逮捕されるのはどんな時?
逮捕の種類について
監修弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 副所長
逮捕とは、被疑者の身体の自由を拘束し、それを短期間継続する強制処分をいいます。逮捕には、通常逮捕(刑訴法199条)、緊急逮捕(刑訴法210条)及び現行犯逮捕(刑訴法212・213条)があります。
逮捕の種類
逮捕の種類を知っておく重要性
逮捕は種類によって要件が法定されています。それぞれの要件を満たさない逮捕は違法になりますので、その違いを覚えておくのは重要です。
通常逮捕
通常逮捕とは、裁判官から事前に逮捕状の発付を受け、これに基づいて被疑者を逮捕する強制処分をいいます(刑訴法199条1項本文)。
通常逮捕の要件
通常逮捕の要件は、①逮捕の理由及び必要性、②逮捕状の請求・発付です。逮捕の理由とは、被疑者が罪を犯したことを疑うに足る「相当な理由」があることをいいます(刑訴法199条1項本文)。なお、緊急執行の場合を除き、逮捕状を提示することが必要です。
逮捕状について
逮捕状は、検察官及び一定の司法警察員が裁判官に対して書面により請求します。逮捕状の請求を受けた裁判官は、逮捕の理由があると認めるときは、明らかに逮捕の必要がないと認める場合を除き、逮捕状を発付しなければなりません。
通常逮捕の多い罪名
そもそも現行犯逮捕は少数です。贈収賄など犯行を現認等することが考えにくい犯罪はもちろん、窃盗や万引き、痴漢でさえ逮捕状を取って逮捕されることが多いのが実情です。なお、軽微な犯罪(30万円以下の罰金、拘留又は科料に当たる罪)については、住居不定又は正当な理由なく任意出頭に応じない場合に限られます(刑訴法199条1項但書)。
現行犯逮捕
現に罪を行い、又は現に罪を行い終わった者を現行犯といい(刑訴法212条1項)、現行犯は何人でも令状なしに逮捕することができます(刑訴法213条)
準現行犯逮捕
法律によって定められた一定の者が、罪を行い終わってから間がないと認められた場合、その者を準現行犯といい、現行犯とみなします(刑訴法213条)。
私人逮捕
現行犯は、誰でも逮捕状無くして逮捕することができます。犯罪の被害者本人や、目撃者がその場で犯人を拘束することを私人逮捕といいます。なお、私人が現行犯人を逮捕した時には、直ちにこれを検察官や司法警察職員に引き渡さなければなりません。
現行犯逮捕の要件
現行犯として逮捕するための要件は、①その犯人による特定の犯罪であることが、逮捕者にとって明白であること、②その犯罪が現に行われていること、又はその犯罪が現に終わったことが、逮捕者にとって明白であることである。
現行犯逮捕が多い罪名
所持品検査によって覚せい剤が発見された場合や、万引きをしてお店を出たところで拘束される場合などに現行犯逮捕されることが多くみられます。
緊急逮捕
緊急逮捕とは、一定の重大犯罪に当たる罪を犯したことを疑うに足りる十分な理由がある場合で、急速を要し、裁判官の逮捕状の発付を待っていたのでは、その目的を達し得ないときに、逮捕の理由を被疑者に告げて逮捕することをいいます(刑訴法210条1項)。
緊急逮捕の要件
緊急逮捕の要件は①死刑または無期もしくは長期3年以上の懲役もしくは禁錮にあたる罪を犯したことを疑うに足りる十分な理由があること②急速を要すること、③逮捕時に理由を告げること、④逮捕後直ちに裁判官の逮捕状を求める手続きをとることです。
逮捕された場合の流れ
司法警察員は、被疑者を自ら逮捕したとき、又は司法巡査から逮捕された被疑者を受け取った時は、直ちに犯罪事実の要旨及び弁護人選任権が告げたうえ、弁解の機会を与え、留置の必要がないと思料するときは、直ちに被疑者を釈放しなければありません。留置の必要があると思料するときは、被疑者が身体を拘束されたときは、被疑者が身体を拘束されたときから48時間以内に書類及び証拠物とともに身柄を検察官に送致する手続きをしなければならないとされています。
逮捕後の流れについて詳しく見る逮捕されてしまった場合の対処について
早期に身体拘束が終了するように対処する必要があります。そもそも逮捕時の要件(必要性や理由)を争う場合もあれば、示談等により逮捕の必要性を喪ったことを主張することもあります。
接見・面会について
逮捕期間中は、警察署の留置所に留め置かれることが殆どです。弁護士以外の者との接見や面会は行えません。
不起訴で釈放されたい場合
そもそも告げられた犯罪事実に身に覚えがない場合には、当然のことながら、起訴するだけの嫌疑が無いと検察官に説明していく必要があります。犯罪事実が事実の場合で、被害者がいる場合には、少なくともできるだけの被害回復に努め、許しを得る必要があります。
不起訴について詳しく見る逮捕の種類に関するよくある質問
準現行犯逮捕は、どの程度距離や時間に間がある場合認められるのでしょうか。
準現行犯における「罪を行い終わってから間がない」というのは、憲法33条の趣旨に照らし、犯罪の実行行為の終了時点から時間的にきわめて近接した時点をいいます。「間がない」とは、212条2項各号の要件との関係で相対的に判断されます。被害者が犯行後逮捕時まで一貫して被疑者を現認しているという状況であれば、比較的長く現場との距離や時間が開いても準現行犯逮捕は認められるでしょうし、逆に、一度見失うなど現認が途切れた場合等には、準現行犯逮捕は認められにくくなります。
万引きで、後日通常逮捕されることはあり得ますか?
現行犯逮捕でない限り、先ずは任意出頭が求められると思われますが、逮捕の要件を満たす限り、通常逮捕されることもあります。
緊急逮捕の場合、警察が家に上がり込むことはあるのでしょうか?
自宅家宅捜索中に緊急逮捕の必要が生じたような場合には、自宅内で緊急逮捕されることはあり得ます。そもそも緊急逮捕は例外的な手続きであり、緊急逮捕することを前提に捜査機関が自宅を訪れることはあまりないと思われます。
再逮捕とはなんですか?
被疑者の逮捕・勾留については「一罪一逮捕一勾留の原則」が妥当しますので、同一の犯罪事実で複数回逮捕・勾留されることは通常ありません。もっとも、同じ被疑者が別の余罪等の犯罪事実で、複数回逮捕・勾留が継続することがあります。
弁護士への依頼が被疑者の命運を分けます
刑事弁護はスピードが命です。早い段階で弁護士に依頼することで、いい結果に結びつく可能性がより高くなります。特に逮捕されてから勾留されるまでの最大72時間は、被疑者にとって重要な時間である一方で、力になれるのは弁護士しかいません。まさに弁護士が被疑者の命運を分ける場面です。
この記事の監修
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福岡県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。