児童ポルノとは?所持でも罪になる?児童ポルノの禁止行為と罰則
監修弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 副所長
児童買春・児童ポルノに関して、特別法(児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰並びに児童の保護等に関する法律。以下、「児童買春・児童ポルノ禁止法」といいます。)で刑罰が定められています。
児童買春・児童ポルノに関する刑罰は、重いものとなっています。また、児童買春・児童ポルノの被疑者・被告人になった者のご家族には、非常に精神的ショックが大きい犯罪といえます。本稿では、主に、児童買春・児童ポルノ禁止法について解説します。
目次
児童ポルノとは
「児童ポルノ」とは、条文上、以下のいずれかに掲げる児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したものをいうとされます(児童買春・児童ポルノ禁止法3条)。
- ① 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態
- ② 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するもの
- ③ 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、殊更に児童の性的な部位(性器等若しくはその周辺部、臀部又は胸部)が露出され又は強調されているものであり、かつ、性欲を興奮させ又は刺激するもの
「ポルノ」といっても、全裸である必要はなく(①、②、③)、性交類似行為等でも足りるとされています(①、②)。
ここで、児童ポルノの対象となる「児童」とは、十八歳に満たない者をいいます(児童買春・児童ポルノ禁止法2条1項)。そのため、アニメや漫画に描写されたものは、上記①~③にあたるような場合であっても、原則として、児童ポルノには該当しません。
ただし、実在した児童を基に作成された写真から、CGにより描写されたものに関して、「本件各写真は、実在する18歳未満の者が衣服を全く身に着けていない状態で寝転ぶなどしている姿態を撮影したものであり、本件各CGは、本件各写真に表現された児童の姿態を描写したものであったというのである。」として、児童ポルノに該当すると判断した最高裁判例があることに注意が必要です(最高裁判所令和2年1月27日 第一小法廷決定)。CG等の場合でも、一切児童ポルノに当たらないわけではありません。
児童ポルノに関する法令
児童買春・児童ポルノ禁止法
児童買春・児童ポルノに関しては、児童買春・児童ポルノ禁止法(平成十一年法律第五十二号)により規制されています。この法律は、平成8年(1996年)8月29日の『児童の商業的性的搾取に反対する世界会議 「宣言」』を受けて、平成10年(1998年)に成立、平成11年(1999年)に施行されました。
自治体の青少年健全育成条例
児童買春・児童ポルノに関しては、自治体の青少年健全育成条例でも規制されています。
例えば、福岡県青少年健全育成条例31条の2では、以下の行為が規制されています。
- ① 青少年に拒まれたにもかかわらず、当該青少年に係る児童ポルノ等の提供を行うように求めること
- ② 青少年を威迫し、欺き、若しくは困惑させ、又は青少年に対し対償を供与し、若しくはその供与の約束をする方法により、当該青少年に係る児童ポルノ等の提供を行うように求めること
また、青少年健全育成条例による規制の他にも、児童を脅して児童ポルノにあたるような画像を送信させる行為には、強制わいせつ罪が成立することがあります(東京高判平成28年2月19日判例タイムズ1432号134頁など)。
児童ポルノの禁止行為と罰則
単純所持
児童買春・児童ポルノ禁止法7条1項では、児童ポルノの単純所持に関する刑罰が定められています。
すなわち、『自己の性的好奇心を満たす目的で、児童ポルノを所持した者』や、これと同様の電磁的記録(ハードディスク、SSDに保存されたデータ等)を保管した者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処されます。
この単純所持は、以前は刑罰の対象となっていませんでしたが、これを禁止しなければ児童ポルノの拡散が止まらないと考えられたことなどから、平成26年(2014年)の法改正により、処罰の対象とされました。
製造・提供
単純所持の他、児童買春・児童ポルノ禁止法7条2項~4項では、次の行為が、刑罰の対象とされています。
- ① 児童ポルノ提供の罪(同7条2項)
三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金 - ② 児童ポルノ提供目的での製造、所持、運搬、輸入、輸出の罪(同7条3項)
三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金 - ③ 児童に第二条第三項各号(児童ポルノに該当するもの)のいずれかに掲げる姿態をとらせ、児童ポルノを製造する罪(同7条4項)
三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金
不特定多数への提供・公然と陳列
児童買春・児童ポルノ禁止法7条6項~7項では、次の行為が、刑罰の対象とされています。
- ① 児童ポルノの不特定又は多数の者への提供又は公然陳列の罪(同7条6項)
五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金 - ② ①目的での製造、所持、運搬、輸入、輸出の罪(同7条7項)
五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金 - ③ ①目的での輸入又は輸出の罪(同7条8項)
五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金
以上の同法7条6項~8項の罪は、同法7条1項~5項の罪と比べて重いものとなっています。これは、同法7条6項~8項の罪は、児童ポルノを拡散させるもので、児童の被害を拡大させることから重く処罰されているものと解されます。
児童ポルノの製造目的の買春
児童買春・児童ポルノ禁止法8条では、児童を、児童買春の性交の相手方とさせ、又は、児童ポルノを製造する目的で、児童を買春した行為に対する刑罰が定められています(一年以上十年以下の懲役)。
児童ポルノの製造目的の盗撮
児童買春・児童ポルノ禁止法7条5項では、児童ポルノ製造のための盗撮等に対する刑罰が定められています(三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金)。温泉や更衣室での盗撮等で、この罪が成立することがあります。
児童ポルノ事件の時効
刑罰の時効(公訴時効)は、罪の重さにより変わります(刑事訴訟法250条2項)。
具体的には、以下のとおりです。
長期十五年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については七年(刑事訴訟法250条2項4号) | 児童を、児童買春の性交の相手方とさせ、又は、児童ポルノを製造する目的で、児童を買春した行為の罪(法8条) |
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長期十年未満の懲役又は禁錮に当たる罪については五年(刑事訴訟法250条2項5号) | 児童ポルノの不特定又は多数の者への提供又は公然陳列の罪(法7条6項) 提供又は公然陳列目的での製造、所持、運搬、輸入、輸出の罪(法7条7項) 提供又は公然陳列目的での輸入又は輸出の罪(法7条8項) |
長期五年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金に当たる罪については三年(刑事訴訟法250条2項6号) | 児童ポルノ単純所持等の罪(法7条1項) 児童ポルノ提供の罪(法7条2項) 児童ポルノ提供目的での製造、所持、運搬、輸入、輸出の罪(法7条3項) 児童に第二条第三項各号(児童ポルノに該当するもの)のいずれかに掲げる姿態をとらせ、児童ポルノを製造する罪(法7条4項) |
児童ポルノ事件の捜査
児童買春・児童ポルノの被疑者となった場合、いわゆる家宅捜索(自宅、勤務先等の捜索、差押え)がされる可能性が高いです。児童ポルノは、パソコン、スマートフォン等の電子媒体に保存されていることが多いですし、また、児童買春のためのやり取りなども、メール、LINE、出会い系サイト等、パソコン、スマートフォン等の電子媒体によりなされていることが多いからです。
家宅捜索では、一般的に、事件と関連するパソコン、スマートフォン等が押収(差押え)されることが一般です。
家宅捜索について詳しく見る逮捕後の流れ
児童買春・児童ポルノに関する罪、特に、児童に対する買春、わいせつ行為等を伴う場合、逮捕されることも少なくありません。児童ポルノの単純所持のように、比較的刑罰の軽い場合でも、逮捕されないとは言い切れません。
逮捕された時の流れについて詳しく見る児童ポルノで逮捕された場合の弁護活動について
児童ポルノに関して逮捕された場合、勾留阻止をはじめとした早期の身柄解放が非常に重要になってきます。また、事案によっては、被害者(の親権者法定代理人)との示談が必要な場合もあります。
これらに適切に対応するため、早期に弁護人を選任することが望ましいと言えます。
児童ポルノの禁止行為をしてしまったら、早期に弁護士へ相談を
児童買春・児童ポルノの被疑者となった場合、適切な弁護人の選任が不可欠です。また、警察・検察の捜査を受ける前でも、児童買春・児童ポルノの犯罪に心当たりがある場合には、自首等をしておくことが望ましいこともあります。早期に弁護士にご相談ください。
この記事の監修
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福岡県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。