労務

働き方改革関連法案:(ア) 第1の柱:働き方改革の総合的かつ継続的な推進(雇用対策法改正)

福岡法律事務所 副所長 弁護士 今西 眞

監修弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 副所長 弁護士

働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(平成30年法律第71号)によって、労働関係の法律が改正され、一億総活躍社会を目指した「働き方改革」が推し進められています。

ところが、残業時間の上限規制など具体的な事柄は気になるものの、どういった趣旨や枠組みで推し進められているのかまで考えることはないと思われるので、少し、大きな視点で働き方改革をご紹介したいと思います。
働き方改革は、次の3つの柱から構成されており、本記事では、第1の柱とされる「働き方改革の総合的かつ継続的な推進」について、ご紹介します。

働き方改革関連法案の趣旨

働く人々がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を、自分で「選択」できる社会を実現(一億総活躍社会の実現)することが働き方改革です。働き方改革を総合的に推進するため、長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保等のための措置を講ずべきことが、働き方改革関連法案の趣旨となっています。

働き方改革関連法が施行された背景とは?

現在、日本が経済成長するためには、次のような大きな課題があります。

①少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少による労働力の不足の解消
②労働者のニーズの多様化に対応できていない雇用環境の改善

このような課題を解決することが急務であるところ、これには投資やイノベーションによる生産性向上を実現しつつ、労働者の働く機会を広げ、その能力を活用できる環境整備を整えることが重要でした。 
そこで、国は、働き方改革関連法によって労働関係法の整備を行ったということです。

働き方改革の対象となる8つの労働関係法

働き方改革関連法により、次の8つの労働関係の法律が改正されています。

①労働基準法
②労働時間等設定改善法
③労働安全衛生法
④じん肺法
⑤パートタイム労働法
⑥労働者派遣法
⑦労働契約法
⑧雇用対策法 

働き方改革を構成する3つの柱

働き方改革は、3つの柱で構成されています。

第1の柱 働き方改革の総合的かつ継続的な推進(雇用対策法)
第2の柱 長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現等(労働基準法、労働安全衛生法など)
第3の柱 雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保(パートタイム労働法、労働契約法など)

①働き方改革の総合的かつ継続的な推進(雇用対策法改正)

働き方改革の基本的考え方を明らかにするとともに、国は、改革を総合的かつ継続的に推進するための「基本方針」を定めることとされ、具体的には、雇用対策法を改正するなど、働き方改革の大きな方針を示しています。

②長時間労働の是正と多様で柔軟な働き方の実現等(労働基準法等改正)

労働時間に関する制度の見直しを行い(労働基準法や労働安全衛生法の改正)、勤務間インターバル制度の普及促進(労働時間等設定改善法の制定)、産業医・産業保健機能の強化(労働安全衛生法の改正)といった、具体的な労働時間や労働者の健康確保などに関する改革といえます。

③雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保

不合理な待遇差を解消するための規定の整備(パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法の改正)、労働者に対する待遇に関する説明義務の強化(パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法)、労働局や労基署などの行政による履行確保措置及び裁判外紛争解決手続(行政ADR)の整備といったものになります。
様々な働き方をする労働者が、公平に評価され、労働に対して適切な待遇を受けることができるようにする改革といえるでしょう。

改正雇用対策法「働き方改革の総合的かつ継続的な推進」とは?

働き方改革の基本的な考え方を明らかにし、働き方改革を総合的かつ継続的に推進するための基本方針を定め、働き方改革の大枠、骨組みを示すこととされています。

そもそも雇用対策法とはどのような法律なのか?

雇用対策法とは、国の雇用対策の基本方針を定める法律といえるでしょう。この法律に従って、各労働関係法令が定められているとお考えいただければよいと思います。

雇用対策法の改正内容

雇用対策基本法は、働き方改革の基本方針を示す内容として、次の事項について改正がされています。

  • 題名と目的規定等の改正
  • 国の講ずべき施策
  • 事業主の責務
  • 基本方針の策定

題名と目的規定等の改正

法律の名称が、「雇用対策法」から、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」に変わりました。働き方改革の目的を示すために題名自体を変更したものです。

また、第1条の目的に、「労働者の多様な事情に応じた雇用の安定及び職業生活の充実並びに労働生産性の向上を促進して、労働者がその有する能力を有効に発揮することができること」を明記し、働き方改革の目的が明確にされています。

国の講ずべき施策

労働者の多様な事情に応じた「職業生活の充実」を実現すべく、これに対応し働き方改革を総合的に推進するために、次のような施策を新たに規定することとされています。

  • 労働時間の短縮その他の労働条件の改善
  • 雇用形態又は就業形態の異なる労働者の間の均衡のとれた待遇の確保
  • 多様な就業形態の普及
  • 仕事と生活の両立

法改正の内容について大枠を示しているといえます。

基本方針の策定

国は、働き方改革を総合的に推進することに関する基本方針を閣議決定することとされています。
基本方針の策定においては、他省庁と連携するために厚生労働大臣から関係大臣等へ必要な要請を行えることや、都道府県知事や労働政策審議会の意見を聴くことなどが求められており、各地域や現場の状況を踏まえつつ、国が総合的に働き方改革を推し進めていくことが前提となっているといえます。

また、経済社会情勢の返還を勘案し、必要があるときは、基本方針を変更しなければいけないとされていることから、国には、変化に応じた柔軟な対応が求められています。

労働施策基本方針【平成30年12月28日】(厚生労働省)

雇用対策法改正における事業主の責務とは?

働き方改革では、事業主の役割が重要です。
事業主の協力なくして、働き方改革は実現できないでしょう。
そこで、事業主の責務として「職業生活の充実」に対応したものが加えられています。

「職業生活の充実」は労働者の主観に基づくべきか?

職業生活が充実しているかは、どのように判断するのでしょうか。
労働者がどう感じているのかという労働者の主観で判断すると思われるかもしれないですが、そうではなく、個別の労働者の主観ではなく、「一般的な労働者」にとって充実しているといえるかどうかを客観的に判断することとされています。

中小企業における責務について

改正雇用対策法には、「労働者の労働時間の短縮その他の労働条件の改善その他の労働者が生活と調和を保ちつつその意欲及び能力に応じて就業できる環境整備に務めなければならないこと」、「事業規模の縮小等に伴い離職を余儀なくされる労働者について、求職活動に対する援助その他の再就職の援助を行うこと」、外国人雇用に関し、外国人がその能力を有効に発揮できるよう、職業に適応することが容易となるような措置の実施その他の雇用管理の改善に努めること」などが明記されています。

そのうえで、「中小企業が円滑に取り組むことが進むよう、地方公共団体、中小企業者を構成員とする団体その他事業団体、労働者団体その他の関係者により構成される協議会の設置その他のこれらの者の間の連携体制の整備に必要な施策を講ずるように努めるものとする。」とされ、中小企業が責務を果たせるような配慮するころも明記されています。

労働者の職業の安定を図るための企業の取り組み

働き方改革は、企業の協力なくして実現はできません。
とはいうものの、特に中小企業では、分かっていても現実どのように取り組めばいいのかという悩みもあります。不可能だと思っている事業主もいるでしょう。

しかし、働き方改革の実現は避けることができず、対応していくしかありません。
上手く実現をしている事業主も存在しており、厚労省がウェブサイト(特設サイト)を作成し、様々な取り組み事例や情報を公開しています。

働き方改革特設サイト(厚生労働省)

企業が働き方改革を推進することのメリット

働き方改革を実現することは、企業の人材確保につながります。これが何よりのメリットでしょう。
働き方改革を推進できていない企業は、今後、労働者の確保は更に困難になることは明らかです。

推進に努めない企業への罰則はあるのか?

次のような罰則があります。

  • 時間外労働の上限規制違反:6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金
  • 60時間を超える時間外労働に対する割増賃金不支給:6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金
  • 清算期間1か月超フレックスタイム制に関する労使協定不届:30万円以下の罰金
  • 年5日以上の年休取得義務違反:30万円以下の罰金
  • 高度プロフェッショナル制度労働者の医師による面接指導不実施:50万円以下の罰金

法改正の施行時期

働き方改革関連法の法改正の施行時期については、下記のリンクをご参考ください。

働き方改革関連法の主な内容と施行時期(PDF)【厚生労働省】

働き方改革についてお悩みの企業は、労働関係法に詳しい弁護士までご相談下さい。

働き方改革は、内容が複雑ですし、就業規則の改定を伴うものも多くあります。また、これまでの違法状態をどのように解消するのか、過去を振り返った対応も求められる場合もありますから、労働関係法に詳しい弁護士などへ相談しながら進めることをお薦めします。

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監修:弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 副所長
保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:47535)
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