福岡の弁護士による刑事事件の相談

任意出頭とは?
目的や出頭を拒否できるか知りたい!

弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 副所長 弁護士 今西 眞

監修弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 副所長

ある日突然、警察官から電話を受け、警察署への任意出頭を求められる場合があります。逮捕されたわけではありませんので、その場で物理的・身体的な自由を奪われてしまうわけではありませんが、今後の対応について、不安に思うことが多いでしょう。

特に、任意出頭したらそのまま逮捕されるのではないか、任意出頭を拒んでも逮捕されてしまうのではないか、などと考え始めると、不安がますます大きくなることでしょう。

この記事では、任意出頭について詳しく説明した上、対応方法についても解説します。

任意出頭とは

刑事訴訟法198条1項は、「検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べることができる。」と規定します。

この規定に基づき、捜査機関(警察署又は検察庁)に自ら出頭するように要請する行為を、任意出頭と呼ぶことが一般的です。

もっとも、飽くまで「任意」によるものですので、その手段・方法については、逮捕などの強制処分のように法律上の詳細な規定までは設けられていません。

任意同行と任意出頭の違い

任意出頭のほかに、「任意同行」という言葉もあります。

任意同行については、別の記事で詳しく解説します。

任意同行と任意出頭は、どちらも「任意」によるものですが、一般的には、警察官が一般人に対し、路上などから警察署への同行を要請する行為を任意同行ということが多いです。ただし、任意同行については、刑事訴訟法その他の法律に明確な定義は設けられていません。

これに対し、任意出頭は、捜査機関に自ら出頭するように要請する行為をいうのが一般的です。

任意同行について詳しく見る

任意出頭の目的とは

任意出頭の目的は、「犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べることができる。」(刑事訴訟法198条1項)という条文のとおり、何らかの犯罪について取調べを実施することです。

また、警察署への任意出頭の場合は、取調べのほかに、警察官が所持品検査、薬物検査を実施したり、証拠品(例えば携帯電話、タブレット機器など)の任意提出を求めたりする場合も散見されます。

任意出頭を拒否できるか

刑事訴訟法198条1項ただし書は、「被疑者は、逮捕又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる。」と規定しており、捜査機関から任意出頭を要請された場合であっても、これを拒否することができます。

ただし、本当に任意出頭を拒否した方がよいか否かについては、事案に応じた慎重な検討が必要ですので、以下の記事で詳しく解説します。

拒否した場合

前の項目で解説したとおり、法律上、任意出頭を拒否することができます。

ただし、あなたが任意出頭を拒否した場合、捜査機関は、あなたが逃走するおそれがあると判断し、裁判所に逮捕状を請求する場合があります。そして、もし逮捕状が発布され、執行されると、強制処分ですので、これを拒否することはできません。

ですから、あなたが任意出頭を拒否したいと考える場合であっても、慎重に対応することをお勧めします。

例えば、捜査機関から何の疑いをかけられたか分からないので不愉快だ、拒否したいと考える場合、まず担当者に対し、どのような事件で疑いをかけられたのかを具体的に説明してほしいと質問する方がよいでしょう。

また、単に捜査機関から指定された日時に都合が合わないから拒否したいと考える場合、その事情を担当者に説明した上で、別の日時を調整した方がよいでしょう。

無視するとどうなる?

捜査機関からの任意出頭の要請に対し、何もせずに無視していた場合、捜査機関があなたの逮捕状を請求する可能性が高まる危険があるといわざるを得ません。

ですから、任意出頭を単に無視するという姿勢は、決してお勧めできません。

捜査機関は、通常、一回だけの電話で断念することはなく、何回も電話をかけてきます。ですから、あなたの携帯電話に見慣れない電話番号からの着信履歴が複数回残っていた場合、インターネットでその電話番号を検索し、もし捜査機関からの着信であることが判明したときは、次の着信があったときにはその電話に出たり、空いている時間に折り返しの電話をかけたりすることをお勧めします。

事情聴取はどのような内容か

捜査機関が任意出頭を要請する目的は、何らかの犯罪について取調べを実施し、その犯罪に関する事情を聴取することです。

どのような犯罪であるかは、事案によって異なりますが、具体的な事件を想定したものであることは確実です。

ですから、まず、電話で担当者と会話する際に、どのような用件であるかを尋ねるとよいでしょう。詳細な事柄までは答えてもらえないと思われますが、いつ頃の、どの場所の、どのような件であるかという程度までなら、教えてもらえることが通常です。。

逮捕されることはある?

任意出頭後、捜査機関(警察署又は検察庁)において取調べが実施されます。

そのまま任意捜査が継続されるか、強制捜査として逮捕されるかは、事案によります。

逮捕された時の流れについて詳しく見る

取り調べの途中退席は可能?

刑事訴訟法198条1項ただし書は、「被疑者は、逮捕又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる。」と規定しており、捜査機関において取調べを受けている途中であっても、退席することができます。

ただし、退席しようとする際、取調べ担当者に対して有形力を行使すると、公務執行妨害罪の現行犯人として逮捕される可能性がありますので、そのようなことがないように、くれぐれも慎重に行動してください。

また、取調べが終了していないということは、後日再度の任意出頭を要請されると思われますので、この点も念頭に置いて行動してください。

事前に対策をしておきましょう

任意出頭後、捜査機関においては、取調べが実施されますので、その取調べにどのように対応するかという点は、事前に検討しておく必要があります。

また、犯罪の嫌疑の程度、事案の重大性の程度、被害者又は目撃者等との関係、共犯者の有無及び関係、前科・前歴の内容によっては、任意出頭後に逮捕されることを想定した方がよい場合もあります。

ですから、任意出頭する前に、弁護士への相談も含めて、事前に対策を考えておいた方が望ましいでしょう。

任意出頭に関するよくある質問

任意出頭の日程を何度も変更すると不利になりますか?

これまでの記事で解説したとおり、刑事訴訟法上、捜査機関への出頭の義務はありませんし、日程を変更することは当然可能です。

もっとも、複数回の日程変更を申し出た場合、任意出頭を拒絶するために嘘をついているのではないかと疑われてしまい、最悪の場合には逃走のおそれがあるとして逮捕状を請求される可能性がないとはいえません。

ですから、捜査機関と日程調整をする際は、その日について時間に十分な余裕を持たせておき、後で日程変更をせずに済むようにした方が望ましいでしょう。

警察と検察からの呼び出しで違いはありますか?

任意出頭については、警察署の場合と検察庁の場合があります。

大部分は、まず警察署に任意出頭を求められ、取調べ等の捜査が実施されます。その後、捜査書類が検察庁に送致され、一定期間経過後、検察庁から任意出頭を求められるという経過をたどります。そして、検察官から、起訴又は不起訴の処分を告知されます(ただし、後日に電話又は手紙で告知される場合も多いです。)。

これに対して、最初に検察庁から任意出頭を求められるケースもまれにあります。検察庁に告訴状・告発状が提出された場合や、一部の知能犯、一定額以上の脱税事案の場合が代表例です。

任意出頭の際に自白すれば減刑の可能性はありますか。

捜査機関への任意出頭後、犯罪について自白すべきか否かは、一概には言えません。

例えば、被害者から虚偽申告をされたにすぎない場合、取調べ担当者に対して、そのような嫌疑は全く身に覚えがない旨を毅然と説明すべきであり、絶対に虚偽自白をしてはいけません。

他方で、犯罪を犯してしまったことが間違いない場合、自白して反省の情を示したり、被害者との示談を行った方が、最終的に有利な結果につながる可能性もあります。

地方に住んでおり、関東の警察署へ任意出頭が求められたのですが出頭拒否しても良いですか?

捜査機関は、何らかの犯罪の端緒(きっかけ)をつかんだ場合に捜査を開始します。ですから、例えば東京都の警察署が、北海道で発生した事件の捜査を開始するということも、あり得ます。

あるいは、あなたが東京都に住んでいたときに起こした事件について、鹿児島県に引っ越した後で任意出頭を要請されるということも、あり得ます。

このように、任意出頭を求めてきた捜査機関の所在地と、あなたの現在の住居地が遠く離れているということは、あり得ます。

このような場合、まずは担当者と連絡を取り合い、あなたの住居地近くの捜査機関に任意出頭することができないかを相談してください。

任意出頭の連絡がありお困りなら弁護士が力になります

捜査機関から任意出頭を要請された場合、正しい法的知識に基づいて、事前に準備をしておくことが望ましいでしょう。

任意出頭に応じる場合は、取調べに対する事前準備を行ったり、起訴又は不起訴の見通しを立てた上で、防御活動の方針を決めておくことが必要です。

任意出頭を拒否したいと考える場合は、その後に予想される捜査機関の対応を見据えて、更に慎重に検討することが必要です。

任意出頭についてお困りの方は、弁護士に御相談ください。

この記事の監修

弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 副所長 弁護士 今西 眞
弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 副所長弁護士 今西 眞
福岡県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。
福岡県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。

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