労働災害Q&A

労災が認定された場合、会社は賠償責任を免れることができますか?

労災認定されるか否かは、労災保険制度に基づく給付がされるか否かの問題であって、会社の損害賠償責任とは直接関係がありません。
労災認定がされたということは、業務との因果関係を行政が認めたということになります。労災認定は、あくまで行政機関の判断であり、民事上の損害賠償責任とは直接関係がなく、裁判所は、労災認定と異なる判断をすることも可能ですが、労災認定を追従する判決がほとんどとなっていて、裁判所に業務との因果関係を否定させることは容易ではありません。
そのため、多くの事案で、会社の安全配慮義務違反(不法行為構成の場合は加害行為や過失)、過失相殺、損害額等が現実的な争点となります。

使用者には労働安全衛生法上の様々な義務が課されている等、労働者の生命・身体等の安全を守ることについては様々な責任が課されていますので、労災認定がされた場合、安全配慮義務違反について否定させることも簡単ではありません。 他方、会社の賠償責任が認められることになるとしても、会社としては、労働者にも過失があったことや、損害額等については、主張が認められる場合が少なくありません。
労働者が安全教育指導に従わず、危険な作業を行っていた場合や、過労死であっても、労働者の基礎疾患が影響している場合もあるでしょう。
プライベートな事情もあいまって精神疾患を重篤化させているようなことも考えられます。
労災認定では、業務との因果関係があるか否かを判断するだけで、割合的に因果関係を判断するわけではありませんので、会社としては労働者に過失があるといえる状況なのかどうかを調査検討することは必須でしょう。
既支給の労災保険給付の額は、会社が負うべき損害賠償額から控除されます(労働基準法84条2項類推適用)ので、控除して損害額を計算します。

ちなみに、将来の労災保険年金額は、会社が負うべき損害賠償額から控除されるかについて、最高裁は,損害賠償額から将来の年金額を控除すべきではないとし、非控除説の立場を採用しました。
なお、労災保険法には、労災保険給付と損害賠償額との調整規定が設けられており、障害(補償)年金又は遺族(補償)年金の「前払い一時金」の最高限度額まで損害賠償の支払いを猶予され、猶予期間に前払い一時金又は年金が現実に支給された場合は、その給付額の限度で損害賠償責任を免れることとされています。
労働者に過失がある場合は、基本的に、過失相殺後の損害額から、労災給付を控除しますので、労働者の過失の有無によって、賠償額は大きく変わることになります。

以上のとおり、労災認定と会社の賠償責任とは直結するものではありませんが、会社の賠償責任が認められるリスクが高くなっていると考えておくべきで、会社の賠償責任の有無は簡単に判断できるものではなく、個別の事情を調査検討の上、対応することが求められます。

会社に過失がない場合でも、労災認定されることはあるのでしょうか?

災害補償制度や労災保険制度は,無過失の労災補償制度ですから、会社の過失の有無に関わらず、労災認定されることになります。

労災による死亡事故があった場合、会社は罪に問われるのでしょうか?

労働安全衛生法違反(労働安全衛生法119条1号、122条、20~25条)、業務上過失致死傷罪(刑法211条)に問われるおそれがあります。
業務上過失致死傷罪は個人のみが対象ですが、労働安全衛生法については、法人も対象となります。
なお、業務上過失致死傷罪の法定刑は、5年以下の懲役若しくは禁固又は100万円以下の罰金、労働安全衛生法違反については、6か月以下の懲役又は50万円以下の罰金とされています。

職場のハラスメントによるうつ病の発症は、労働災害に該当しますか?

労災認定基準を見ると、ハラスメントが心理的負荷を生じさせる出来事であることが明記されており、職場におけるハラスメントによって心理的負荷がかかったことによりうつ病等の精神疾患を生じさせた場合には、労働災害に該当します。
もっとも、ハラスメントだけで労災認定される場合は、執拗かつ継続的に行われた場合や、会社に相談したにもかかわらず何らの対応もしなかった場合など限定的ではあります。なお、令和2年5月29日に心理的負荷による精神障害の認定基準が改正され、パワハラが明記されるなどハラスメントに関して強化されていますのでご注意下さい。
なお、現在は、副業兼業をする労働者を保護するため、労働災害補償保険法の改正に伴い、労災認定では、副業兼業をする労働者について、本業と副業兼業先の心理的負荷を併せて考慮することとされています。

厚労省「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について(平成13年12月12日付け 基発第1063号 令和2年8月21日改正)」
脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について

派遣労働者が労働災害に遭った場合、派遣先企業が賠償責任を負うのでしょうか?

派遣労働者であっても、労災保険は適用されます。派遣先と派遣元のいずれの労災保険が適用されるかですが、労災保険は、雇用主である派遣元との関係で成立していることから、派遣先ではなく、派遣元の労災保険が適用されます。
派遣先は第三者行為災害の第三者として国から保険給付額につき求償される場合がありますので、派遣先だからといって安心できるわけではありませんのでご注意ください(「派遣先事業主に係る第三者行為災害の取扱いについて(平成24年9月7日基発0907第4号都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)」)。
また、派遣労働者は,派遣先の事業所等で、派遣先の指揮命令下で労働しているため、派遣先は、労働安全衛生法上の様々な安全管理義務を負い、安全配慮義務・健康配慮義務も負担しており、安全配慮義務違反が認められれば,派遣先が派遣元と連帯して、損害賠償義務を負担することもあります。
なお、労働災害が発生した場合、派遣元だけでなく、派遣先も労災証明を行ったり、労働者死傷病報告書を労働基準監督署長へ提出したりすることになります(一定の場合には別途事故報告も提出)。

労働災害の損害賠償請求に時効はありますか?

各保険給付を受ける権利は,給付の種類毎に次の期間をもって消滅するとされています(労災保険法42条)。

療養(補償)給付、休業(補償)給付、葬祭料(葬祭給付)、介護(補償)給付 翌日から2年
障害(補償)給付、遺族(補償)給付 翌日から5年

また、労災のような人の生命・身体を害した場合の民事上の損害賠償請求に関しては、民法(債権法)改正に伴い、次のとおりとされています。

債務不履行責任 不法行為責任
改正前 権利を行使することができる時から10年以内 損害及び加害者を知った時から3年以内であり、かつ、不法行為の時から20年以内
改正後 権利を行使することができることを知った時から5年以内であり、かつ、権利を行使することができる時から20年以内 損害及び加害者を知った時から5年以内であり、かつ、不法行為の時から20年以内

なお、改正された民法の消滅時効に関する規定(民法166条~169条)の適用時期に関しては、次のように経過措置が設けられています(民法附則10条4項)。

債権が生じた時期が施行日(2020年4月1日)の前か後かで異なります

施行日より前に生じた債権
※契約等の法律行為によって債権が生じた場合については、「その原因である法律行為」がされた時点が債権発生時となります。
旧法
施行日以降に生じた債権 改正法
※雇用契約の使用者が安全配慮義務違反を怠ったことによって労働災害が発生した場合における労働者の使用者に対する損害賠償請求権(債務不履行責任)については、いずれも各契約が「原因である法律行為」に当たり、契約締結時が基準となると解されています(編著者:筒井健夫・村松秀樹「一問一答民法(債権関係)改正」386頁2018年3月15日初版第1刷)。

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