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相続問題

家屋の相続手続き

福岡法律事務所 副所長 弁護士 今西 眞

監修弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 副所長 弁護士

土地や建物(家屋)を相続した場合、不動産登記の名義を変更しなければなりません。不動産の権利関係を明らかにすることは、相続人間で話し合った遺産分割協議の結果等を対外的にも確定させて、自身の資産を守るという観点からも不可欠ですので、相続登記のことについて記載していきたいと思います。

家屋の相続手続きには相続登記が必要

相続登記は、法定相続分どおりに行うものと、遺産分割協議や遺言書の内容に従い、特定の人間だけが相続するものの二つに大別できます。誤解を恐れずに言えば、前者は、第三者に売却してその売却益を遺産として分配する場合や、遺産分割協議が完了するまでの一時的な措置として、後者は最終的な相続関係の確定として行われるようなイメージです。

相続登記をするとできるようになること

第三者に売却するにも、故人(被相続人)名義のままでは、所有権移転登記ができませんので、売却の方向で進めるためには、いずれかのタイミングで相続登記を行う必要があります。
また、特殊な使い方として、相続人個人に対する債権者が、相続登記を代位して行うことで、被相続人名義の不動産の差し押さえを可能にするという場合もあります。

相続登記の手続きに期限はある?

相続登記は、2022年現在はいつ行うも自由ですが、2024年4月1日からは法的義務になります(改正後の不動産登記法76条の2)。
相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければなりません。この違反には罰則規定もありますので、2024年4月以降は注意が必要です。

家屋の相続手続きの流れ

相続の開始時点では、遺産たる不動産(家屋)は他の共同相続人との共有状態にあります。共有として相続登記を行うことも可能ですが、その場合時間の経過とともに権利が細分化し、子々孫々に大きな負担を残してしまいます。
したがって、誰か一人に相続させるか(又は共同して売却して売却益を分配するのか)を話し合うことになります(※いわゆる遺産分割協議です)。その結論を遺産分割協議書として書面化し、これを用いて相続登記を行う、というのが一般的な流れです。

相続登記の必要書類

相続登記は当該不動産を管轄する法務局に申請して行いますが、そのためには申請書の他、各種資料の添付が必要です。以下代表的なものについて記載します。

基本的に必要なもの

相続を原因とする所有権移転登記を行うには、被相続人の出生から死亡までの戸籍や、不動産登記簿に記載されている住所と一致する住民票の除票等、被相続人との関連性を証する資料の提出が不可欠です。また、当該不動産を取得する者と被相続人の親族関係や、不動産登記に記載する住所地を証明するための資料なども要求されます。以下に代表的なものと取得先を列挙しておきます。

所有権移転登記申請書:自分で作成(※ひな型もあります)
被相続人の戸籍・除籍謄本:当該市区町村の役所
相続人の戸籍:同上
被相続人の住民票の除票(又は戸籍の附票):同上
不動産を取得する者の住民票:同上
固定資産評価証明書:不動産所在地の市区町村の役所
収入印紙:郵便局・法務局等

遺言書がない場合の追加書類

相続登記に必要な資料は、具体的な事情によって異なります。遺産分割協議に従った内容とする場合は、上記に加えて、遺産分割協議書や相続人全員の印鑑証明書が必要です。調停や審判調書に基づく場合は、その調書の謄本を添付しますが、審判の場合は確定証明書も必要です。

遺言により特定の相続人が取得する場合の追加書類

遺言書で当該不動産を特定の相続人に取得させるというような指定がされている場合にこれに従って行う相続登記は、当該遺言書も資料として添付しなければなりません。検認が不要な公正証書遺言以外の、自筆証書遺言等の場合は家庭裁判所の検認を受けて、その調書も添付しなければなりません。なお、この場合は相続人全員とのつながりを示す必要がないので、被相続人の戸籍は死亡時のもので足ります。

遺言書により第三者が遺贈で取得する場合の追加書類

遺贈登記の場合も、遺言書や検認調書が必要になるのは上記と共通です。また登記識別情報の添付や、受遺者の住民票も必要です。
遺言執行者を選任している場合はその印鑑証明書(家庭裁判所が選任した場合は選任審判書も)、選任していない場合は相続人全員の戸籍や印鑑証明書も必要です。

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書類の郵送先

相続登記(所有権移転登記)は、窓口に提出する方法だけではなく、当該法務局宛の書留郵便による郵送でも申請することが出来ます。いずれも当該不動産の所在地を管轄する法務局に行う必要があります。

手続きせず空き家として放置したらどうなる?

相続登記の手続が法的義務化されるのは上述のとおりです。
遺産相続が生じた後も、遺産分割をせず、共有状態のまま放置すると、時間の経過とともに相続人の死亡と相続が繰り返され、権利が細分化し、相続人の数が膨大で話し合いをすることも困難という状況を招来します。固定資産税は一部の相続人に請求されつづけますし、共有のままでは処分にも困るでしょう。

家屋の相続は揉めやすいので弁護士への相談をお勧めします

管理する人間のいない建物は、草木も生い茂りますし、建物の朽廃による倒壊等の危険も生じていくでしょう。他者に被害を与えたとき、その賠償は共有者全員に責任が生じてしまいます。このように負の遺産と化すことがないようにするためには、遺産相続が生じた段階で、誰が取得するのか、その対価をどうするのか等を協議して定めておかなければなりません。
資産価値が大きい場合は、取得する者が支払うべき対価の問題がありますし、資産価値が低い場合は、建物の解体費用の問題を含めた協議が必要な場合もあるでしょう。
その区別や処理方針の確定等は、専門的な知識や経験に基づく判断が要求される点ですので、相続が生じた場合や将来に備えた疑問等は、自己判断はせずに、一度は弁護士に相談しておくことが最善です。

福岡法律事務所 副所長 弁護士 今西 眞
監修:弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 副所長
保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:47535)
福岡県弁護士会所属。弁護士法人ALG&Associatesでは高品質の法的サービスを提供し、顧客満足のみならず、「顧客感動」を目指し、新しい法的サービスの提供に努めています。