遺産分割調停の流れとメリット・デメリット

遺産分割調停の流れとメリット・デメリット

弁護士などの法律専門職でなくても、「遺産分割調停は、話し合いで遺産を分けるだけだから自分でできる」と考える方もいるのではないでしょうか。
しかし、遺産分割に関する法律論は非常に難解です。また、遺産分割のための手続も、家庭裁判所だけでなく地方裁判所の手続も必要になる場合もあります。

遺産分割は、理論的にも手続的にも非常に複雑です。本頁をご覧いただき、「難しい!自分でできなさそう!」とお考えの方は、弁護士にご相談ください。

遺産分割調停とは

遺産分割調停は、家事事件手続法(平成25年1月1日に施行)に定められた家事調停手続の一つです。遺産分割のための家庭裁判所の手続は、遺産分割調停と遺産分割審判の2種類があります。このうち、遺産分割調停は、家庭裁判所を通じて、遺産の分割に向けて、当事者間の利害を調整していくものです。これに対して、遺産分割審判は、裁判所が事実認定を行いそれに基づいて公権的な判断を下す手続です。

遺産分割調停と、遺産分割審判は、解決方法のイニシアティブが、当事者よりか裁判所よりかで違いがあります。

遺産分割調停の流れ

遺産分割をするには、遺言の有無、相続人の範囲、遺産の範囲、特別受益や寄与分の内容が確定していなければなりません。そのため、調停申立てのためには、単に申立書のひな形を受ければいいというわけではなく、これらについてきちんと調査し、資料を揃える必要があります。

必要書類を集める

家庭裁判所のウェブサイトでは、遺産分割調停の必要書類として、申立書、戸籍(戸籍謄本、除籍、改製原戸籍)、相続人全員の住民票又は戸籍附票、遺産に関する証明書(不動産登記事項証明書及び固定資産評価証明書、預貯金通帳の写し又は残高証明書、有価証券写し等)が挙げられています。

これらは、①相続人の範囲を確定するため、②遺産の範囲と評価額を確定するために用いられます。
戸籍及び附票、固定資産評価証明書は各市区町村の役所、不動産登記事項証明書は法務局、預貯金通帳、残高明細等は各金融機関から取り付ける必要があります。

また、上記の他、遺言書がある場合には、遺産分割調停ではなく、遺留分侵害額の請求調停や、遺言無効確認調停等を申し立てることが必要となる場合もあります。遺産分割調停の申立て前に、上記必要書類に限らず、網羅的に相続人調査、相続財産調査をした上で、遺産分割調停以外に必要となる手続がないか、検討することが望ましいです。

相続人全員の住所が必要なことに注意が必要

遺産分割調停は、相続人全員が合意をして初めて効力が生じます。そのため、遺産分割調停には、相続人全員の関与が必要です。そして、相続人を遺産分割調停に関与させるには、家庭裁判所から申立書を送達する必要があります。
相続人のうち、住所が不明な者がいる場合、不在者財産管理人の選任手続や、失踪宣告等の手続が必要となる場合があります。

未成年・認知症の相続人がいる場合は代理人が必要

未成年者は、原則として、行為能力(自らの行為により法律行為の効果を確定的に自己に帰属させる能力)がありません。行為能力のない未成年者は、単独で遺産分割協議・遺産分割調停を行うことができません。そのため、相続人の中に未成年者がいる場合、親権者又は未成年後見人が法定代理人として手続を行います。ここで、未成年者と、その法定代理人が、ともに相続人だった場合等、未成年者と法定代理人の利害が対立する場合や、同一の者が、複数の、相続人である未成年者の法定代理人であるような場合には、利害対立が起こる恐れがあるので、「特別代理人」を選ぶ手続が必要となります。

また、遺産分割のためには、意思能力(行為の結果を弁識するに足りるだけの精神的能力)が必要となります。相続人に、重度の認知症、高次脳機能障害等、意思能力に疑問がある者がいた場合、これらの者に成年後見の申立て等が必要となる場合があります。さらに、成年後見人と、成年被後見人との間に、利害対立がある場合には、特別代理人の選任等が必要となります。

管轄の家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てる

遺産分割調停の管轄は、相手方の住所地を管轄する家庭裁判所又は当事者が合意で定めた家庭裁判所です。
管轄のある裁判所に、申立書その他の必要書類を添えて、郵送で申し立てることが一般です。
なお、遺産分割審判は、被相続人の最後の住所地(相続開始地)を管轄する家庭裁判所又は当事者が合意で定めた家庭裁判所が管轄となります。

申し立てにかかる費用

遺産分割調停の申立てには、被相続人1名に対して収入印紙1200円の他、各相続人への送達等のための郵便切手が必要です。
民事訴訟を提起する場合と比較すると、印紙代は低額です。ただし、遺産確認の訴え等の民事訴訟手続が必要になる場合、各手続ごとに、民事訴訟費用等に関する法律所定の手数料(印紙代)が必要になります。

1カ月程度で家庭裁判所から呼出状が届く

遺産分割調停を申し立てた後、家庭裁判所での審査を経て、申立書や、呼出状が、相続人に送達されます。申立てから呼出状が届くまで、概ね1か月程度の期間を要することが多いですが、近年、感染拡大防止のための緊急事態宣言等の影響により、家庭裁判所によっては、1か月を大きく超える期間がかかる場合も散見されます。

調停での話し合い

調停期日では、原則として、各当事者ごとに、調停室に入り、調停委員と協議をします。各当事者に代理人が就いており、代理人全員と調停委員が認識を共有した方がいい場合や、足並みがそろっている当事者がいる場合には、複数の当事者が一緒に調停室に入ることもあります。

第1回期日で、遺産分割の方法等がまとまらない場合、次回期日が指定され、次回期日までの提出書面が定められることになります。第2回期日以後も同様です。

調停成立

遺産分割調停が成立すれば、遺産分割の方法等が記載された調停調書が作成されます。調停調書は、判決書等と同様、「債務名義」(強制執行が可能となる公的な文書。民事執行法22条)であり、これをもとに強制執行することができます。

つまり、例えば、ある相続人Aが、遺産分割調停で、相続人Bに対する金銭の支払いを約束したのに、支払いをしなかったという場合、相続人Bは、調停調書により、相続人Aの給与や預貯金を差押えることができます。

成立しなければ審判に移行する

調停不成立と判断されるタイミング

家事事件手続法上、遺産分割調停が不成立となった場合、「家事調停の申立ての時に、当該事項についての家事審判の申立てがあったものとみなす」とされています(家事事件手続法272条4項)。つまり、調停不成立の場合、当事者が審判申立てをしなくても、必ず審判に移行します。
「遺産分割調停期日を〇回開催しても話し合いがまとまらない場合、審判移行」といった決まったルールがあるわけではありません。

遺産分割調停の当事者は、兄弟姉妹、親子等、親族関係があり、調停手続が終わっても当事者の関係が続きます。当事者が納得の上で、話し合いで解決することが望ましいことから、家庭裁判所は、遺産分割調停を簡単に不成立にするのではなく、粘り強く話し合いを求めることが多い印象です。

遺産分割調停にかかる期間

遺産分割調停期日は、1か月~2か月に1回程度のペースで開催されます。1回の調停期日では、概ね2時間~3時間程度の時間が取られることが多いです。

家庭裁判所での遺産分割調停・審判手続にかかる期間ですが、司法統計によれば、約70%が1年以内に終了、約90%が2年以内に終了となっています。遺産分割手続終了までの期間は、事案の難易度次第ですが、概ね2年以内に終わることが多いと考えてよいです。

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遺産分割調停のメリット

当事者間では、冷静に遺産分割協議ができなかったり、のらりくらり躱されて話し合いが進まなかったりということがあります。家庭裁判所で遺産分割の手続を行うことで、感情的になることを避けたり、テーマごとに詰めた協議をしていくことができます。

冷静に話合いを行うことができる

遺産分割事件は、当事者の感情的対立が激しいことが少なくありません。感情的対立が大きい当事者同士で協議をしたとしても、法的な点以外で紛糾してしまい、いつまでたってもまとまらないということがあります。

一方、家庭裁判所の遺産分割調停は、「法律上解決が可能な点」に絞って協議がされます。感情的な対立であったり、「昔、〇〇ということがあった」というような遺産分割とは無関係な事項は、家庭裁判所では取り上げてもらいにくいです。
遺産分割調停には、協議の対象を絞ることで、当事者が、遺産分割で解決可能な事項と、解決できない事項を理解し、解決可能な事項の解決へ向けて動いていくという効果があります。

また、調停委員を介して協議をするため、お互い悪口の言いあいになったり、感情のぶつけ合いが起きにくいという効果もあります。

遺産分割を進めることができる

遺産分割調停は、1か月~2か月に1回、開催されていくため、手続が動いていきます。のらりくらり躱されたり、無視をされたりといったことがありません。
また、仮に、遺産分割調停が不成立になった場合でも、審判移行により、強制的に遺産の分割がされますので、「遺産分割がされない状態が固定化する」ということがありません。

遺産分割調停のデメリット

遺産分割調停は、中立公正な家庭裁判所を通じて協議をするものです。当事者の一方に偏った判断がされることはまずありません。そのため、遺産分割調停を申し立てた場合、申立人側に不利な判断がされることもあります。

希望通りの結果になるとは限らない

家庭裁判所は、中立な立場から、審判になった場合の見通しも踏まえて、遺産分割調停案を提案します。例えば、当事者が特別受益を得ている場合等には、これが考慮されるのが原則です。法律上、受け入れられないような結果を希望しているような場合には、遺産分割調停で希望が通ることはないと考えた方がいいでしょう。

また、「自分は、〇〇という財産を取得したい」という希望が必ず受け入れられるとは限りません。例えば、遺産に不動産があり、他の相続人が居住している場合、その不動産の取得を希望しても、認められず、代わりに金銭をもらうことになった、ということもあります。

長期化する恐れがある

前記のとおり、遺産分割調停は、概ね2年以内に終了することが多いです。もっとも、相続人や遺産の範囲に争いが生じたときは、さらに1~2年程度の期間がかかることが少なくありません。また、後々、未分割の遺産が発見されたような場合にも、未分割の遺産を巡る争いが生じることになります。

基本的に法定相続分の主張しかできない

遺産分割調停では、特別受益、寄与分といった相続分の修正が認められないときは、法定相続分での分割となることが一般です。「長男だから遺産を全て引き継ぎたい」といった主張をしても、まず認められません。

遺産分割調停で取り扱えないもの

遺産分割調停は、「遺産分割の対象となる財産」のみが対象になります。
例えば、被相続人の生前、多額の使途不明金があり、贈与等が成立する余地がないような場合、使途不明金の返還請求権(不当利得返還請求権又は不法行為による損害賠償請求権)は、遺産分割の対象となりません。このような場合、別途、地方裁判所に、民事訴訟を提起する必要があります。

また、遺言書の効力に争いがある場合や、遺産の範囲に争いがある場合には、それぞれ遺言無効(有効)確認の調停・訴えや、遺産確認の調停・訴えをする必要があります。

遺産分割調停を欠席したい場合

家庭裁判所での調停手続は、平日に開催されます。仕事等で調停期日に出席できない場合、期日変更を求める他、期日を欠席するという選択肢もあります。
もっとも、期日を欠席すると、期日で必要な主張ができなかったり、場合によっては、調停成立の見込みがなく審判移行というリスクもあります。
調停手続で主張したい事項があれば、代理人を選任する等して、期日に欠席しないようにすべきです。また、欠席を続けた場合、不利な判断がされるリスクがあることも理解しておく必要があります。
なお、管轄の家庭裁判所が遠方で出席しにくい場合には、電話会議システムによる手続参加も検討しましょう。

遺産分割調停の呼び出しを無視する相続人がいる場合

遺産分割調停は、相続人の全員が参加しなければ成立しません。そのため、調停期日の呼び出しを無視する相続人がいる場合、遺産分割調停は成立しません。この場合、審判に移行することになります。

遺産分割調停に欠席を続けた相続人がいるからといって、他の相続人に有利な遺産分割審判がされるとは限りません。遺産分割の方法として、何が適切かという点に関し、しっかり主張立証しておくことが望ましいです。

遺産分割調停は弁護士にお任せください

弁護士は、遺産分割に関連する実体法上・手続法上のリスクについて、適切な知識を有しています。十分な知識がないまま、遺産分割調停・遺産分割審判に臨むと、思わぬ不利益を被ることがあります。また、「後々、不利になったら弁護士に相談すればいい。」といった考えをしていると、取り返しがつかなくなることがあります。

遺産分割調停手続を行う前から、可能な限り相続人調査・相続財産調査の段階から、弁護士の関与を検討されることをお勧めします。

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この記事の監修

福岡法律事務所 所長 弁護士 今西 眞
弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 所長弁護士 今西 眞
福岡県弁護士会所属。弁護士法人ALGでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。
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