監修弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 副所長 弁護士
通常、交通事故で怪我をした方は、病院の整形外科等で治療を受けるのですが、軽いむち打ちや捻挫等、症状が重くない場合は、整骨院で治療(正確には、「施術」といいます。)を受ける方も多いのではないでしょうか。
確かに、身体を治すという観点で言えば、整骨院で施術を受けることで症状が改善されることは十分に考えられるのですが、交通事故の慰謝料等、損害賠償を請求する観点では、整骨院に通院することが、被害者に不利に働く可能性があります。以下では、交通事故の被害者が整骨院に通院することのリスクや、注意点についてご説明します。
目次
整骨院への通院で請求できる補償の種類
整骨院に通った場合に請求できる補償としては、主に以下のものがあります。
治療費当然ですが、整骨院に支払うべき治療費(正確には、「施術費」といいます。)は、補償の対象になります。ただし、交通事故で怪我を負った部位に対する必要な施術のみが対象です(全身のマッサージ等、関係ない部位を施術しても、その費用は補償されません)。
通院費(交通費)整骨院へ通院するのに必要な交通費も、補償の対象となります。電車やバスを利用した場合は、往復の料金が、自家用車を利用した場合は、往復のガソリン代(一律で、1キロ15円で計算されています。)が補償されます。
休業損害整骨院へ通院するために仕事を休んだり、遅刻・早退したりした場合は、その分給与等の収入が減ってしまいます。こういった減収についても、補償の対象となります。
なお、有給休暇の使用や専業主婦等、実際の減収がない場合も、休業損害として補償の対象となる場合があります。
慰謝料整骨院へ通院した日数や期間に応じて、慰謝料が補償されます。通院した日数や期間が長いほど、高額の慰謝料が補償されることになります。具体的な金額は、ある程度相場が決まっていますので、弁護士に相談してみるといいでしょう。
他にも、被害者が幼児や高齢者で家族の付添が必要な場合は通院付添費、施術やリハビリに当たって特殊な器具を必要とする場合は当該器具代といった費用が補償されることになります。「これって補償されるのかな?」という疑問がございましたら、一度弁護士まで相談してみて下さい。
整骨院へ通院する際の注意点
病院への通院と異なり、整骨院への通院は、保険会社から適切な治療として認めてもらえず、直ちに補償を得られない可能性がございます。以下では、整骨院へ通院する際の注意点や、準備すべきことについてご説明します。
整形外科に相談し、整骨院通院の了承を得る
整骨院へ通院する方にまず覚えておいて頂きたいことは、「整骨院での施術は、整形外科での治療の補助的な立ち位置である」ということです。ですから、整骨院への通院は、あくまでも整形外科の医師の指示の下で行ってください。医師に何も告げずに整骨院へ通院してしまうと、後日保険会社から施術費が補償されない等、トラブルの原因になってしまいます。
整骨院へ通院する際は、必ず整形外科の医師に相談し、通院の了承を得てから通院するようにしましょう。加えて、整骨院への通院を認める旨を、診断書やカルテ等に記載してもらうことで、医師が整骨院通院を認めていることが客観的に判明するため、トラブルの防止につながります。
病院(整形外科)にも通院する
整骨院で施術を行うのは、医師ではなく、柔道整復師という人たちであり、治療行為ができません。つまり、診察や診断、レントゲンやMRI撮影による検査、薬の処方等ができないのです。
整骨院にのみ通院して病院に通院していない場合、医師の診断や検査が無いため、交通事故によってどのような怪我をしたのかが客観的に明らかにならず、保険会社に治療の必要性を疑われて治療費を支払ってもらえない可能性や、後日、症状固定日後に後遺障害申請をする際に症状が残っていると認めてもらえない可能性があります。
また、定期的に医師の治療を受けていないことを理由に、治療を受ける必要が無い、すなわち、症状が軽いものと推測されてしまう可能性もあります。
整骨院にばかり通院していると、症状に見合った適切な賠償を受けられなくなることがありますので、定期的に病院にも通院し、医師の診察を受けるようにしましょう。
保険が適用される治療かどうかを確認する
整骨院での施術には、健康保険が適用されるものとされないものがあります。
具体的には、外傷性が明らかな症状(骨折や捻挫等)に対する施術に健康保険が適用され、単なる慢性的な症状(肩こり等)に対するマッサージ等では、健康保険が適用されません。交通事故による外傷の場合は、外傷性が明らかな症状ということになるので、基本的に健康保険が適用されることになりますが、施術を受ける前に確認をするといいでしょう。
健康保険が適用される場合は、積極的に健康保険を利用することをお勧めします。健康保険を利用する場合、自由診療ではなく、保険診療として扱われるので、単純に施術費を抑えることができます。例えば、自身にも過失がある交通事故の場合、施術費の内過失割合分は自己負担となってしまうのですが、施術費を抑えることが、自己負担分を抑えることにつながります。また、施術費を抑えることで、長期間通院することについて、保険会社の納得を得やすくなるというメリットもあります。
整骨院への通院時は、保険適用が可能か確認し、積極的に保険を適用するといいでしょう。
整骨院に通院する前に弁護士にご相談ください
このように、整骨院への通院は、病院への通院と異なり、漫然と通院してしまうと治療費が支払われない、症状があることを認めてもらえない等、思わぬトラブルに巻き込まれてしまいます。
弁護士が活躍できるのは保険会社と賠償金の交渉をするときだけと考えている方も多いと思いますが、適切な賠償金を得るためには、治療段階、通院段階から適切な行動をとることが必要であり、事故直後から賠償金を得るための戦いは始まっていると言っても過言ではありません。
弁護士は、適切な通院や、病院、整骨院との打ち合わせ方法等についても精通しておりますので、通院の仕方について不安がある方は、是非一度弁護士に相談して、アドバイスを受けるようにしてください。
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保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:47535)
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