労務

従業員がうつ病で休職したときの接し方

福岡法律事務所 副所長 弁護士 今西 眞

監修弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 副所長 弁護士

メンタル不調者に対する接し方については、インターネット上にも「がんばれ」、「辛いのはみんな同じ」などの言葉は使ってはならない等、色々な情報があふれています。人の上に立つポジションや、人事を担当する立場であっても、メンタルケアに関する専門的な訓練を受けている方はごく少数のはず。付け焼刃で100点の対応をするのは困難ですから、“適切に休職等の制度利用を促し、「しっかり休息してもらうこと」を心掛ける”ようにしましょう。

休職命令の根拠となる就業規則

休職を制度として定めるためには、就業規則に根拠規定を定めておく必要があります。規定を欠いた状態では、会社がこれを命じることもできませんし、双方とも望ましくない状況に置かれることになりかねませんので、規定の整備をおすすめします。

うつ病で休職させる際の対応

休職制度について十分な説明が必要

うつ病に罹患して療養中の従業員に休職を命じるとして、その際にはどのような制度で、どのような待遇となるのか等を説明することが望ましいところです。ここをおろそかにすると、“自主退職に向けていやがらせをされた”等の誤解が生まれ、無用な紛争に発展する可能性もありますので、待遇や休職期間、復職の条件や手続き等、十分説明されることを心掛けましょう。

休職者の業務引継ぎにおける注意点

業務の引継ぎは、退職等と同様に実施してもらいたい、と考えるのが自然なところですが、メンタル不調による休職の場合、早期に業務から解放することが求められると思います。無理に引継ぎをさせるよりも、本当に必要な点に限定して、最小限の質問等にとどめることをお勧めします。

休職中の従業員との接し方

休職中の病状報告義務について

休職は、職場復帰を目指した休養のための期間ですので、会社としても、療養状況を把握することが必要になっていきます。就業規則に根拠がある場合、復職の判断に際しては、診断書の提出や産業医の面談等を求める場合もあると思います。

治療の初期段階等に頻繁に回答を求める等は逆効果となってしまうでしょうから、状況に応じた配慮をおすすめします。

メンタルヘルス不調と職場復帰支援の有効活用

メンタル不調で休職した従業員の休職や、復職に向けた取り組みというのは、雇用する側としても習熟に乏しく対応に苦慮する問題でしょう。この点に関して、厚生労働省は「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」という資料を公表しています。休職から復職までのガイドとして、参考にされてみてください。

復職した従業員に接する際の注意点

復職時の声かけが重要

メンタル不調は、客観的な検査手法等がほぼ存在しない分野です。治ったように見えても再燃する場合もありますので、復職後もある程度の期間は注意しておくことが望ましいところです。本人からの聴取のみならず、同僚や直属の上司等の意見等も確認し、早期対応を心掛けましょう。

配慮し過ぎると逆効果になることも

配慮は必要ですが、いわゆる腫れ物扱いのような対応をすることが逆効果という場合もあります。加減は難しいところですが、やりすぎにならないように心掛けましょう。

よくある質問

うつ病で休職と復職を繰り返す従業員への対処法を教えて下さい。

断続的な休職については、予め就業規則に同一・類似の傷病による再休職等に関する通算規定を設けておくことが有効です。

休職期間を満了しても復職できない場合、解雇とすることは可能ですか?

就業規則には、休職の制度を定める場合、期間満了後も復職できない場合の退職について規定することが通常です。その際には解雇ではなく、自然退職として規定しておくべきでしょう。

うつ病を発症した従業員を放置した場合、会社は賠償責任を負うのでしょうか?

安全配慮義務違反等により、賠償責任を負う可能性があります。適切に対処しましょう。

復職可能かどうか判断するため、休職者の家族からヒアリングすることは可能ですか?

プライバシーの問題がありますので、休職者本人の同意を得た上で実施しましょう。

うつ病で休職した従業員が復職した後も、面談は実施すべきでしょうか?

面談という手法が適当かについては事案によりけりだと思いますが、再発等に迅速に対処するため、復帰後もある程度の期間は様子を把握しておくほうが望ましいでしょう。

従業員の復職後すぐに残業させても問題ないでしょうか?

再燃のおそれに鑑み、復帰後すぐの残業は避けておくほうが望ましいでしょう。

職場におけるメンタルヘルス不調を防止するには、どのような対策が有効ですか?

要因・対策とも多岐にわたりますが、長時間労働はメンタル不調の大きな要因の一つです。残業時間はしっかり管理するようにしましょう。

うつ病による休職者への対応でお困りなら、一度弁護士に相談することをお勧めします。

休職制度の創設や実際の運用等は、注意すべき点も多く、取り扱いを間違えると紛争化やその拡大につながってしまう場合も懸念されます。現在の対応に苦慮しているという場合はもちろん、将来に備えて就業規則を見直す場合等も含めて、弁護士に相談してみることをお勧めします。

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監修:弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 副所長
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