監修弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 副所長 弁護士
基本的に「不動産は売ればお金になる。」と考えられがちです。修繕費用を払ってきたなどコスト負担をしてきたことや、思い入れなどから簡単に分ける(遺産分割)ことができないことが多く、遺産分割で揉める代表的な遺産の1つです。
目次
相続した不動産はどうやって分ければ良いの?
現状のまま、相続人の共有とする方法や、誰かが全て取得し代償金を支払う方法、売却益を分割する方法、実際に分筆して分けてしまう方法などがあります。
遺言書があるなら内容を確認しましょう
相続分や遺産分割の方法は、遺言で指定することが認められています。そこで、遺産分割の方法が遺言書に書かれていないか確認することが必要です。
遺産分割協議とは売却・現金化して相続人で分ける(換価分割)
売却して、経費等を除いた利益を分ける方法です。もっとも公平かつ終局的に解決できる方法の1つです。とはいうものの、もっと高く売れるはずだなど、誰が主導して売却するのか、売却価格の下限を定めるのか否かなど、調整しておくべきことは多いです。
相続人の一人がそのまま相続する(現物分割)
誰かが不動産一筆全てを取得することとし、預金などは他の相続人が取得するなどできればシンプルですが、そうでなければ、何らかの方法で不動産を分けないといけません。分筆してしまって現実に分ける方法がありますが、実際は難しいでしょう。
相続する人がほかの相続人にお金を払う(代償分割)
不動産を誰かが取得し、代わりに代償金を支払うという方法もあります。
遺産に、代償金を払えるような金融資産がある場合や、遺産とは別に預金など資力がある場合に有効な方法です。遺産を含めて代償金を支払える資力があることが前提となりますので、使えないことも少なくありません。
複数の相続人で共有する(共有分割)
共有としてしまう方法もありますが、結局、終局的に解決しない可能性が高くなりますので、基本的にはあまりお勧めできる方法ではないでしょう。
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不動産の相続には名義変更が必要
相続登記はいつまでにやればいい?
遺産分割を行ったとしても、相続登記がなされていないと、相続人の1人がこれを利用して、売却などされてしまった場合、買主へ対抗できないなど、不利益を被る可能性があります。また、令和6年4月1日からは、正当な理由のない限り、不動産を取得した相続人は、相続により所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければならなくなります。
【正当な理由の例】
(1)相続登記を放置したために相続人が極めて多数に上り、戸籍謄本等の必要な資料の収集や他の相続人の把握に多くの時間を要するケース
(2)遺言の有効性や遺産の範囲等が争われているケース
(3)申請義務を負う相続人自身に重病等の事情があるケース
相続登記に必要な書類
相続の内容によって異なりますが、相続登記には、概ね次の書類が必要とされています。
①被相続人に関するもの
- 出生から死亡までの戸籍謄本又は除籍謄本
※遺言の場合、被相続人の死亡がわかる被相続人の戸籍謄本又は除籍謄本
※法定相続情報一覧図の写しでも可 - 住民票の除票又は戸籍の附票の写し(本籍記載あるもの)
※登記簿上の住所の記載があるものまで
②相続人に関するもの
- 相続人全員の戸籍謄本(被相続人死亡日以後の証明日のもの)
※遺言の場合は、不動産を相続することとなった相続人のもので足りる。
※法定相続情報一覧図の写しでも可 - 不動産を相続する相続人の住民票又は戸籍の附票の写し(本籍記載あるもの)
③相続の内容(持分等)に関するもの
- 公正証書遺言書がある場合は、公正証書遺言書の正本又は謄本
- 自宅で保管している自筆証書遺言がある場合は、自筆証書遺言書及び家庭裁判所の検認証明書
- 法務局で保管している自筆証書遺言がある場合は、遺言書情報証明書
- 遺産分割協議を行った場合は、遺産分割協議書(相続人全員が実印を押印して作成し、印鑑証明書を添付する。)
④登録免許税
- 原則として、不動産の固定資産税評価額の1000分の4の金額
- 令和7年3月31日まで、以下の免税措置があります。
※相続により土地を取得した(一次相続といいます。)方が相続登記をしないまま死亡した場合(二次相続といいます。)で、これらを併せて相続登記をする際における一次相続の登記に係る登録免許税
※不動産の固定資産税評価額が100万円以下の土地に係る登録免許税
提出先
相続登記は、相続財産である不動産の所在地を管轄する法務局(本局・支局・出張所)に、申請書及び必要書類を提出して行います。管轄法務局は、ホームページなどで調べることができます。
申請書等の提出は、①窓口に持参、②郵送、③オンライン、のいずれかの方法が選べます。
不動産の相続時に発生する税金
相続税
相続財産の価格によっては、相続税が発生します。
相続税の対象となる遺産は、預貯金や株、不動産、生命保険金、死亡退職金など様々ありますが、生命保険金なども加えて、基礎控除額3000万円に法定相続人一人当たり600万円を加えた額を超える場合には相続税が発生するという程度は覚えておいてください。
登録免許税
また、不動産を登記するにあたり、登録免許税が発生します。一定の免税措置はありますが、基本的には固定資産税評価額の0.4%となります。
相続したくない不動産はどうすればいい?
相続したくない不動産がある場合ですが、不動産だけを誰も相続しないということは基本的にはできないと考えておくべきでしょう。結果、相続人間で押し付け合いが発生する可能性があります。
相続放棄とは不動産の相続に関するQ&A
父が亡くなったのですが、不動産の名義人が祖父になっていました。この場合、私たちは相続できないのでしょうか?
祖父が生きていれば、祖父の不動産ですから、祖父が亡くなり、代襲相続が発生するまでは相続は問題になりません。他方、既に亡くなっている場合は、父が相続した財産を相続するという数次相続となる場合と、父が祖父よりも先に亡くなっている場合の代襲相続という問題になります。
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不動産の相続は弁護士へ依頼するのがおすすめ
相続は、法的な解釈だけで解決できない場合も少なくありません。不動産の評価や分け方、抵当権の取扱い、収益不動産の処理など複雑な利害が絡み合い、何から手を付けていいかわからないという方も多いでしょう。相続税の申告期限や相続放棄の期限など期間制限もありますので、兎に角、弁護士など専門家へご相談されるのが良いと思います。
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保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:47535)