親権を変更したい|親権者変更調停の手続き方法

離婚問題

親権を変更したい|親権者変更調停の手続き方法

福岡法律事務所 所長 弁護士 今西 眞

監修弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 所長 弁護士

離婚をすると、単独親権となるため、父母の両方が親権を持つことはできなくなります。
そこで、離婚の際には父母のどちらかに親権者を定めなければなりません。一度定めたものの、事情が変わった等の理由で変更をしたい場合、どのような手続きにより、変更を行うことができるのでしょう。

親権変更に関する手続きの内容や流れについて、詳しく解説していきます。

離婚後に親権者を変更することはできる?

離婚後に親権者を変更することはできます(民法819条6項)。
ただ、親権者の変更は、必ず家庭裁判所の手続きで行うことが求められており、当事者が合意して役所へ届出るだけでは変更できません。子どもの親族(一般的には、親権の変更を求める父か母)が、調停若しくは審判を申立て、親権者の変更が認められれば、調停成立若しくは審判確定から10日以内に、役所へ調停調書や審判書の謄本を添付のうえ、親権者変更届を提出する必要があります。

親権者の変更に関する裁判所の手続きといっても、裁判所が関与する度合いは状況によって様々です。
例えば、当事者が親権者の変更に合意をしており、新しい親権者の監護環境にも問題がなく、更に子どもも変更を希望するような場合には、両親の意向や親権者を変更する理由、子どもの意向などを確認する程度で、親権者を変更する旨の調停が成立することになります(※審判においては、15歳以上の子どもの陳述を聴くことが必須とされています。家庭裁判所調査官が子どもから直接に話を聞くこともありますが、年齢や事情によっては子どもの意向を文書で確認する程度で済ませることもあります。)。

他方で、当事者で争いがある場合や子どもの意向に反する場合など、子どもの利益を守るために裁判所が後見的に関与すべき場合には、家庭裁判所調査官による調査が行われるなど、離婚時の親権争いに似た手続きが進められます。

親権変更が可能な場合とは

父母間に争いがある場合には、「子どもの利益のために親権を変更する必要があるのか」かどうか慎重に検討されます。親権を変更すると、子どもの身分関係のみならず、生活環境を大きく変えることにつながるためです。子どもの利益を考えて、親権者指定時から相当程度の事情変更があったことが必要となります。

この点、離婚事由のように法定されているわけではなく、法律上は「子の利益のために必要があると認めるとき」に家庭裁判所が親権者の変更をすることができると定めているだけなので、個別具体的な事情によって判断されています。
例えば、

  • 親権者が子どもを虐待している場合
  • 親権者が病気となり、監護養育ができない場合
  • 親権者が亡くなった場合
  • 親権者の海外赴任先の治安が悪く、子どもを連れて行くと子どもが危険な場合

には親権が変更される傾向にあります。

親権を変更する方法

離婚をする際に、親権者を決める場合には、父母の合意で行うことができますが、親権を変更する場合には、父母の合意があるか否かにかかわらず、家庭裁判所の手続きによって行わなければなりません。
一般的には親権変更を希望する父か母から、親権変更調停・審判を申立てます。
調停や審判で親権の変更が決まれば、調停成立日や審判確定日から10日以内に、調停調書や審判書の謄本を添付して役所へ届出なければなりません。

父母間で合意ができているのか、それとも争いがあるのかにより、裁判所の関与の度合いは様々です。争いがある場合には、親権者変更の制度が子どもの利益のために認められた公益的なものであることを踏まえ、家庭裁判所調査官が子どもに裁判所へ来てもらい面談を実施したり、学校や家庭へ訪問するなど積極的に関与するのが一般的です。家庭裁判所調査官の調査結果などを踏まえても解決できなければ、裁判所が後見的に親権変更を認めるか否かの審判をするという流れで行われています。

親権者変更調停とは

親権者変更調停は、子の親族(一般的には、親権者でない父か母)から親権者に対して、親権者を変更することを求めて裁判所へ申立てる調停です。もっとも、調停は裁判所が判断して解決するものではなく、あくまでも裁判所の協力を得ながら当事者が任意に解決(調停成立)を目指すものです。

親権者変更調停の手続き方法

親権者変更調停を行うには、どのような書類が必要なのか、費用はかかるのか等、申立ての手続きの具体的な内容について、解説します。

申立てに必要な書類

①親権者変更調停申立書とその写し1通(相手方に送付されるコピーとなります。)
②事情説明書
③進行に関する連絡表(相手方には非開示です。)
④送達場所の届出書
⑤申立人の戸籍謄本(全部事項証明書)
⑥相手方の戸籍謄本(全部事項証明書)
⑦未成年者の戸籍謄本(全部事項証明書)
が必要となります。

①~④の書類は、家庭裁判所のホームページに掲載されており、ダウンロードすることができます。
⑤~⑦の戸籍謄本は、それぞれの本籍地のある市区町村役場で取得することができます。遠方等で直接出向くことが難しい場合には、郵送での取得も可能です。

申立てに必要な費用

申立てを行うには、収入印紙と、連絡用の郵便切手が必要となります。
収入印紙は子ども1人につき、1200円分です。
例えば、子ども2人場合は、1200円×2人=2400円となります。
連絡用の郵便切手は、申立先の家庭裁判所によりますので、問い合わせによる確認が必要となります。

書類を提出したら調停期日の案内が届くのを待つ

申立てに必要な書類の提出先は、相手方の住所地の家庭裁判所です。父母間で合意ができた場合には、合意地の家庭裁判所となります。
申立てを行うと、裁判所は、申立てに必要な書類が揃っているのかどうか、確認を行います。
確認が完了すると、一般的には1か月程度で、初回調停期日に関する案内が届きます。

親権者変更調停の流れ

  1. 1.裁判所より、初回の調停期日が決定されます。
  2. 2.初回の調停期日が開かれます。
  3. 3.第二回以降の調停期日が開かれます。
  4. 4.調停が成立するまたは不成立となることによって終了します。
  5. 5.調停が不成立となった場合には、自動的に審判に移行することにより、裁判所の判断が示されます。

調停成立後の手続き

調停が成立し、親権者の変更が確定した場合、新しい親権者は、確定した日から10日以内に市区町村役所の戸籍係に「親権者変更」を届け出る義務があります(戸籍法79条、63条1項)。
届出を行うに際し、

  • 新しい親権者の印鑑 (朱肉使用のもの)
  • 親権者変更届
  • 調停調書の謄本、または審判書の謄本および確定証明書
  • 子の戸籍謄本1部

が必要となります。

調停が不成立になった場合

話合いがまとまらず、調停が不成立になった場合には、自動的に審判手続に移行されます。
審判手続きは、調停と異なり、裁判官が一切の事情を考慮して、結論を示すこととなります。
親権変更ができなかった場合でも、子どもとの交流方法や頻度について話し合いたいという場合には、面会交流調停等により、話合いの場を設けることができます。

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親権者変更調停の申立て~成立にかかる期間

父母が変更に合意をしており、新しい親権者の監護環境に問題がなく、子どもも変更を希望していることが明らかな場合には、第一回の調停期日で成立することもあります。
この場合には、申立てから成立まで約1か月程度の見込みとなることが一般的です。

他方で、申立人と親権者の間で争いが生じていることが多く、この場合には、父母からの話だけでなく、家庭裁判所調査官による家庭訪問や学校訪問等の調査の実施、子どもの年齢が大きい場合には、子どもから話を聴くといったこともなされるため、成立まで半年~1年程度かかることも少なくありません。
父母間の争いの状況によって、かかる期間は変動します。

親権者変更にあたって裁判所が重視していること

親権者の変更は、子どもの利益になる、つまり子どもの健全な成長を助けるようなものでなければなりません。
調停手続では、

  • 申立人が自分への親権者の変更を希望する事情や現在の親権者の意向
  • 今までの養育状況
  • 双方の経済力や家庭環境

といった、申立人と親権者の事情が考慮されます。
上記事情に加えて、

  • 子ども自身の意向(15歳以上の場合は、特に重視される傾向があります)

が重視されます。

なお、一般的に、子どもが幼年の場合には、母が親権者として優先される傾向にありますが、母という一事をもって決められるものではありません。親権を変更すべき事情を適切に伝えることが重要となります。

親権者の再婚相手と子供が養子縁組したあとでも親権変更できる?

親権者変更の手続きは、単独親権行使者から単独親権行使者への変更を前提に考えられています。
親権者の再婚相手と子どもが養子縁組を行った場合には、親権者と親権者の再婚相手の共同親権状態となります。共同親権からの変更は想定されていませんので、親権者の再婚相手が子どもと養子縁組した後には、親権を変更することができなくなります。

離婚後に親権者が死亡した場合、親権はどうなる?

親権者が亡くなることにより、子どもの親権者がいない状態となります(当然に生存親が親権者になるわけではありません。)。
他方の親が生存している場合には、他方の親に親権を変更するという方法があります。

他方の親が全く子どもと没交渉の場合等、子どもの利益を考え、子どもの親族等親以外の第三者が子どもの監護養育をすることが良いと考えられる場合もあるでしょう。
この場合には、未成年者の親族等が、未成年後見人(未成年者の監護養育、財産管理、契約等の法律行為等を行う法定代理人)の選任を行うように裁判所に申し立てを行う方法があります。

親権者を祖父母に変更したい場合は?

祖父母が親権者になりたい場合には、孫と養子縁組を行うことにより、養親として親権を行使することができます(民法818条2項)。
ただし、孫が15歳未満である場合には、養子縁組について親権者の承諾が必要であるため(民法797条1項)、その承諾を得ることが必要となります。

親権者の変更を希望するなら弁護士に依頼したほうがスムーズにすすみます

親権者の変更は、子どもの育つ環境を大きく変える等、子どもにとって大きな影響を与えかねないものです。子どもにとって、親権を変更しなければならない事情を的確に裁判所で示していくことで、子どもの利益になる結果が得られる可能性が広がります。
どのような事情を重点的に示すべきなのか、子どもにとって誰が監護養育することが利益となるのか等、弁護士に相談・依頼をされることで、ご希望の方針が見つかるのではないでしょうか。

親権変更に関して、お困りのことや、気になることがある方は、一度、経験豊富な弁護士に相談されてみることをおすすめいたします。

福岡法律事務所 所長 弁護士 今西 眞
監修:弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 所長
保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:47535)
福岡県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。