場合には、身体の拘束が解かれることになります。
起訴後の勾留
起訴後の勾留は、公訴提起のあった日から2ヶ月です(刑事訴訟法60条1項)。勾留の継続の必要がある場合には、1ヶ月ごとに更新することが可能です。更新は原則1回ですが、例外もあります。
保釈が認められた場合には、身体の拘束が解かれることになります。
勾留延長の「やむを得ない事由」
勾留期間は、「やむを得ない事由」があれば延長が認められます。「やむを得ない事由」にあたるかどうかは、①捜査を継続しなければ検察官が事件を処分できないこと、②10日間の勾留期間内に捜査を尽せなかったと認められること、③勾留を延長すれば捜査の傷害が取り除かれる見込みがあることにより判断されます。
勾留中の面会
接見禁止処分がなされていない場合は、弁護士以外も面会や差し入れができますが、面会の回数や人数、時間等に制限があります。
接見禁止処分がなされている場合には、弁護士以外の面会(接見)ができません。
弁護士になろうとする者や弁護人には、被疑者との秘密交通権がありますので、安心して話をしていいといえますが、他の人との面会(接見)では、警察官が面会室の中や扉を開けた外で話を聞いているため、実際、なんでも話せるという環境ではありません。
勾留を回避するためには
勾留は、要件を満たさなければ行うことができません。勾留は逃亡と罪証隠滅のおそれを防止するためのものですので、その要件にあたらないことを検察官や裁判官に認識してもらうことが重要となります。逮捕後、勾留決定がなされるまでの時間は、非常に限られていますので、対応がとれないか弁護士に相談される場合には、速やかにご相談いただくことが必要となります。
勾留決定に納得がいかない場合の対応
勾留決定に対して、裁判所にその取り消し又は変更を求める不服申し立てを準抗告といいます(刑事訴訟法429条1項)。他方で、勾留決定自体に不服はないものの、勾留の必要性が無くなったことを理由に、勾留の取り消しを求めることを、勾留取消請求といいます。
勾留された場合の弁護活動について
勾留をされたとしても、不起訴になる場合や、在宅での取り調べに切り替えられる場合には、身体の拘束が解かれることになります。起訴前においては不起訴を目指して弁護活動を行うこととなり、被害者がいらっしゃる犯罪の場合には、被害者との示談の成立等を目指していきます。
また、起訴後において、勾留されている場合には、保釈によって身体拘束が解かれることを目指していきます。
勾留を回避したい、釈放・保釈してほしい場合は、早急に弁護士へ相談を
時間制限があるとはいえ、身体拘束を受けることになれば、会社を休まざるを得ず、仮に不起訴となっても、解雇される等、これまでと同じ日常を送ることができなくなる可能性があります。
身体拘束に関して、相談されたいことがある方は、早急に弁護士に相談されることをおすすめします。
この記事の監修
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福岡県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。