保護観察処分とは?保護観察中のルールや生活について
監修弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 副所長
目次
保護観察処分とは
保護観察処分とは、犯罪をした人又は非行のある少年が、保護観察所の指導監督を受けながら更生を図る処分のことをいいます。保護観察は社会の中で処遇を行うものであるため、社会内処遇と言われています。
保護観察の対象者
保護観察処分少年
保護観察処分少年とは、家庭裁判所の決定により保護観察の処分を受けた少年のことをいいます。更生保護法48条1号に定められていることから、「1号観察」とも言われています。
少年院仮退院者
地方更生保護委員会の決定により少年院からの仮退院を許された者に対する保護観察(法第48条第2号)処分を受けた者を言います。
仮釈放者
地方更生保護委員会の決定により仮釈放を許された者に対する保護観察(法第48条第3号)処分を受けた者を言います。
保護観察付執行猶予者
裁判所の判決により刑の執行を猶予され、保護観察に付された者に対する保護観察(法第48条第4号)処分を受けた者を言います。
保護観察の種類
一般保護観察
「交通」以外の罪(ぐ犯、施設送致申請を含む。)に係る事件により、保護観察に付されることを言います。
一般短期保護観察
交通事件以外の事件により保護処分に付された少年のうち、家庭裁判所から短期間の保護観察を行う旨の処遇勧告がなされたものを言います。
交通保護観察
一定の交通犯罪(刑法第208条の2及び車両の運転による同法第211条の罪並びに道路交通法、自動車の保管場所の確保等に関する法律、道路運送法、道路運送車両法及び自動車損害賠償保障法に定める罪)に係る事件により、保護観察に付されることを言います。
交通短期保護観察
交通事件により保護処分に付された少年のうち、家庭裁判所から短期間の保護観察を行う旨の処遇勧告がなされたものを言います。
保護観察の期間
成年に関する保護観察の期間は、裁判官が言い渡した期間となります。
少年に関する保護観察の期間は、原則として少年が20歳に達するときまでと規定されています(更生保護法66条)。ただし、保護観察に付することを決定したときから少年が20歳に達するまでの期間が2年に満たないときには、保護観察の期間は2年とされています(同条)。
少年の改善更生に資すると認められるときは、期間を定めた上で、保護観察を一時的に解除することができ(更生保護法70条)、また、保護観察を継続する必要がなくなったと認められるときには、保護観察は解除されることになります(同法69条)。
保護観察官と保護司
保護観察官
保護観察官は、犯罪をした人や非行のある少年に対して、通常の社会生活を送らせながら、その円滑な社会復帰のために指導・監督を行う「社会内処遇」の専門家です。保護観察官は国家公務員試験に合格し、一定の期間実務経験を積んだ国家公務員です。
保護司
保護司は、犯罪や非行をした人の立ち直りを支える手伝いをしてくれます。保護司は、保護観察官とは異なり、民間のボランティアです。
保護観察の遵守事項と良好措置・不良措置
保護観察処分に付される場合、守るべきルール(一般遵守事項・特別遵守事項)が定められます。ルールを守り、社会の一員として更生したと判断された場合には、「良好措置」を取られることがあります。他方、一般遵守事項や特別遵守事項を違反してしまった場合には、「不良措置」を取られることがあります。
一般遵守事項
保護観察中の者全員に共通して定められている遵守事項を一般遵守事項と言います(更生保護法第50条)。①再犯・再非行をしないよう健全な生活態度を保持すること、②保護観察官や保護司による指導監督を誠実にうけること、③住居を定め、その地を管轄する保護観察所の長に届け出をすること、④③に届け出た住居に居住すること、⑤転居又は7日以上の旅行をするときは、あらかじめ、保護観察所の長の許可を受けることが定められています。
特別遵守事項
特別遵守事項は、それぞれの者の犯罪傾向に応じて定められた遵守事項となります。特別遵守事項は、保護観察所長が、保護観察決定をした家庭裁判所の意見を聴いた上で定めます。
保護観察中の再犯
保護観察中に再犯を犯してしまった場合、不良措置や再処分等が行われることになります。不良措置は、仮釈放者に対しては仮釈放の取消しや保護観察付執行猶予者に対する刑の執行猶予の言渡しの取消し等があります。
保護観察中の生活について
面接
保護観察中、月に数回、保護司との面接があります。保護観察対象者の生活状況の話をしたり、遵守事項を守っているかどうかの確認、保護観察対象者の悩みごと相談やその他指導等が行われます。
学校生活
保護観察は、施設に収容せずに通常の社会生活を営ませながら指導等を行うものですので、保護観察となった生徒は、他の生徒と同様に学校へ通うこととなります。保護司との面接は通学に支障のない日時が設定されますので、学校生活に直接的な影響はありません。
仕事・結婚
保護観察中であっても、仕事を始めたり、結婚したりすることはできます。もっとも、保護観察中は、保護観察官や保護司に「生活状況を報告する義務」があるので、保護観察官や保護司に報告しなければなりません。
旅行
保護観察中であっても、旅行をすることはできます。 もっとも、7日以上の旅行をする場合には、あらかじめ保護観察所の長に許可を受けなければなりません(一般遵守事項・更生保護法50条)。海外旅行については、パスポートを申請する際に、「保護観察中か否か」というチェック項目があり、当該項目にチェックをした場合、パスポートが交付されない可能性があります。
少年事件や保護観察についてのご相談は、弁護士へご依頼ください
少年は心身ともに未熟ということもあり、とても難しい問題が多く存在しています。それに伴い、成人事件とも手続が大きく異なります。より専門的な知識や経験が必要になりますので、必ず弁護士にご相談ください。
この記事の監修
-
福岡県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。