相続財産調査 | 財産の種類や調査方法

相続財産調査 | 財産の種類や調査方法

本記事では、相続のための手続(遺産分割、遺留分減殺請求、相続放棄などの法的手続や、被相続人名義の遺産の名義変更などの手続)のために必要不可欠な相続財産調査についてご説明いたします。

相続財産調査の重要性

相続が開始した後は、相続財産(遺産)をきちんと調査することが必要です。
調査が不十分な状態で、遺産分割を行ってしまうと、後から遺産が出てきて、遺産分割のやり直しが必要になったり、負債(相続債務)があることを知らずに相続してしまい、膨大な支払義務を負うことになってしまう、といったことが発生しかねません。
相続財産調査は、必須の手続です。

相続財産にあたるもの

プラスの財産の種類

相続が開始した場合、「被相続人の一身に専属したもの」を除いた「被相続人の財産に属した一切の権利義務」が、相続財産として、相続の対象となります(民法896条本文)。

相続財産のうち、プラスの相続財産(財産的な価値があるもの)として、不動産の他、宝石、自動車等の動産、預貯金、株式、投資信託といった債権があります。
また、プラスの相続財産かどうかについて争いになりがちなものとして、ゴルフ会員権や、契約上の地位等があります。

マイナスの財産の種類

相続財産のうち、マイナスの相続財産(支払義務が生じるもの)として、借金(金銭消費貸借契約上の債務)、保証人の義務、未払い税金等があります。

相続財産調査の流れ

相続財産調査は、一般的に、プラスの相続財産の調査→マイナスの相続財産の調査の順番で進みます。

不動産登記から抵当権者(債権者)が判明する、預貯金等の取引履歴から債権者への支払いが判明する等、プラスの相続財産からマイナスの相続財産が判明することが多いため、プラスの相続財産から調査した方が効率的なことが多いです。

なお、マイナスの相続財産の調査は、プラスの相続財産の調査と並行して、信用調査機関(CIC等)に照会することでも行います。

財産調査に期限はある?

相続財産調査は、可能な限り、相続開始があったことを知った時から3か月以内に完了させます。この期間を過ぎてしまうと、単純承認となってしまうためです(民法921条2号・915条1項)。相続財産の量が多かったり、相続人となった人が、被相続人との交流が乏しいような場合には、家庭裁判所に、相続の承認又は放棄の期間の伸長の申立てをしておく方が安全です。

預貯金の調査方法

預貯金は、被相続人宅に遺された通帳、キャッシュカードから判明することが多いです。これらの他、金融機関から粗品としてもらったカレンダーやペンの存在から、預貯金口座の存在が分かることもあります。

また、近年は、インターネット専業の金融機関もあります。インターネット専業の金融機関の場合、口座開設時の書類が発見されて口座の存在が判明したり、被相続人宛のメールをきっかけに口座の存在が判明することがあります。

相続財産調査では、預貯金口座のある金融機関に対し、取引履歴の交付を求めることが多いです。相続の場合、金融機関は、「全店照会」に応じることが一般ですので、全店・全口座の取引履歴を取り寄せることが望ましいです。

ここで、相続開始時に存在した預貯金のみが相続の対象になりますので、残高証明書の発行で足りるようにも思えます。しかし、預貯金の取引履歴から、他の口座や債務が判明することが多いです。相続財産の漏れを防ぐため、取引履歴を全て検討することがベターです。

相続人に気付かれなかった口座はどうなるか

相続財産調査から漏れてしまい、取引がないままの口座は、「休眠口座」として扱われることがあります。「民間公益活動を促進するための休眠預金等に係る資金の活用に関する法律」(休眠預金活用法)という法律に従い、「休眠口座」内の預金が、金融機関から預金保険機構に移管され、民間公益活動のために使用されることになります。

詳しくは、政府広報のウェブサイト(https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201907/1.html)や、各金融機関のウェブサイトを参照してください。

不動産調査の方法

不動産の相続財産調査は、被相続人が居住していた市町村から、固定資産課税台帳(いわゆる名寄帳。地方税法349条1項)を取得することが一般です。名寄帳に記載されている不動産の登記情報を参照し、共同担保目録等から、関連付けられた他の不動産がないかも調査します。

被相続人宅内の権利証(不動産登記の登記識別情報又は登記済証)や、固定資産税の納付履歴、負債の情報等から、被相続人が居住していない不動産の存在が判明することもあります。特に、大口の負債が判明したときは、同負債のための抵当権が設定されていないか、金融機関に必ず確認しましょう。

被相続人が居住していなかった市町村に所在する不動産が判明したときには、同市町村の名寄帳も取得することになります。

このような手続で進んでいく不動産の調査ですが、限界があります。全国の市町村全ての名寄帳を取り寄せることは現実的ではないためです。どこかで区切りをつけざるを得ないと考えておいた方が良いでしょう。

なお、近年、不動産登記を名寄せしてくれるインターネット上のサービスも存在します。日本全国すべての不動産が名寄せされているわけではないですが、利用を検討しましょう。

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株式の探し方

上場されている株式等であれば、株式会社証券保管振替機構(ほふり)に対する照会により、被相続人が生前有していた証券口座が確認できますので、この照会を行うことが最善です。

一方、非上場株式、特に、株券を発行していない株式会社又は株券不所持の申出がされている株式会社の場合、株券を基に、相続財産に株式が含まれることを認識することができません。これら非上場株式の相続財産調査は、被相続人宅に、「株主総会招集通知」等の、株主に対して送付される手続関係の書類がないかを探す等の地道な作業が必要になります。

借金の調査方法

借金の調査は、信用調査機関に対する照会と、預貯金の取引履歴の精査からスタートします。信用調査機関には、CIC(株式会社シー・アイ・シー)、JICC(株式会社日本信用情報機構)、全銀協(一般社団法人全国銀行協会)があります。収集されている情報が異なるため、これら全てに対して照会をすることが一般です。

連帯保証人になっていないか調査する方法

保証債務も、相続財産として相続の対象となります。そのため、保証債務がないかも、調査が必要です。銀行等の保証債務であれば、信用調査機関に対する照会で判明しますが、個人間の貸金の保証人となっている場合、会社間の取引の保証人となっている場合等、信用調査機関に登録されないような態様の保証契約もあります。このような、信用調査機関に登録されないような態様の保証契約については、被相続人宅の書類を精査して、保証契約等がないか確認することになります。

なお、実際に発生した「保証債務」と「保証人たる地位」は異なることに注意が必要です。「保証人たる地位」は、相続されないことがあります(身元保証、信用保証等)。また、遺産のみから相続債務を支払う、という「限定承認」という手続もあります(民法922条)。ただし、「限定承認」手続は、相続人全員による家庭裁判所への申述が必要であることや、税務が複雑になること等から、めったに利用されません。

住宅ローンがある場合

未返済の住宅ローンも、相続の対象となります。
ただし、団体信用生命保険(いわゆる「団信」)がある場合、その保険金で返済されることも多いです。住宅ローンの返済をしてしまう前に、必ず団信の有無を確認しましょう。

借金が多く、プラスの財産がない場合

相続をする場合、プラスの相続財産だけではなく、マイナスの相続財産も引き継ぐことになります。
マイナスの相続財産の支払い目途が立たないときには、相続放棄を検討することになります。

相続放棄とは、相続の効果を確定的に消滅させる手続で、家庭裁判所への「申述」が必要です。相続放棄の申述が受理されると、プラスの相続財産・マイナスの相続財産を引き継ぐことはなくなります。なお、相続放棄は、家庭裁判所への申述が必須です。相続人の間で合意書を交わしたにすぎないときは、相続放棄ではありません。「遺産を放棄した」と思っていても、実は違ったということが少なからずありますので、注意しましょう。

財産目録の作成について

相続財産調査が完了した場合、相続財産目録を作成することが一般的です。後々、遺産分割協議等を行う場合には、相続人の誰がどの財産を引き継ぐのか、協議をしなければなりません。また、相続財産目録は、遺産分割調停・審判の必要書類にもなっています。相続財産をしっかり把握しておかなければ、遺産分割協議はできないため、相続財産目録の作成は必須です。

相続財産調査は弁護士へお任せください

相続財産調査は、簡単そうに見えて簡単な手続ではありません。そもそも相続財産に該当するかどうか検討を要しますし、他にどんな財産があるか目星をつけるには、豊富な相続の経験が必要です。
相続財産調査から弁護士に依頼することをお勧めします。

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この記事の監修

福岡法律事務所 所長 弁護士 今西 眞
弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 所長弁護士 今西 眞
福岡県弁護士会所属。弁護士法人ALGでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。
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