相続人調査の重要性と調査方法

相続人調査の重要性と調査方法

親族が亡くなり、相続が発生した場合、いろいろな手続が必要になります。亡くなった方の葬儀に始まり、預貯金の解約、生命保険の受取り、不動産の名義変更などなど、必要となる手続は多いです。
これら手続を行う場合、「誰が相続人となるのか」を確定しなければならないことがあります。特に、遺産分割を行うためには、相続人の確定は必須です。相続人の確定のために行うのが、相続人調査です。

相続人調査の重要性

被相続人の財産(遺産)を分けるのが、遺産分割です。相続人となった場合、相続放棄等により相続権を失わない限り、遺産分割をしなければなりません。
遺産分割をする前提として、相続人を調査し、誰が相続人なのか確定しておく必要があります。なぜならば、相続人の一部を除外してなされた遺産分割は、無効となるためです(東京高決昭和55年4月8日家月33巻3号45頁)。
このような裁判所の考え方を踏まえて、金融機関で預貯金の解約等をする場合には、相続人を確定していることを前提に、相続人全員の印鑑証明書の提出等が求められることが一般です。
相続後の諸手続、特に、遺産分割をはじめとする法的手続のためには、相続人を調査し、確定させることが必須です。

相続人調査の方法

相続人調査は、亡くなった方の直近の戸籍を確認するところからスタートします。直近の戸籍から、過去の戸籍に遡っていき、相続人となり得る方をピックアップし、相続人を確定していきます。相続人となり得る方が亡くなっている場合、代襲相続(民法887条2項)が発生することがありますので、相続人となり得る方の戸籍を未来に向かって取り寄せていきます。

相続人が確定した場合、相続関係図を作成します。特に、平成29年(2017年)5月29日から開始された法定相続情報証明制度を利用する場合、「法定相続情報一覧図」(家系図のようなもの)の提出が必須となります。法定相続証明制度を利用した方が、手続が簡便になりますので、相続関係図を作成することは必須と考えてよいでしょう。

相続人調査に必要になる戸籍の種類

相続人の確定のためには、「Aさん、Bさん、Cさんが相続人であること」が分かるだけでは不十分です。「Aさん、Bさん、Cさんが相続人であり、かつ、他に相続人がいないこと」まで判明していなければなりません。そのため、被相続人の直近の戸籍を取得するだけでは、相続人調査として不十分です。被相続人の戸籍を、余すところなく取得することになります。

戸籍謄本

「戸籍」とは、「人の出生から死亡に至るまでの親族関係を登録公証するもので、日本国民について編製され、日本国籍をも公証する唯一の制度」です(法務省ウェブサイト(http://www.moj.go.jp/MINJI/koseki.html)から)。戸籍は、市町村長が管掌し、以前は紙媒体で保存されてきましたが、平成6年(1994年)戸籍法改正により、電子化が開始され、令和2年(2020年)、全自治体で電子化が完了しました。

「戸籍謄本」とは、この戸籍の記載事項の写しのことをいいます(戸籍法10条1項)。電子化された戸籍の場合は、戸籍のデータを印字したものが戸籍謄本とみなされます(戸籍法102条2条参照)。紙媒体の戸籍の場合、紙媒体で保管されている戸籍のコピーに認証文を付したものが戸籍謄本となります。

除籍謄本

「除籍とは、①婚姻、養子縁組、死亡などにより戸籍から除かれること(戸籍法16条~21条、同23条)、②①により、戸籍内の全員がその戸籍から除かれた場合のその戸籍(戸籍法12条)、の2つの意味があります。
相続人調査における除籍とは、②を意味することが一般です。②の証明書が、「除籍謄本等」と呼ばれます(戸籍法12条の2)。

改製原戸籍

過去、戸籍法の改正により、戸籍のフォーマット(様式)が改められてきました。これを、戸籍の「改製」と呼びます(戸籍法附則3条、同附則(平成6年6月29日法律第67号)参照)。戸籍の改製の際には、改製時点で戸籍に在籍する者のみ新戸籍に移され、改製時点で除籍になっていた者は新戸籍に移されません。 そのため、相続人を全て調査するには、改製前の戸籍の確認も必須になります。改正前の戸籍の謄本のことを、一般に、「改製原戸籍」と呼んでいます。

相続人調査に必要な戸籍は1つだけではない

相続人の調査のためには、民法の法定相続人の規定を踏まえて、戸籍を取り寄せていく必要があります。相続人の確定のために調査が必要となる戸籍は、時に膨大な量になります。

生まれてから死亡するまでの戸籍すべてが必要

前記のとおり、相続人の確定のためには、例えば、「Aさん、Bさん、Cさんが相続人であり、かつ、他に相続人がいないこと」までの調査が必要です。そのため、直近の戸籍を確認するだけでは足りません。被相続人が記載された戸籍全ての調査をすることになります。

亡くなった人に子がいた場合

亡くなった人に、子がいた場合、子が法定相続人になります(民法887条1項)。被相続人の配偶者がいた場合、配偶者も相続人となります(民法890条)。
そのため、この場合、被相続人の戸籍、子の戸籍、配偶者の戸籍が必要になります。
なお、被相続人には(他の)子がいないと思っていた場合でも、遺言による認知(民法781条2項)がされている場合や、離婚した前妻との間に子がいる場合、婚外子を認知している場合、養子縁組をしている場合等もありますので、注意が必要です。

亡くなった人に子がいなかった場合

被相続人に子がいなかった場合、以下の民法889条1項に定めるとおり、被相続人の直系尊属が相続人となり、直系尊属がいないときは被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。
ただし、被相続人の子が、既に死亡していた場合、相続人の欠格事由に該当する場合、排除された場合には、被相続人の孫が代襲相続人となります(民法887条2項。再代襲あり。同3項)。

被相続人に、子がいない場合、被相続人の直系尊属が相続人になります(民法889条1項1号)。被相続人の配偶者がいた場合、配偶者も相続人となります(民法890条)。この場合、被相続人の戸籍、直系尊属の戸籍、配偶者の戸籍が必要になります。

被相続人の直系尊属がいない場合、被相続人の兄弟姉妹が相続人となります(民法889条1項2号)。被相続人の配偶者がいた場合、配偶者も相続人となります(民法890条)。この場合、被相続人の戸籍、被相続人の兄弟姉妹の戸籍、配偶者の戸籍が必要になります。なお、被相続人の兄弟姉妹について、既に死亡していた場合、相続人の欠格事由に該当する場合、排除された場合には、その子が代襲相続人となります(民法889条2項。ただし、再代襲なし。同項は民法887条3項を準用せず。)。

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抜け漏れなく戸籍を取得する方法

被相続人の戸籍をもれなく収集するには、被相続人の死亡したときの戸籍(除籍謄本)から過去に遡っていくことが通常です。被相続人が、他の戸籍から転籍した場合、離婚・婚姻等により新たに戸籍が編成されていた場合、戸籍が改製されていた場合等には、1つ前の本籍地の記載を手がかりに、1つ前の本籍地の市区町村役場から戸籍を取得することにより、戸籍を過去に遡っていきます。過去の戸籍の漏れをなくすには、戸籍ごとに、「〇年〇月〇日~×年×月×日」といった形で、その戸籍から分かる期間を記載して、表計算ソフトなどで出生から死亡までの全期間が埋まったか確認すると良いでしょう。

戸籍を取得出来たら記載内容を確認する

戸籍を取得したら、戸籍の記載内容を確認します。戸籍の記載事項は、戸籍法13条、同法施行規則35条各号等により記載されています。特に、出生に関する事項、認知に関する事項、養子縁組又は離縁に関する事項、婚姻又は離婚に関する事項等、法定相続人の範囲に影響を及ぼす記載を見逃さないようにしましょう。

古い戸籍は確認が困難なことも

過去の戸籍(改製原戸籍)は、手書きで書かれています。特に、昭和初期以前の戸籍は、行書体や草書体で書かれているため、法律事務所の職員でも判読に苦労することがあります。解読に難渋する場合、戸籍を管理する市町村役場の職員に確認することが最善です。

相続関係図を作成したら相続人調査完了

相続人調査が完了したら、相続関係図を作成します。戸籍を何度も取得する手間を省くため、相続関係図を作成後は、法定相続情報証明制度を利用するようにしましょう。
その後、遺産分割手続等に進んでいくことになります。
なお、一度、相続関係図を作成した場合でも、相続人の死亡により再度の相続が発生する場合や、相続廃除等により相続人が相続権を失い、代襲相続が生じることもあります。これらにより、相続人の範囲が異なった場合には、改めて戸籍等を取得の上、相続関係図を作成することが必要になります。

相続人調査をしっかり行うことで後々のトラブル回避にもつながります。弁護士へご相談下さい

「誰が相続人になるか」は、日常的な法律知識として多くの方がご存じです。しかし、いざ自分が相続人の立場になってみると、戸籍の収集が大変だったり、相続人の範囲が分からなくなる、という事態が発生することもあります。
また、本記事記載の他、被相続人が外国人であったり、相続人が外国にいて生存しているか分からなかったりといった、渉外問題が生じることもあります。
相続手続には、相続放棄等、時間を要するものがありますし、前記のとおり相続人の一部を除外した遺産分割は無効になってしまいます。
このようなリスクを避けるためにも、相続人の確定に戸惑ったときはぜひ弁護士に御相談ください。

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この記事の監修

福岡法律事務所 所長 弁護士 今西 眞
弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 所長弁護士 今西 眞
福岡県弁護士会所属。弁護士法人ALGでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。
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