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離婚問題

不倫慰謝料を請求された場合の対処法

福岡法律事務所 副所長 弁護士 今西 眞

監修弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 副所長 弁護士

不貞(≒いわゆる不倫)の慰謝料を請求された場合、どのように対応すべきなのか、突然のことで迷う場合もあるかと思います。身に覚えがなければ争う方法を検討しなければなりませんし、仮に一定程度は事実であったとしても、相手の主張どおりに支払うべきかというのは一考の余地がありうるところです。

不倫慰謝料を請求されたら確認すること

慰謝料を請求されたとして、その当否や争い方等を検討するにあたっては、“誰からの、どのような理由に基づく、どんな内容の請求なのか”を把握しなければなりません。「弁護士から内容証明郵便が届いた」という場合は書面の記載内容の検討から始めることになりますが、“浮気相手の配偶者を自称する人物から突然のTEL”という場合、自身での対応がマイナスに働く場合もありますので、注意が必要です。

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慰謝料の支払いが必要ないケース

不倫を理由に慰謝料を請求されたとして、法的にも支払う必要がないという場合があります。事実無根や時効の成立はその典型ですし、不法行為に基づく損害賠償請求について、法律上の要件を充たさないとして請求が否定される場合もあるからです。

不倫の事実がない

相手が主張する不倫は全くの事実無根で、そもそも身に覚えがないという場合、支払う必要もないというのが通常だと思います。ただし、実際に肉体関係はないとしても、ラブホテルに二人で泊まった証拠がある等、その蓋然性が極めて高いという証拠が抑えられているという場合は、こちらの側から肉体関係を否定するような客観証拠が出せない限り、不倫の事実を争うのは困難となります。

夫婦関係が破綻していた

不貞慰謝料請求は、平穏な夫婦関係等の法的利益を侵害したことを前提とするものです。すでに夫婦関係が完全に破綻していたという場合、不法行為の要件を充足しないということがあります。
ただし、「夫婦関係の破綻」が認定されるためのハードルは低くはありませんので、既婚者から「妻とは終わってる」等と誘われたとして、それを鵜呑みにするのは危険です。

慰謝料請求の時効を過ぎている

不貞慰謝料の請求は、法的には「不法行為に基づく損害賠償請求」というものです。これは、“損害及び加害者を知ったときから3年”又は“不法行為の時から20年”という時効があります。時効が成立している場合、相手からの請求に応じる必要はありません。

相手が既婚者だと知らなかった

不法行為の成立には、故意・過失という主観的な要件も問題とされます。相手が既婚者であることを知らずに性交渉等に及んだという場合、請求を免れる場合もあります。ただし、故意はなくとも過失はある、と言う場合はありますので、「知らなかった」というだけではなく、「知らなかったことに過失もない」ということが必要です。

不倫慰謝料を請求された際にやってはいけないこと

請求を無視する

“全くの事実無根で証拠もない”との確信がなければ、自己判断で請求を無視することはお勧めできません。特に相手が代理人弁護士を通じてきている場合は、何の対応もしないという先に待っているのは、訴訟提起と言う場合が通常ですし、これをリスクと感じるのであれば、自身も早めに対策を講じておくことが必要でしょう。

開き直る・逆切れする

相手が決定的な証拠を確保している場合、請求そのものを否定するということは困難です。一定の減額や分割払いの交渉を行う必要があるという場合に、一時的な感情に身を任せて相手を攻撃するというのは、感情的な対立を激化させるだけのマイナスにしかならない行為だと思います。

不倫慰謝料が高くなるのはどんな時?

自分から誘った場合

どちらから誘った、という点は慰謝料の金額自体にはそこまで影響するところではありません。金額に影響するのはよほど態様が悪質と言う場合だと思います。

反省していない場合

慰謝料は相手の精神的苦痛等に対する損害賠償ですので、全く反省していないというのはマイナスの評価を受ける可能性があります。とくに、相手から不貞の事実を指摘されても関係を続けるというような場合、金額面に影響する可能性は低くありません。

それまで夫婦円満だった場合

すでに破綻寸前の夫婦よりも、不貞の発覚まで良好だった夫婦の関係を破壊するほうが、侵害された利益は大きいという考えはありうるところですが、これは比較対象の問題ですので、この点を主張すれば金額が大きく上がるというものではありません。

妊娠・出産した場合

不貞行為の結果、妊娠・出産したという事情は、認知等によって親族関係が形成されることで、養育費や遺産相続等、実質面でも影響が生じるところですので、不貞の事実に対する客観的な証拠の一つともなりうる他、慰謝料の増額事由としても影響しうるところです。

不倫が原因で離婚した場合

不貞行為に対する慰謝料の請求において、結果として離婚を余儀なくされたかどうかは、金額に大きく影響する点です。夫婦関係の平穏という利益が完全に破壊されたか否かという点は、損害の大きさへの評価に直結しますし、配偶者と不貞相手の求償問題という観点からも金額に強く影響します。

請求された金額が払えない場合の対処法

不倫に身に覚えがあり、証拠も押さえられているという場合、一定の支払は免れられないでしょう。もっとも、相手方の主張する金額が高すぎるという場合や、金額は穏当でも現実問題として一括で払う経済力がないという場合はありうるところです。

減額交渉する

金額が高すぎると言う場合、減額を求めて交渉するしかありません。相手方が請求している金額が裁判実務の相場と比較してもはるかに高額で、相応の金額での合意ができないという場合は、裁判所で白黒つけてもらうほうが良い、という場合もあるかもしれませんが、自己判断はお勧めしません。

分割払いの交渉をする

一括で払うお金がなければ、支払方法についても交渉するしかありません。相手方から見ると、長期分割は管理の手間や回収リスクを懸念するというのが通常でしょうから、自身が確実に支払可能な上限やその調整、相手の懸念に配慮した条件や合意書の文言の提案等が求められるところです。

不倫慰謝料を請求されたら弁護士にご相談ください

不倫を理由に慰謝料の請求を受けたという場合、何かしら身に覚えがあるという場合も、そうでない場合も、自己の判断で行動する前に弁護士に相談することをお勧めします。

負い目がある状況で現状認識や相手方との対応を冷静に行うというのは、容易なことではありませんし、本来なら減額交渉等で穏便に収束できたはずの事案が訴訟に移行する、余計な言質や証拠を与えてしまう危険もあるからです。自身の置かれている状況を判断してもらい、交渉等も一任してしまうことをお勧めします。

福岡法律事務所 副所長 弁護士 今西 眞
監修:弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 副所長
保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:47535)
福岡県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。