労務

企業の労働問題を弁護士に相談するメリットと弁護士の探し方・選び方

福岡法律事務所 副所長 弁護士 今西 眞

監修弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 副所長 弁護士

従業員を雇用して事業を営む以上、残業代の未払いや不当解雇をめぐる紛争、ハラスメント、問題社員への対応、労働組合との団体交渉など、労務をめぐるトラブルと完全に無縁でいることは容易ではありません。

これらの問題は、対応を一つ誤ると多額の金銭的負担や行政指導、企業イメージの低下にまで発展しかねず、経営に与える影響は決して小さくありません。

こうしたリスクから会社を守るうえで頼りになるのが、企業側(使用者側)の労働問題に精通した弁護士です。もっとも、ひと口に弁護士といっても得意分野はさまざまで、労働者側に注力する弁護士と企業側に注力する弁護士とでは、とるべき戦略も大きく異なります。

本記事では、企業が直面しやすい労働問題の事例を整理したうえで、労働問題を弁護士に相談するメリット、企業側に強い弁護士の探し方・選び方、依頼にかかる費用の相場までを分かりやすく解説します。
自社に合った弁護士を見つけるための一助となれば幸いです。

企業が直面しやすい労働問題やトラブルの事例

企業が直面する労働問題は多岐にわたりますが、代表的なものとして次のような類型が挙げられます。

残業代・未払い賃金をめぐるトラブル:
労働時間管理の不備や固定残業代の運用ミスなどにより、割増賃金(労働基準法37条)の未払いが争われるケースです。退職した従業員からまとめて請求されることも少なくありません。

解雇・退職勧奨をめぐるトラブル:
問題社員を解雇したところ、不当解雇であると争われる事案です。日本では解雇のハードルが高く、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当と認められない解雇は無効とされます(労働契約法16条)。

ハラスメント問題:
パワハラ・セクハラ・マタハラなどへの対応です。事業主には、ハラスメント防止のための雇用管理上の措置を講じる義務が課されています(労働施策総合推進法30条の2など)。

労働組合・団体交渉への対応:
社内外の労働組合から団体交渉を申し入れられるケースで、正当な理由なく交渉を拒否すると不当労働行為に該当するおそれがあります。

労働災害・安全配慮義務をめぐる紛争:
長時間労働やメンタルヘルス不調などに関し、安全配慮義務(労働契約法5条)違反を理由とする損害賠償が問題となります。

これらは複数同時に発生することもあり、いずれも初動対応の適否がその後の結果を大きく左右します。

労務問題への対応を誤った場合に会社が被るリスク

労務問題への対応を誤ると、会社は次のような不利益を被るおそれがあります。

予定外の金銭的負担:
残業代の未払いが認定されれば、未払い分に加えて遅延損害金や付加金(労働基準法114条)の支払いを命じられることがあります。不当解雇が認められた場合には、解雇期間中の賃金(バックペイ)を遡って支払わなければなりません。

行政指導・処分:
労働者の申告を端緒に労働基準監督署の調査が入り、是正勧告や指導を受けることがあります。悪質な場合には書類送検など刑事責任に発展するおそれもあります。

紛争の長期化・泥沼化:
初期対応を誤ると、交渉が決裂して労働審判や訴訟へと発展し、解決まで長期間と多大な労力を要することになりかねません。

企業イメージ・信用の低下:
訴訟やハラスメントの事実が公になれば、取引先や求職者からの信用を失い、採用や事業活動に悪影響が及ぶこともあります。

こうしたリスクを避けるためには、問題が深刻化する前の早い段階で専門家の助言を得ることが重要です。

労働問題を弁護士に相談する7つのメリット

①適切な法的アドバイスを受けることができる

労働問題には、労働基準法や労働契約法をはじめとする多くの法令に加え、数多くの裁判例の積み重ねによって形成されたルールが存在します。
これらを正確に理解しないまま自己流で対応すると、知らないうちに違法な対応をしてしまったり、本来主張できるはずの権利を見落としてしまったりするおそれがあります。

弁護士に相談すれば、自社の置かれた状況を法的に整理したうえで、とり得る選択肢とそれぞれのメリット・デメリットを踏まえた的確なアドバイスを受けることができます。
感情的になりやすい労使間のトラブルにおいても、客観的かつ冷静な視点から最善の解決策を検討できる点は、大きなメリットといえます。

②被害を防止/最小限に抑えることができる

法的トラブルは未然に防げるに越したことはありませんが、会社を運営する以上、労働問題と一切無縁でいることは困難です。発生してしまったトラブルについても、早い段階で弁護士に相談することで、被害の拡大を防ぎ、損害を最小限に抑えることが期待できます。

特に労働問題は、初動対応の適否がその後の結果を大きく左右します。問題が小さいうちに適切な手を打つことで、紛争が労働審判や訴訟へと発展するのを回避できる可能性が高まります。

③全面的に窓口となり心強い交渉をしてもらえる

労働問題に限った話ではありませんが、弁護士に依頼することで、相手方とのやり取りの窓口を弁護士に一任することができます。

トラブルの対応にあたる現場の担当者にとって、相手方となる労働者やその代理人と直接対峙することは、大きな精神的負担となります。
弁護士に窓口を任せれば、こうしたストレスから解放されるだけでなく、法的知識に裏付けられた交渉を会社の代理人として行ってもらえるため、安心して本来の業務に向き合うことができます。

④労働審判や訴訟に発展した場合にも対応してもらえる

交渉によって解決できればよいですが、話し合いがまとまらない場合には、労働審判の申立てや訴訟へと発展することがあります。労働審判は、原則として3回以内の期日で結論を出す迅速な手続であり、第1回期日までにいかに説得的な主張と証拠を準備できるかが結果を大きく左右します。

こうした手続では、高度な専門知識と的確な立証活動が求められます。
あらかじめ弁護士に依頼しておけば、交渉段階から一貫して同じ弁護士が対応し、労働審判や訴訟へ移行した場合でもそのまま代理人として会社の主張を展開してもらえるため、手続をスムーズかつ有利に進めることが期待できます。

⑤弁護士に全てを任せられるため本業に専念できる

労働問題への対応には、資料の収集・整理、相手方との交渉、書面の作成、裁判所への出頭など、多くの時間と労力がかかります。これらを経営者や担当者が自ら抱え込めば、本来注力すべき事業活動に支障が生じかねません。

弁護士に依頼すれば、こうした煩雑な対応を一括して任せることができ、経営者や担当者は安心して本業に専念することができます。結果として、企業全体の生産性を維持しながらトラブルの解決を図ることができる点も、弁護士に相談する大きなメリットです。

⑥今後の労働問題・トラブルの対策ができる

弁護士への相談は、現に生じているトラブルを解決するだけでなく、将来発生し得る労働問題への備えにもつながります。

例えば、残業代を請求された場合に弁護士の助言を受けて適切に対応することで、労働時間管理の方法や賃金規程を見直し、同種のトラブルが再発しない体制を整えることができます。就業規則の整備や労務管理体制の構築についても助言を受けられるため、紛争の予防という観点からも弁護士の活用は有効です。

⑦労働法関連の法改正にも対応できる

労働基準法を中心とする労働法令は、社会情勢の変化に合わせてたびたび改正されます。
近年も、働き方改革関連法による時間外労働の上限規制や年次有給休暇の取得義務化、ハラスメント防止措置の義務化など、企業に対応を迫る改正が相次いでいます。

こうした法改正の内容を正確に把握し、自社の労務管理に反映させることは容易ではありません。
労働問題に強い弁護士に相談しておけば、最新の法改正を踏まえた助言を受けることができ、知らないうちに法令違反に陥るリスクを避けることができます。

企業の労務問題やトラブルに強い弁護士の探し方

いざ労働問題を相談しようとしても、普段から弁護士と接点のない企業にとっては、どのように弁護士を探せばよいか分からないという声も少なくありません。

ここでは、企業側の労働問題に強い弁護士を見つけるための代表的な方法を紹介します。
いずれの方法による場合でも、「企業側(使用者側)」の立場での対応を得意としているかを必ず確認することが大切です。

インターネット検索で探す

もっとも手軽なのが、インターネットの検索エンジンを利用する方法です。
「企業側 労働問題 弁護士」「会社側 残業代 弁護士」「○○(地域名) 労務 弁護士」など、自社のニーズや所在地に合わせたキーワードを組み合わせて検索すると、目的に合った法律事務所を見つけやすくなります。

検索結果として表示された事務所のホームページでは、取扱分野や解決実績、弁護士の経歴などを確認できます。労働問題に注力している事務所であれば、企業側の労務問題に関するスタンスや強みが分かるよう情報を充実させていることが多く、比較検討の材料になります。

ポータルサイトから探す

弁護士を分野や地域から検索できるポータルサイト(弁護士検索サイト)を利用する方法もあります。
各弁護士が得意分野や取扱実績を登録しているため、「労働問題(使用者側)」を取り扱う弁護士を一覧で比較しながら探すことができます。

ただし、ポータルサイトに登録された取扱分野は、必ずしも豊富な解決実績を保証するものではありません。気になる事務所が見つかった場合は、その事務所の公式サイトもあわせて確認し、企業側の対応実績が十分かどうかを見極めることをおすすめします。

友人・知人・弁護士会などから紹介してもらう

知人の経営者や、すでに付き合いのある税理士・社会保険労務士などの士業から弁護士を紹介してもらう方法もあります。紹介であれば、弁護士の人柄や対応の進め方、費用感などを事前に把握しやすく、相談のハードルが下がるというメリットがあります。特に、自社の事情をすでに理解している顧問の士業からの紹介であれば、スムーズな連携が期待できます。

また、各地の弁護士会が運営する法律相談センターや弁護士紹介制度を利用する方法もあります。
ただし、紹介された弁護士が必ずしも企業側の労働問題を得意としているとは限らないため、紹介を受けた場合でも、その弁護士の取扱分野や実績を確認しておくとよいでしょう。

法律事務所の無料相談を活用する

法律事務所のなかには、初回の相談を無料としているところもあります。無料相談を活用すれば、費用の心配をせずに、弁護士の説明の分かりやすさや対応の相性を実際に確かめることができます。

なお、解雇や残業代請求などのトラブルでは、労働者側を対象とした無料相談は比較的多い一方、請求を受ける側となることの多い企業側を対象に無料相談を行う事務所は限られる傾向にあります。

また、個人を対象とする法テラス(日本司法支援センター)の無料相談・費用立替制度は、原則として企業は利用できない点にも注意が必要です。企業向けの無料相談を実施している事務所を探し、複数の事務所を比較したうえで依頼先を決めるとよいでしょう。

労働問題に強い弁護士の選び方のポイント

労働問題の知識・解決実績が豊富

弁護士にもそれぞれ得意分野があります。労働問題には分野特有のルールや実務上の勘所があるため、労働問題に関する知識と解決実績が豊富な弁護士でなければ、適切な対応ができないことがあります。

事務所のホームページに掲載された取扱分野や解決実績、コラムなどを確認し、労働問題を継続的に取り扱っているかどうかを見極めましょう。
実績が豊富な弁護士ほど、過去の事案や裁判例を踏まえた的確な見通しと方針を示してくれます。

企業側のサポートに特化している

労働問題は、労働者側(従業員側)と使用者側(企業側)のどちらの立場に立つかによって、とるべき戦略や考え方が大きく異なります。同じ労働問題を扱う弁護士でも、労働者側の代理を中心に行っている弁護士に依頼すると、企業側にとって望ましい結果を得にくいことがあります。

そのため、単に労働問題を取り扱っているだけでなく、企業側(使用者側)のサポートに特化している弁護士を選ぶことが重要です。企業側に特化した弁護士であれば、問題社員対応やハラスメント事案の拡大防止、就業規則・労務管理体制の見直しなど、会社を守る視点からの対応を期待できます。

労働問題の専門チームがある

法律事務所の多くは弁護士1人で運営されていますが、労働問題は、事案によっては大量の資料を読み解く必要があったり、関係する当事者が多数に及んだりすることがあります。
また、複数の労働者からの請求や団体交渉など、同時並行で対応を迫られる場面も少なくありません。

こうした事案に的確に対応するには、弁護士1人ではなくチームで臨める体制があると安心です。
労働問題の専門チームを擁する事務所であれば、複数の弁護士が連携して、迅速かつ手厚いサポートを提供してくれます。

説明が分かりやすい

法律の専門用語をそのまま並べられても、依頼者である企業側には理解が難しいものです。
会社側がとり得る選択肢を複数示したうえで、それぞれのメリット・デメリットを、専門知識のない人にも分かりやすく説明してくれるかどうかは、弁護士選びの重要なポイントです。

丁寧で分かりやすい説明ができる弁護士は、労働問題を多角的に理解している可能性が高く、依頼者が納得して方針を決められるよう配慮してくれます。
安心して相談を続けられる相手かどうかを見極めましょう。

デメリットについても説明してくれる

とり得る選択肢のメリットばかりを強調する弁護士には注意が必要です。
どのような対応にもリスクやデメリットは伴うものであり、それらを包み隠さず説明したうえで、依頼者が現実的な見通しを持って判断できるようにしてくれる弁護士こそ信頼に値します。

費用や解決までに要する期間、想定される不利な結果の可能性などについても率直に説明してくれるかどうかを確認しましょう。

弁護士との相性

弁護士ごとに事件処理に対するスタンスは異なり、年齢や性別、コミュニケーションの取り方もさまざまです。労働問題は解決まで一定の期間にわたって弁護士と二人三脚で進めていくことになるため、「話しやすい」「感覚が近い」といった相性の良さも、弁護士選びの大切なポイントになります。

相談の場での受け答えや人柄も確認し、安心して任せられると感じられる弁護士を選ぶとよいでしょう。

レスポンスが早い

労働問題への適切な対応には、正確な知識だけでなく迅速さが求められる場面が少なくありません。
トラブルを抱える会社にとって、相談したいときにタイムリーに連絡が取れる環境は非常に重要です。

問い合わせや相談への返答が早いかどうか、連絡が取りやすいかどうかも、弁護士選びの基準となります。レスポンスの速い弁護士であれば、緊急性の高い事案にも安心して対応を任せることができます。

費用体系が明瞭である

弁護士に相談・依頼する際には弁護士費用が発生します。事案によっては解決まで長期間を要したり、とり得る方法が複数あったりするため、どの程度の費用がかかるのかが明確であることは、安心して依頼するための重要なポイントです。

相談料・着手金・報酬金などの費用体系や金額の目安を、依頼前にきちんと提示してくれる弁護士を選びましょう。費用について曖昧なまま進めると、後から想定外の請求を受けてトラブルになりかねません。

労務問題の解決を弁護士に依頼した場合の費用と相場

弁護士費用は、旧日本弁護士連合会の報酬基準が廃止された現在、各事務所が自由に設定できるため、事案の内容や事務所によって幅があります。一般的な費用の内訳と相場の目安は次のとおりです。

相談料:法律相談に対して発生する費用です。労働者側を対象とした無料相談は比較的多い一方、請求を受ける側となることの多い企業側を対象とする相談は有料が一般的で、初回30分5,000円~1万円程度が相場です。

着手金:依頼時に支払う費用で、結果にかかわらず原則として返還されません。交渉案件で20万円~40万円程度、労働審判では企業側で30万円~80万円程度が一つの目安です。

報酬金:事件が解決したときに、得られた成果に応じて支払う費用です。減額できた金額など経済的利益の10%~20%程度を目安とする事務所が多く見られます。

実費・日当:印紙代や郵便切手代、遠方への出張に伴う日当などが別途必要になることがあります。

顧問料:継続的に相談したい場合は顧問契約を結ぶ方法もあり、月額数万円程度から設定している事務所が多くあります。

実際の費用は事案ごとに大きく異なるため、依頼前に必ず見積もりを確認し、費用体系について十分に説明を受けることが大切です。

労務トラブルへの対応でお困りなら、労務問題に強い弁護士法人ALGにご相談下さい。

労働問題は、対応を誤ると多額の金銭的負担や行政処分、企業の信用低下といった重大なリスクにつながりかねません。だからこそ、トラブルが深刻化する前の早い段階で、企業側の労働問題に精通した弁護士に相談することが何より重要です。

弁護士法人ALGは、会社・経営者側専門の体制で、残業代請求や解雇・退職勧奨、ハラスメント、団体交渉、労働審判・訴訟まで、幅広い労務問題に対応しています。
労働問題の専門チームが、企業を守る視点から、予防から紛争解決までを一貫してサポートいたします。

企業側の労務に関する初回のご相談は来所・ZOOMにて承っておりますので、労務トラブルでお困りの際は、ぜひ一度、弁護士法人ALGにご相談ください。

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福岡法律事務所 副所長 弁護士 今西 眞
監修:弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 副所長
保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:47535)
福岡県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。

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