貯金・預金の相続に必要な手続き

相続問題

貯金・預金の相続に必要な手続き

福岡法律事務所 所長 弁護士 今西 眞

監修弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 所長 弁護士

相続財産と聞いて何を思い浮かべるでしょうか。土地、建物、そして預金・貯金を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。

実際にも、被相続人(今回亡くなった方のことです)の遺産にかなりの高確率で含まれているのが預金・貯金です(以下まとめて「預貯金」と呼びます)。

もっとも、「口座の凍結や解約手続について、何をどのようにすれば良いのかよくわからない…」という方も多くいらっしゃることでしょう。

本稿では、預貯金を相続することになった場合の注意点や手続の流れを説明するとともに、よくあるご質問に対する回答を解説していきます。

亡くなった人の口座は凍結される

被相続人が亡くなったことを金融機関に報告すると、直ちにその口座の凍結手続が行われます。口座が凍結されると、その間は口座からお金を引き出すことが一切できなくなります。

口座が凍結される前に被相続人の預貯金口座からお金を引き出したいと考える方もいらっしゃるでしょうが、後々他の相続人やその他の利害関係人との間でトラブルになることが予想されますので、避けた方がよいでしょう。

凍結を解除するには

口座の凍結を解除するには、遺言書や遺産分割協議書によって誰がその口座を相続するのかが明確になっている必要があります。遺言書や遺産分割協議書の他、印鑑証明書などが必要になるため、凍結解除の手続を行う金融機関に必要なものを確認しましょう。

預貯金を放置したらどうなる?

預貯金を相続する期限が明確に定められているわけではありませんが、なるべく早く手続をすることを推奨します。

法律上、預貯金を相続すること自体についての期限はないものの、5年間(金融機関によっては10年間)預貯金を放置してしまうと、金融機関は時効(民法166条1項)を主張して払戻しを拒めるようになるからです。

実際には時効を主張されるケースはほとんどないようですが、あくまで金融機関の好意による対応であり、絶対ではありません。

また、預金は、最後の取引があった日から10年を経過すると休眠口座となります。

休眠口座となった後も口座の相続は可能ですが、手続が煩雑となるうえ、手続が完了するまで時間がかかるというデメリットがあります。

預貯金を相続する場合の注意点

預貯金は土地や建物よりも価値が分かりやすく、相続するにあたって面倒なことが少ないように考えられるかもしれません。しかし、預貯金を相続する際も色々と注意点がありますので、こちらで解説します。

遺産分割手続が完了するまで口座からお金を引き出さない

上記のとおり、被相続人が亡くなったことが分かると口座は凍結され、遺言書や遺産分割協議書によって口座の相続人が明確になり口座の凍結が解除されるまで預貯金を引き出すことはできなくなります。

遺産分割協議書は、相続財産全体について分割協議が終わった後、一通にまとめて作成するのが通常です。

そのため、預貯金の相続人は決まっていてもその他の相続財産について揉めていて遺産分割協議書の作成ができない場合には、口座からお金を引き出すことができません。

例外的に、遺産分割が終了する前に一部の預金を引き出すことができる制度(「遺産の分割前における預貯金の払戻し制度」といいます。)はありますが、金額によっては家庭裁判所の仮処分が必要になることがあります。

もっとも、法定相続分の1/3以下かつ150万円以下であれば、仮処分は不要です。

平日の日中しか手続きができない

当然といえば当然ですが、預貯金の払戻しは金融機関の営業時間内にしか行うことができません。そして、金融機関の窓口は、大半の場合は平日の日中しか営業していません。

テレワーク・在宅勤務の普及によりスケジュールを調整しやすくなったとはいえ、平日の日中はお仕事をされている方も多いでしょうから、預貯金の相続手続のためにお仕事を休まなければならない可能性があります。

銀行ごとに書式が違う

預貯金の払戻しは金融機関ごとに行う必要があります。金融機関にはそれぞれ独自の書式があり、各金融機関で書式が統一されているわけではありません。

そのため、複数の金融機関の預貯金を相続する場合、各金融機関の書式に対応した書面を作成しなければならず、手間がかかるという難点があります。

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銀行等の金融機関で行う相続手続の流れ

銀行等の金融機関で相続手続を行う場合にはどのような流れになるのでしょうか。

遺言書や遺産分割協議書の有無により手続の流れが変わってくるので、一つずつ順番に解説します。

上記の通り、金融機関ごとに必要書類は異なりますので、事前にどのような書類を準備する必要があるか確認しておきましょう。

1. 銀行等、口座のある金融機関に相続手続を申し出る

まず、口座がある金融機関それぞれに相続手続を行いたい旨の申出を行います。

その際に、遺言書や遺産分割協議書の有無を確認されたり、金融機関側から必要書類等について案内をしてもらえたりすることがあります。

2. 必要書類を準備する

金融機関に相続手続を行いたい旨の連絡を入れた後は、それぞれの金融機関ごとに必要な書類を準備します。

一般的に必須とされる書類について、遺言書がある場合など、ケースごとに解説します。もっとも、次の書類については原則としてどのケースでも必要とされています。

  • 被相続人の戸籍謄本または法定相続情報一覧図(戸籍謄本の場合、被相続人の出生から死亡までのものが必要。また、戸籍謄本の原本であることが必要)
  • 通帳、キャッシュカード

遺言書がある場合

遺言書がある場合には、その原本及び遺言書の検認調書または検認済証明書が必要になります。

しかし、その遺言が自筆証書遺言であって、自筆証書遺言書保管制度を利用している場合か、公正証書遺言である場合には、遺言書の検認調書や検認済証明書は不要です。

また、その預貯金を取得する人の印鑑登録証明書も必要になります。

遺言書がない場合

遺言書がない場合、①遺産分割協議書がある場合、②遺産分割協議書がない場合の2通りに分けられます。それぞれ、以下のような書類が必要とされています。

遺言書はないが、遺産分割協議書がある場合

遺産分割協議書がある場合、その原本が必要になります。

法定相続人の戸籍謄本及び印鑑登録証明書については、遺言書がある場合と異なり、法定相続人全員のものが必要となります。

印鑑登録証明書は他人が取得することはできないため、法定相続人全員に協力を求めなければなりません。

他の相続人にお願いして、遺産分割協議書完成のタイミングに合わせて提出しておいてもらうとよいでしょう。

遺言書も遺産分割協議書もない場合

まず、上記のとおり、被相続人の戸籍謄本(出生から死亡までのもの、原本)、通帳・キャッシュカードが必要になります。また、遺産分割協議書がある場合と同様に、法定相続人全員の戸籍謄本・印鑑登録証明書も必要となります。

その他、遺言書や遺産分割協議書に代わる、その払戻し手続が相続人全員の意思に基づくものであることを証明する資料が必要になるでしょう。具体的な資料については、各金融機関に直接確認するのが確実です。

3. 払戻し等の手続

以上のケースそれぞれの資料を準備した上で、金融機関の指示に基づいて必要な書類への記入などを行い、払戻しの手続を行っていきます。

概ね数週間程度で指定した金融機関の口座に払い戻した金額が振り込まれ、相続手続が完了することが多いようです。

貯金・預金の相続に関するQ&A

生活保護を受けているのですが、貯金を相続したら保護は打ち切られてしまいますか?

生活保護を受けている方も当然預貯金を相続することは可能ですが、預貯金を相続することによって健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるようになったと言えるまでに財産状況が改善すると、生活保護を受ける必要がなくなったと判断され、生活保護が打ち切られることになります。

相続をすることにより生活保護がどうなるのかについては、あらかじめ担当のケースワーカーに相談しておいた方がよいでしょう。

相続人は自分だけです。相続手続きせず口座を使っていても良いですか?

相続人が一人しかいない場合、遺産分割協議は必要ありません。しかし、被相続人の口座をそのまま使うことは避けた方がよいでしょう。

本来、預貯金口座を使うことができるのは口座の名義人だけなので、名義人でない相続人がその口座をそのまま使うのは、イレギュラーな事態ということになるからです。

無用のトラブルを避けるためにも、正式な相続手続は行っておきましょう。

相続する貯金がどこの銀行にあるか分からない場合はどうしたらいいですか?

被相続人の預貯金がどこにあるのか分からない場合、全ての口座をもれなく調査することは事実上不可能ですから、自分で被相続人の預貯金口座がどこにあるか予測を立てて調べなければなりません。

大抵は、被相続人の生活圏内にある金融機関を調べることになるでしょう。

いわゆるメガバンクなどの大手金融機関を調べたり、被相続人の地元の地方銀行を調べたりすることによって、ある程度被相続人の預貯金口座を見つけることができると考えられます。

また、ある金融機関の取引履歴を調べて、他の金融機関への送金などがあった場合、その金融機関を調べると新たな口座が判明することがあります。

被相続人が自身に何かあった時のために口座等の財産状況をノートなどにまとめてくれていれば理想的ですが、現実的にはそのようなケースは多くないでしょう。

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貯金の相続手続きをするなら、弁護士への相談・依頼がおすすめです

預貯金の相続手続は意外と大変であることがお分かりいただけたでしょうか。まず、被相続人の預貯金口座がどこにあるか調査しなければなりません。

調査の結果、複数の預貯金口座の存在が判明した場合、各金融機関に対して手続を行う必要があります。

また、遺言書や遺産分割協議書の有無や、金融機関によって、提出すべき書類も変わってきます。

相続についてお困りの場合はぜひお気軽に弁護士にご相談ください。

弁護士に相続手続をお任せいただければ、預貯金口座の調査、金融機関への書類提出はもちろんのこと、相続手続全般をスムーズに進めることができます

また、その他の相続に関する紛争・トラブルを回避、解決することができます。

ぜひ、弁護士へのご相談をご検討ください。

福岡法律事務所 所長 弁護士 今西 眞
監修:弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 所長
保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:47535)
福岡県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。