インターネットの書き込みでも
罪に問われる?信用毀損罪について
監修弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 副所長
信用毀損罪は、虚偽の風説の流布、又は偽計を用いて、人の信用を毀損することについて処罰する規定です。以下、具体的な内容等を説明します。
目次
信用毀損罪とは
信用毀損罪にいうところの人の信用とは、「経済的側面における人の評価」を指すものと解されています。個人(自然人)だけではなく、法人や団体も、ここにいう「人」に含まれます。
また、本罪は、現に人の信用を毀損せしめた場合だけではなく、そのような危険を生じさせただけでも既遂に達し、処罰対象になります。
被害者のいる犯罪ですが、親告罪ではないので、第三者の通報等からでも処罰される可能性があります。
信用毀損罪の罰則
信用毀損罪の法定刑は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金と規定されています。
信用毀損罪の構成要件
信用毀損罪の構成要件は①㋐虚偽の風説の流布又は㋑偽計を用いて、②人の信用を毀損したことです。個別の意義については、以下に説明します。
虚偽の風説
信用毀損罪にいうところの“虚偽の風説”とは、客観的真実に反する噂や情報を意味します。真実の場合にも成立しうる名誉棄損や侮辱罪とは異なり、信用毀損罪が成立するには虚偽でなければならないということです。
流布
流布とは、不特定または多数の人に伝播させることを意味します。名誉棄損の場合とは異なり、公然性は要求されないので、少数の者に噂を伝えることも含まれます。
偽計
偽計とは、人を欺罔し、または人の不知、錯誤を利用することを意味します。これは、詐欺罪にいう「詐欺行為」よりも広い概念であり、直接被害者に向けられることも要しないと解されています。
信用を毀損
信用毀損罪にいう「人の信用」は、“経済的側面における人の社会的な評価”という限定があります。したがって、これを毀損するというのは、人の経済的信用を低下させる危険のある行為を行うことを意味します。
信用毀損罪にあたる虚偽情報の例
信用毀損罪に該当しうる虚偽情報とは、支払能力や支払意思、商品の品質、効能等、人の経済的信用を低下させるような内容ということです。以下はその一例です。
- ・あの人は破産寸前でブラックリストに載っている
- ・あの会社は手形の不渡りを出した
- ・あそこの食堂は先週食中毒を出したらしい
- ・あの会社のAという薬は重篤な副作用がある
信用毀損罪と関連する犯罪
業務妨害罪
業務妨害罪のうち、偽計業務妨害罪は、虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いることを対象としています。手段の点はよく似ていますし、法定刑も信用毀損罪と同じですが、経済的信用を毀損することを処罰するのが信用毀損罪であるのに対し、業務妨害罪は、人の業務を妨害することを処罰するという違いがあります。
信用毀損罪と業務妨害罪が両方成立する場合
人の経済的な側面に対する評価を低下させる行為は、視点を変えると業務の妨害とも評価される場合があるでしょう。そのような場合は両罪が成立し、観念的競合(=重い方の罪のみで処罰)として評価されることになります。
名誉棄損罪
名誉棄損罪と信用毀損罪は行為態様が異なります。後者が虚偽や偽計を手段とするのに対し、前者は事実であっても、公然性の要件を充足する場合、一定の要件に該当しない限り処罰の対象とされる可能性があります。また、信用毀損罪は「経済的側面における人の評価」を保護の対象としているのに対し、名誉棄損罪は、それ以外の「人に対する積極的な社会的評価」を保護の対象としています。前者は親告罪ですが、後者は非親告罪です。
信用毀損罪と名誉毀損罪が両方成立するケース
「経済的側面における人の評価」は信用毀損罪で保護されることから、名誉棄損罪の「名誉」からは除かれますので、両方の罪が成立するケースとは、例えば経済的側面における人の評価を低下させるような虚偽の記述と、その他外部的・事実的名誉を低下させるような記述が混在する記事を公に掲載し、かつ被害者の被害申告がある場合というように、それぞれの罪の構成要件に該当する場合ということになります。
ネットの書き込みで信用毀損罪に問われた場合
インターネットは匿名で投稿することができるものも多くありますが、虚偽の風説を流布する等、信用毀損罪に該当するような行為に及んでしまうと、警察からの照会や、被害者が損害賠償請求をする前提としての発信者情報開示請求等により特定され、刑事責任や民事上の損害賠償責任を追及される可能性は決して低いものではありません。発信者情報開示請求を受けたプロバイダ等は、契約者本人(≒書き込み主)に照会するのが通常です。特定に要した費用も相当な範囲については、損害賠償として認める裁判例もありますので、言い逃れのしようもないような書き込みをしてしまったという場合も、弁護士に相談するなどの早期対応が望ましいところです。
刑事事件になった場合の対処法
刑事事件として立件され、逮捕された場合、48時間以内に検察官に送致され、そこから24時間以内に勾留請求するかどうかの判断がされ、勾留請求が認められた場合、通常10日間の勾留という流れを辿っていきます。必要性が認められると、勾留はさらに10日間延長され、その間に起訴不起訴の判断がされます。余罪がある場合は、再逮捕や勾留等がさらに引き続く場合もあります。
逮捕後の流れについて詳しく見る信用毀損罪に問われたら、弁護士に相談を
信用毀損罪は被害者のいる犯罪であり、示談の成否や被害弁償の有無は、量刑や起訴不起訴、執行猶予の有無等の判断に大きく影響するものです。したがって、なるべく早い段階で謝罪や示談の申し入れ等を行うほうが望ましいところですが、加害者が直接被害者に接触するのは、かえって反発を招く場合も多く、示談交渉を試みるには、弁護人の存在はほぼ不可欠です。早い段階でご相談ください。
この記事の監修
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福岡県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。