監修弁護士 今西 眞弁護士法人ALG&Associates 福岡法律事務所 副所長 弁護士
主治医に「追突事故の場合、事故後6か月以降は保険会社が治療費を出さないようになるから通院終了です。」と言われたとか、保険会社に「通院開始から6か月になりますので、治療費の一括払いを中止します。」と言われたという方のご相談をよくお受けします。
ここでは、6か月程度通院した方が抱えるであろう疑問点にお答えしていこうと思います。
目次
6ヶ月の通院期間で請求できる慰謝料とは
入通院慰謝料の算定基準と相場
自賠責基準自賠責基準は、交通事故により負傷した被害者に対して、法令で定められた最低限の補償を行うための基準であり、通院日数をもとにして計算します。具体的にいうと、4300円×通院日数(通院期間あるいは実通院日数×2のいずれか少ない方)で算定します。分かりにくいですが、週に2~3回くらいのペースで普通に通院されていた方は4300円×2(8600円)×通院実日数で計算することになります。
弁護士基準(裁判基準)弁護士基準とは、弁護士が示談交渉や裁判で用いるための基準であり、裁判基準ともいわれています。自賠責基準との違いは、慰謝料算定の際に通院日数ではなく通院期間をもとにして計算することです。
相手方保険会社が自賠責基準程度で提示してきた金額を、示談交渉によってどこまで弁護士基準と同額あるいはその近くまで増額できるかが弁護士の腕の見せ所です。
通院 6ヶ月の場合の慰謝料を比較
自賠責基準 | 弁護士基準 | |
---|---|---|
むちうちの場合 | 68万8000円 | 89万円 |
むちうち以外の場合 | 68万8000円 | 116万円 |
以上のように、自賠責基準と比較すると、弁護士基準はより高額なことがわかります。 これは、自賠責基準が法令で定められた最低限の賠償基準であり、弁護士基準は交通事故の過去の裁判例をもとに設定されたより高額な賠償基準であることが理由です。
弁護士以外の者が保険会社と交渉しても保険会社は弁護士基準で示談することはありませんので、保険会社から賠償額の提示を受けた際は、弁護士にご相談ください。増額の見込みについて検討させていただきます。
治療に6ヶ月程度かかる人が少しでも多く慰謝料を貰うには
6ヶ月の通院期間に適切な頻度で通院しよう
弁護士基準で慰謝料を算定する際、算定の基準となるのは通院期間です。 しかし、通院期間が長くても、実通院日数が少ないと、通院期間ではなく実通院日数の3倍を通院期間として慰謝料の算定(3倍ルール)をすることはあります。
そこで、少なくとも月10日以上(週2~3回)の通院はしてもらう必要があります。逆に、通院実日数が月10日未満の場合は、弁護士基準でも獲得できる慰謝料が減額される可能性がありますので、お気をつけください。
闇雲な通院は逆効果
それでは、毎日のように通院すればよいかというと、そうではありません。 毎日のように通院して過剰通院であるとされ、通院の必要性が認められない場合は、治療費が自己負担となる可能性があります。それに、毎日通院しても慰謝料の額が増えることはありません。
また、相手方の任意保険会社は、治療費及び慰謝料の合計額が自賠責の傷害部分の支払限度額である120万円に達するまでは比較的問題なく支払いに応じてくれるのですが、逆にこれを超えてしまうと突然支払いが渋くなります。以上のことから、通院頻度は週2~3回くらいが適度でよいということになります。
事情があり通院頻度が少ない場合
逆に、通院頻度が少ない場合、上述の3倍ルールによって期間全体が長くても慰謝料額が少なくなる場合があります。
通院頻度が少ないとこのような不利益だけでなく、相手方の任意保険会社が怪我の程度が軽いとして、早期に治療費の打ち切りを打診してくる可能性があります。 ただし、通院できない特別の事情があって通院日数が少ない場合は、その事情によりますが、慰謝料額を減額させないように弁護士が交渉しますので、特別の事情がある場合は弁護士にご相談ください。
6ヶ月経った頃に治療費を打ち切ると言われたら
相手方の任意保険会社から治療費の打ち切りを言われた場合、保険会社には治療を継続する必要性を納得してもらう必要があります。一般的に、弁護士が主治医に対して医療照会書を出したり、医師面談をしたりして、治療の必要性を立証します。その前提として、整骨院ではなく病院に通院することや打ち切りを言われてもめげずに通院を続けることは基本ですので、以下説明します。
治療費を打ち切られないための対処法
治療の必要性を訴える通院により、身体の状態が良くなっている場合は、通院の効果が上がっているということですから治療を継続する必要があります。
病院で治療を続ける整骨院に通っていると、患部を施術してくれるのは整骨院であるとして、病院への通院に意味がないと思ってしまうことがあります。しかし、少なくとも月1回は病院へ行き身体の状態を診てもらう必要があります。これを怠ると、最悪の場合は整骨院での施術費用を自己負担しなければならない可能性があるので、病院への通院を続ける必要があります。
症状固定まで通院するまだ患部が痛むのに保険会社に言われたからとして通院をやめると、その後病院で治療を受けようと思っても自己負担でいかなければならないのでいけません。したがって、保険会社に言われてもうのみにせず通院を続ける必要があります。
通院の際仕事を休まないといけない時は?
通院のために必要な場合は仕事を休んで通院してください。その場合、休んだ分減額された給料については、職場に休業損害証明書を書いてもらえば、減額分に関しては相手方保険会社に支払ってもらえます。これは有給をとって通院した場合も同じように扱われますので注意してください。本来自由に使えるはずの有給を交通事故により使わざるを得ないことになったということが休業損害が認められる理由です。
6ヶ月通院して、症状固定と診断されたら
症状固定とは、治療を継続してもこれ以上身体の状態が良くも悪くもならない状態のことをいいます。交通事故の被害者の方は通院4~6か月くらいで「患部がずっと痛みます。通院しても全然痛みが変わりません。」と言われる方がいますが、そのような状態は症状固定が疑われます。
後遺症が残ったら「後遺障害等級認定」
症状固定後、身体に痛み、可動域制限や変形等の後遺症が残った場合、それを保険会社に補償してもらうには後遺障害等級として認定される必要があるため後遺障害等級申請をすることをお勧めします。ただし、神経症状や可動域制限等回復する可能性がある後遺障害に関しては6か月以上通院しなければ後遺障害として認定されることはありませんので、6か月以上の通院はするようにしてください。
むちうちで6ヶ月通院した場合の慰謝料計算方法
【自賠責基準】
交通事故により、通院6か月、通院日数が80日の場合を例にして自賠責基準の解説をしていきます。
自賠責基準では、慰謝料の算定は1日につき4300円で計算します。
そして、慰謝料の算定の基礎となる日数は、「通院期間」もしくは「実通院日数の2倍」の少ない方であり、今回の場合は通院期間6か月(180日)と実通院日数80日(2倍は160日)であり、実通院日数の方が少ないので、慰謝料は4300円×80日×2=68万8000円となります。
【弁護士基準】
交通事故により、むちうち等軽微な怪我を負い、通院6か月、通院日数が80日の場合を例にして弁護士基準の解説をしていきます。
弁護士基準では、入通院慰謝料について、原則として入通院期間を基礎に、赤い本に記載されている算定基準に基づき算定します。赤い本には別表Ⅰと別表Ⅱの2つの算定基準が存在し、原則別表Ⅰを使用しますが、むち打ち症で他覚所見がないとか軽い打撲・挫創の場合は別表Ⅱを使用して算定するとされています。
今回の場合は、むちうち等軽微な怪我ですので、別表Ⅱに基づいて算定し、慰謝料は89万円となります。
弁護士基準での慰謝料獲得を考えるなら弁護士へご相談下さい!
ご自身で交渉されても、保険会社は弁護士基準による示談交渉に応じることはありません。保険会社から損害額の提示を受けた場合は弁護士までご相談いただければ、どの程度増額の可能性があるかどうかについてお話させていただきます。 お電話お待ちしております。
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保有資格弁護士(福岡県弁護士会所属・登録番号:47535)
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