監修弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 副所長 弁護士
相続が発生した際、「遺言書が見つかったので安心だ」と思われる方は少なくありません。
しかし、遺言書の内容や作成方法に問題があると、相続トラブルの原因になる場合があります。遺言書の書き方や効力は法律で細かくルールが定められているため、不備がある場合には有効性が争われる可能性もあり、注意が必要です。
この記事では、遺言書に関するよくあるトラブル事例と対処法、トラブルを防ぐための対策についてわかりやすく解説します。
遺言書があった場合のトラブル事例
遺言書を勝手に開封した
自筆証書遺言を家庭裁判所の検認前に開封してしまうと、過料を科される可能性があります。また、相続人の間で遺言書の改ざんを疑われ、思わぬ相続トラブルへ発展するおそれもあります。
もっとも、遺言書を開封したからといって、それだけで遺言書の効力が失われるわけではありません。
誤って開封してしまった場合は、遺言書をそのままの状態で保管し、速やかに家庭裁判所で検認の手続きを行いましょう。
遺言書の字が汚くて読めない
自筆証書遺言のなかには、文字の癖が強かったり、達筆すぎて内容を正確に読み取れないものがあります。高齢になってから作成された遺言書では、筆跡が変化し、一部の記載が読めないケースも少なくありません。
しかし、文字が読みにくいという理由だけで、遺言書を無かったものとして扱うのは避けるべきです。まずは相続人全員で内容を確認し、できる限り遺言者の意思を読み取ることが大切です。
それでも判読が難しい場合には、筆跡鑑定や、弁護士などの専門家へ相談しましょう。
日付が特定できない・誤った日付が記載されている
自筆証書遺言には、作成した日付を記載するよう法律で定められています。
そのため、「令和○年○月吉日」のように具体的な日付がわからない場合や、いつ作成されたのかを特定できない場合には、遺言書が無効となる可能性が高いです。
また、記載された日付が間違っていて、実際の作成日を特定できないケースでも、有効性が問題となることがあります。
遺言書が無効と判断された場合、その遺言は存在しなかったものとして扱われるため、相続人による遺産分割協議が必要です。
遺言内容が曖昧
遺言書の内容が曖昧な場合、相続人ごとに解釈が分かれ、トラブルへ発展するおそれがあります。例えば、「自宅は息子に、別荘は娘に相続させる」と記載されていても、複数の自宅や別荘を所有していた場合、どの不動産を指しているのか特定できません。
このようなケースは、まず遺言書の記載内容や作成当時の状況などを踏まえ、遺言者の意思を慎重に確認します。それでも判断が難しい場合には、相続人同士で話し合いを行い、解決を図る必要があります。
遺言書の内容に納得がいかない
例えば、「長男だから」という理由で年齢順に多くの遺産が割り振られているケースがあります。また、長年にわたり親と同居し、介護や生活支援を続けていたにもかかわらず、他の相続人と同じ割合しか受け取れない場合、不公平だと感じるのは自然なことです。
遺言書は被相続人の意思を反映するものでもあるため、内容に納得できないからといって無効になるわけではありません。しかし、遺産分割協議で相続人全員が合意すれば、遺言書とは異なる方法で遺産を分けられる場合があります。
なお、遺言によって受け取る財産が著しく少なく、遺留分(一定の相続人に法律上保障された最低限の取り分)が侵害されている場合には、遺留分侵害額請求を行うことも可能です。
遺言書を無理やり書かされた可能性がある
遺言書が、脅迫や詐欺によって作成された場合、無効となる可能性が高いです。
また、遺言者の自由な意思によって作成されたものではないと認められた場合には、その有効性が争われるケースもあります。
相続人が遺言者に強引に遺言を書かせたり、内容を改ざんしたりした場合には、「相続欠格」にあたる可能性が高いでしょう。
相続欠格となると、その人は相続人としての権利を失い、遺産を受け取れなくなります。
想定していない相続人が現れた
被相続人の認知した子供や前妻との間の子供など、これまで把握していなかった相続人の存在が判明することがあります。また、遺言書にその相続人へ財産を相続させる旨が記載されており、その内容から初めて存在が明らかになるケースも少なくありません。
このような場合、他の相続人としては、その人の存在を考慮せずに手続きを進めたいと考えるかもしれません。
しかし、遺言書に新たに判明した相続人へ財産を相続させる旨が記載されている以上、その相続人を除いた他の相続人だけの判断で、遺言の内容を無視することはできません。
まずは戸籍謄本などで相続人を正確に確認し、遺言書の内容を踏まえて適切に相続手続きを進めることが大切です。
家族以外に財産を渡すと書かれていた
遺言書に「長年お世話になった友人へ○○を遺贈する」や、「福祉施設へ財産を寄付する」といった内容が記載されている場合があります。
「遺贈」は法律上認められているため、財産を受け取る相手が家族ではないという理由だけで、その遺言が無効になるわけではありません。
そのため、相続人だけで遺言の内容を無視し、「見なかったこと」にして遺産分割を進めるのは避けるべきです。もっとも、家族以外への遺贈によって、遺留分が侵害される場合には、遺留分侵害額請求を行えます。
寄与分を主張された
相続では、「長年にわたり親の介護を続けた」「家業を手伝い、財産の維持や増加に貢献した」などとして、他の相続人から「寄与分」を主張される場合があります。
寄与分とは、被相続人の財産の維持や増加に特別な貢献をした相続人に対し、その貢献度に応じて認められる取り分のことです。
ただし、単に親の面倒を見ていたというだけで寄与分が認められるわけではなく、どのくらい貢献があったかが重要な判断ポイントとなります。
寄与分について詳しく見る遺産分割協議後に遺言書が見つかった
相続人全員で遺産分割協議を終えた後に、遺言書が見つかるケースがあります。
この場合、見つかった遺言書が有効であれば、基本的に遺言の内容が優先されるため、すでに行った遺産分割の内容に影響が及ぶ可能性があります。
もっとも、遺言書が発見されたからといって、必ずしも遺産分割協議をやり直さなければならないとは限りません。相続人全員と受遺者が合意すれば、既に成立した遺産分割協議の内容をそのまま維持することが可能です。
相続に強い弁護士があなたをフルサポートいたします
遺言書がなかった場合のトラブル事例
遺言書がない場合、次のようなトラブルが発生する可能性があります。
- 相続人同士で遺産の分け方について意見が対立する
- 生前の介護や援助の貢献度をめぐって争いになる
- 「遺言書を作成したと聞いたのに見つからない」という問題が生じる
特に、被相続人が生前に遺言書を作成していたはずなのに見つからない場合は注意が必要です。まずは自宅や貸金庫などを確認しましょう。
あわせて、法務局の自筆証書遺言保管制度を利用していないか調査することも大切です。
遺言執行者に関するトラブル事例
遺言執行者が指定されていない
遺言執行者(遺言の内容を実現する人)が指定されていない場合、遺言の内容によっては手続きが進まなくなるおそれがあります。特に、遺言による認知や推定相続人の廃除は、遺言執行者でなければ手続きを進めることができません。
ただし、遺言執行者が指定されていないからといって、遺言書が無効になるわけではありません。必要に応じて相続人などの利害関係人が家庭裁判所に遺言執行者の選任を申し立てることが可能です。
遺言執行者が任務を怠る
遺言執行者が指定されていても、「何をすればよいかわからない」「手続きが複雑で負担が大きい」などの理由から、必要な手続きが進まないケースも少なくありません。
その結果、相続手続き全体に支障が生じるおそれがあります。
遺言執行者が不正な行為をした場合や、正当な理由なく必要な手続きを進めない場合には、相続人などの利害関係人が家庭裁判所へ申立てを行い、解任を求めることができます。
解任が認められた場合には、新たな遺言執行者を選任して手続きを進めることが可能です。
遺言書でトラブルにならないための対策
遺言書は適切に作成すれば相続トラブルの予防につながりますが、内容や作成方法に問題があると、かえって争いの原因になる場合があります。
将来のトラブルを防ぐため、遺言書を作成する際は次の点を意識しましょう。
- 法律上定められた様式を守る
- あいまいな表現を避ける
- 遺留分に配慮する
- 公正証書遺言を利用する
- 遺言執行者を指定しておく
- 弁護士などの専門家に作成を依頼する
遺言書は、作成者の意思を実現するための大切な書面です。
法的なルールに沿って作成し、誰が見ても内容を理解できる遺言書を残しておけば、相続人の負担軽減につながるだけでなく、円満な相続の実現につながるでしょう。
遺言書に関するトラブルは弁護士にお任せください
遺言書に関するトラブルは、遺言の有効性や解釈、遺留分、遺産分割協議など、専門的な法律知識が必要となるケースが少なくありません。また、相続問題は感情的な対立を伴いやすく、相続人同士では話がまとまらない場合もあります。
弁護士法人ALGでは、これまで多数の相続案件を取り扱ってきた実績があり、遺言書をめぐる争いや遺留分侵害請求、遺産分割協議など、さまざまな相続問題に対応しています。ご相談者様の気持ちに寄り添いながら、法的な見通しを踏まえた解決策のご提案が可能です。
遺言書内容に疑問がある方や、相続手続きの進め方にお悩みの方は、ぜひ弁護士法人ALGへご相談ください。相続問題に詳しい弁護士が、円満な解決に向けてサポートいたします。

-
保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:47535)
