労務

フレックスタイム制に関するQ&A

目次

個人単位でフレックスタイム制を導入することは可能ですか?

結論としては可能です。制度の導入自体は、就業規則の変更・周知や労使協定等、従業員全体が関与することになりますが、清算期間やコアタイム等の条件を個々の要望に応じて個別に設定することも許容されています。
もっとも、フレックスタイム制の労務管理だけでも容易ではないのに、個々でコアタイムの有無が異なる等の複雑な制度を導入してしまうと、その運用に苦慮することは想像に難くありませんので、慎重な判断をお勧めします。

コアタイム以外の時間帯の出勤命令や、早出、残業命令等を下すことは可能ですか?

フレックスタイム制は「始業および終業の時刻を労働者の決定に委ねる」ものですので、理論的には、このような命令は下せません。
早出については、労働時間の繰り上げ、繰り下げと同じく、コアタイムの繰り上げ等を行うという方法が考えられますが、そのためには、コアタイムを変更することを可能とする条項を、予め労使協定に定めておく必要があります。そうでなければ、あくまで本人の自発的な同意により、その時間帯の出勤に応じてもらうしかありません。

清算期間における実労働時間の合計が、総労働時間を下回った場合の対応について教えて下さい

総労働時間を実労働時間が下回った場合、欠勤等と同じく、その不足分を賃金から控除します。不足分を次期の清算期間に加算するという取り扱いも可能ですが、次期における加算後の時間(次期の総労働時間+前の清算期間から繰り越した不足時間)は法定労働時間の上限を超えてはなりません。

フレックスタイム制において、休日労働や深夜業の取扱いはどのようになりますか?

法定休日に関する労基法の規定はフレックスタイム制にも適用されますので、少なくとも毎週一度の休日を与えなければなりません。この法定休日に出勤させた場合、割増賃金の支払義務が生じます。
また、フレックスタイム制でも、深夜に労働した場合は深夜割増賃金の対象となります。
もっとも、深夜に働く必要のない業種であれば、フレキシブルタイムを深夜以外の時間に設定しておくことで、不要な深夜割増賃金の支払いを防止するべきと考えます。

フレックスタイム制における、年次有給休暇の取り扱いについて教えて下さい。

フレックスタイム制でも、年休は通常通り取得することができます。その場合、1日の標準労働時間として定めた時間を働いたものとして処理することになります。

フレックスタイム制の導入において、時間管理が苦手な社員への対処法を教えて下さい。

コアタイムの設定や、情報共有のシステム化と徹底、労働時間の管理を厳密に行い、総労働時間に実労働時間が不足した場合は厳粛に賃金から不足分を控除して、自ら時間を管理するという意識を植え付ける等の対応が考えられます。それでも問題行動がやまない場合、当該社員をフレックスタイム制の対象外とすることも検討すべきでしょう。

フレックスタイム制においても36協定の締結は必要ですか?

36協定の締結は必要です。清算期間内の総労働時間と実労働時間を比較して、超過が生じていた場合、時間外労働として取り扱われます。これは、割増賃金が発生するだけでなく、36協定を締結していないと法令違反となってしまいます。

フレックスタイム制の導入で、労使協定を締結しないとどのようなリスクが生じるのでしょうか?

労使協定はフレックスタイム制導入要件の1つですので、締結していないと、そもそもフレックスタイム制は無効であるため、未払い残業代が発生する等の様々な問題が生じます。

特定の部署のみにフレックスタイム制を導入することは可能ですか?

フレックスタイム制の対象は、自由に設定することができます。労使協定の内容等により、特定部署のみを対象とすることも可能です。

フレックスタイム制を導入する場合、10人未満の会社の場合でも就業規則の作成は必要ですか?

フレックスタイム制の導入は、「就業規則またはこれに準ずるもの」により、労働者に係る始業及び終業の時刻をその労働者の決定に委ねる旨を規定することが求められています(労基法32条の3)。
就業規則の作成義務を負うのは、「常時10人以上の労働者を使用する使用者(労基法89条)」ですので、10人未満の会社の場合、就業規則の作成までは不要です。
もっとも、これに準ずるものとして、書面で「労働者に係る始業及び終業の時刻をその労働者の決定に委ねる」旨を規定した上で、就業規則と同様に、従業員全員に周知することが求められます。

就業規則を変更した場合、従業員全員に周知するにはどのような方法が有効ですか?

法令上は、下記表のとおりですが、全員に書面を交付することが一番確実でしょう。

  1. 常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること。
  2. 書面を労働者に交付すること。
  3. 磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、各作業場に労働者が当該記録の内容を常時確認できる機器を設置すること。

フレックスタイム導入による労使協定の様式は、所定のものでないとだめですか?

参考書式はありますが、必要な記載事項が書かれていれば十分です。

労使協定の有効期間はいつまでと定めるべきでしょうか?

36協定等と同じく、1年程度としておくことでよいと思います。

フレックスタイムの休憩時間を社員に委ねる場合、労使協定の締結は必要ですか?

一斉休憩が必要ない事業であれば、各日の休憩時間の長さを定め、その時間帯を労働者にゆだねる旨を定めておくことで足りるとされています(昭63・3・14基発第150号)。就業規則等に規定するか、労使協定で定めておくかのいずれかを履践しましょう。

清算期間における総労働時間について「8時間×所定労働日数」というような定め方も可能ですか?

完全週休二日の労働者の場合であれば、労使協定で定めることにより、清算期間内の所定労働日数×8時間」を労働時間の限度とすることも可能となりました(労基法32条の3第3項)。

「業務の進捗状況に応じて残業命令を下す」という旨を就業規則に定めることは可能ですか?

フレックスタイム制は、始業・終業の時刻を労働者が自主的に選択する制度です。これを導入する以上、残業命令は下せません。仮に、そのような定めを就業規則に置くと、フレックスタイム制自体が無効と評価されかねません。

来所・zoom相談初回1時間無料

企業側人事労務に関するご相談

  • ※電話相談の場合:1時間10,000円(税込11,000円)
  • ※1時間以降は30分毎に5,000円(税込5,500円)の有料相談になります。
  • ※30分未満の延長でも5,000円(税込5,500円)が発生いたします。
  • ※相談内容によっては有料相談となる場合があります。
  • ※無断キャンセルされた場合、次回の相談料:1時間10,000円(税込み11,000円)

顧問契約をご検討されている方は弁護士法人ALGにお任せください

※会社側・経営者側専門となりますので、労働者側のご相談は受け付けておりません

ご相談受付ダイヤル

0120-406-029

※法律相談は、受付予約後となりますので、直接弁護士にはお繋ぎできません。

メール相談受付

会社側・経営者側専門となりますので、労働者側のご相談は受け付けておりません