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離婚問題

子供と一緒に暮らすための監護者指定とは

福岡法律事務所 副所長 弁護士 今西 眞

監修弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 副所長 弁護士

別居や離婚に際し、父母どちらが親権者となるのか、一緒に暮らしていくのか、という問題はとても気になる問題でしょう。父母間で上手く話合いができない場合、どのような方法で定めることができるのか、どのような点を重視して監護者等が定められるのか等について、説明します。

監護者指定とは

離婚した夫婦の間や別居中の夫婦の間で,どちらが子どもを監護するかを決めたい場合には,父と母の協議により子の監護者を定めることができ、これを監護者指定といいます。

親権者指定と監護者指定の違いについて

裁判上の離婚の場合、裁判所は父母の一方を親権者と定めます(民法819条2項)。離婚後は当事者の一方が親権者となるためです。他方で、監護者については、離婚後のみならず、別居中にどちらが子どもの監護を行うのかを決めることができる点で、異なります。

親権者と監護権者は分ける場合がある

親権は、身上監護権と財産管理権の2つの要素が含まれます。親権者と監護者を分離する場合、身上監護権が監護者に移ることになるため、日常的な子どもの監護養育は監護者が行い、親権者は、財産管理権により子どもの監護養育に関与することになります。
分離すると、例えば、日常的に子どもを監護している監護者が、子どもが行う法律行為について同意することができない状態になります。柔軟かつ迅速に子どものために行動できる範囲に制限がかかってしまいますので、分離することへ消極的な実態があります。

監護者指定の判断基準

監護者指定の判断の基礎となる事情として、以下大きく4つに分類されるものがあります。

①子の従前の監護状況
子の出生から父母の別居までの子の監護状況に関する事情です。

②子の現在の監護状況
父母の別居後の子の監護状況に関する事情です。

③父母の監護能力・監護態勢
父母の年齢や心身の健康、将来の監護計画の有無、監護補助者の有無等に関する事情です。

④子の事情
子どもの年齢、性格、心身の発育状況、父母との親和性、子の意思等に関する事情です。

子供の年齢によって監護者を判断する場合もある

家事法152条2項は子の監護者の指定についての裁判をするに当たり、子どもが15歳以上の場合には、子の陳述を聴かなければならないと規定しており、子どもの年齢に応じて、その意思の尊重の度合いが変わります。

離婚時・離婚後の監護者指定の流れ

離婚後は、すでに親権者が一方に定まっている状態になります。離婚の際に、監護者と親権者の分離を行っていない限り、監護者指定を行うということは、親権者から身上監護権を分離させる状態を求めることになります。

監護者の指定調停

子どもの監護者を定めるための協議が調わないとき,又は協議ができないときには,家庭裁判所の調停又は審判の手続を利用して、定めることができます。調停手続を利用する場合は、子の監護者の指定調停事件として申し立てます。

指定調停を申し立てるためには

監護者指定調停は、申立てられる側の住所地の家庭裁判所又は当事者が合意で定める家庭裁判所に申立を行うことができます。申立てにかかる費用として、子ども1人につき、収入印紙1200円分と、連絡用の郵便切手が必要となります。詳しい金額については、申立先の家庭裁判所に確認されてください。
申立てには、申立書と未成年者の戸籍謄本(全部事項証明書)といった添付書類が必要となります。その他、審理のために必要な場合に、裁判所より追加資料の提出を求められることがあります。

監護者指定調停の流れ

調停は、当事者が一緒に話を聞かれるというわけではなく、申立人と相手方が交互に、調停委員(男性女性のペア)から話を聞かれます。調停委員は、裁判官にも相談のうえ、子どもの健全な成長を助けられるような監護者指定の実現を目指して、話し合いを進めていくこととなります。
期日は、1ヶ月に1回程度の頻度で、必要に応じて設けられていきますが、当事者間が合意に達しなければ、調停は不成立となり、終了します。調停不成立となったら自動的に審判手続が開始され、裁判官が一切の事情を考慮したうえで判断し、監護者を指定する審判をします。

別居中でも監護者指定することはできます

別居中に、父母のどちらが子どもの監護を行うかを定めるために、監護者指定調停を申立てることができます。

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監護者指定審判の流れ

審判手続きでは、調停と異なり、話合いではなく、裁判官が判断を示すことになります。
父母から、審問手続きにより、状況等の聴取を行ったうえ、家庭裁判所調査官により調査が行われ、その調査結果等を基に判断が示されることが一般的です。

どのくらいの期間がかかるのか

裁判官が、父母から審問で聴取した内容や、家庭裁判所調査官による調査(子どもとの面接や家庭訪問、学校訪問等)の結果等をもとに判断を行います。
どのくらい訪問先があるのか、子どもの人数や年齢等によって、調査にかかる日数も変わります。
少なくとも数ヶ月程度要することは見込んでおきましょう。

審判後の流れについて

監護者が指定されたにもかかわらず、相手方が子どもの引渡しを行わないような場合には、以下のような方法で、子どもの引き渡しを求めることとなります。

①履行勧告
家庭裁判所から、相手方に対し、義務を履行することを勧告する制度です。

②間接強制
相手方に対し遅延の期間に応じ、又は相当と認める一定の期間内に履行しないときに直ちに、債務の履行を確保するために相当と認める一定の金額を支払うように命ずる手続きです。

③直接強制
家庭裁判所が執行官に、相手方による監護を解くために必要な行為をすべきことを命じる決定を行う手続きです。

監護者指定審判の即時抗告について

家庭裁判所が行った子の監護者指定の審判に対しては、審判の告知を受けた日から2週間以内に即時抗告を行うことができます(家事事件手続法86条1項、156条4号)。即時抗告の提起は、抗告状(審判を行った家庭裁判所を管轄する高等裁判所宛)を、原裁判所(審判を行った家庭裁判所)に提出して行います(家事事件手続法87条1項)。

監護者指定・子の引き渡しの審判前には保全処分をする

子ども等の急迫の危険を防止するために必要があるとき等には、監護者指定・子の引渡し調停又は審判と合わせて、審判前の保全処分を申立てることができます。
一般的に、保全処分に緊急性が認められるために、期日が通常の調停または審判よりも早めに指定されます。

よくある質問

監護者指定審判では父親と母親はどちらが有利ですか?

監護者指定は、①子の従前の監護状況、②子の現在の監護状況、③父母の監護能力・監護態勢、④子の事情等の事情が考慮されます。父親だから、母親だから有利不利というものはなく、実際の状況に応じて、判断されます。

子供が配偶者に連れ去られた場合、監護者はどちらになりますか?

現在誰が子どもの監護を行っているのか(②)に関わる点となりますが、この1点のみで監護者が決まるわけではありません。それまでの監護状況(①)や実際に監護を行うことができるのか(③)等も判断の基礎となりますので、連れ去った方が有利だと安易に考えることはできませんし、子どものためにも無理に連れ去るような行為をおすすめすることはできません。

監護者指定がされて面会交流後に子どもが連れ去られた場合は今後も面会交流をしないといけませんか?

連れ去られた場合、子どもの生活を守るために、従前どおりの面会交流の対応はできないと、制限や拒絶することが致し方ない場合もあるでしょう。ただ、連れ去りの態様によりますが、子どもが別居している親と会うという権利を守ることと、監護者として子どもの身の安全や生活を守ることとのバランスを考えることが重要です。連れ去りを防止するために、第三者機関である面会交流支援団体を利用したりする方法もあります。

祖父母が監護者になることはできますか?

本来は、父母が子どもの監護養育を行うことが望ましく、それが子どもの福祉に沿ったものであるとされています。そこで、祖父母といった父母以外の第三者が監護者となるのは、親権者が親権行使をできず、親権行使したとしても子どもの福祉に沿ったものとならないような特別な事情が必要ではないかとの考えもあるところです。祖父母が監護者となるのは、とても例外的なことであるといえます。

調停離婚と監護者指定の調停は同時に申立てることができますか?

離婚調停と監護者指定の調停は、同時に申し立てることができます。
監護者指定の調停の中で作成された家庭裁判所調査官による調査報告書は、離婚後の親権者を定めるときにも重要な資料となります。

離婚時の監護者指定について経験豊富な弁護士に相談してみましょう

子どもをどちらが監護するのか、離婚後どちらが親権者となるのかについて、子どもへの愛ゆえに、父母で大きな争いとなることが多々あります。また、子どもが虐待されている等、すぐに監護者を指定して、引渡しを求めなければならない場合には、保全処分を合わせて行う必要がある等、子どもの状況に応じた法的手続きが必要となります。
子どもの監護者について、どのように動いていくべきなのか不安や悩みがある方は、一度弁護士に相談されてみることをおすすめします。

福岡法律事務所 副所長 弁護士 今西 眞
監修:弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 副所長
保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:47535)
福岡県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。