財産目録とは|作成のメリットと書き方

相続問題

財産目録とは|作成のメリットと書き方

福岡法律事務所 所長 弁護士 今西 眞

監修弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 所長 弁護士

相続の手続は、被相続人から承継した財産を分ける手続といえます。「どのような財産があり、いくらぐらいの評価なのか」が分からなければ、相続人間でどのように分けたらいいのかわかりません。」また、そもそも相続してよいのか(相続放棄をするべきなのか)の判断も、「どのような財産があり、いくらぐらいの評価なのか」が分からなければ、正確にできません。
このように、相続の際に必須になるのが、「財産目録」です。

財産目録とは

「財産目録」とは、被相続人の遺産を一覧にしたものです。民法上は、『相続財産の目録』と表現されています(民法1011条他)。

財産目録を作成できるのは誰?

遺言執行者は、財産目録(『相続財産の目録』)を作成し、相続人に交付しなければならない義務があります(民法1011条1項)。また、相続人は、限定承認をする場合、財産目録(『相続財産の目録』)を作成し、家庭裁判所に提出しなければなりません(民法924条)。
また、相続人は、遺産分割の際に、財産目録を作成することができます。遺産分割調停を申し立てる際には、遺産目録の添付が必須となっています。
この他、被相続人も、遺言書を作成する際に、財産目録を作成することができます(民法968条2項)。

財産目録を作成するメリット

財産の評価を記載した財産目録は、被相続人となる者の相続対策に有益です。また、当然のことながら、遺産分割手続や、相続税の申告の際にも必要不可欠です。

生前贈与等の相続税対策ができる

生前に、自分の財産目録を作成すると、自分の相続の際、法定相続分では、どの程度の相続税がかかるか、試算できます。また、推定相続人にとって納得がいく公平な遺言を作成するにあたり、財産目録を参考にしながら、推定相続人に対して遺す財産を検討することもできます。

相続税申告の際に便利

財産目録を生前から作成しておくと、相続税の申告書を作成する際にも役立ちます。相続税の申告をするときに、「どんな財産があるかわからない!」というところからスタートすると、相続財産調査から行わなければならず、大変です。生前から財産目録を作成し、こまめにアップデートしておくと、推定相続人が助かります。

遺産分割協議がスムーズになる

財産目録があり、遺産の評価が適切だと、遺産分割協議がスムーズに進みやすくなります。
どの財産を誰が引き継ぐのか、金銭的評価として公平な分配になるかといった、遺産分割に不可欠な事項は、財産目録をベースに進めていくことになります。
逆に、財産目録に重要な財産が抜けていたり、評価が誤っていたりすると、相手方の不信感を招きかねません。財産目録が暫定的なものかそうでないのか、相続人間で認識を共有しておくことが大事です。

相続トラブルが起きるリスクを減らせる

被相続人の立場から見ると、生前から、財産(遺産)を正確に反映した目録を作成しておくと、自分の死後、相続人の手間が省かれます。また、遺産分割の後、知らない財産が出てくるようなリスクを減らせます。
一方、相続人の立場からすると、財産目録は、遺産を確定させる重要な手がかりになりますが、財産目録の内容だけを軽信するのは危険です。財産目録に記載されている預貯金等の取引履歴などを手掛かりに、相続財産調査をきちんとすることが安全です。

相続放棄の検討材料にもなる

遺産の評価つきの財産目録を作成すると、遺産が債務超過かどうか、どの程度債務超過なのかが分かり、相続放棄をすべきかどうかの判断材料となります。

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財産目録の作成方法

財産目録の書き方

財産目録には、決まった書式はありません。もっとも、裁判所で、遺産分割調停用の書式が公開されています。後々、遺産分割調停が見込まれるような場合には、二度手間を避けるため、遺産分割調停用の書式によることが望ましいです。また、相続税の申告・納税が必要となる場合には、相続税の申告書の書式により作成するという方法もあります。

記載する内容

「その記載で財産を特定できるのか」という視点が重要です。裁判所の書式は、財産の特定のために必要最小限の情報を網羅していますので、裁判所の書式を参考にしましょう。

預貯金

裁判所の書式では、金融機関名、支店名、口座の種別、相続開始時の残高、現在残高が記載事項となっています。最低限、この情報を記載しましょう。

不動産

裁判所の書式では、①土地の場合、所在、地番、地目、地積、②建物の場合、所在、家屋番号、種類、構造、床面積が記載事項となっています。最低限、この情報を記載しましょう。

有価証券

裁判所の書式では、株式の場合、銘柄、株数、証券会社・口座番号、単価、評価額(数量×単価)等が記載事項となっています。最低限、この情報を記載しましょう。

自動車等の動産

遺産となる動産の代表例は、自動車です。自動車の場合、登録番号、種別、用途、自家用・事業用の別、車名、型式、車台番号、原動機の形式、使用の本拠の位置、所有者の氏名で特定します。自動車以外の動産(宝石、絵画、家具、家電、楽器等)は、特定のための情報が種類により異なります。写真等で特定することもあります。「その記載で財産を特定できるのか」という視点から、何を記載すればよいか、個別に検討しましょう。

借金やローン等の負債

負債の場合、種別(住宅ローン、保証債務等)、債権者の氏名又は名称、借入日、残高、契約番号等を記載することが一般です。なお、負債は、遺産分割の対象となりません。負債の目録は、相続放棄するかどうかの判断や、各相続人が負担する負債を踏まえての遺産分割の内容の判断等に用います。

財産目録はいつまでに作成すればいい?

財産目録の作成が法律上義務付けられている場合(民法1011条1項、民法924条)以外、財産目録の作成そのものに期限はありません。もっとも、相続税の申告期限があることや、少なくとも遺産分割の前に遺産を確定させることが不可欠であることから、財産目録は、可能な限り早く作成しましょう。

財産目録が信用できない・不安がある場合

財産目録の不備として、①財産目録に記載された財産そのものに関する不備(遺産となるべきものが記載されていない、又は、遺産でないものが記載されている)、②財産の評価に関する不備(財産の評価が正確ではない)というものがあげられます。
①については、被相続人が、対象財産を取得したといえるかどうか、正確に調査をすることが望ましいです。対象財産が、遺産に属するかどうか争いがある場合には、遺産確認の訴えで決着をつけることになります。
②については、不動産等の評価額に争いがある場合、最終的には、遺産分割審判等で、鑑定等により評価することになります。

円滑な相続は財産目録の作成が大切です。弁護士へご相談ください

財産目録の作成一つとっても、考慮しなければならない点が多数あります。財産を遺す側・受け取る側の双方で、弁護士に相談されることをお勧めします。

福岡法律事務所 所長 弁護士 今西 眞
監修:弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 所長
保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:47535)
福岡県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。