試用期間

労働者の能力等の適性を吟味するために、試用期間は多くの企業で採用されています。しかし、労働者の生活の糧を奪いかねない本採用拒否は、当然のようにできるわけではありませんので、試用期間の設定、運用には注意してください。
ここでは、試用期間について解説します。

試用期間とは

試用期間の目的・意味

従業員を採用するにあたって、その適性を判断するため、多くの企業が試用期間(3ヶ月~6ヶ月程度)を設けています。ただ、その意味をしっかりと考えたことはあるでしょうか。本採用するか否かを判断するためのお試し期間であって、自社にそぐわないと会社が思えば、簡単に本採用を拒否できると考えていないでしょうか。

試用期間という言葉からすれば、勤務態度や能力、あるいは健康状態等を確かめ、適性を欠く事情があれば、自由に本採用拒否できる期間だと思うかもしれませんが、そうではありません。

試用期間は、採用時に判断ができない事情を踏まえて適性を見極めることができるようにするための期間だと解されており、採用段階では知ることができず、また知ることが期待できないような事実が判明した場合において、判明した事実に照らしその者を継続して雇用することが適当でないと判断することが、本来の試用期間の趣旨、目的に徴して客観的に相当と言えるような場合でなければ本採用拒否はできないとされています(三菱樹脂事件:最大判昭和48年12月12日民集27巻11号1536頁など)。

試用期間の法的性質

試用期間を設けた労働契約は、「解約権留保付労働契約」と解釈され、あくまでも労働契約が成立していることを前提に、従業員の試用期間中の働き等から適格性を欠くと認められる場合には、雇用契約を解約し本採用を行わないことができる権利(留保解約権)が会社側に留保されていると考えられています(三菱樹脂事件:最大判昭和48年12月12日民集27巻11号1536頁)。

なお、留保解約権の行使は、労働契約の解約である以上、「解雇」に該当します。ただ、留保解約権を設けた趣旨や目的に鑑み、その有効性は本採用後の解雇よりも緩やかに判断されてはいます。

有期雇用との違い

有期雇用(期間の定めのある労働契約)は、契約期間が満了すれば、契約期間の変更や更新をしなければ、原則として終了します。この点を利用して、有期雇用を試用期間的に利用している企業もあるのではないでしょうか。
多くの場合、更新に関する規定が設けられており、問題がなければ契約が更新されることが多いと思いますが、更新が繰り返されるなど、更新への期待に合理的理由があれば、容易に雇止め(更新拒絶)は認められなくなります(労契法19条)。また、雇用期間が通算5年を超える場合には、労働者からの無期契約の申込みがあれば無期雇用に転換するので注意してください(労契法18条)。

他方で、試用期間を設けた労働契約(解約権留保付労働契約)は、留保解約権が適法に行使されない限り本採用となります。

有期雇用は、一定の期間を定める点で試用期間と類似しますが、期間満了の時点で労働契約が終了する点で大きく異なります。
もっとも、試用期間的に有期雇用を利用している場合には、有期雇用の解釈が争われることが少なくありません。形式的に有期雇用としていたとしても、期間満了により終了する旨の明確な合意がなされていない実態から試用期間だと判断された事案も存在しますので、「有期雇用だから期間満了で契約を終わらせられる」と安心しないようにしてください(神戸弘稜学園事件:最判平成2年6月5日民集44巻4号668頁)。

試用期間の延長

試用期間は多くが6ヶ月以下であり、その間に労働者の適性を見極めるのは難しいケースもあります。そこで、もう少し様子を見たくなったときには、試用期間を延長すればよいと簡単に考えておられるかもしれません。

しかし、試用期間の延長は、就業規則等で「試用期間が延長される場合があること」や「延長事由」、「延長される期間」が明示されていなければ、認められません。
また、本採用を拒否されるような事情が労働者にある場合(雅叙園観光事件:東京地判昭和60年11月20日労判464号17頁)や、当初の試用期間では判断が不可能であった場合等、限られた場合でなければ延長は認められないと考えてください。
適性を判断するために必要な合理的期間を超える試用期間は、公序良俗に反し無効とされており、試用期間の長さは適正でなければなりませんので、最初から試用期間を長く設定することも避けてください。例えば、見習社員としての試用期間(最短6ヶ月~9ヶ月、最長12ヶ月~15ヶ月)を経たのちに、試用社員としての試用期間(6ヶ月~12ヶ月)を設けていた事案では、試用社員としての試用期間について無効だとされています(ブラザー工業事件:名古屋地判昭和59年3月23日労判439号63頁)。

本採用拒否

試用期間中の様子をみて本採用を見送りたいと思うこともあるでしょう。しかし、労働契約(解約権留保付労働契約)が成立している以上、法的には解雇にあたりますので、本採用拒否は慎重に行わなければなりません。

本採用拒否に関する基本的な考え方

本採用の拒否は容易に認められるものではありません。「解雇」である以上、労契法16条により、客観的に合理的な理由が存在し、社会通念上相当であると認められなければならないからです。

本採用拒否の有効性に関しては、本採用を拒否した労働者の能力や資質がどの程度低いか、改善するよう指導等を行ったのか、今後の指導等によって改善の見込みがあるのかが考慮されています。本採用拒否の合理性は、企業側に立証責任がありますので、本採用拒否をする可能性を踏まえて、試用期間中の働きぶりや指導内容などを記録に残すことを忘れないでください。

なお、本採用の拒否は解雇であることから、試用期間開始後14日以内である場合や、解雇予告除外認定を受けた場合を除き、最大で30日分の解雇予告手当を支払う必要があります。

試用期間満了時の場合

労働者の重大な経歴詐称が判明した場合や何度督促しても必要書類を提出しない場合、無断欠勤・無断遅刻等を繰り返し改善が見込めない場合等であれば、基本的に、本採用拒否が認められるでしょう。

では、能力不足を理由とするケースはどうでしょうか。

労働者に繰り返し指導することを怠り、漫然と試用期間を経過したような場合には、本採用拒否は認められません。企業には、労働者を繰り返し指導し、改善する機会を与えることが求められます。
また、本採用後に能力向上が期待できるのであれば、本採用し、その機会を与えなければなりません。特に、新卒採用者であれば能力不足は当たり前なので、能力不足による本採用拒否は基本的にできないと考えておくべきです。
一方、中途採用者であれば、能力があることが前提なので、新卒採用者に比べれば、能力不足による本採用拒否が認められやすくはあります。
ただし、どういった能力が備わっていることを条件として採用したのかを明確にしておくようにしてください。

試用期間中の場合

試用期間満了を待たずして、能力や適性を欠くと感じることも少なくないと思います。
ただ、試用期間中に解雇することは、試用期間満了時に解雇するよりも、はるかにハードルが高くなります。
試用期間は、労働者の適性を判断するための機会である以上、企業には指導教育を尽くすことが求められ、重大な経歴詐称があった場合や、指導教育によって改善する見込みが無いことが明白な場合等、よっぽどの場合でなければ、試用期間中の解雇はできないと考えてください。

適正な試用期間の長さ

試用期間自体は、企業が自由に定めることができますが、適性を判断するために必要な合理的期間を超える部分は、公序良俗に反するとして無効になります。合理的期間か否かは、業務内容など具体的な事情を踏まえ判断されますので、一概にはいえませんが、3ヶ月~6ヶ月程度であれば無効とされることはないでしょう。
平成26年に実施された独立行政法人労働政策研究・研修機構による「従業員の採用と退職に関する実態調査」によると、中途採用の場合で65.7%が3ヶ月間、16.5%が6ヶ月間としているようです(新卒採用の場合は、66.1%が3ヶ月、18.3%が6ヶ月)。

試用期間は当たり前ではない

試用期間は、労働契約に当然に含まれるものではありません。労働契約の内容となって初めて試用期間付きの労働契約(解約権留保付労働契約)となります。試用期間について聞いていなかったと労働者から言われないよう、試用期間については、求人段階から明確に伝え、労働契約書や労働条件通知書へ明記するようにしてください。

就業規則と異なる試用期間の有効性

就業規則の基準に達しない労働契約の内容は無効であり、無効となった部分は就業規則の定める基準によることとなります(労契法12条)。そのため、個別の労働契約で試用期間を6ヶ月に定めたとしても、就業規則に3ヶ月と定めているときには、労契法により試用期間は就業規則の定めどおりに3ヶ月となりますので、労働契約で試用期間を定める場合には、就業規則の定めを確認することを忘れないでください。

他方、労働契約で就業規則よりも短い試用期間を定めた場合には、就業規則よりも有利な内容なので労働契約で定めた期間となります。

就業規則と労働契約の内容にズレがないように、例えば、就業規則に試用期間を定める場合には、3ヶ月~6ヶ月といった幅を持たせておいて、面接を踏まえて適正な試用期間を設定することがよいでしょう。

有期雇用における試用期間の有効性

有期雇用は、契約期間を更新せずに雇止めが可能であるからか、有期雇用に試用期間を設けていない企業にお会いすることがあります。

しかし、有期雇用であっても、社会人としての常識的な対応に欠けており、自己中心的な言動が顕著である労働者も存在することから、試用期間を設けておく方が無難でしょう。

ただし、有期雇用は契約期間の雇用保障的意義があるため、試用期間の長さには注意が必要です。1年間の有期雇用に対して6ヶ月の試用期間を設けた事案で、3ヶ月に短縮されたこともありますので、有期雇用の試用期間については、契約期間を踏まえて設定するようにしてください(リーディング証券事件:東京地判平成25年1月31日労働経済判例速報2180号3頁)。

本採用拒否が認められた事例

宇部コンクリート事件(東京高判昭和48年3月23日)

【事案の概要】

当該事案は、コンクリートミキサー車運転手として雇用された三級整備士の資格を持つ控訴人が、試用期間の満了により本採用を拒否された事案です。

被控訴人である会社は、控訴人の本採用を拒否した理由として、コンクリートミキサー車運転手としての注意能力の著しい欠如、会社に対する損害惹起、経歴詐称、勤務状態や生活態度不良などを総合して判断したと主張しました。

控訴人の「注意能力の著しい欠如」として挙げられるのは、ドラム内の生コンクリートが固まらないように、ドラム内の羽根を常に回転させておかないといけないところ、生コンクリートを積んだまま、ミキサー車のドラム内の羽根を止め、1時間以上も放置していたことです。その結果、ドラム内のコンクリートが固まってしまいました。

さらに、控訴人は、上司や同僚に指示等を求めることもないまま羽根を動かしたため、羽根を回転させるためのローラーチェーンを切ってしまいました。これについても「注意能力の著しい欠如」として挙げられました。

これに対して控訴人は、会社側によるチェーンが切れないようにするための対策が不十分であったこと、ミスをしないようにする会社の指導が不十分であったこと、本件本採用拒否は控訴人による組合活動が理由であることを主張しました。

【判旨】

当該事案において、羽根を止めたこともチェーンを切ったことも、控訴人による甚だしい不注意によるものであると裁判所は認定しました。

そのうえで、控訴人がこれらのミスを犯したことについて、コンクリートミキサー車の運転手としての能力及び適格性に欠けており、試用期間中における被用者の業務適格性の判定について、使用者に広い裁量・判断権が留保されていることに鑑みれば、被控訴人である会社が控訴人に業務適格性がないと判断したことが不相当であるとは言えないと指摘しました。

そして、本採用拒否が無効であるとの控訴人の主張を全て退け、控訴人の請求を棄却しています。

本採用拒否が認められなかった事例

医療法人財団健和会事件(東京地判平成21年10月15日労判999号54頁)

【事案の概要】

当該事案は、被告法人に事務総合職として採用された原告が、試用期間満了まで20日間程度を残す時点で解雇された事案です。

原告は、職場におけるパワハラや退職強要によって精神疾患を発症したため、本件解雇は業務上負傷した労働者の解雇を規制する労基法19条に違反することや、本件解雇は解雇権の濫用であることを主張しました。

一方で被告法人は、原告が初歩的なミスを繰り返していたこと、指導すると退職を申し出る等して改善を拒否していたこと等に鑑みれば、原告の事務能力の欠如を理由に解雇することは解雇権の濫用ではなく、パワハラや退職強要は行っていないと主張しました。

【判旨】

当該事案において、被告法人の職場におけるパワハラや退職強要は認められないため、原告の精神疾患と業務との間に因果関係は無く、労基法19条に違反しないと裁判所は認定しました。また、原告の業務遂行に関する教育・指導は十分に行われていたと指摘しました。

しかし、原告の勤務状況等は改善傾向にあり、被告法人の要求する水準に達する可能性があったため、試用期間満了まで20日間程度を残す時点での解雇は、時期の選択を誤っており無効であると認定しました。

試用期間と似た目的の採用方法

試用期間的有期雇用

この制度は、当初は有期労働契約を締結して採用し、企業にとって有益な人材であることを確認してから無期労働契約を締結する制度です。

企業にとっては、無期労働契約を締結しなければ原則として労働契約が終了するというメリットがありますが、実質的には無期労働契約の試用期間であったとみなされれば、解雇は困難となるので注意が必要です。

紹介予定派遣

この制度は、必要な許可を得ている労働者派遣事業者が、職業紹介目的で労働者を派遣する制度です。紹介予定派遣であっても、労働者派遣であることに変わりはありませんが、派遣先に正規労働者として採用される可能性があることから、通常の派遣では禁止されている事前面接が可能です。

契約社員前置採用

この制度は、自社で募集した者と有期労働契約を行い、その後で当該労働者の希望を確認して、改めて応募してもらい、正社員として採用するか否かを選考する制度です。有期雇用として働いてもらうことで2段階選考を可能とする仕組みですから、ミスマッチを防ぐことに有益でしょう。

ただ、有期雇用とした労働者に対して、そののち、ほぼ確実に正社員として採用されるかのような期待を与えていたり、従来は例外なく採用されたりしている等、形式だけの運用をしてしまうと、試用期間だと判断されるおそれがありますので注意してください。

常用目的紹介

この制度は、求人者と求職者の間に、当初は有期雇用契約を締結させて、その契約が終了した後に引き続き無期雇用契約を締結させることを目的として職業紹介を行う制度です。契約社員前置採用と異なり、事業者から求職者を紹介してもらえるため、募集をかける労力を省けることがメリットです。

ただし、この制度を利用する場合には、正社員として採用した後で、改めて試用期間を設けることは適切ではないとされていますので注意が必要です。

トライアル雇用

この制度は、ハローワークの紹介により、企業で若年失業者等を試行的に一定期間だけ雇用し、その期間中に若年者の実務能力等を向上させ、その後の無期雇用契約へつなげることを目的とした制度です。

無期雇用契約に移行して労働者を継続雇用した場合には、奨励金が支給される制度も別途定められています。

体験入社

この制度は、インターンシップとも呼ばれており、学生が在学中に、将来のキャリアに関連した企業において、職業体験を行う制度です。

入社後のミスマッチを解消して早期離職を予防し、優秀な人材の発掘に役立つため、学生だけでなく企業にとってもメリットの大きな制度です。

まとめ

以上のように、試用期間は、一般的な理解と労働法の解釈とのズレが大きいといえます。
そもそも、試用期間なのか否か、客観的に合理的な理由があって社会通念上相当といえる本採用拒否か等について、裁判所は、個別具体的に判断を行いますから、一概に適否を判断することは困難です。
そのため、試用期間の設定や運用の際には、是非、顧問弁護士など専門家の助言を得るようになさってください。

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